廃屋詛~はいおくそ~

黒駒臣

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終章

前兆

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 もしもし、あたし。今どこにいると思う?
 うふふ。あ・た・しのお店よ。
 えっ? それ何って。忘れたの? ひどいわー。
 カフェよ。念願の。ようやくできたの。明日オープンだから来てね。
 そう。やっとよぉ。あんたが忘れるくらいね。
 なんだかんだで施工が遅れてね、大変だったわ。
 手間暇かかったからねぇ。古民家風カフェだから仕方ないか――
 うんそう。古材集めるのにも手間取ってね。
 工務店の社長さんが他で余った古材があるからってこっちへ回してくれて、これで工事が進むわって喜んでたんだけど。
 その人が急に亡くなって。そうなの。験悪いよねぇ。
 まあ気にせず、別の会社に後引き継いでもらって。
 でもそこもまた不幸事があってね、その次のところも、またその次のところも。
 ってわけで、ぜんぜん工事が前に進まなかったのよ。
 どれだけの工務店が入れ替わったのかしら。何軒目かの社長さんに変なこと気にする人がいて、もうやめませんかって言われたんだけど。カフェはあたしの夢だったじゃない。いまさら引き下がれるかっていうのよ。
 そうでしょ。なんであたしがやめなきゃいけないの。こっちは客よ。そっちがなんとかしろよって。
 まあ、そんなこんなで大変だったけど、やっと完成したってわけ。
 明日来てくれるでしょ?
 ところで、なんかぶつぶつ聞こえてくるけど、あんたテレビつけてる? 
 えっ、つけてない?
 じゃ、なんの声かしら――
 あら。いやだわ。
 ね、ちょっと待っててくれる? 早とちりしたお客さんが入ってきたみたい。

 ねえ、そこの方。まだ開店してないんですよ。明日いらしてくださいな。ちょっと。聞いてらっしゃる?
 ったく、どこから入ってきたのかしら。入口の鍵かけてるはずなのに。
 なに? なんですって?
 そんなところでぶつぶつ言ってても聞こえませんよ。
 とにかく出てってくださいな。
 えっ? なんですって?

          *

 ミナワタシトオナジ――
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