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最終章
背中にはいつも
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「セツカ様……どうかご無事で」
銀髪の少女は、裸足で地面に跪く。
美しき聖女、スレイ。
城の前で、祈りを捧げているのだ。
聖女サリアナによって否定された、願いを委託する行為。
だが、スレイの祈りは自分のためではない。
まぎれもなく、たったひとりの男のため。
愛した人間の勝利を信じる、聖なる祈りだ。
「セツカちゃん。どうかご無事で」
エルフの精霊を束ねる少女、フローラ。
静かに森に佇む。
貰ったものが多すぎて、返すことができない。
だからエルフの長い寿命をかけて返さなければ。
自分の一生を差し出してあの人が助かるのなら、いくらでも差し出すから。
だから無事に戻してください。
フローラは目を瞑り、風の中に彼を感じようとする。
「セツカくん。おねがい、無事でいて」
幼馴染み、ハヤサカ。
空を転移し駆け巡り、星に願う。
ずっとそばで見てきた。
異世界までついてきちゃった。
憧れの人。本物のヒーロー。
ハヤサカは歯をくいしばる。
隣にいたいなんて多くは望まない。
だけど、彼の命を奪う者がいたら絶対に許さない。
絶対に、許さない。許さない。
「セツカ。無事だよね?」
ミリアは平原で雨に打たれ座り込む。
どうして好きになってしまったのだろう。
あんなにひどいことされたのに。
どうして愛してしまったのだろう。
あんなに冷たくしてくるのに。
ああ、知ってるからだ。
本当は心の中がとっても優しいってこと。
誰よりも深い愛情を持っているってこと。
なにもできないのが死ぬほど苦しいよ。セツカ。
頼むから、きっと帰ってくるって約束してね?
●●●
深淵の森は、アラガミとの戦いで吹き飛びクレーターになった。
セツカとレーネ、アラガミはまだ戻らない。
いや、人影がやってくる。
二人だ。
手をつないだ少女の姿が、森の跡地から歩いてきている。
「ご主人様、ご無事でいて……」
「無事でいてくれ。我の永遠のライバルよ」
レーネと、レイブンだ。
なんと二人とも無傷だ。
レイブンは右目が金色に輝き、アラガミのものと酷似している。
レイゼイ=セツカは、アラガミを『殺し』てはいなかった。
妹なのだ。
いや、本当は違う。
多くの間違いを犯した存在、アラガミだ。
だが、彼女はまぎれもなくセツカの妹だった。
妹だから。
スキルの力を使い。
レイブンの体内に、逆にアラガミを封印したのだ。
そしてこの残酷な世界の仕組みを終わらせるため、協力を要請した。
セツカが絶対神と戦っている間、世界の維持、防衛を任せたのだ。
あのとき。
あえて二人きりになったセツカとアラガミは。
絶対神に気づかれないように、固い兄妹の絆を確認し、一緒に戦うことに決めた。
セツカとアラガミ、そしてレーネは協力し、絶対神を騙すため決闘を演じたのだ。
セツナを殺したアラガミを、セツカは許したのだ。
それはアラガミにとって衝撃だった。
何故だろうか。アラガミは自分でもわからなかった。
許されるとは考えていなかった。最初から。
あきらめていた。だから、こんなにいつも悲しかったのだ。
だから、セツカが受け入れてくれたとき。
アラガミは、初めて生きているんだと実感できた。
私は生きている。だから、償わなければ。
(ありがとう、おにいちゃん。無事でいて)
レーネとレイブンの祈りは、世界に広がり満たしていく。
壊されたはずの空間は破壊と誕生によって満たされ、元に戻され修復される。
時間にしてそれは刹那の間しか持たない能力だ。
だが。
その刹那だけのチャンスがあれば、きっとセツカならやってくれる。
セツカなら。
セツカならきっと。
世界中がセツカのために祈る。
人間に戦争を仕掛けていた、機械族の戦士たちでさえも。
「セツカ殿、無事でいてくれ」
「セツカ様、ご無事でー」
「セツカくん」
「セツカ」
「セツカ様」
「セツカたのむ」
「セツカ」
「セツカまかせた」
「セツカ……」
「セツカいけっ」
「がんばれ」
「がんばれセツカ」
「まけるな」
「まけるなセツカ!」
「勝てっ」
「勝ってくれセツカ」
「お願い。勝って、帰ってきてくれ。セツカ!!」
祈りが力を持ち始める。
レーネの中に残るシロガミの力によって増幅され。
アラガミによって束ねられた人々の意思は世界の崩壊を一瞬だけ遅れさせた。
セツカの背中には、いつでも彼女たちがいる。
背中を守って貰えるから、安心して戦える。
銀髪の少女は、裸足で地面に跪く。
美しき聖女、スレイ。
城の前で、祈りを捧げているのだ。
聖女サリアナによって否定された、願いを委託する行為。
だが、スレイの祈りは自分のためではない。
まぎれもなく、たったひとりの男のため。
愛した人間の勝利を信じる、聖なる祈りだ。
「セツカちゃん。どうかご無事で」
エルフの精霊を束ねる少女、フローラ。
静かに森に佇む。
貰ったものが多すぎて、返すことができない。
だからエルフの長い寿命をかけて返さなければ。
自分の一生を差し出してあの人が助かるのなら、いくらでも差し出すから。
だから無事に戻してください。
フローラは目を瞑り、風の中に彼を感じようとする。
「セツカくん。おねがい、無事でいて」
幼馴染み、ハヤサカ。
空を転移し駆け巡り、星に願う。
ずっとそばで見てきた。
異世界までついてきちゃった。
憧れの人。本物のヒーロー。
ハヤサカは歯をくいしばる。
隣にいたいなんて多くは望まない。
だけど、彼の命を奪う者がいたら絶対に許さない。
絶対に、許さない。許さない。
「セツカ。無事だよね?」
ミリアは平原で雨に打たれ座り込む。
どうして好きになってしまったのだろう。
あんなにひどいことされたのに。
どうして愛してしまったのだろう。
あんなに冷たくしてくるのに。
ああ、知ってるからだ。
本当は心の中がとっても優しいってこと。
誰よりも深い愛情を持っているってこと。
なにもできないのが死ぬほど苦しいよ。セツカ。
頼むから、きっと帰ってくるって約束してね?
●●●
深淵の森は、アラガミとの戦いで吹き飛びクレーターになった。
セツカとレーネ、アラガミはまだ戻らない。
いや、人影がやってくる。
二人だ。
手をつないだ少女の姿が、森の跡地から歩いてきている。
「ご主人様、ご無事でいて……」
「無事でいてくれ。我の永遠のライバルよ」
レーネと、レイブンだ。
なんと二人とも無傷だ。
レイブンは右目が金色に輝き、アラガミのものと酷似している。
レイゼイ=セツカは、アラガミを『殺し』てはいなかった。
妹なのだ。
いや、本当は違う。
多くの間違いを犯した存在、アラガミだ。
だが、彼女はまぎれもなくセツカの妹だった。
妹だから。
スキルの力を使い。
レイブンの体内に、逆にアラガミを封印したのだ。
そしてこの残酷な世界の仕組みを終わらせるため、協力を要請した。
セツカが絶対神と戦っている間、世界の維持、防衛を任せたのだ。
あのとき。
あえて二人きりになったセツカとアラガミは。
絶対神に気づかれないように、固い兄妹の絆を確認し、一緒に戦うことに決めた。
セツカとアラガミ、そしてレーネは協力し、絶対神を騙すため決闘を演じたのだ。
セツナを殺したアラガミを、セツカは許したのだ。
それはアラガミにとって衝撃だった。
何故だろうか。アラガミは自分でもわからなかった。
許されるとは考えていなかった。最初から。
あきらめていた。だから、こんなにいつも悲しかったのだ。
だから、セツカが受け入れてくれたとき。
アラガミは、初めて生きているんだと実感できた。
私は生きている。だから、償わなければ。
(ありがとう、おにいちゃん。無事でいて)
レーネとレイブンの祈りは、世界に広がり満たしていく。
壊されたはずの空間は破壊と誕生によって満たされ、元に戻され修復される。
時間にしてそれは刹那の間しか持たない能力だ。
だが。
その刹那だけのチャンスがあれば、きっとセツカならやってくれる。
セツカなら。
セツカならきっと。
世界中がセツカのために祈る。
人間に戦争を仕掛けていた、機械族の戦士たちでさえも。
「セツカ殿、無事でいてくれ」
「セツカ様、ご無事でー」
「セツカくん」
「セツカ」
「セツカ様」
「セツカたのむ」
「セツカ」
「セツカまかせた」
「セツカ……」
「セツカいけっ」
「がんばれ」
「がんばれセツカ」
「まけるな」
「まけるなセツカ!」
「勝てっ」
「勝ってくれセツカ」
「お願い。勝って、帰ってきてくれ。セツカ!!」
祈りが力を持ち始める。
レーネの中に残るシロガミの力によって増幅され。
アラガミによって束ねられた人々の意思は世界の崩壊を一瞬だけ遅れさせた。
セツカの背中には、いつでも彼女たちがいる。
背中を守って貰えるから、安心して戦える。
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