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一章
遺跡ダンジョンを×そう!その4
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遺跡ダンジョン10層。教会を袋から取り出す。
まるで手品のように小さな袋から家屋が飛び出してくる様はファンタジー。
さて、教会の中へと入り、リビングの明かりを灯す。
キッチンへ向かうと、女の子たちが丁度いいタイミングで起き出してきた。
みんな可愛らしい寝癖までつけて、まったくお子様だな。
「おはようございますご主人様~。なんだか、家の中にご主人様の暖かさを感じる気がしておきちゃいました。えへへ!」
「セツカ様、おはようございます!! 寂しかったですよ。昨日は三人でくっついて眠りました。抱き締めてください~」
「おはようございますですぅ。セツカちゃんがいないと寝つきが悪くて困りますぅ。昨日はふーちゃんを待ちぼうけさせて何してたですかセツカちゃん~」
「おはようみんな。顔を洗ったら席について待っていて」
キッチンで作業しながら声をかける。
するとキッチンのテーブルに座っていたミリアが皆に声をかけた。
「おはよ。みんな寝癖までつけて可愛いねぇ。昨日はゆっくり寝れた?」
固まる女の子たち。
ミリアの顔を見るなり、三人は俺のところにドタドタと駆け寄ってきて。
「どういうことですご主人様!? なんでミリアさんがここにいるんですか? もしかして昨日は一晩中いっしょに?」
「ありえないですよセツカ様!! ミリア様と二人っきりになられたのですか!? どうして!!」
「悲しいですぅ。ふーちゃんたちを差し置いて、あの方とそういう流れは絶対に阻止せねばいけないのですぅ」
などと問いつめられたのである。
ごめんみんな、それ、俺が一番聞きたいんだ。
ミリア、どうしてお前はここにいるんだ。しかも、さも昔から住んでいたかのように図々しく。
鼻歌まで歌いながら俺と女の子たちの掛け合いをニコニコ眺めているのは何故なんだぜ?
とにかく、顔を洗ったら朝食にしよう。
■――野菜の細胞壁を『殺し』ます。
これで煮込み時間の大幅短縮が可能だ。
香草、ダンジョンで消える前に採集したもちもち兎の肉、にんじんのような野菜など、適当に切ったものを煮込む。
もちもち兎の肉は鶏肉に近いが、名前の通りもちもちした食感が特徴だ。
ゴブリンとかの餌になる雑魚モンスターだが、味はまあまあいい。
こいつらをあわせ、ブイヨンをつくる。
■――たまねぎの辛味を『殺し』ます。
えぐみの元の成分を殺してやれば、まろやかさが勝る最高のスープになる。
たまねぎを0.1mm厚までスライスし、子供たちの口に入ったときにとろけるように演出する。
彼女たちは野菜全般が苦手なのだがこうやって出せば知らないうちに食べられるようになるだろう。
香草を細かくしたものを散らし、香辛料と塩で味付けを整えて完成だ。
もちもち兎のコンソメスープである。
「あたしも作ってきたの。S級冒険者特製バゲットサンドよ!! せっかくだし、みんなで食べましょう?」
ミリアが作ってきたバゲットサンドもなかなかのものだ。
魔法効果が施された皮袋から取り出されたバゲットサンドは、まるで今ここで完成させたかのような新鮮さを感じた。そして挟んであるものも、安定の葉物とソーセージのようなものから、見たことのないような色調の木の実や肉質の異世界食材など多種多様だ。
自分で言ってはいたが、本当に料理はできるらしいな。すこしだけ見直すぞ。
0.1mmぐらいだけどな。
女の子たちは俺のつくったスープに口をつけた。
「はふはふ、おいひい!! ご主人様のつくったスープおいしいです!! もっとたくさんたまねぎたべたい!!」
「なんというまろやかな甘みでしょうか。これは、たまねぎなのですか!? た、たべてしまえる。子供の敵たまねぎを美味しくて口に入れてしまいます~セツカ様おいしいです!!」
「はうう、精霊神はたまねぎなんて食べないですぅ。たまねぎ食べると死にますぅ。邪神の食べ物ですたまねぎなんか無理ですぅ……あの、二人ともそんなに食べるですか? じゃあちょっとだけ。はむ。はむはむ!? うまっ!? ええっ!? うまっ。うま、うまいですぅ!!」
みんな大げさだな。
一心不乱に皿をすくうので、すぐにお代わりが必要になるみたいだ。
ミリアは目を閉じ、まるで料理対決の審査員のように偉そうに講釈をたれ始める。
「おいしい。体に染み渡るような優しい味だけど、しっかりともちもち兎の癖になる味が出ているわ。長い時間をかけて野菜から味を引き出さないとこうはいかないわね。私のためにそんなに時間をかけて準備をしてくれるなんて、ほんとうに素直じゃないんだから。ま、まあまあ美味しいじゃないセツカ。これだったら毎日でも食べたくなる味ね。お代わりを貰ってもいいかしら?」
「もうないぞミリア」
「アハハハァン!! そんなぁー!?」
思ったより人気だったからな。残念だったな。
時間は掛かってないスキルを使った10分クッキングだが、子供たちには大好評だった。
ちなみにミリアのお弁当も絶品だった。くやしいが。
おそらく討伐したモンスターで美味しい素材を使って料理し、バゲットに挟んだのだろう。
さすがはS級冒険者ということか。一応ミリアに礼を言っとくか。
「美味しかったぞ。まあ、ありがとな。子供たちも喜んでいた」
「あ、こ、こ、こちらこそ食べてくれてあ、あ、ありがとっ!!」
なんだあいつは。
急にそっぽを向いて顔を抑え足をばたばたさせている。
どうしたんだろう。中二病でも発症したのだろうか?
朝食を食べ終えた俺たちは、再びダンジョンの中へと戻ることにした。
今度はレーネ、スレイ、フローラも一緒にダンジョンを攻略していく。
「みんな、ここは10層だ。あと40層もあるからサクサク行こうと思う。残酷なこともあるかもだけど、この世界はけっこうシビアだ。君たちの方が覚悟できてそうだね」
「はい!! ご主人様のために敵をほうむります!! はやく敵こないかな?」
「承知しております。スレイの敵はセツカ様の敵です!! セツカ様の敵に生存権はありません!!」
「ふーちゃん、セツカちゃんの目の前に立ちはだかるなら何人たりとも粉砕してあげますですぅ!!」
「……うん。ちょっと俺は不安だな」
彼女たちは覚悟がガンギマリ状態だ。
ミリアですら若干引いているじゃないか。
「ねえセツカ。あんたいったいあの子たちにどういう教育してるわけ?」
「普通の教育だ。何も問題ない」
「ありゃ戦士の目だよセツカ。いったい誰があの子たちのやる気をそんなに引き出させてるんだか」
と言って俺をジト目で見つめるミリア。
みないでくれ。俺にもわからん。
キャッキャと飛びはねながらやる気を露にしている三人は、ダンジョンが怖いとかそういう感情は全くない様子であった。
15階層。
「やあっ、とうっ!! 光輝拳!! ひぃぃぃぃとえんどぉ!!」
真っ赤に光ったレーネの拳で、オーガゴブリンの巨大な身体が爆散した。
もう突き立てられたら終わりである。
レーネは身体も小さいし、獣人の能力をフルに生かした機動力で動き回りすばしっこいので、いつの間にか大型のモンスターの背後からその手刀を突き刺しているのだ。
そうすると風船が破裂するようにどんな強力なモンスターも死滅した。
「は、ははは……ねえセツカ。あたしゆめを見てるのかな? たぶんだけど、あの子レッドアイズの、うちのパーティの拳闘士より強いよ!? もしかしたら……いや、まだわからないわ」
ミリアはレーネの大活躍に顔を引きつらせていた。俺も最初はビビッた。
どんどん先に進もう。
20階層。
「邪王円殺白竜破!! 家の都合で……私には毒物が効かないんですよね。魔眼を守るために、生まれたときから毒には慣らされているんです」
スレイはヴァイオスパイダーの毒糸を受けてもまったく意に介さず、そのまま強引に白い蛇の魔法で巨大なクモの魔物を葬った。
ぷちっと潰れた巨大クモの粘液を浴び、スレイは頬を染めながら「まだまだですね」と微笑んでいる。
溶けてる。装備が溶けるほどの毒だけど、スレイの身体は大丈夫みたいだ。
「あの、セツカ。私の目が正しければ、あの子致死性の毒を浴びて普通にピンピンしてるんだけど。たぶんウチの死んだ呪術師が『あれ喰らったら即死だへっへーあたらなければどうということはない』……とかふざけてたらホントに死んだときの毒なんだけど?」
ドン引きするミリア。
大丈夫。俺もこんなスレイ知らない。
25階層。
「風を司る精霊神フローラが命ずる。『真空命題(アストラタクト)・虚無(セロ)』!!」
25階層でフローラが本気を出した。
俺たちの周囲だけ風のシールドでかこみ、ダンジョン内を全て真空にするという暴挙に出たのだ。
意気揚々とこちらに攻め込もうとしていたミノタウルス=オメガは圧力がなくなったことにより内側から破裂した。
見えないところでも魔物たちが死んでいく気配がする。
真空なので悲鳴すら聞こえない。
「えへっ。ふーちゃんがんばっちゃった!!」
こてん。と額を叩き舌を出してみせるフローラ。
一方俺はミリアに肩をつかまれ揺さぶられていた。
「ミノタウルス=オメガってA級討伐対象なんですけど!? 私でも一撃じゃ倒せない魔物なんですけど!? なんか階層ごと倒しちゃいました!? 皆殺しちゃいました!? この子おかしくない!? ねえ、ぜったいおかしいよ!!」
「そうか?」
だってこの子精霊神ですし。
しかしどう考えても能力が上がりすぎな気がするな。これ、ステータスの限界殺してるよなぁ。
はあ、みんな強くなりすぎだ。スキル、勝手に彼女たちを育てすぎだよ。
■――自重を『殺し』ています。
あ、そうですか。
30階層。
■――サンド=ワイバーンを『殺し』ます。実行。
キシャアアアアァ……。
なんか鳴き声がうるさい蛇がいたので倒しておいた。
30層までやってきたけど、ここまで来るとさすがに巨大なモンスターばかりが目立つようになるな。
「おいおいおいっ!? セツカ、あなたが一番オカシイよ!? 今倒したのって、亜竜のワイバーンじゃん!? S級討伐対象が近づく前にひっくり返されてるんだけど!? おかしいよね!? あいつ冒険者イーターって呼ばれてるんだよ!? 油断したぺーぺーがみんなあいつに殺されるんだよ!? そんなのをころって転がすのって普通じゃないよね!?」
「ん、別に普通だが?」
スキルの効果だ。子供たちの成長に驚きはしたが、俺の力に特に不思議はない。
ミリアのやつはさっきからそんなに騒いでどうしたんだ?
「アハハハァァァン!! 普通じゃないってばぁぁぁあー!!」
やれやれである。
まるで手品のように小さな袋から家屋が飛び出してくる様はファンタジー。
さて、教会の中へと入り、リビングの明かりを灯す。
キッチンへ向かうと、女の子たちが丁度いいタイミングで起き出してきた。
みんな可愛らしい寝癖までつけて、まったくお子様だな。
「おはようございますご主人様~。なんだか、家の中にご主人様の暖かさを感じる気がしておきちゃいました。えへへ!」
「セツカ様、おはようございます!! 寂しかったですよ。昨日は三人でくっついて眠りました。抱き締めてください~」
「おはようございますですぅ。セツカちゃんがいないと寝つきが悪くて困りますぅ。昨日はふーちゃんを待ちぼうけさせて何してたですかセツカちゃん~」
「おはようみんな。顔を洗ったら席について待っていて」
キッチンで作業しながら声をかける。
するとキッチンのテーブルに座っていたミリアが皆に声をかけた。
「おはよ。みんな寝癖までつけて可愛いねぇ。昨日はゆっくり寝れた?」
固まる女の子たち。
ミリアの顔を見るなり、三人は俺のところにドタドタと駆け寄ってきて。
「どういうことですご主人様!? なんでミリアさんがここにいるんですか? もしかして昨日は一晩中いっしょに?」
「ありえないですよセツカ様!! ミリア様と二人っきりになられたのですか!? どうして!!」
「悲しいですぅ。ふーちゃんたちを差し置いて、あの方とそういう流れは絶対に阻止せねばいけないのですぅ」
などと問いつめられたのである。
ごめんみんな、それ、俺が一番聞きたいんだ。
ミリア、どうしてお前はここにいるんだ。しかも、さも昔から住んでいたかのように図々しく。
鼻歌まで歌いながら俺と女の子たちの掛け合いをニコニコ眺めているのは何故なんだぜ?
とにかく、顔を洗ったら朝食にしよう。
■――野菜の細胞壁を『殺し』ます。
これで煮込み時間の大幅短縮が可能だ。
香草、ダンジョンで消える前に採集したもちもち兎の肉、にんじんのような野菜など、適当に切ったものを煮込む。
もちもち兎の肉は鶏肉に近いが、名前の通りもちもちした食感が特徴だ。
ゴブリンとかの餌になる雑魚モンスターだが、味はまあまあいい。
こいつらをあわせ、ブイヨンをつくる。
■――たまねぎの辛味を『殺し』ます。
えぐみの元の成分を殺してやれば、まろやかさが勝る最高のスープになる。
たまねぎを0.1mm厚までスライスし、子供たちの口に入ったときにとろけるように演出する。
彼女たちは野菜全般が苦手なのだがこうやって出せば知らないうちに食べられるようになるだろう。
香草を細かくしたものを散らし、香辛料と塩で味付けを整えて完成だ。
もちもち兎のコンソメスープである。
「あたしも作ってきたの。S級冒険者特製バゲットサンドよ!! せっかくだし、みんなで食べましょう?」
ミリアが作ってきたバゲットサンドもなかなかのものだ。
魔法効果が施された皮袋から取り出されたバゲットサンドは、まるで今ここで完成させたかのような新鮮さを感じた。そして挟んであるものも、安定の葉物とソーセージのようなものから、見たことのないような色調の木の実や肉質の異世界食材など多種多様だ。
自分で言ってはいたが、本当に料理はできるらしいな。すこしだけ見直すぞ。
0.1mmぐらいだけどな。
女の子たちは俺のつくったスープに口をつけた。
「はふはふ、おいひい!! ご主人様のつくったスープおいしいです!! もっとたくさんたまねぎたべたい!!」
「なんというまろやかな甘みでしょうか。これは、たまねぎなのですか!? た、たべてしまえる。子供の敵たまねぎを美味しくて口に入れてしまいます~セツカ様おいしいです!!」
「はうう、精霊神はたまねぎなんて食べないですぅ。たまねぎ食べると死にますぅ。邪神の食べ物ですたまねぎなんか無理ですぅ……あの、二人ともそんなに食べるですか? じゃあちょっとだけ。はむ。はむはむ!? うまっ!? ええっ!? うまっ。うま、うまいですぅ!!」
みんな大げさだな。
一心不乱に皿をすくうので、すぐにお代わりが必要になるみたいだ。
ミリアは目を閉じ、まるで料理対決の審査員のように偉そうに講釈をたれ始める。
「おいしい。体に染み渡るような優しい味だけど、しっかりともちもち兎の癖になる味が出ているわ。長い時間をかけて野菜から味を引き出さないとこうはいかないわね。私のためにそんなに時間をかけて準備をしてくれるなんて、ほんとうに素直じゃないんだから。ま、まあまあ美味しいじゃないセツカ。これだったら毎日でも食べたくなる味ね。お代わりを貰ってもいいかしら?」
「もうないぞミリア」
「アハハハァン!! そんなぁー!?」
思ったより人気だったからな。残念だったな。
時間は掛かってないスキルを使った10分クッキングだが、子供たちには大好評だった。
ちなみにミリアのお弁当も絶品だった。くやしいが。
おそらく討伐したモンスターで美味しい素材を使って料理し、バゲットに挟んだのだろう。
さすがはS級冒険者ということか。一応ミリアに礼を言っとくか。
「美味しかったぞ。まあ、ありがとな。子供たちも喜んでいた」
「あ、こ、こ、こちらこそ食べてくれてあ、あ、ありがとっ!!」
なんだあいつは。
急にそっぽを向いて顔を抑え足をばたばたさせている。
どうしたんだろう。中二病でも発症したのだろうか?
朝食を食べ終えた俺たちは、再びダンジョンの中へと戻ることにした。
今度はレーネ、スレイ、フローラも一緒にダンジョンを攻略していく。
「みんな、ここは10層だ。あと40層もあるからサクサク行こうと思う。残酷なこともあるかもだけど、この世界はけっこうシビアだ。君たちの方が覚悟できてそうだね」
「はい!! ご主人様のために敵をほうむります!! はやく敵こないかな?」
「承知しております。スレイの敵はセツカ様の敵です!! セツカ様の敵に生存権はありません!!」
「ふーちゃん、セツカちゃんの目の前に立ちはだかるなら何人たりとも粉砕してあげますですぅ!!」
「……うん。ちょっと俺は不安だな」
彼女たちは覚悟がガンギマリ状態だ。
ミリアですら若干引いているじゃないか。
「ねえセツカ。あんたいったいあの子たちにどういう教育してるわけ?」
「普通の教育だ。何も問題ない」
「ありゃ戦士の目だよセツカ。いったい誰があの子たちのやる気をそんなに引き出させてるんだか」
と言って俺をジト目で見つめるミリア。
みないでくれ。俺にもわからん。
キャッキャと飛びはねながらやる気を露にしている三人は、ダンジョンが怖いとかそういう感情は全くない様子であった。
15階層。
「やあっ、とうっ!! 光輝拳!! ひぃぃぃぃとえんどぉ!!」
真っ赤に光ったレーネの拳で、オーガゴブリンの巨大な身体が爆散した。
もう突き立てられたら終わりである。
レーネは身体も小さいし、獣人の能力をフルに生かした機動力で動き回りすばしっこいので、いつの間にか大型のモンスターの背後からその手刀を突き刺しているのだ。
そうすると風船が破裂するようにどんな強力なモンスターも死滅した。
「は、ははは……ねえセツカ。あたしゆめを見てるのかな? たぶんだけど、あの子レッドアイズの、うちのパーティの拳闘士より強いよ!? もしかしたら……いや、まだわからないわ」
ミリアはレーネの大活躍に顔を引きつらせていた。俺も最初はビビッた。
どんどん先に進もう。
20階層。
「邪王円殺白竜破!! 家の都合で……私には毒物が効かないんですよね。魔眼を守るために、生まれたときから毒には慣らされているんです」
スレイはヴァイオスパイダーの毒糸を受けてもまったく意に介さず、そのまま強引に白い蛇の魔法で巨大なクモの魔物を葬った。
ぷちっと潰れた巨大クモの粘液を浴び、スレイは頬を染めながら「まだまだですね」と微笑んでいる。
溶けてる。装備が溶けるほどの毒だけど、スレイの身体は大丈夫みたいだ。
「あの、セツカ。私の目が正しければ、あの子致死性の毒を浴びて普通にピンピンしてるんだけど。たぶんウチの死んだ呪術師が『あれ喰らったら即死だへっへーあたらなければどうということはない』……とかふざけてたらホントに死んだときの毒なんだけど?」
ドン引きするミリア。
大丈夫。俺もこんなスレイ知らない。
25階層。
「風を司る精霊神フローラが命ずる。『真空命題(アストラタクト)・虚無(セロ)』!!」
25階層でフローラが本気を出した。
俺たちの周囲だけ風のシールドでかこみ、ダンジョン内を全て真空にするという暴挙に出たのだ。
意気揚々とこちらに攻め込もうとしていたミノタウルス=オメガは圧力がなくなったことにより内側から破裂した。
見えないところでも魔物たちが死んでいく気配がする。
真空なので悲鳴すら聞こえない。
「えへっ。ふーちゃんがんばっちゃった!!」
こてん。と額を叩き舌を出してみせるフローラ。
一方俺はミリアに肩をつかまれ揺さぶられていた。
「ミノタウルス=オメガってA級討伐対象なんですけど!? 私でも一撃じゃ倒せない魔物なんですけど!? なんか階層ごと倒しちゃいました!? 皆殺しちゃいました!? この子おかしくない!? ねえ、ぜったいおかしいよ!!」
「そうか?」
だってこの子精霊神ですし。
しかしどう考えても能力が上がりすぎな気がするな。これ、ステータスの限界殺してるよなぁ。
はあ、みんな強くなりすぎだ。スキル、勝手に彼女たちを育てすぎだよ。
■――自重を『殺し』ています。
あ、そうですか。
30階層。
■――サンド=ワイバーンを『殺し』ます。実行。
キシャアアアアァ……。
なんか鳴き声がうるさい蛇がいたので倒しておいた。
30層までやってきたけど、ここまで来るとさすがに巨大なモンスターばかりが目立つようになるな。
「おいおいおいっ!? セツカ、あなたが一番オカシイよ!? 今倒したのって、亜竜のワイバーンじゃん!? S級討伐対象が近づく前にひっくり返されてるんだけど!? おかしいよね!? あいつ冒険者イーターって呼ばれてるんだよ!? 油断したぺーぺーがみんなあいつに殺されるんだよ!? そんなのをころって転がすのって普通じゃないよね!?」
「ん、別に普通だが?」
スキルの効果だ。子供たちの成長に驚きはしたが、俺の力に特に不思議はない。
ミリアのやつはさっきからそんなに騒いでどうしたんだ?
「アハハハァァァン!! 普通じゃないってばぁぁぁあー!!」
やれやれである。
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