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無価値と言われた人間の息子が有能過ぎでした

【5】魔王軍VSアルテとビバル

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 『秀光、紅羅真!ジルエドはお前たちの手柄だから次の相手が来たら譲れよ』

『そうよ!次は神竜の子の力を見せてあげるわ!』

『ほいほい』

『秀そろそろ、魔人族の領土の中心部だ。
 恐らく出てくるぞ』

『みたいだよ。アルテ、ビバル宜しくねー』

 予定通りというか、予想通りというか……
 ゾロゾロと魔王軍が出てきた。
 数は1万は下らないだろうか……
 それを見てアルテとビバルは目をキラつかせていた。

『ビバル!あんたは正面突破でしょ?
 私は背後を取る。挟み撃ちで撫で斬りね!』

『うむ、よい作戦だ!では、参ろうか!』

『じゃー俺と、くーは見てるね』

 時間にして3分程度だったろうか。
 アルテが後ろから攻撃をしながら前に進んでくる。
 魔王軍が津波のように押し流されてくる。
 前方からはビバルの槍さばきにより魔人が、どんどん宙に舞う。

『あらら、気の毒に……成す術なしとは正に、こういう事を言うんだろうねー。
 それにしても単調だな……殺気がないんだよなー……やっぱり結論はこれしかないよねー』

【通信】
『秀光です。父さん?
 単刀直入に聞くけどさぁ、これ茶番でしょ?』

『茶番?何の事だ?』

『いや、この下界の任務だよ。
 俺の結論を言っていい?』

『構わんよ』

『斬っても手応えないし、攻撃も単調だし、殺気もない。
 下界の治安はいつもと変わらず平穏無事ではあるけど、度が過ぎる行為をしたものは各種族の神が制裁をしていただけで、実の所、反乱などない』

『ほう、それで?』

『あのさぁ、これ俺たちへの試練とか試験とか、そういう類いの物でしょ?』

『いつ、そう感じたんだ?』

『え?
 下界に降りた瞬間だよ。
 決定打はジルエド。
 だってそんな厄災があるなら、とっくに手を下しているでしょ?
 そもそも、知らない訳ないし……』

『ハッハッハッ正解だ秀光!これはお前たちの就職試験だ。
 アルテもビバルも秀光も合格だ!紅羅真、黙ってて悪かったな』

『構わんよ。
 それに某も秀光と同じ考えだったしな』

『アルテとビバルも、そこにいるか?』

『全員いるよ』

『じゃあ最後の課題を出す!これは、勝つ必要などない。
 というか、絶対勝てないからな。
 レッドフィーア全員で協力して1人の男と対戦する。
 対戦相手は、その時に発表する。
 下界にある闘技場に全員で来い。
 それと、下界の者達よ。
 この瞬間まで全面協力してくれた事に心より感謝する。
 死なせてしまった者は約定通り、この瞬間に蘇生した。
 恩に着る』

 下界の者が一斉に声を発した。
『勿体無きお言葉!全ては英雄神の為に!!』

 圧巻であった。
 いつもの、優しく、適当な神ではなく、紛れもなく世界中の者から慕われる英雄神がそこにはいた。
 秀光が初めて、父としてではなく<英雄神>戸河健太の姿に敬服した瞬間であった。
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