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1章 潔白の詐欺師
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依頼人は東山という男性だった。
終始怯えたように事務所を見ていて、私たちと目線が合わない。
鴉さんは"支度を整えてくるから依頼人に飲み物を頼むよ!"とだけいい、部屋に引っ込んでいってしまった。
飲み物ってコーヒー?こんな本格的なコーヒーマシン、使ったことないから分からないんだけど……
「そこに座って待っていてください。今飲み物をお持ちします」
「あの……っ!ここって探偵事務所なんですよね?」
「はい。散らかってますけど……」
……と苦笑いしながら東山さんの言葉に答えると彼の怯えたような目と視線があった。
「アイツは絶対に信者なんです!俺、騙されて……
警察にも言えないことなんで……その………」
要領を得ないことを必死に伝えようとしている。
そんなこと私に今言われても何も答えられないのに。
「えっと、鴉さ……鴉越が来るまでお待ちください。
私もまだ新人っていうか……ただの助手なので……」
「やあ!お待たせして申し訳ない!久々の客人なので支度に気合が入ってしまったよ」
ふふんと自慢げに鼻を鳴らす彼は、バサッとコートを靡かせてキランと効果音でもつきそうな笑みを浮かべた。
さっきまでボサッとしていた癖っ毛は整えられ、ヒゲの処理もしっかりされている。
身なりを整えることで印象がかなり変わり、コーヒー片手にオシャレな街でも歩いてそうなイケオジに変身した。
「さて!東山さん。貴方が抱える悩みの種を僕に教えてほしい!
僕が見事、その種を芽吹く前に処理してみせようじゃないか!!」
……うん、まあ中身は変わらずの変人のままだけど。
その独特というか厨二っぽいというか……そんな口調を聞いた東山さんは"なんだこいつ"と言うような顔をして一瞬私の方をチラ見した。
いや……分かりますその気持ち。確かになんだこいつってなりますよね。
東山さんは疑いつつも話すことを決めたのか、おずおずと話し始めた。
_______
2週間前
仕事帰りの東山さんは、あるBARに入った。
カランカランッと心地よい音を響かせて入った店内は、ガランとしていたがどこからか騒がしい声が響いていたらしい。
ビールを頼んだ東山さんはカウンターに座り、仕事の疲れを忘れるために酒を煽った。
そんな時だった。
カウンターにいる店主がビールを飲んでいた東山さんにこう話しかけてきたのだという。
『お客さん、当店では面白いゲームがあるんですけど、見ていきませんか?』
そういえば、店の奥からは騒がしい声が聞こえている。
もしかして、その面白いゲームとやらで盛り上がっているんだろうか?
すでにビールで気分が良くなっていた東山さんは店主の言葉に乗り、案内されるままにカウンターの奥の扉を潜った。
ーー
「その部屋は端的に言うと、カジノ場でした。
ルーレットやブラックジャック、バカラといった定番のゲームを大勢が楽しんでいたんです」
「カジノ場は日本では違法……つまり、違法の店ということだね?」
「え、ええ……その時はまさかカジノ場があるなんて思いませんでした。でも酒で酔っていたっていうのもあって違法なものだと判断も出来なかったんです」
それくらい堂々とゲームをしていたので……と東山さんは肩をすくめて呟いた。
「ふむ、確かに違法な行為も堂々とされてしまえば、案外バレないものだからね。君が判断に迷ったのも無理はない。
続けてくれたまえ」
ーー
カジノ場に入った東山さんは、店主にゲームをしてみたらどうだと誘われた。
流石にそれはどうかと渋ったが、ゲームで勝てば酒代がタダになるかもしれないと唆されゲームに参加することを決めた。
選択したゲームはルーレットだった。
赤と黒の数字が書かれた盤とチップ、そしてカジノ場では最も目立つと行っても過言ではない大きなルーレット。
東山さんはそれらが置かれたテーブルの前に座った。
ゲームを始めようとしていた東山さんだったが、隣に男が座った。
白髪の若い男だったと言う。
その男が座った直後、周りの野次馬の声が一斉にうるさくなった。
インチキ野郎と叫ぶ者や、カジノの女王に愛されてる男と嫌みたらしく言う者の声が東山さんの耳に残った。
そんな野次馬の中、白髪の男はこう言った。
『お前らもさぁ、バレなきゃ犯罪じゃねーって分かってるからここにいるんだろ?
俺はなーんにもやってねえってのにインチキだとかイカサマだとか……アンタも酷え奴らだと思わない?』
東山さんに同意を求めるような声は相手の不感を買うような間伸びした声で、思わず東山さんも不快な気持ちになったとか。
そんな嫌な空気の中、ルーレットのゲームは始まった。
終始怯えたように事務所を見ていて、私たちと目線が合わない。
鴉さんは"支度を整えてくるから依頼人に飲み物を頼むよ!"とだけいい、部屋に引っ込んでいってしまった。
飲み物ってコーヒー?こんな本格的なコーヒーマシン、使ったことないから分からないんだけど……
「そこに座って待っていてください。今飲み物をお持ちします」
「あの……っ!ここって探偵事務所なんですよね?」
「はい。散らかってますけど……」
……と苦笑いしながら東山さんの言葉に答えると彼の怯えたような目と視線があった。
「アイツは絶対に信者なんです!俺、騙されて……
警察にも言えないことなんで……その………」
要領を得ないことを必死に伝えようとしている。
そんなこと私に今言われても何も答えられないのに。
「えっと、鴉さ……鴉越が来るまでお待ちください。
私もまだ新人っていうか……ただの助手なので……」
「やあ!お待たせして申し訳ない!久々の客人なので支度に気合が入ってしまったよ」
ふふんと自慢げに鼻を鳴らす彼は、バサッとコートを靡かせてキランと効果音でもつきそうな笑みを浮かべた。
さっきまでボサッとしていた癖っ毛は整えられ、ヒゲの処理もしっかりされている。
身なりを整えることで印象がかなり変わり、コーヒー片手にオシャレな街でも歩いてそうなイケオジに変身した。
「さて!東山さん。貴方が抱える悩みの種を僕に教えてほしい!
僕が見事、その種を芽吹く前に処理してみせようじゃないか!!」
……うん、まあ中身は変わらずの変人のままだけど。
その独特というか厨二っぽいというか……そんな口調を聞いた東山さんは"なんだこいつ"と言うような顔をして一瞬私の方をチラ見した。
いや……分かりますその気持ち。確かになんだこいつってなりますよね。
東山さんは疑いつつも話すことを決めたのか、おずおずと話し始めた。
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2週間前
仕事帰りの東山さんは、あるBARに入った。
カランカランッと心地よい音を響かせて入った店内は、ガランとしていたがどこからか騒がしい声が響いていたらしい。
ビールを頼んだ東山さんはカウンターに座り、仕事の疲れを忘れるために酒を煽った。
そんな時だった。
カウンターにいる店主がビールを飲んでいた東山さんにこう話しかけてきたのだという。
『お客さん、当店では面白いゲームがあるんですけど、見ていきませんか?』
そういえば、店の奥からは騒がしい声が聞こえている。
もしかして、その面白いゲームとやらで盛り上がっているんだろうか?
すでにビールで気分が良くなっていた東山さんは店主の言葉に乗り、案内されるままにカウンターの奥の扉を潜った。
ーー
「その部屋は端的に言うと、カジノ場でした。
ルーレットやブラックジャック、バカラといった定番のゲームを大勢が楽しんでいたんです」
「カジノ場は日本では違法……つまり、違法の店ということだね?」
「え、ええ……その時はまさかカジノ場があるなんて思いませんでした。でも酒で酔っていたっていうのもあって違法なものだと判断も出来なかったんです」
それくらい堂々とゲームをしていたので……と東山さんは肩をすくめて呟いた。
「ふむ、確かに違法な行為も堂々とされてしまえば、案外バレないものだからね。君が判断に迷ったのも無理はない。
続けてくれたまえ」
ーー
カジノ場に入った東山さんは、店主にゲームをしてみたらどうだと誘われた。
流石にそれはどうかと渋ったが、ゲームで勝てば酒代がタダになるかもしれないと唆されゲームに参加することを決めた。
選択したゲームはルーレットだった。
赤と黒の数字が書かれた盤とチップ、そしてカジノ場では最も目立つと行っても過言ではない大きなルーレット。
東山さんはそれらが置かれたテーブルの前に座った。
ゲームを始めようとしていた東山さんだったが、隣に男が座った。
白髪の若い男だったと言う。
その男が座った直後、周りの野次馬の声が一斉にうるさくなった。
インチキ野郎と叫ぶ者や、カジノの女王に愛されてる男と嫌みたらしく言う者の声が東山さんの耳に残った。
そんな野次馬の中、白髪の男はこう言った。
『お前らもさぁ、バレなきゃ犯罪じゃねーって分かってるからここにいるんだろ?
俺はなーんにもやってねえってのにインチキだとかイカサマだとか……アンタも酷え奴らだと思わない?』
東山さんに同意を求めるような声は相手の不感を買うような間伸びした声で、思わず東山さんも不快な気持ちになったとか。
そんな嫌な空気の中、ルーレットのゲームは始まった。
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