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革命編 八章:冒険譚の終幕

削り合う命

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 天界エデンで激突したエリクとログウェルの戦闘は、地上の人々にも映像として見せられる。
 その勝敗が自分達の命運いのちを決めることを知り、人々は二人に対してそれぞれの信仰おもいを向けた。

 信仰それ到達者エンドレスであるエリクとログウェルの肉体からだに宿り、ちからへと変わる。
 彼等が振るう剣に自然とちからが増し始め、その余波が魔鋼マナメタルで覆われた地面を徐々に意図も容易く砕き始めた。

「――……ッ!!」

「ほっほぉっ!!」

 ケイルと同じ『霞の境地わざ』へ至り始めるエリクは、相手ログウェル動作うごきによって迫る長剣けんの軌道を把握し始める。
 そして徐々に反撃が行えるようになり、大剣のみならず大剣それを囮とした格闘で攻撃も始めた。

 対するログウェルは徐々に速くなる相手エリクの動作と反撃に、喜々とした笑みを浮かべて対応する。
 それ等の反撃すら一度としてかすらないログウェルは、更に戦士エリクの成長を促す為に剣戟こうげきを激しくさせ続けた。

 その周囲は徐々に崩壊し、二人の足場は不安定になっていく。
 すると次の瞬間、右足で踏み込んだログウェルの足場が僅かに沈み込み、安定していた姿勢が崩れた。

「!」

「ガァアッ!!」

 エリクはその隙を見逃さず、凄まじい膂力と速度で振った大剣を右手で薙ぎ向ける。
 そしてコンマ一秒にも満たぬ速度で迫る大剣に、ログウェルは右手に持つ長剣と左腕での防御うけに入った。

 その瞬間、エリクの大剣が防御している長剣へ激突する。
 するとログウェルはその場から大きく吹き飛ばされ、その先に在る建築物跡がれきへ激突した。

「!!」

「おぉっ、やったかっ!?」

 遠く離れた位置に置く起動戦士ウォーリアー操縦席コクピットに居るバルディオスとユグナリスは、戦況に変化が及んだ事に驚く。
 そしてログウェルが吹き飛ばされた場所を映像で拡大すると、崩れた建築物跡がれきから舞う粉末煙ほこりから立った姿の影が浮かび上がった。

 それは吹き飛ばされたログウェルであり、長剣と共に防御した左腕の袖が大きく破れている。
 しかし左腕や右手に握る長剣が折れている様子は無く、バルディオスはそれに驚愕の声を零した。

「む、無傷なのか……。アレを受けて……」

「ログウェル……ッ」

 魔鋼マナメタルすら容易く破壊できるようになったエリクの全力こうげきを、ログウェルは完全に防いでみせる。
 それはログウェルの耐久力が魔鋼マナメタルすら凌駕している事を意味し、その硬度かたさを最も知るバルディオスに寒気を感じさせた。

 するとログウェルは粉末煙ほこりから出て来ると、エリクの方へ歩み寄りながら微笑みの声を向ける。

「――……ほっほっほっ。い感じじゃのぉ、傭兵エリク」

「……さっきのは、ワザとか?」

「だったら、どうするね?」

「……」

 敢えてそう答える老騎士ログウェルに、全身から流血するエリクは表情の渋らせる。
 そんな戦士エリクに微笑んだ表情を僅かに引かせた後、ログウェルは細めた視線と共に声を向けた。

「さて、準備運動はこれくらいでいかね?」

「!」

「お前さんの望み通り、ここからは本気としようか。――……『生命の風』」

「……ッ!!」

 ログウェルはこれまでの戦闘を準備運動だと言い放ち、自身の纏う生命力オーラを『生命の風』に変える。
 それと同時にその場から消えた瞬間、エリクの視線が微かに動きながら無拍子ノータイムで大剣を振り薙いだ。

 すると次の瞬間、二十メートル以上は離れていた二人が衝突する程の距離で互いの剣を激突させる。 
 『生命の風』を纏わせたログウェルの移動速度スピードは先程より遥かに速く、エリクは勘に頼った迎撃で辛うじて防ぐ事が出来た。

 しかし激突したログウェルの長剣にも、『生命の風』が纏わされている。
 それはエリクの纏わせている生命力オーラを削り飛ばし、右手に持つ大剣の刃を欠けさせ、右腕を切り刻み流血を起こさせた。

「ッ!?」

「さぁ、コレはどうするかねっ!!」

「クッ!!」

 『生命の風』が初見であるエリクにとって、ログウェルが大剣ぶきや両腕を削り切る能力ちからに驚愕を浮かべる。
 しかし先程以上の速度で斬り込まれるログウェルの剣戟けんに、その能力ちからを解明する暇すら与えられない。

 今度は防御ではなく最小限の動きで長剣を避けたエリクだったが、纏わせている『生命の風』が再びエリクの正面からだを傷付ける。
 それによって間近での防御と回避が不可能である事を理解し、何かを思い付いたエリクは大きく後方へ高く飛び退いた。

 それを見たログウェルは鋭い眼光を見せ、『生命の風』を身体に纏わせた。

「逃げるのは――……いかんのぉっ!!」

「っ!!」

 中空に飛び退いたエリクにログウェルは再び迫り、互いの武器を衝突させる。
 それによりエリクの大剣は再び欠け、それを持つ両腕を再び切り裂いた。

 しかしその痛みに耐えるエリクは、それを待っていたかのように雄叫びを上げる。

「オォオオッ!!」

「む!」

 次の瞬間、腕力を高めたエリクは大剣を薙いでログウェルを地面側へ弾くように叩き出す。
 それにより地面したへ押し出されたログウェルを見ながら、自身の大剣に膨大な生命力オーラ鬼神フォウル魔力マナを一瞬で集めた。

 更にログウェルの着地直前、エリクは大剣から鬼神斬撃ブレードを放つ。
 しかもその斬撃範囲は広く、ログウェルが着地する瞬間の硬直をエリクは狙った。

 するとログウェルは微笑みを強め、素早く背中を地面側に向け、右手で握る長剣の刃先をエリクに向ける。
 それと同時に左手をエリクに向け、『生命の風』で生み出した弓と弦に、自身の長剣けんを矢に見立てて右手で引いた。

「――……『天を射抜く矢よエアリアルアロー』っ!!」

「っ!?」

 げんを引き終わった長剣けんの矢は右手から離れ、凄まじい加速と『生命の風』を纏わせながら押し寄せる鬼神斬撃ブレードへ向かう。
 そして二つの攻撃が衝突した瞬間、エリクの放った鬼神斬撃ブレードをログウェルの長剣が貫通した。

 更に貫通した長剣中空そこに留まるエリクに向かい、彼自身の肉体を貫こうとする。
 それを一早く勘で察したエリクは、大剣の腹を盾にしながら矢を防ぎ止めた。

 しかし防御した大剣の腹に亀裂が入り、エリクが表情を歪める。
 それで咄嗟に身体を捻り、長剣の威力を防ぐのではなく受け流すことで辛うじて回避に成功した。

 それと同時に地面へ向かっていた鬼神斬撃ブレードも着弾し、その場に凄まじい衝撃波を生み出す。
 そらを穿つけんと地面を砕くけんが同時に発生し、その場を視認できぬ程の粉末煙ほこりで満たした。

 数秒後、破壊された地面へ一つの影が落下する。
 それは中空うえに居たエリクであり、その左腕部分は抉れるような傷と流血を生じさせていた。

 そんなエリクが見ている方角にもまた、一つの人影が見える。
 それは地上したに着地していたログウェルであり、その様子は衣服こそボロボロながらも、老人とは思えぬ鍛え抜かれた肉体からだには流血すら無い微細な傷しか見えなかった。

「――……ハァ……ハァ……ッ!!」

「――……ほっほっほっ、良い斬撃こうげきじゃったのぉ。傷を付けられたのは、久し振りじゃわい」

 互いに傷を負いながらも、その度合いは全く異なる。 
 同じ到達者エンドレスである為に二人の傷の治癒や回復が出来ない中で、エリクの損傷ダメージはログウェルと比べても圧倒的に多かった。

 それでもエリクは戦意を衰えさせず、大剣を支えにしながら立ち上がる。
 しかし次の瞬間、支えとしている大剣の腹に入った亀裂が広がり、嫌な音を響かせた。

「……!!」

 大剣の亀裂は左右の幅を満たすように届き、そこから砕け折れる。
 地面に落ちる大剣の刃先と破片を見て唖然とした様子を浮かべるエリクに対して、ログウェルは真上を見ながら僅かに足を退かせた。

 するとログウェルの直上うえから、彼自身が放った長剣が降り注ぐ。
 それを回避し地面に刺さった長剣の柄を右手で握ったログウェルは、大剣ぶきを失ったエリクと向かい合った。

「お前さんの大剣けん、砕けてしまったのぉ」

「……っ」

「じゃがな、戦いを止める気は無いぞい」

「……くっ!!」

 大剣ぶきの大半を失いながらも残る部分となる柄と根元を握るエリクは、それでも身構える。
 それを見るログウェルは口元を微笑ませ、再び『生命の風』を身体と長剣に纏わせた。

 こうして老騎士との戦いの最中、エリクは自身の大剣けんを破壊される。
 それでも止まらぬ二人の死闘たたかいは、自らの命を削る決着へ進み続けた。
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