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ガイル編

10.紫色の瞳

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10.紫色の瞳

「わぁ~、大きい建物だね」
「早くっ早くっ」
セシルはリリーの手を引っ張りガイルの街で1番でかい温泉に入っていった。
「楽しみだね。温泉も大きいのかな」
「早く入りたい!」
セシルとリリーはお金を払い温泉に向かう。奥へと向かうと男と女に別れたのれんがあった。セシルは一瞬戸惑ったがリリーが手を引いてくれたおかげで悲しい気持ちにならずにすんだ。
中は籠が棚に並んでおり所々服や荷物がある。籠に荷物を入れるのだろう。何人か着替えたりしている人もいる。その中に一際目立つ女性がいた。
「あの人、目が紫色」
「どうしたの?」
「あ、何でもないよ。行こっか?」
「うん!」
女性にしては胸がほとんどない。しかし、とても綺麗で落ち着いた様子だった。その人は丁度出ていくみたいだった。
「おっきぃ~」
セシルはバタバタと温泉の方へ走っていった。
「セシル!危ないよ!」
しかし、リリーの声を聞く前に滑って転んだ。
「あでっ」
周りにいる人達はクスクスと笑っていたり迷惑そうにしたりしていた。リリーは少し恥ずかしく思いセシルに体洗うように言った。
「昨日練習したからできる?」
「できるよ!」
セシルはのみこみが早く普通に体が洗えるようになっていた。リリーの教えが良かったのかそれともセシルが凄いのかリリーは不思議に思った。
リリーも体を洗いセシルの様子をちらりと見た。セシルは無性。女の子のような胸もなければ男のような生殖器もない。もう13だし体毛が生えてくるはずだがツルツルしている。股間の方を見るがあまりまじまじと見れないのでパッとだけだが女性器もない。胸は膨らんでいないだけではなく哺乳類には存在する乳首さえもない。どうなっているのだろうか。リリーはこれ以上見るのも申し訳ないと思い視線を外した。
セシルは体を洗い終わりすぐさま温泉に浸かる。リリーも遅れて入る。
「リリー!このお湯濁ってる!」
「そうだね。体にはつかないのかな」
「君らって温泉初めて?」
セシルとリリーの会話に誰かが入ってきた。気配も何も感じなかったのでリリーは驚いたがセシルは平気そうだった。
「うんっ初めてだよ!」
「色んなところに入ってみるといいよ。体にいいから」
その人は先程着替えていた綺麗な顔立ちをした人だった。紫色の瞳が怪しく光る。
「オレはキース・エクス。よろしく」
落ち着いた雰囲気の喋り方で一人称は珍しく『オレ』だ。
「地元の人かな」
「いや、オレも観光だけどよく来るから楽しいよね」
「僕、初めて村から出たんだ!見たことないのが沢山で楽しい!」
「村?」
「ここから南のとこの島にある村だよ。私はリリー・フローレス」
「僕はセシル・シー!こちらこそよろしく!」
「へぇ、『シー』か」
キースは面白そうにセシルを見つめる。リリーはそれに嫌な予感がした。何故出ていこうとしていたのにまた戻ってきて自分たちに話しかけてきたのだろうか。リリーはそれが不可解だった。
「うんっ、僕本当はセシルって名前しか知らなかったけど皆みたいに苗字欲しくて海好きだから『シー』って苗字にしたの!」
「うん、いい名前だ。セシル・シー」
「ありがとう!」
セシルは嬉しそうに笑う。褒められば純粋に喜んでくれるからリリーは好きだがキースは何か怪しい。
「じゃあ、オレはもう上がるよ。ゆっくりしていってね」
「うんっまたね」
キースはそのまま出ていった。リリーはなんとも言えなかった。

その頃、旅館では。
ルーナとジェームズはそれぞれ部屋でのんびりしていた。しかし、
コンコン
ルーナの部屋の扉からノックがした。ルーナは剣を持ち扉へ向かう。ルーナが剣を持ってしまうのは癖だった。
開けるとそこには怪しく笑う男が立っていた。旅館の人ではない。ルーナは警戒した。
「誰ですか?」
「ふーむ」
男───フォーレストは髭を触りながら懐から何かしらペンダントを取り出す。その様子にルーナは剣に手をかける。
「君、性別は?」
「はっ?」
突然の質問。警戒していたわりには変な質問だ。
「女ですが…」
すると、フォーレストはじっとペンダントを見つめる。何の反応もない。
「じゃあ、今年で13になる無性の子供知らない?」
明らかに怪しいフォーレストにルーナはセシルのことを話してはならないと思った。
「知りません」
すると、ペンダントが光り出す。
「嘘はダメだねぇ」
フォーレストはまた懐から何かを出す。今度はピストルだった。
「…っ」
剣とピストル。ルーナは焦った。こいつにセシルを教えてはならない、そう思ってルーナは無言を貫くことにした。
「誰だ、てめぇ」
フォーレストの隣から声が聞こえる。フォーレストと同じようにピストルを構えたジェームズだった。








・人物紹介コーナー

【名前】ルーナ・ウォーレス(Luna=Wallace)
【性別】女性
【年齢】16
【備考】小さい頃からライアンに気があり女を磨こうと料理を始めた。村で生まれて育ったため島から出たことはない。親はある国の剣士だったらしいが引退し島にやってきた。元々引っ込み思案なところがあり誰にでも敬語を使う。セシルとはあまり気が合わない。
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