上 下
4 / 22

第四章

しおりを挟む
「じゃ、じゃあ君が隣国の姫…?」
 
「まだそうと決まった訳ではない」

 フィークのその言葉でリリーアネはようやく我に返った。そうだ、まだ決まった訳では無い。もしかしたら他にもいるかもしれない。小さな希望ができ、少し楽になった。

「それで、ターレスト。他にも何か分かったのか?」

「はい、今朝空にできた雲はおそらく雷の魔力でできたものでしょう。そして、犯人も絞り込めてきています」

 ターレストはフィークに資料を手渡した。フィークはその資料を眺めていると、何かを見つけたような顔でリリーアネを見た。リリーアネはなんだろうと思い頭を傾けるとフィークが資料を無言でリリーアネに見せた。

 リリーアネはそれを受け取り見ろということだな、と察して資料を見た。そこには雷の魔力を扱うものと今回の事件の容疑者に内定されているもののリストが書かれていた。

 上から順番に見ていくとそこにはある人物が載っていた。

「クライス・リバート、クライス・アメリヤ…これってお父様と妹の名前じゃない?!」

 驚きもう一度見る。変わりはなくそこにはくっきりとクライス・リバートとクライス・アメリヤと記入されていた。

「何故…?」

「クライス家は代々雷の魔力を扱ってきているからね。しかも、裏の情報じゃあ隣国のスパイとも言われているしな。だから、この事件で一番有力な人達なんだ。」

 ペラペラとターレストが説明してくれた。リリーアネは資料を机に置き力を抜いて俯いた。何がどうなっているのかさっぱり分からない。

 リリーアネはもしかすると隣国の姫であり、今まで育ってきた家はこの国をあまり好んでおらず今回の事件の最も有力な容疑者とされている。

「さっぱり分からない。なぜ私はクライス家で育ったの?それにクライス家が容疑者になってるって…」

「まだ決定じゃない。そう深く考えるな。他のことについては俺たちが調べている。君が心配する必要は無い」

 フィークはリリーアネを慰めようとしたようだったがリリーアネにとっては全然だった。そして、ある提案を思いついた。

「あの、それだったら私を隣国に連れて行ってくれませんか?そこで国王に会います。私が本当に隣国の国王と妃の間の子であるか、この目で確かめたいです」

 フィークは最初冗談に聞こえたがどうやらリリーアネは本気のような目をしてフィークを見ている。そんなリリーアネを見ては断りたくても断れない。

 リリーアネの思いにフィークは圧倒された。

「分かった…連れていく。だが、俺も一緒に行く。もしも何かあった時危険だからな」

「ありがとうございます」

 リリーアネは深く頭を下げた。

「君はそんなになっても無表情なんだな」

「仕方ないです。今までそうだったので」

「まあいい、じゃあ詳しくは後で話そう。一旦侍女に部屋に案内させる。そこでゆっくりしてろ」

「あ、ありがとう、ございます」

    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なぜ身分制度の恩恵を受けていて、平等こそ理想だと罵るのか?

紫月夜宵
ファンタジー
相変わらずn番煎じのファンタジーというか軽いざまぁ系。 悪役令嬢の逆ざまぁとか虐げられていた方が正当に自分を守って、相手をやり込める話好きなんですよね。 今回は悪役令嬢は出てきません。 ただ愚か者達が自分のしでかした事に対する罰を受けているだけです。 仕出かした内容はご想像にお任せします。 問題を起こした後からのものです。 基本的に軽いざまぁ?程度しかないです。 ざまぁ と言ってもお仕置き程度で、拷問だとか瀕死だとか人死にだとか物騒なものは出てきません。 平等とは本当に幸せなのか? それが今回の命題ですかね。 生まれが高貴だったとしても、何の功績もなければただの子供ですよね。 生まれがラッキーだっただけの。 似たような話はいっぱいでしょうが、オマージュと思って下さい。 なんちゃってファンタジーです。 時折書きたくなる愚かな者のざまぁ系です。 設定ガバガバの状態なので、適当にフィルターかけて読んで頂けると有り難いです。 読んだ後のクレームは受け付けませんので、ご了承下さい。 上記の事が大丈夫でしたらどうぞ。 別のサイトにも投稿中。

通称偽聖女は便利屋を始めました ~ただし国家存亡の危機は謹んでお断りします~

フルーツパフェ
ファンタジー
 エレスト神聖国の聖女、ミカディラが没した。  前聖女の転生者としてセシル=エレスティーノがその任を引き継ぐも、政治家達の陰謀により、偽聖女の濡れ衣を着せられて生前でありながら聖女の座を剥奪されてしまう。  死罪を免れたセシルは辺境の村で便利屋を開業することに。  先代より受け継がれた魔力と叡智を使って、治療から未来予知、技術指導まで何でこなす第二の人生が始まった。  弱い立場の人々を救いながらも、彼女は言う。 ――基本は何でもしますが、国家存亡の危機だけはお断りします。それは後任(本物の聖女)に任せますから

神殿から追放された聖女 原因を作った奴には痛い目を見てもらいます!

秋鷺 照
ファンタジー
いわれのない罪で神殿を追われた聖女フェノリアが、復讐して返り咲く話。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

とんでもないモノを招いてしまった~聖女は召喚した世界で遊ぶ~

こもろう
ファンタジー
ストルト王国が国内に発生する瘴気を浄化させるために異世界から聖女を召喚した。 召喚されたのは二人の少女。一人は朗らかな美少女。もう一人は陰気な不細工少女。 美少女にのみ浄化の力があったため、不細工な方の少女は王宮から追い出してしまう。 そして美少女を懐柔しようとするが……

【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」  高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。  この婚約破棄は数十分前に知ったこと。  きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ! 「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」  だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。 「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」 「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」 「憎いねこの色男!」  ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。 「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」 「女泣かせたぁこのことだね!」 「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」 「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」  さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。 設定はふわっと。 『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

婚約破棄される予定みたいなのでやり返します

星 月乃
ファンタジー
ファーレン公爵家の令嬢であるリリアーナは、ここファリーヌ王国第一王子で王太子であるレイモンド殿下に卒業パーティーで婚約破棄を宣言された。レイモンドの隣には身分違いの恋人と噂になっているサラがいる。 しかし、それは予定通りなのである。なぜなら事前にサラの義姉、リーナに全て聞いていたからである。 バカ王子とサラにやり返す‼︎

処理中です...