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螺旋編 四章:螺旋の邂逅
エリクと傭兵
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エリクの故郷である、ベルグリンド王国。
当時の王国は貴族達が各領地で平民を支配し、個々に財力と兵力を持った上でベルグリンド王族という血を上に立たせて政治を行っていた。
それ故に貴族と平民では生活に格段の差が生じ、また貴族達の気まぐれにより平民の給金と税収は均衡が保てず、平民の多くがその日を暮らす事も苦しい程に貧困となる。
またそうした貧困の中で苦しむ者達同士でも争いが起き、犯罪行為と呼ぶべき事が平民の中には横行し、国の内部で多くの犯罪者と盗賊を生み出す結果となった。
貴族達は自分に被害を及ばない事に対して無関心であり、また平民同士が傷つけ合う事にも興味が薄い。
しかし統治者としてそういう問題に取り組む必要はあると考えながらも、それに自身の兵力と時間を取られる事を極端に嫌った。
そんな貴族達が、そうした問題に対処するある方法を思い付く。
それが、ベルグリンド王国に傭兵団を作り出す事だった。
戦争で使える程の兵士はある程度の訓練と教養を求められいたが、傭兵はそうしたモノを必要とせずに基本的に使い捨ての兵力として用いられる。
そうした傭兵達に盗賊の処理を任せ、更に煩わしい魔物や魔獣達も討伐させた。
それに対する報酬を傭兵達に払いながらも、基本的に相場以下の報酬を払って安く済ませる。
失っても損とはならない使い捨ての駒として貴族達はそれぞれに自領で傭兵団を組織させ、傭兵達に最低限の装備と給金を与えながら、それに見合わぬ最大限の仕事を課した。
そんなベルグリンド王国の王都周辺にある貧民街に、一人の幼子が捨てられる。
それを見つけたのは、貧民街に住む一人の老人。
その老人は国の争いで子供を失い、それに伴い妻が病を患いながら衰弱死し、自分の家族を全て失った男だった。
その老人は貧民街の路地裏の物影で、捨てられていた幼子を見つける。
貧民街ではそうした事は珍しく事でもなく、子供を産んだ娼婦や一家が苦しい生活の中で子供を育てられずに、こうした場所に捨てる事があった。
その幼子も、よくある事の一つだと見つけた老人は考え至る。
そして声を発する様子も無い幼子を見て、既に長く死んでいるものだと老人は察した。
しかし老人がその場を去ろうとすると、幼子が僅かに声を発する。
それに気付いた老人は振り返り、何を思ったのか捨てられていた幼子を抱え、そのまま家に連れ帰った。
その幼子は老人に保護され、すくすくと育つ。
三歳になる頃には他の子供に比べて逞しい体格が目立ち始め、五歳になる頃には老人の背丈に近しい体格となっていた。
その子供に、老人は『エリク』という名を与えた。
それは老人の死んだ息子と同じ名前でもある事を、エリク本人は知らない。
その老人も、エリクが五歳になる頃に病に伏せてしまう。
衰弱し咳き込む老人の傍で看病するという行動すらエリクは分からず、ただ老人の最後を見届けるしかなかった。
エリクにとって、老人は唯一の家族と呼べる人物だったかもしれない。
それを失ったエリクは、ベルグリンド王国の中で再び天涯孤独の身となった。
老人が僅かに持っていた金銭の扱い方も知らず、またそうした物を利用して食べ物を買うという知識すら乏しいエリクは、同じ貧民街に暮らす者達が外にある森で食べ物を集めている事を耳にする。
それを聞いたエリクは、老人の家にあった錆びた剣を手に取った。
それが老人にとって息子エリクの形見だと知らないエリクは、それを持ち出して貧民街の外に行き、森の中で食べられそうな物を探すようになった。
そんなある日、幼いエリクは魔物化している二メートル前後の狼と遭遇する。
初めて見る魔物にエリクは驚き、また群れからはぐれた狼も相手を食べられるモノと認識し、飢えた腹を満たす為に襲い掛かって来た。
戦いの仕方すら知らないエリクは、錆びた剣を振り回して狼に対抗する。
しかし狼の牙と爪はエリクを切り裂き、押し倒されたエリクは迫る狼の口と牙に恐怖しながら抗った。
その瞬間、エリクは子供らしからぬ力を込めて錆びた剣先を狼の胴体に突き入れる。
そして錆びた剣は折れ、狼は食い込んだ剣と切り裂かれた傷によって数分後に絶命した。
エリクはこうして初めて魔物と戦い、そして傷だらけになりながらも生き延びる。
そして倒した魔物の狼を抱えて持ち帰り、血だらけのエリクを見た貧民街の者達は驚きのあまりに遠ざかった。
そんな貧民街の者達に気付いたエリクは、いつも老人にしていたように尋ねる。
「――……これ」
「……?」
「これ、どうしたらいい?」
「え……」
エリクは初めて生きた獲物を狩ったが、どうすればいいのか分からない。
そんなエリクの様子に貧民街の者達は唖然とし、血だらけのエリクを見ながら仕方なしに魔物の死体を解体できる場所を教えた。
エリクはその毛皮などを素材として売り、初めて金銭を得る。
そして金銭の使い方を知らないエリクは、解体屋の中年男に初めて金銭という物がどういう事に使われるかを教えられた。
老人が死んでからのエリクは、自分が生きる為に必要な最低限の物事を覚えていく。
解体屋に教えられた武器屋で、エリクは新たな武器を手に入れた。
しかし鉄製の武器は高く、エリクは錆びて折れた剣と棍棒を持ち、僅かに得られた食料を抱えて再び森に行く。
そして食べられる木の実や草を自分で食べて判別し、再び動物や魔物を見つけるとエリクは戦い、それ等を持ち帰っては解体屋に渡して金銭を得る。
その中には下級魔獣も存在し、持ち込まれる獲物に解体屋は驚きを浮かべながら口元をニヤけさせた。
そうした生活を続けたエリクは、貧民街の中で噂として広まる。
『魔獣を狩る子供が王都の貧民街にいる』。
その噂はベルグリンド王国の王都に所属する、ある傭兵団にも伝わった。
その傭兵団を纏めている団長は自分の足で噂の子供を確かめる為に、噂の貧民街へと向かう。
そして住民から噂の子供の事を尋ね、その子供が訪れる解体屋の事を聞いた。
その解体屋を尋ねた傭兵団の団長は、事情を尋ねる。
今日も来るだろうと聞いた団長はそのまま待っていると、エリクがいつものように倒した魔物を抱えてやって来た。
その時のエリクは八歳前後ながらも、体格は成人男性と変わらぬ程に成長している。
その身体より大きな魔物化している猪を抱えて訪れる様子を見た傭兵団の団長は、驚きの視線を向けながら解体屋に話し掛けるエリクを見ていた。
「――……これ」
「おう、エリクか。今日は早かったな」
「なんか、いた」
「それ、猪ってんだよ。今日も随分と、デカいのを持ってきたなぁ」
「くえる?」
「おう、食えるぜ。血抜きは?」
「やった」
「そうか。んじゃ、いつも通り素材はこっちで買うぜ。肉は後で、燻製にして渡すぞ」
「ああ」
解体屋と話すエリクは、いつも通りに店の奥へと倒した獲物を置く。
そして軽く獲物を見積もる解体屋は、複数枚の銀貨と銅貨をエリクに手渡した。
「ほれ。銀貨一枚に、銅貨五枚だ」
「ああ」
傭兵団の団長は、その取引の金額に表情を強張らせる。
持ち込まれた魔物の猪は、頭部の陥没以外に特に目立った傷は無い。
エリクが持つ棍棒で一撃で仕留められている事が、傭兵として一目で理解できる。
その団長が軽く見積もれば、その魔物の猪は金貨三枚以上にもなるように見えた。
食べられる肉を全て燻製にし、更に解体などの手間賃を考えても、持ち込んだエリクの取り分は素材だけでも金貨一枚程にはなるだろう。
それが一割にも満たないの金額で取引されているのを見た傭兵団の団長は、思わず口に出して解体屋を問い詰めた。
「――……おいおい。これだけの獲物で銀貨一枚って、ぼったくり過ぎだろうがよ?」
「な、なんだよ。アンタには関係ねぇだろ!」
「坊主。お前、それだけの獲物なら金貨一枚を要求しても文句は無いんだぞ?」
「……きんかいちまいって、なんだ?」
「!?」
エリクは傭兵団の団長が何を言っているか理解できず、また言葉も分からずに首を傾げる。
そのエリクの様子で、傭兵団の団長は目の前の子供が物事に対して無知が過ぎる事を察した。
そしてそれを利用している解体屋を睨んだ傭兵団の団長は、騙されているエリクに話し掛けた。
「おい、坊主」
「?」
「お前、俺の所に来い」
「……?」
「こんな所で魔物狩りして小銭しか稼げないくらいだったら、俺の傭兵団に来いって言ってるんだ」
「……?」
「お前みたいな奴等がいる場所だよ。……傭兵を知らないのか?」
「……なにいってるか、わからない」
「そうか……」
困惑しながらそう呟くエリクの様子で、物事どころか言葉の覚えすら危うい事に気付いた傭兵団の団長は、解体屋を睨む。
その睨みに含まれた殺気に気付いた解体屋はエリクから遠ざかり、傭兵団の団長はエリクに歩み寄って肩に手を置いた。
「俺は『黒獣傭兵団』の団長、ガルドだ」
「……びす、がる……?」
「エリクだったな。俺がお前を、一人前の傭兵にしてやる」
「ようへい……?」
そうしてガルドに腕を引かれたエリクは、解体屋を後にして王都にある傭兵団の詰め所に赴く。
そして半ば強制的に、黒獣傭兵団に加入させられた。
その日、八歳のエリクはベルグリンド王国で傭兵となる。
これがエリクにとって、傭兵として生きていく始まりだった。
当時の王国は貴族達が各領地で平民を支配し、個々に財力と兵力を持った上でベルグリンド王族という血を上に立たせて政治を行っていた。
それ故に貴族と平民では生活に格段の差が生じ、また貴族達の気まぐれにより平民の給金と税収は均衡が保てず、平民の多くがその日を暮らす事も苦しい程に貧困となる。
またそうした貧困の中で苦しむ者達同士でも争いが起き、犯罪行為と呼ぶべき事が平民の中には横行し、国の内部で多くの犯罪者と盗賊を生み出す結果となった。
貴族達は自分に被害を及ばない事に対して無関心であり、また平民同士が傷つけ合う事にも興味が薄い。
しかし統治者としてそういう問題に取り組む必要はあると考えながらも、それに自身の兵力と時間を取られる事を極端に嫌った。
そんな貴族達が、そうした問題に対処するある方法を思い付く。
それが、ベルグリンド王国に傭兵団を作り出す事だった。
戦争で使える程の兵士はある程度の訓練と教養を求められいたが、傭兵はそうしたモノを必要とせずに基本的に使い捨ての兵力として用いられる。
そうした傭兵達に盗賊の処理を任せ、更に煩わしい魔物や魔獣達も討伐させた。
それに対する報酬を傭兵達に払いながらも、基本的に相場以下の報酬を払って安く済ませる。
失っても損とはならない使い捨ての駒として貴族達はそれぞれに自領で傭兵団を組織させ、傭兵達に最低限の装備と給金を与えながら、それに見合わぬ最大限の仕事を課した。
そんなベルグリンド王国の王都周辺にある貧民街に、一人の幼子が捨てられる。
それを見つけたのは、貧民街に住む一人の老人。
その老人は国の争いで子供を失い、それに伴い妻が病を患いながら衰弱死し、自分の家族を全て失った男だった。
その老人は貧民街の路地裏の物影で、捨てられていた幼子を見つける。
貧民街ではそうした事は珍しく事でもなく、子供を産んだ娼婦や一家が苦しい生活の中で子供を育てられずに、こうした場所に捨てる事があった。
その幼子も、よくある事の一つだと見つけた老人は考え至る。
そして声を発する様子も無い幼子を見て、既に長く死んでいるものだと老人は察した。
しかし老人がその場を去ろうとすると、幼子が僅かに声を発する。
それに気付いた老人は振り返り、何を思ったのか捨てられていた幼子を抱え、そのまま家に連れ帰った。
その幼子は老人に保護され、すくすくと育つ。
三歳になる頃には他の子供に比べて逞しい体格が目立ち始め、五歳になる頃には老人の背丈に近しい体格となっていた。
その子供に、老人は『エリク』という名を与えた。
それは老人の死んだ息子と同じ名前でもある事を、エリク本人は知らない。
その老人も、エリクが五歳になる頃に病に伏せてしまう。
衰弱し咳き込む老人の傍で看病するという行動すらエリクは分からず、ただ老人の最後を見届けるしかなかった。
エリクにとって、老人は唯一の家族と呼べる人物だったかもしれない。
それを失ったエリクは、ベルグリンド王国の中で再び天涯孤独の身となった。
老人が僅かに持っていた金銭の扱い方も知らず、またそうした物を利用して食べ物を買うという知識すら乏しいエリクは、同じ貧民街に暮らす者達が外にある森で食べ物を集めている事を耳にする。
それを聞いたエリクは、老人の家にあった錆びた剣を手に取った。
それが老人にとって息子エリクの形見だと知らないエリクは、それを持ち出して貧民街の外に行き、森の中で食べられそうな物を探すようになった。
そんなある日、幼いエリクは魔物化している二メートル前後の狼と遭遇する。
初めて見る魔物にエリクは驚き、また群れからはぐれた狼も相手を食べられるモノと認識し、飢えた腹を満たす為に襲い掛かって来た。
戦いの仕方すら知らないエリクは、錆びた剣を振り回して狼に対抗する。
しかし狼の牙と爪はエリクを切り裂き、押し倒されたエリクは迫る狼の口と牙に恐怖しながら抗った。
その瞬間、エリクは子供らしからぬ力を込めて錆びた剣先を狼の胴体に突き入れる。
そして錆びた剣は折れ、狼は食い込んだ剣と切り裂かれた傷によって数分後に絶命した。
エリクはこうして初めて魔物と戦い、そして傷だらけになりながらも生き延びる。
そして倒した魔物の狼を抱えて持ち帰り、血だらけのエリクを見た貧民街の者達は驚きのあまりに遠ざかった。
そんな貧民街の者達に気付いたエリクは、いつも老人にしていたように尋ねる。
「――……これ」
「……?」
「これ、どうしたらいい?」
「え……」
エリクは初めて生きた獲物を狩ったが、どうすればいいのか分からない。
そんなエリクの様子に貧民街の者達は唖然とし、血だらけのエリクを見ながら仕方なしに魔物の死体を解体できる場所を教えた。
エリクはその毛皮などを素材として売り、初めて金銭を得る。
そして金銭の使い方を知らないエリクは、解体屋の中年男に初めて金銭という物がどういう事に使われるかを教えられた。
老人が死んでからのエリクは、自分が生きる為に必要な最低限の物事を覚えていく。
解体屋に教えられた武器屋で、エリクは新たな武器を手に入れた。
しかし鉄製の武器は高く、エリクは錆びて折れた剣と棍棒を持ち、僅かに得られた食料を抱えて再び森に行く。
そして食べられる木の実や草を自分で食べて判別し、再び動物や魔物を見つけるとエリクは戦い、それ等を持ち帰っては解体屋に渡して金銭を得る。
その中には下級魔獣も存在し、持ち込まれる獲物に解体屋は驚きを浮かべながら口元をニヤけさせた。
そうした生活を続けたエリクは、貧民街の中で噂として広まる。
『魔獣を狩る子供が王都の貧民街にいる』。
その噂はベルグリンド王国の王都に所属する、ある傭兵団にも伝わった。
その傭兵団を纏めている団長は自分の足で噂の子供を確かめる為に、噂の貧民街へと向かう。
そして住民から噂の子供の事を尋ね、その子供が訪れる解体屋の事を聞いた。
その解体屋を尋ねた傭兵団の団長は、事情を尋ねる。
今日も来るだろうと聞いた団長はそのまま待っていると、エリクがいつものように倒した魔物を抱えてやって来た。
その時のエリクは八歳前後ながらも、体格は成人男性と変わらぬ程に成長している。
その身体より大きな魔物化している猪を抱えて訪れる様子を見た傭兵団の団長は、驚きの視線を向けながら解体屋に話し掛けるエリクを見ていた。
「――……これ」
「おう、エリクか。今日は早かったな」
「なんか、いた」
「それ、猪ってんだよ。今日も随分と、デカいのを持ってきたなぁ」
「くえる?」
「おう、食えるぜ。血抜きは?」
「やった」
「そうか。んじゃ、いつも通り素材はこっちで買うぜ。肉は後で、燻製にして渡すぞ」
「ああ」
解体屋と話すエリクは、いつも通りに店の奥へと倒した獲物を置く。
そして軽く獲物を見積もる解体屋は、複数枚の銀貨と銅貨をエリクに手渡した。
「ほれ。銀貨一枚に、銅貨五枚だ」
「ああ」
傭兵団の団長は、その取引の金額に表情を強張らせる。
持ち込まれた魔物の猪は、頭部の陥没以外に特に目立った傷は無い。
エリクが持つ棍棒で一撃で仕留められている事が、傭兵として一目で理解できる。
その団長が軽く見積もれば、その魔物の猪は金貨三枚以上にもなるように見えた。
食べられる肉を全て燻製にし、更に解体などの手間賃を考えても、持ち込んだエリクの取り分は素材だけでも金貨一枚程にはなるだろう。
それが一割にも満たないの金額で取引されているのを見た傭兵団の団長は、思わず口に出して解体屋を問い詰めた。
「――……おいおい。これだけの獲物で銀貨一枚って、ぼったくり過ぎだろうがよ?」
「な、なんだよ。アンタには関係ねぇだろ!」
「坊主。お前、それだけの獲物なら金貨一枚を要求しても文句は無いんだぞ?」
「……きんかいちまいって、なんだ?」
「!?」
エリクは傭兵団の団長が何を言っているか理解できず、また言葉も分からずに首を傾げる。
そのエリクの様子で、傭兵団の団長は目の前の子供が物事に対して無知が過ぎる事を察した。
そしてそれを利用している解体屋を睨んだ傭兵団の団長は、騙されているエリクに話し掛けた。
「おい、坊主」
「?」
「お前、俺の所に来い」
「……?」
「こんな所で魔物狩りして小銭しか稼げないくらいだったら、俺の傭兵団に来いって言ってるんだ」
「……?」
「お前みたいな奴等がいる場所だよ。……傭兵を知らないのか?」
「……なにいってるか、わからない」
「そうか……」
困惑しながらそう呟くエリクの様子で、物事どころか言葉の覚えすら危うい事に気付いた傭兵団の団長は、解体屋を睨む。
その睨みに含まれた殺気に気付いた解体屋はエリクから遠ざかり、傭兵団の団長はエリクに歩み寄って肩に手を置いた。
「俺は『黒獣傭兵団』の団長、ガルドだ」
「……びす、がる……?」
「エリクだったな。俺がお前を、一人前の傭兵にしてやる」
「ようへい……?」
そうしてガルドに腕を引かれたエリクは、解体屋を後にして王都にある傭兵団の詰め所に赴く。
そして半ば強制的に、黒獣傭兵団に加入させられた。
その日、八歳のエリクはベルグリンド王国で傭兵となる。
これがエリクにとって、傭兵として生きていく始まりだった。
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