5 / 111
やってきた薬師
やってきた薬師ー⑤
しおりを挟む
(どうしてそこまで私のことを考えているの。そうやって思っているのは最初だけよ。あとからあなたも絶望の中をさまようことになるというのに。まあこの関係は最初だけだし)
「そう…そこまで真剣に言われると何も言えないわ。分かった。ありがとうね、色々と話してくれて。今日はもう遅いから休んでいいよ。私はまだやることがあるから」
「いえ、王にずっとそばにいるよう言われたので…」
(しっかりしてるな。王も変なところで頭がいい。そこまでして私に監視をいれたいか…)
「そう…それなら一緒に調合して遊ばない?一度友達とやってみたかったんだ」
シャリングは嬉しそうな目でカナリヤを見た。
「い、いいんですか?」
「ええ」
カナリヤは調合室へ向かった。名前は調合室となっているがそれ以外のことも普通にしている。
主にここで生活しているようなものだ。家にいた頃は自分の部屋で実験していたためあまり大規模な実験はしてこなかった。
しかし、ここに移ってから自由に実験もできるので便利だ。
「そこに瓶があるでしょ?そこに入っているものは自由に使っていいわよ。だけど、あそこにある棚はあまり触れないで。危険なものばかりだから。毒とか普通に置いてあるかね。あと、貴重なものもあるから使う時は私に教えて」
「分かりました」
(……この子意外と使えるわね…だったら…この子にも協力してもらわなきゃ)
そんなことを考えながらシャリングを見た。
シャリングは棚を眺めて目を輝やかせていた。まるで初めて植物を見るような目だった。ここにあるものはそこら辺の植物や薬、液体が揃っている。
中にはカナリヤが独自で開発したものもある。カナリヤはシャリングを見ながらあるものを作るために準備をしていた。
「あの、この植物はなんですか?」
シャリングが見せてきたのは食虫植物だった。あまり見ないものであったためシャリングは目を大きくしながら瓶を見ていた。
「それは食虫植物。虫を食べて生活しているの」
「へぇ、虫を食べる植物なんて初めて知りました」
初めて……てことはシャリングは貴族の可能性がある。農民だとしたらみな食虫植物のことは知っている。
どこの貴族だろうか。それによりシャリングの使い道が変わる。
「シャリングは誰に呼ばれてここに来た?」
「え?」
持っていた瓶を棚に戻して振り返った。
「僕にも分かりません。急に国王に呼ばれカナリヤ様の付き人になるよう言われました」
「それまではどこにいたの?」
「侯爵家の長男として過ごしていました」
カナリヤは考えた。急に言われたとしたらカナリヤが付き人を変えるようお願いしたことは予想していなかった。
そして急遽シャリングを呼んだのか。しかし、なぜシャリングを選んだのか。同い年だから?いやそうだとしても他に同い年はいたはず。
ただの偶然であるのか。シャリングに聞いても分からないだろう。それにシャリングももしかしたら王と繋がっている可能性がある。
「あのカナリヤ様はこの国好きですか?」
「え?」
急な質問に戸惑ったが
「ええ好きよ」
と笑いかけた。シャリングは不思議そうな目でカナリヤを見た。
「そうですか」
「あと、私の名前カナリヤでいいわよ。様を付けられるほど偉くはないから」
ハーブの葉を潰しながら言った。
「いえ、カナリヤ様…カナリヤは凄いですよ。この国を救ったのですから」
「……救った……ね…」
カナリヤの顔から笑顔が消えどんよりとした顔になった。
「だ、大丈夫ですか?」
シャリングはいつの間にかカナリヤの目の前にいて顔を覗いていた。カナリヤはハッとして焦点を合わせ
「だ、大丈夫よ。気にしないで。ごめん、今日は疲れたから休むね」
寝室に戻りそのまま布団に入った。
「そう…そこまで真剣に言われると何も言えないわ。分かった。ありがとうね、色々と話してくれて。今日はもう遅いから休んでいいよ。私はまだやることがあるから」
「いえ、王にずっとそばにいるよう言われたので…」
(しっかりしてるな。王も変なところで頭がいい。そこまでして私に監視をいれたいか…)
「そう…それなら一緒に調合して遊ばない?一度友達とやってみたかったんだ」
シャリングは嬉しそうな目でカナリヤを見た。
「い、いいんですか?」
「ええ」
カナリヤは調合室へ向かった。名前は調合室となっているがそれ以外のことも普通にしている。
主にここで生活しているようなものだ。家にいた頃は自分の部屋で実験していたためあまり大規模な実験はしてこなかった。
しかし、ここに移ってから自由に実験もできるので便利だ。
「そこに瓶があるでしょ?そこに入っているものは自由に使っていいわよ。だけど、あそこにある棚はあまり触れないで。危険なものばかりだから。毒とか普通に置いてあるかね。あと、貴重なものもあるから使う時は私に教えて」
「分かりました」
(……この子意外と使えるわね…だったら…この子にも協力してもらわなきゃ)
そんなことを考えながらシャリングを見た。
シャリングは棚を眺めて目を輝やかせていた。まるで初めて植物を見るような目だった。ここにあるものはそこら辺の植物や薬、液体が揃っている。
中にはカナリヤが独自で開発したものもある。カナリヤはシャリングを見ながらあるものを作るために準備をしていた。
「あの、この植物はなんですか?」
シャリングが見せてきたのは食虫植物だった。あまり見ないものであったためシャリングは目を大きくしながら瓶を見ていた。
「それは食虫植物。虫を食べて生活しているの」
「へぇ、虫を食べる植物なんて初めて知りました」
初めて……てことはシャリングは貴族の可能性がある。農民だとしたらみな食虫植物のことは知っている。
どこの貴族だろうか。それによりシャリングの使い道が変わる。
「シャリングは誰に呼ばれてここに来た?」
「え?」
持っていた瓶を棚に戻して振り返った。
「僕にも分かりません。急に国王に呼ばれカナリヤ様の付き人になるよう言われました」
「それまではどこにいたの?」
「侯爵家の長男として過ごしていました」
カナリヤは考えた。急に言われたとしたらカナリヤが付き人を変えるようお願いしたことは予想していなかった。
そして急遽シャリングを呼んだのか。しかし、なぜシャリングを選んだのか。同い年だから?いやそうだとしても他に同い年はいたはず。
ただの偶然であるのか。シャリングに聞いても分からないだろう。それにシャリングももしかしたら王と繋がっている可能性がある。
「あのカナリヤ様はこの国好きですか?」
「え?」
急な質問に戸惑ったが
「ええ好きよ」
と笑いかけた。シャリングは不思議そうな目でカナリヤを見た。
「そうですか」
「あと、私の名前カナリヤでいいわよ。様を付けられるほど偉くはないから」
ハーブの葉を潰しながら言った。
「いえ、カナリヤ様…カナリヤは凄いですよ。この国を救ったのですから」
「……救った……ね…」
カナリヤの顔から笑顔が消えどんよりとした顔になった。
「だ、大丈夫ですか?」
シャリングはいつの間にかカナリヤの目の前にいて顔を覗いていた。カナリヤはハッとして焦点を合わせ
「だ、大丈夫よ。気にしないで。ごめん、今日は疲れたから休むね」
寝室に戻りそのまま布団に入った。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる