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始まり
始まりー③
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「ただいま」
家に戻るとカナリヤが机に座ってサンドイッチを食べていた。
「あ、ごめん。散歩に出かけてた。これ、ジンナさんっていう方から貰ったよ」
「そこに置いておいて」
「これ食べていいのか?」
シャリングはサンドイッチを指さした。
「食べちゃいけないものを置いたりしないわ」
「……はい、その通りです」
サンドイッチには今日ハーネストがくれた野菜が挟んであった。やはり、カナリヤの作る物は美味かった。
この野菜も美味しい。
「ピクニック何時に行くの」
「いや、何にも言われてないよ」
「はー?それくらい聞いとけよ」
「あ、いや、ハーネストが迎えに来るって」
「私ピクニック行かないから。二人で行ってきて」
カナリヤは階段を上り自分の部屋に戻った。
(嘘だろ。あいつと二人でピクニック行くのか?それは俺も嫌だよ)
口実を作ろうと考えているとハーネストがやってきた。
「やっほ、今からピクニック行こうぜ。あれ?カナリヤは?」
「行かないってさ」
(どうやって拒否しようか。お腹が痛いと言っても心配されてずっとここに居そうだし……)
「じゃあシャリング着いてきて。連れて行きたいところがある」
「え?」
それならしょうがないなと思い、重い足取りで家を出た。
ハーネストに着いていくと山の奥に入ってきた。どこに向かうのだろうと不思議に思っていると遠くの方に明かりがあるのが見えた。
近づくにつれ眩しくなってきた。そこは前カナリヤと来たことのある湖だった。
「ここって……」
「ここだよ。ルリスが眠っているのは」
ハーネストが幹の太い木の目の前で止まった。
「ここか……」
シャリングはしゃがみ手を合わせた。ハーネストは持ってきたカバンの中から花を取り出し添えた。
一緒にサンドイッチも添えた。
「なんでサンドイッチ?」
「ルリスはサンドイッチが大好きだったから」
ハーネストはずっと手を合わせていた。顔をあげ湖を眺めている。
「ここの湖綺麗だろ。俺たち三人で見つけた場所なんだぜ」
「カナリヤが言ってました」
「ここ来たことあるのか」
「はい。けどここに来るのに苦労しましたよ。一人で来ましたから」
「よく来れたな。ここ結構森の深いところだから見つけるのに苦労するのに」
「道に迷っている時に綺麗な鹿がいて、着いてきてって聞こえたんです。着いて行ったらここに導いてくれて」
「綺麗な鹿……もしかしたらルリスかもしれないな」
ハーネストが空を見上げて言った。
「ルリス来世は鹿になりたいとか言ってたからな。綺麗な角が憧れるとか言ってたな。まさか本当に鹿になるなんて」
フッとハーネストは笑っている。嬉しそうだった。
家に戻るとカナリヤが机に座ってサンドイッチを食べていた。
「あ、ごめん。散歩に出かけてた。これ、ジンナさんっていう方から貰ったよ」
「そこに置いておいて」
「これ食べていいのか?」
シャリングはサンドイッチを指さした。
「食べちゃいけないものを置いたりしないわ」
「……はい、その通りです」
サンドイッチには今日ハーネストがくれた野菜が挟んであった。やはり、カナリヤの作る物は美味かった。
この野菜も美味しい。
「ピクニック何時に行くの」
「いや、何にも言われてないよ」
「はー?それくらい聞いとけよ」
「あ、いや、ハーネストが迎えに来るって」
「私ピクニック行かないから。二人で行ってきて」
カナリヤは階段を上り自分の部屋に戻った。
(嘘だろ。あいつと二人でピクニック行くのか?それは俺も嫌だよ)
口実を作ろうと考えているとハーネストがやってきた。
「やっほ、今からピクニック行こうぜ。あれ?カナリヤは?」
「行かないってさ」
(どうやって拒否しようか。お腹が痛いと言っても心配されてずっとここに居そうだし……)
「じゃあシャリング着いてきて。連れて行きたいところがある」
「え?」
それならしょうがないなと思い、重い足取りで家を出た。
ハーネストに着いていくと山の奥に入ってきた。どこに向かうのだろうと不思議に思っていると遠くの方に明かりがあるのが見えた。
近づくにつれ眩しくなってきた。そこは前カナリヤと来たことのある湖だった。
「ここって……」
「ここだよ。ルリスが眠っているのは」
ハーネストが幹の太い木の目の前で止まった。
「ここか……」
シャリングはしゃがみ手を合わせた。ハーネストは持ってきたカバンの中から花を取り出し添えた。
一緒にサンドイッチも添えた。
「なんでサンドイッチ?」
「ルリスはサンドイッチが大好きだったから」
ハーネストはずっと手を合わせていた。顔をあげ湖を眺めている。
「ここの湖綺麗だろ。俺たち三人で見つけた場所なんだぜ」
「カナリヤが言ってました」
「ここ来たことあるのか」
「はい。けどここに来るのに苦労しましたよ。一人で来ましたから」
「よく来れたな。ここ結構森の深いところだから見つけるのに苦労するのに」
「道に迷っている時に綺麗な鹿がいて、着いてきてって聞こえたんです。着いて行ったらここに導いてくれて」
「綺麗な鹿……もしかしたらルリスかもしれないな」
ハーネストが空を見上げて言った。
「ルリス来世は鹿になりたいとか言ってたからな。綺麗な角が憧れるとか言ってたな。まさか本当に鹿になるなんて」
フッとハーネストは笑っている。嬉しそうだった。
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