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革命編 七章:黒を継ぎし者

抱える覚悟

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 創造神オリジンと共に現実世界に戻って来たウォーリスは、神兵達と戦っていたエリク達と相対する。
 そして敵対の意思を自ら示すように向かって来るユグナリスへ攻撃を加えると、その場の全員と相対した。

 そんな彼に対して連動するように対応したのは、【特級】傭兵である者達。
 特に彼を知るスネイクとドルフは、マナの大樹から出て来たウォーリスが本物だと認識して真っ先に動いた。

「――……ありゃ、本物だな」

「スネイク」

「分かってるっての」

 ドルフの声に応じたスネイクは、魔銃イオルムを構えてその銃口をウォーリスに定める。
 そして躊躇の無い弾丸を放ち、凄まじい速度でウォーリスの眉間を撃ち抜こうとした。

 しかし驚異的な動体視力でそれを視認したウォーリスは、左手を上げて自身の頭部を隠すように手の平を拡げる。
 すると放たれた魔銃イオルムの弾丸を掴むように握り締めると、その威力を相殺するように握り潰した。

 スネイクはそれに驚愕を浮かべ、一キロ以上離れたウォーリスと視線が重なる。

「なにっ!?」

「スネイク。そしてドルフか」

「……やべぇ、逃げろっ!!」

 驚愕するスネイクに対して、ウォーリスは冷ややかな声を漏らしながら弾丸を受け止めた左手を拡げる。
 すると顔の大きさにも満たない生命力オーラの球体を作り出しながら、それをスネイク達に向けて放った。

「ぐあっ!!」

「げぐ……っ!!」

 その速度は魔銃イオルムから放たれた弾丸を軽く上回り、二人が隠れ潜んでいた木々の上に直撃する。
 スネイクとドルフは跳び避けた事で直撃こそ免れながらも、その衝撃と木々の破片を身体に受けながら大きく吹き飛ばされた。

 十秒にも満たない時間で三人を撃退したウォーリスだったが、次の邪魔者てきが迫るのを青い瞳で追う。
 それは凄まじい速度で駆けて来る武玄ブゲンであり、その鋭い眼光から放たれる視線と重ねた。

「――……当理流とおりりゅう、奥義――……」

武士さむらいか」

「『龍一閃りゅういっせん』ッ!!」

 武玄ブゲンは走りながら左腰に収めた刀の柄を右手で握り、自身の奥義を放つ構えを見せる。
 それに対してウォーリスは一目で武玄ブゲンがアズマ国の武士サムライである事を見破り、その実力を見破るように身構えた。

 すると武玄ブゲンが素早く抜き放った刀から、気力オーラの斬撃が放たれる。
 それがドラゴンのような形状に変化しながら瞬く間も無くウォーリスへ向かい、創造神オリジン諸共に襲い掛かった。

 しかし左手で気力オーラの剣を作り出したウォーリスは、武玄ブゲンの放った『龍一閃ざんげき』に対して迎撃の斬撃を飛ばす。
 二人が放った凄まじい斬撃が衝突するように交じり合い、その場に凄まじい衝撃を生み出した。

「ぬっ!!」

「だたの聖人せいじんにしては、良い斬撃こうげきだ。――……だが、二撃目はすぐに撃てまい」

「っ!!」

 生み出された衝撃によって前進を阻まれた武玄ブゲンに対して、ウォーリスは姿勢を揺らす事なく生命力の剣を持つ左手を再び振るう。
 すると新たな気力斬撃オーラブレードが衝撃を割るように迫り、的確に武玄ブゲンに命中した。

「ぐ……のぉおっ!!」

 自身の肉体にも気力オーラを身に纏わせ刀身で斬撃を受け止めた武玄ブゲンだったが、その威力を受け流せずに他の者達と同じように吹き飛ばされる。
 地面や木々を削るように衝突しながら吹き飛ばされた武玄ブゲンは、他の者達と同じように身体から血を流しながら倒れた。

 ユグナリスや武玄ブゲンを始めとした強者達を瞬く間に迎撃し倒したウォーリスを見て、その場に残るエリクとマギルスは武器を強く握り締める。
 神兵達と似た姿ながらも、目の前に現れた存在が本物オリジナルのウォーリスだと確信していた。

「……おじさん、アイツもしかして……前より強くなってない?」

「ああ」

 幾度か見て矛すら交えたウォーリスの強さが自分達の知る姿より強くなっている事を察した二人は、互いに身体を離しながらウォーリスから距離を保つ。
 ウォーリスが放つ気力斬撃オーラブレードの速度と射程を把握している故に回避できる距離を保った二人だったが、その慎重さはウォーリスにとって都合の良い状況を生み出している事に気付かなかった。

「……!!」

「えっ!?」

 対峙していたエリク達は、ウォーリスが次に起こした行動に驚く。
 それは自分達に対する攻撃ではなく、体外に放つ気力オーラを用いて創造神オリジンを抱えたまま逃げようとするという状況だった。

 二人はそれに気付き、互いに別々の方法で追おうとする。
 しかしそれより早く対応して見せたのは、自身が持つ錫杖つえを真上に掲げた『青』だった。

 すると次の瞬間、広大なマナの大樹周辺が巨大な結界で覆われる。
 そこで飛行していたウォーリスを阻むように結界が立ちはだかり、彼が握る生命力オーラの剣から再び気力斬撃オーラブレードが放たれた。

「……なにっ」

「お前の気力斬撃こうげきは、見せてもらっていたのだな」

「……『青』か、やはり厄介な男だ」

 結界へ放った気力斬撃オーラブレードが吸収されて消失した様子を見て、ウォーリスは下に立つ『青』を見下ろす。
 未来の記憶を有しアリアと協力関係にあった『青』は、ウォーリスが得意としていた気力斬撃オーラブレードに対応できる結界を作り出せるようになっていた。

 そして広域に渡って阻む結界が魔力だけではなく生命力オーラを用いている事に気付き、創造神オリジンの肉体を近付けただけでは消し去れない事をウォーリスは察する。
 故に結界を生み出している『青』を処理ころすべく、凄まじい速度で急降下しながら『青』へ襲い掛かった。

 そんな彼の研ぎ澄まされた感覚に、ある者達が引っ掛かる。
 すると『青』の左右から飛び出すように現れたエリクとマギルスが、互いの武器を握りながら急降下して来たウォーリスへ振り下ろした。

「ぐぉおおっ!!」

「やぁああっ!!」

「チッ!!」

 完璧な瞬間ジャストタイミングで襲い掛かって来た二人に対して、ウォーリスは左手の気力剣オーラブレードで一振りで迎撃する。
 不安定な姿勢ながらも身体を回転させたウォーリスの一振りは、迫っていた二人の刃を大きく弾いた。

「うわっ!!」

「くっ!!」

 武器やいばを弾かれ吹き飛ばされた二人だったが、互いに少し離れた地面へ着地する。
 しかし『青』を含めて三方に囲まれる形になったウォーリスは、それぞれに視線を送りながら溜息を漏らした。

「これで私を包囲でもしたつもりか、『青』」

「確かに到達者エンドレスであるお前を封じるには、まだ足らぬだろうな。……しかし今のお主であれば、我々でも対処は出来る」

「……」

創造神それを抱えたままでは、魔力を用いた魔法や技は使えぬだろう。ならば、その生命力オーラの攻撃さえ封じれればいい」

 『青』は互いにそうした言葉を向け、創造神オリジンの近くでは魔力を用いた手段が使えないという状況を逆手に取った手段を用いる。
 攻撃手段を限定させる事で到達者エンドレスとしての真価を発揮させないよう努める『青』は、少しでも有利な状況を作り出した。

 そうした間に姿勢を整え直したエリクとマギルスは、再び武器を握り締めながらウォーリスに鋭い眼光を向ける。
 ウォーリスもそれに気付きながら、右手に創造神オリジンを抱えたまま身構えた。

 そんな彼の姿を見て、『青』は奇妙な表情を浮かべて問い掛ける。

創造神オリジンは手放さぬつもりか。今の状況で、創造神それは邪魔でしかないだろうに」

「……貴様には分からないだろう」

「?」

「この子は私にとって、重荷などではない。――……それにお前達を倒す程度なら、今のままで十分だ」

「ッ!!」

 そうしてこの状況を許容するウォーリスは、己の肉体から凄まじい生命力オーラを発し始める。 
 その圧力は囲んでいるエリクやマギルスにすら寒気を与える程に巨大な存在感であり、僅かな隙すら無いように思わせた。

 こうしてエリク達の前に現れたウォーリスは、自分の娘リエスティアを抱えたまま彼等と対峙する。
 その姿はただの敵対者としてではなく、今までに無い覚悟を秘めているように見えた。
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