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螺旋編 三章:螺旋の未来
未来の兵器
しおりを挟むアスラント同盟国の港都市が、魔導国の飛空艇から降下した魔導人形に襲われる。
その港都市に訪れ事態を察知したエリク達は偽装魔法が解けた戦艦の甲板に上がり、マギルスの青馬で陸まで飛べる位置まで待機していた。
その中で出現させた青馬に騎乗したマギルスに、エリクは近寄り頼む。
「――……マギルス」
「ん?」
「俺も乗せてくれ。陸に着いた後は、俺は勝手に降りる」
「分かった! 僕も適当に敵っぽいのを倒すね!」
「ああ。……そしてケイルは、この船で上陸する者達と一緒に行動してくれ」
「ここの奴等とか?」
「ああ。ケイルが一緒に戦ってくれれば、助かるだろう」
「……まぁ、お前等と一緒に付いて行って、どうこう出来るとも限らないしな。分かった」
「頼む」
「それじゃあ、行くよー!」
マギルスの後ろ側へ乗ったエリクは、空を駆ける青馬と共に港都市のある陸へ向かう。
そして港都市から立ちのぼる黒い煙と、襲撃され破壊され多くの兵士達が倒れ死んでいる都市の中を見下ろしながら、状況が自分の予想を遥かに超えた凄惨なモノだと理解した。
「……兵士達が、ほとんど死んでいる」
「あの鉄っぽいのが、敵かな?」
「ああ。……手から、銃のような弾を出しているな」
「へぇ、でも動くは全然遅いね。楽しく遊べるかなぁ?」
「兵士達の銃が、あの鉄の塊に弾かれている。相当に硬いな」
「じゃあ、思いっきり斬れるかな!」
マギルスとエリクは都市を見下ろし、敵の情報と同盟国側の情勢を理解する。
魔導国の魔導人形は文字通り鉄壁のような防御力であり、銃や爆薬を用いている同盟国の兵士達でも有効打を与えられていない。
その一方、魔導人形から放たれる光弾を同盟国は防ぐ手段が少なく、距離を取り爆薬と射撃で足止めするしかない現状だった。
その状況を理解したエリクは、港都市の出入口側の通路で陣取りながら魔導人形の侵入を阻んでいる兵士達を確認する。
そして魔導人形が放った光弾を圧縮した砲撃が障害物を取り除き、兵士達が吹き飛ばされる光景を目にした。
「……マギルス、あそこまで飛んでくれ。降りる」
「いいよー!」
エリクの頼みにマギルスは応え、魔力障壁の上を駆ける青馬を操り指示された場所へ向かう。
そして出来る限り低空を飛行した後、エリクはそのまま飛び降りながら大剣に魔力を纏わせて攻撃しようとする下の魔導人形に投げ放ち、兵士達の援護に入った。
「さーて、僕も遊ぼう!」
エリクを送り届けたマギルスは、軍港と造船所がある場所に数十体の魔導人形を確認し、僅かに生き残っている兵士達が応戦している姿を確認する。
そして青馬と共に空を駆け上がりながら向かい、エリクと同じように下へ飛んで魔導人形の斬り飛ばしていった。
エリクとマギルスの武器に込められた魔力と腕力は、鉄製の魔導人形が誇る防御力を易々と切り裂く。
二人は互いに目に付いた魔導人形を狙い、その二人の素早さに魔導人形は反応しきれずに成す術も無く破壊されていった。
そして二人が上陸した十数分後、海軍艦隊の戦艦達も陸へ接舷し、数十人以上の兵士達と乗務員達と共に上陸を果たす。
司令官の指揮で上陸した兵士達は部隊で散開し、都市内部の状況把握と生存者達の救出を最優先に動き出した。
ケイルもその部隊の一つに加わり、都市を守る結界を作動させていた施設へ向かう。
その道中に魔導人形の一体を発見した部隊は銃を構え、素早く撃ち放った。
しかし案の定、銃弾は鉄の防御で弾かれる。
その時に敵が新型魔導人形を用いている事を、部隊長と兵士達は察した。
そして兵士達を発見した魔導人形は緩やかに振り向き、手を向けて指の銃口を部隊に向ける。
すぐに退くように指示を飛ばそうとした部隊長だったが、その横を駆け抜けて魔導人形に向かう赤髪の女性に驚きながら怒鳴るように制止を促した。
「敵は新型だ! 全隊は引いて――……ケイル殿!? 駄目だ! あの敵は――……」
「――……トーリ流術、裏の型。『鳴雷』」
「!?」
脚にオーラを集中させたケイルは脚力を増し、数十メートルの距離を一秒にも満たない時間で縮める。
そして魔導人形の懐に入り、素早く視線を動かし関節部分を確認すると、左腰に備える魔剣の柄を握った。
「――……トーリ流術、裏の型。『秋沙雨《あきさざめ》』」
「!?」
ケイルは強く踏み込むと同時に常人には見えぬ速度でオーラを纏わせた魔剣を抜き放ち、的確に魔導人形の関節部を狙う。
そして目に見えぬ程の速度と回数で斬った後に魔剣を鞘に戻して飛び退くと、魔導人形はまるで解体されるように各関節部が胴体と切り離された。
瞬く間に装甲の分厚い魔導人形を切り裂くという剣技を魅せたケイルの姿に、兵士達が呆然とする。
そして振り返ったケイルは、呆然とする兵士達に告げた。
「おい、さっさと先に進もうぜ」
「……は、はい!」
無愛想に振り返りながらそう述べるケイルに、部隊長と共に兵士達が思わず敬礼を向ける。
目の前の赤毛の女性が常人ではなく、過去にルクソード皇国を災厄から救った英雄の一人である事を、改めて兵士達は自覚させられた。
そしてケイルに向けられる視線は途端に尊敬を含み、同時に素晴らしい剣技を持つ美しい女剣士という認識も向けられる。
その視線に気付いているのか、煩わしそうな表情を浮かべるケイルは兵士達が向ける視線を無視しながら同行した。
こうして英雄達の活躍により、港都市を襲撃している魔導人形の多くが破壊されていく。
その最中、エリクは逃げ遅れていた民間人達の救出した。
マギルスも軍港主要施設を制圧していた魔導人形達を破壊し、上陸部隊と生き残っていた兵士達を遊びのついでに助ける。
そしてケイルと共に向かった部隊が結界を操作する施設へ赴き、破壊された結界の修復と上空に対する再展開を急がせた。
そんな上陸部隊の兵士達と合流していた三人は、それぞれ通信機を持った兵士に状況を伝えられる。
「――……港都市内部の敵魔導人形、全て反応消失したとのこと。皆さんのおかげで、撃破する事が出来ました!」
「そうか」
「後は、この上空にいる飛空艇だけですが……」
「……あの、丸い点のようなモノか?」
「はい。敵はかなりの高度から、魔導人形を投下してきます。それが奴等の常套手段なんです」
「……そうか。まだ、降って来るか?」
「大抵は、地上に降下した魔導人形が全て破壊されると、そのまま去っていきますが……」
「……まだ、残っているな」
「そうですね。……まだ、降下させる気なのでしょうか……?」
通信機を持つ兵士と共に、空高くに滞空している物体をエリクは確認する。
地上の魔導人形が全て破壊されたにもかかわらず、魔導国の飛空艇は退こうとしない。
それは今まで観測されなかった事態であり、兵士達も怪訝で緊張感を含んだ表情を浮かべていた。
そうした中で、戦艦で指揮する司令官から新たな情報が兵士達に伝わる。
その情報を通信越しに聞いた兵士達は驚愕を浮かべ、傍にいるエリク達に伝えた。
「――……なんだって!?」
「どうした?」
「……敵飛空艇に動き有り。どうやら、降下しているそうです……!」
「!」
その情報が上陸部隊とエリク達に伝わり、全員が上空の物体を見る。
通信で伝えられた情報通り、点ほどの大きさだった物体が次第に近付き、その輪郭を地上からでも見える位置へと降下して来た。
敵飛空艇は直径二百メートルの大きさで、魔導人形の球体と似た形を模っている。
どういう原理でそれが浮いているのは理解できない三人を他所に、飛空艇に変化が見え始めた。
球体の表面に機械的な機構で出現し、同盟国の戦艦に備わる主砲と同じような魔導兵器が見える。
エリク達は魔導人形を退ける事に成功しながらも、今度は飛空艇という巨大な飛行兵器と戦う事態になった。
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