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二章
コード・セツナ
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立ち上がった俺の姿を見て、表情が固まるニイミ。
俺は奴をしっかりと見据える。奴は早口にまくしたて始める。
俺たちの担任はこんなに小さな奴だったっけ?
「おいおい立てんのかよ!? そいつは素直に驚きだ。先生びっくりしちゃったよ。はっきりいってマジで殴ったからな。生徒をマジ殴りするの気持ちいいぜー。で。立ったところでセツカ、お前の体力はウサギ小屋のウサギ以下で、妹を見殺しにした事実は変わらないぞ?」
「…………」
「最初にお前の能力は封じている。俺の能力『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』なら言うことをきかない生徒は全員言いなりさ。俺に評価を下げられたくなかったらしっかり従え。面倒を起こすな。イジメは俺のクラスでは起きていない。存在しない。そういう報告を上にしなきゃいけないんだよ。わかれよ小僧。大人は大変なの。お前らのせいで俺の給料が下がったらどうすんだ? あ? セツカ、お前は本当にぶっ殺してやりたい奴だよ。俺はイシイの親に金と権力をもらえて、JKと仲良くなれればそれでよかったのによー」
「…………」
好き勝手言ってくれるじゃないか。
俺は無言で足に力を込める。
手にも足にも力が入らない。
そのくせ殴られた場所はじんじんと痛む。
「なんか言えよ? 俺の特別授業だっつーの。世の中そんなにうまくいかねーってことをクラスのバカどもにじっくりねっとり教えこまなきゃいけないからな。あっちの世界みたいに邪魔してんじゃないぞ?」
「滑稽だな」
「は? ……なにが? ボコボコにされているセツカ、お前がか?」
「いや。結局のところお前は矛盾してるんだよ。子供みたいに、『悪いことするのはやめなさい』って言われるのを待ってるんだろ? その力を使えばよそでいくらでも悪事をはたらき、いい思いはできる。なのに、関わりを絶てばいい俺たちにわざわざ絡んで、そうやって恥をさらすのは教師の理想を叶えられなかった自分に耐えきれなかったからだろ?」
「は? おい高校生のクソガキのくせして、大人に説教かます気か? ふざけ、ん、んなわけねー」
「こっちじゃ俺だって高校生じゃない。身分はおろか命すら保証されていない。お前と俺は対等だ。だから言わせてもらう。お前はいい先生になれなかった。いい人間にはなれなかった。その鬱憤を俺たちで晴らそうとするな!!」
「こ、この……ぶっ殺すぞ? お前は今、その辺に落ちている棒切れより弱いんだからな!!」
「やってみろよ」
ニイミを睨み付け宣言する。
知ってるのかニイミ。
あの荒廃していたクラスメイトたちが、協力してことにあたれるまで回復したんだぞ?
今回の件をお前はどう思う。危機に対し団結できる彼らの姿を見てもまだお前は絶望しているのか?
……殺されない。
なんというか、ハッタリではなく、気迫ともちがう感情が俺の中にある。
覚悟。
いや、信念だ。
奴の言う通り俺は棒切れなんだろう。だが、その棒切れをお前は折ることができるのか?
ヘタレたその考え方で、甘えた理屈でセツカという一本の棒を半分にできるのか?
今、俺のスキルは発動できない。
だがニイミの言う『ぶっ殺す』に『殺され』るとはどうしても思えないのだ。
こんな奴に負けたら、セツナに怒られちゃうから。
ニイミは憎々しげに歯をくいしばる。
「て……めえ」
「お前を殺す。お前の負の感情の連鎖は俺が止める。覚悟はいいかニイミ」
「やっぱり、セツカ。お前が一番嫌いな生徒だ。消さねばならんな」
「いくぞ」
走る。
算段はついている。
ニイミの能力は強力だが、必ず弱点があるはずだ。
これまで相対してきて、少し気になった点がある。それは、奴の視線だ。
奴はこれまで、俺たちの姿全てを『視界』に入れるように位置どりをしている。
ハヤサカが上空から攻撃を仕掛けたとき、若干無理のある体勢で後ろに跳んだのが気になったのだ。
奴のスキルは見えている敵にしか発動できない可能性が高い。
俺は弧を描くようにして走り、ニイミの元へと近づく。
こうすれば奴の視線上から外れて……。
「おっおー!? 気づいたのかセツカ!? やっぱ成績優秀者は違うな? じゃあごほうびに内申点を下げておくぞ?」
ズシンと身体に衝撃。
まるで大量のつけもの石にのしかかられたような感覚だ。
こんなに能力を下げられては、走ることすらままならない。
「さっき殴ったダメージは、今の耐久なら大したことないみたいだな。んじゃ、もっと下げたらどうなる?」
ドクン!
まるで身体から発せられる警報のオンパレード。
殴られた顔面の激痛が数倍に増し、冷や汗が背中を伝う。
命の危険が迫る気配。
そんなものはどうでもいい。
臆する心を殺し、俺は足を少しでも前へと差し出す。
一歩でも前へ。
「ほぉーう。これほどステータス下げても倒れないか。じゃ、俺が少し後ろに下がろうかな」
ニイミは距離をとってしまった。
しまった。これでは。
「おおかた、あっちのサエキらクラスメイトや、剣とか槍持った物騒な奴等を俺のスキルの範囲外にして攻撃させようと考えていたんだろ? 残念でした。そんな手に引っ掛かるかよ」
「……」
「ほぉーら。残念でちゅね。ミリアちゃん見てみな、セツカが失敗しましたよー」
顎を掴まれ、強引にこちらを向かされるミリア。
……泣くな。必ず助ける。
俺は足を動かす。
動かす。
動かす、動かす動かす動かす!!
「お、おい。真っ正面から来ても無駄だぞ? なにせ今のお前は並の人間からすれば100分の1程度のステータスだ。俺の通信簿ではそうなっているんだ。頭がおかしくなったのかセツカ?」
「ごちゃごちゃとうるさい」
「…………!? せ、せんぶんのいち。1000分の1に変更だセツカぁぁっ!! てめえなんか大した奴じゃない!! 俺は……俺は自由に生きていくんだよ。いいじゃないか。イシイの家が悪いんだ。大事なのは自分の利益だ。そうだろ? まず自分が最初に幸せになって、それからじゃないか。みんなやってるのに、どうして俺だけの邪魔をするんだよ!!」
「黙れ!!!」
拳を握り、思いっきり振り抜く。
ニイミの顔へクリーンヒット。
しかしニイミの頬に当たった俺の拳は、ボキリと嫌な音をたて砕ける。
ニヤと笑みを浮かべるニイミ。
「カルシウム足りてないみたいでちゅねー。ボッキボキにしてやるよ」
思ったようにダメージが入らない!?
『殺す』スキルが発動しない。恐らく、奴のスキルの影響を受けてしまったからだ。
こんなところで負けるわけにはいかない。しかし。
ニイミが勝ち誇り、俺の腕をつかんで砕こうとした瞬間。
■――コード・セツナ『殺す』スキル
頭の中に点滅する文字列が浮かんできた。
発動できなくなったはずの『殺す』スキルなのか?
いや、少し違う?
■――コード・セツナ;了承・実行開始
■――『殺す』スキル;復元完了
■――『殺す』スキルにコード『セツナ』を最適化しますか?
■――自動最適化……………完了。
■――コード・セツナの実行に伴いアラガミのスクリーミングを開始します…………終了
■――アラガミの始動を確認。レメゲトン800による自動迎撃を開始します。
■――■
刹那。
生きていくこととは、刹那の瞬間を殺し続けていくことに他ならない。
死んでいった過去たちは記憶として残るが不完全で、あたかもそこにあるような体をとるくせにすでにこの世には存在しない。
死んでしまったセツナを思い出すことしかできないのなら。
せめて決して忘れないようにここに記す。
コード・セツナ開発者§‰○×―¶…………■
……。
■――『殺す』スキル再始動……『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』の精神影響によるスキル使用不可状態から自動復帰。
■――コード・セツナ履行。『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』の影響をキャンセル。
■――『殺す』スキル制限解除。同時発動制限、量的、質的発動上限の大幅向上を確認。
■――ダメージコントロール……完了。受けたダメージを殺します。
■――ダメージコントロールその2……完了。レーネ、ミリア両名のダメージを殺します。
■――コード・セツナ発動。
■――眼前の敵を『殺し』ます。
「んぎぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!?!?」
ふと気がついたらニイミが情けない悲鳴をあげ叫んでいた。
ニイミの拳が砕けている!?
俺が奴の頬を殴って、俺の拳が砕けたはずなのにどうしてか奴の拳の骨が粉々になっていた。
コード・セツナの能力の一端か?
「セツカぁああああ!! お前がやったのかぁあああ!? いっでぇえええっ!?!? 先生に向かって、お前っ」
「生徒を『通信簿』だけで判断しないでもらいたい。俺たちだって一個の人間だ」
「うるせえええええ!! お前らは人生これからかも知れねーけどな、俺の人生は決まりきった監獄の中なんだよ!! お前ら道連れだよ。いい学校に進学? 夢? 希望? ふざけんなボケ。イジメ最高!! 淫行最高!! 俺にみじめな思いさせるクソ高校生ども、てめえらは全員どす黒い社会のブラックホールの中に引き込んでやるからな!!」
「救いがたい」
「黙れよバーカ。俺のスキルは生徒どもに使うのが本領じゃねえー。『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』俺自身の能力を100倍に……いや、一万倍だ!! 確実にセツカをくびり殺す」
ニイミがそう宣言した瞬間。
ボッ!!!
奴の肉体が膨れ上がった。
イメージするなら、巨大なオーク。最初に出会ったあいつのような姿。
くたびれた茶スーツやネクタイが弾けとび、情けない中年太りの姿は巨大化し。
メキメキと砕けていた拳は修復された。
そして怪獣映画のように俺を見下ろす。
「小さく見えるぜセツカぁ。しっかり先生を見上げて敬いなさい。はぁーっはっは」
「やりやすくなった。見た目がモンスターだ」
「ん? なにか言ったか羽虫。お前の能力を一万分の一にしたから、俺のパンチで宇宙まで吹っ飛ばせるぞセツカ? よかったな。担任である俺からの最後のプレゼントは宇宙旅行だ」
「……」
■――『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』からの影響を『殺し』ました。
ニイミは巨大化した拳を振りかぶる。
殺意のこもった瞳で俺を睨みつけ、降り下ろす。
「死ねや!! おらぁああああああっ!!」
「さよなら、俺たちの元担任。通信簿の評価だけが全てじゃない。そんなものは俺たちを表現するたった一部なんだ」
片手で受け止める。
ニイミの放った恐ろしい威力の拳は、衝撃伝播を『殺し』ていた俺の体に当たった瞬間にニイミ自身の体へと威力がすべて跳ね返る。
一万倍と不自然にステータスを上昇させていたニイミの攻撃の破壊力は物理学的に恐るべきものだった。
あっと言う隙間もなかった。
TNT火薬2から3メガトン分ほどの爆発衝撃力を伴い、俺たちの担任は身体の内側からはじけ飛んで消滅した。
俺は奴をしっかりと見据える。奴は早口にまくしたて始める。
俺たちの担任はこんなに小さな奴だったっけ?
「おいおい立てんのかよ!? そいつは素直に驚きだ。先生びっくりしちゃったよ。はっきりいってマジで殴ったからな。生徒をマジ殴りするの気持ちいいぜー。で。立ったところでセツカ、お前の体力はウサギ小屋のウサギ以下で、妹を見殺しにした事実は変わらないぞ?」
「…………」
「最初にお前の能力は封じている。俺の能力『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』なら言うことをきかない生徒は全員言いなりさ。俺に評価を下げられたくなかったらしっかり従え。面倒を起こすな。イジメは俺のクラスでは起きていない。存在しない。そういう報告を上にしなきゃいけないんだよ。わかれよ小僧。大人は大変なの。お前らのせいで俺の給料が下がったらどうすんだ? あ? セツカ、お前は本当にぶっ殺してやりたい奴だよ。俺はイシイの親に金と権力をもらえて、JKと仲良くなれればそれでよかったのによー」
「…………」
好き勝手言ってくれるじゃないか。
俺は無言で足に力を込める。
手にも足にも力が入らない。
そのくせ殴られた場所はじんじんと痛む。
「なんか言えよ? 俺の特別授業だっつーの。世の中そんなにうまくいかねーってことをクラスのバカどもにじっくりねっとり教えこまなきゃいけないからな。あっちの世界みたいに邪魔してんじゃないぞ?」
「滑稽だな」
「は? ……なにが? ボコボコにされているセツカ、お前がか?」
「いや。結局のところお前は矛盾してるんだよ。子供みたいに、『悪いことするのはやめなさい』って言われるのを待ってるんだろ? その力を使えばよそでいくらでも悪事をはたらき、いい思いはできる。なのに、関わりを絶てばいい俺たちにわざわざ絡んで、そうやって恥をさらすのは教師の理想を叶えられなかった自分に耐えきれなかったからだろ?」
「は? おい高校生のクソガキのくせして、大人に説教かます気か? ふざけ、ん、んなわけねー」
「こっちじゃ俺だって高校生じゃない。身分はおろか命すら保証されていない。お前と俺は対等だ。だから言わせてもらう。お前はいい先生になれなかった。いい人間にはなれなかった。その鬱憤を俺たちで晴らそうとするな!!」
「こ、この……ぶっ殺すぞ? お前は今、その辺に落ちている棒切れより弱いんだからな!!」
「やってみろよ」
ニイミを睨み付け宣言する。
知ってるのかニイミ。
あの荒廃していたクラスメイトたちが、協力してことにあたれるまで回復したんだぞ?
今回の件をお前はどう思う。危機に対し団結できる彼らの姿を見てもまだお前は絶望しているのか?
……殺されない。
なんというか、ハッタリではなく、気迫ともちがう感情が俺の中にある。
覚悟。
いや、信念だ。
奴の言う通り俺は棒切れなんだろう。だが、その棒切れをお前は折ることができるのか?
ヘタレたその考え方で、甘えた理屈でセツカという一本の棒を半分にできるのか?
今、俺のスキルは発動できない。
だがニイミの言う『ぶっ殺す』に『殺され』るとはどうしても思えないのだ。
こんな奴に負けたら、セツナに怒られちゃうから。
ニイミは憎々しげに歯をくいしばる。
「て……めえ」
「お前を殺す。お前の負の感情の連鎖は俺が止める。覚悟はいいかニイミ」
「やっぱり、セツカ。お前が一番嫌いな生徒だ。消さねばならんな」
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ニイミの能力は強力だが、必ず弱点があるはずだ。
これまで相対してきて、少し気になった点がある。それは、奴の視線だ。
奴はこれまで、俺たちの姿全てを『視界』に入れるように位置どりをしている。
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奴のスキルは見えている敵にしか発動できない可能性が高い。
俺は弧を描くようにして走り、ニイミの元へと近づく。
こうすれば奴の視線上から外れて……。
「おっおー!? 気づいたのかセツカ!? やっぱ成績優秀者は違うな? じゃあごほうびに内申点を下げておくぞ?」
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命の危険が迫る気配。
そんなものはどうでもいい。
臆する心を殺し、俺は足を少しでも前へと差し出す。
一歩でも前へ。
「ほぉーう。これほどステータス下げても倒れないか。じゃ、俺が少し後ろに下がろうかな」
ニイミは距離をとってしまった。
しまった。これでは。
「おおかた、あっちのサエキらクラスメイトや、剣とか槍持った物騒な奴等を俺のスキルの範囲外にして攻撃させようと考えていたんだろ? 残念でした。そんな手に引っ掛かるかよ」
「……」
「ほぉーら。残念でちゅね。ミリアちゃん見てみな、セツカが失敗しましたよー」
顎を掴まれ、強引にこちらを向かされるミリア。
……泣くな。必ず助ける。
俺は足を動かす。
動かす。
動かす、動かす動かす動かす!!
「お、おい。真っ正面から来ても無駄だぞ? なにせ今のお前は並の人間からすれば100分の1程度のステータスだ。俺の通信簿ではそうなっているんだ。頭がおかしくなったのかセツカ?」
「ごちゃごちゃとうるさい」
「…………!? せ、せんぶんのいち。1000分の1に変更だセツカぁぁっ!! てめえなんか大した奴じゃない!! 俺は……俺は自由に生きていくんだよ。いいじゃないか。イシイの家が悪いんだ。大事なのは自分の利益だ。そうだろ? まず自分が最初に幸せになって、それからじゃないか。みんなやってるのに、どうして俺だけの邪魔をするんだよ!!」
「黙れ!!!」
拳を握り、思いっきり振り抜く。
ニイミの顔へクリーンヒット。
しかしニイミの頬に当たった俺の拳は、ボキリと嫌な音をたて砕ける。
ニヤと笑みを浮かべるニイミ。
「カルシウム足りてないみたいでちゅねー。ボッキボキにしてやるよ」
思ったようにダメージが入らない!?
『殺す』スキルが発動しない。恐らく、奴のスキルの影響を受けてしまったからだ。
こんなところで負けるわけにはいかない。しかし。
ニイミが勝ち誇り、俺の腕をつかんで砕こうとした瞬間。
■――コード・セツナ『殺す』スキル
頭の中に点滅する文字列が浮かんできた。
発動できなくなったはずの『殺す』スキルなのか?
いや、少し違う?
■――コード・セツナ;了承・実行開始
■――『殺す』スキル;復元完了
■――『殺す』スキルにコード『セツナ』を最適化しますか?
■――自動最適化……………完了。
■――コード・セツナの実行に伴いアラガミのスクリーミングを開始します…………終了
■――アラガミの始動を確認。レメゲトン800による自動迎撃を開始します。
■――■
刹那。
生きていくこととは、刹那の瞬間を殺し続けていくことに他ならない。
死んでいった過去たちは記憶として残るが不完全で、あたかもそこにあるような体をとるくせにすでにこの世には存在しない。
死んでしまったセツナを思い出すことしかできないのなら。
せめて決して忘れないようにここに記す。
コード・セツナ開発者§‰○×―¶…………■
……。
■――『殺す』スキル再始動……『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』の精神影響によるスキル使用不可状態から自動復帰。
■――コード・セツナ履行。『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』の影響をキャンセル。
■――『殺す』スキル制限解除。同時発動制限、量的、質的発動上限の大幅向上を確認。
■――ダメージコントロール……完了。受けたダメージを殺します。
■――ダメージコントロールその2……完了。レーネ、ミリア両名のダメージを殺します。
■――コード・セツナ発動。
■――眼前の敵を『殺し』ます。
「んぎぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!?!?」
ふと気がついたらニイミが情けない悲鳴をあげ叫んでいた。
ニイミの拳が砕けている!?
俺が奴の頬を殴って、俺の拳が砕けたはずなのにどうしてか奴の拳の骨が粉々になっていた。
コード・セツナの能力の一端か?
「セツカぁああああ!! お前がやったのかぁあああ!? いっでぇえええっ!?!? 先生に向かって、お前っ」
「生徒を『通信簿』だけで判断しないでもらいたい。俺たちだって一個の人間だ」
「うるせえええええ!! お前らは人生これからかも知れねーけどな、俺の人生は決まりきった監獄の中なんだよ!! お前ら道連れだよ。いい学校に進学? 夢? 希望? ふざけんなボケ。イジメ最高!! 淫行最高!! 俺にみじめな思いさせるクソ高校生ども、てめえらは全員どす黒い社会のブラックホールの中に引き込んでやるからな!!」
「救いがたい」
「黙れよバーカ。俺のスキルは生徒どもに使うのが本領じゃねえー。『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』俺自身の能力を100倍に……いや、一万倍だ!! 確実にセツカをくびり殺す」
ニイミがそう宣言した瞬間。
ボッ!!!
奴の肉体が膨れ上がった。
イメージするなら、巨大なオーク。最初に出会ったあいつのような姿。
くたびれた茶スーツやネクタイが弾けとび、情けない中年太りの姿は巨大化し。
メキメキと砕けていた拳は修復された。
そして怪獣映画のように俺を見下ろす。
「小さく見えるぜセツカぁ。しっかり先生を見上げて敬いなさい。はぁーっはっは」
「やりやすくなった。見た目がモンスターだ」
「ん? なにか言ったか羽虫。お前の能力を一万分の一にしたから、俺のパンチで宇宙まで吹っ飛ばせるぞセツカ? よかったな。担任である俺からの最後のプレゼントは宇宙旅行だ」
「……」
■――『通信簿変更(パラメータ・チェンジ)』からの影響を『殺し』ました。
ニイミは巨大化した拳を振りかぶる。
殺意のこもった瞳で俺を睨みつけ、降り下ろす。
「死ねや!! おらぁああああああっ!!」
「さよなら、俺たちの元担任。通信簿の評価だけが全てじゃない。そんなものは俺たちを表現するたった一部なんだ」
片手で受け止める。
ニイミの放った恐ろしい威力の拳は、衝撃伝播を『殺し』ていた俺の体に当たった瞬間にニイミ自身の体へと威力がすべて跳ね返る。
一万倍と不自然にステータスを上昇させていたニイミの攻撃の破壊力は物理学的に恐るべきものだった。
あっと言う隙間もなかった。
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途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
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◇ ◇ ◇
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しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
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