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絆
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『火花。紹介するわ。ふたりは私のお母様とお父様よ』
やっぱり!
「シュナのお父さんとお母さんってことは、アトランティカの王様と王妃様ってことだよね?」
『えぇ、そうよ』と、シュナが頷く。
ということはつまり、この男のひとがグラアナが愛した王子様で、女のひとがグラアナを悪い魔女に仕立てた王妃様……。
どっちも穏やかそうでとってもいいひとそうだけど……。
「でも、こんなにたくさんのマーメイドはどうしたの?」
『実はさっき、火花がグラアナに攫われたって、ドロシーたちが王宮へ報せに来てくれたのよ』
「えっ、そうだったの!?」
『それで慌てて火花を助けるために軍を連れてやってきたってわけ』
それは悪いことをしてしまった……。
「だからこんなに武器を持ったマーメイドたちがいるんだね」
このひとたち、みんな私を助けようとしてくれてたんだ。
「みんな、ありがとうございました。王妃様と国王様まで、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると、王妃様と国王様はにこっと優しく微笑んだ。
わぁ。すごくきれいな微笑み。思わず見惚れちゃうよ。
ぽ~っとしていると、王妃様が言った。
「とにかく、あなたが無事でよかったわ。さて、あなたたちは今すぐここを離れて、アトランティカの王宮に隠れていなさい」
「どうしてですか?」
『とうとう、グラアナをこの海から追い出すことが王宮議会で決定したのよ』
シュナは悲しそうに俯きながら言った。
「えっ!?」
どうしてそんなことになってるの!?
「アトランティカへ行ったら、既にタコが全部このひとたちに目撃したことを全部話していてくれたんだ」と、ノアくんが言う。
「タコ?」
ぽん、と真っ赤な顔をした丸いフォルムのタコの顔が過ぎる。
あ、そういえばグラアナについてタコがいろいろ教えてくれたんだっけ。
「シュナだけでなくシュナの友達まで襲うなんて、もう看過できないわ。海の安全は私たちロータス王家が守らなければならない。グラアナは私たちの海にいるべき生き物ではないの」
そんな……!!
ものすごい誤解だよっ!
「待って、王妃様、みんなも! それは誤解だよ! グラアナは悪い魔女なんかじゃないの!!」
慌てて訴える。
「えっ……」
ノアくんは驚いた顔をして、私を見た。
「たしかに最初、私はグラアナに捕まった。だけど、グラアナの家で話を聞いたの。そうしたら、海の魔女のあの噂は全然、まるっきり違ったんだよ!」
「えっ、そ、そうなの?」
ドロシーが驚いた顔をする。
「火花、どういうことよ。ちゃんと分かるように説明して」
ダリアンも私の話を聞こうとしてくれるけれど――。
「こらこら、あなたったらなにを言うの。グラアナは私たちの娘であるシュナの声を奪い、王国に住むマーメイドたちを脅したりもしたのよ。彼女たちからの証言もちゃんとある。悪い魔女以外のなにものでもないでしょう」
「それは違うの! たしかにマーメイドたちを脅したのはグラアナなんだけど……でも、それにはいろいろと事情があったんよ!」
訴えても、王妃様は私を見て憐れむばかり。
「可哀想に……きっとグラアナに恐ろしいことを言われて記憶が混濁しているんだわ」
「まぁ、そうなの?」とダリアン。
「火花ちゃん! 私がいるからもう大丈夫だよっ!」
ドロシーがぎゅっと抱きつく。
違うのに……! どうして誰も分かってくれないの!?
王妃様はグラアナの家をキッと睨んだ。
「皆の者! 今すぐグラアナを私たちの楽園から追い出すのです!」
王妃様が軍に指示を出す。
「おぉー!」
「戦だー!」
「皆の者、我に続けーっ!」
王妃様の一声によって、マーメイドたちはそれぞれ武器をかまえ、一斉にグラアナの家へ向かって侵攻を始めた。
わわっ! 大変だ!
「待って待って!」
私は慌ててドロシーを引き剥がす。
「わっ! 火花ちゃんっ!?」
ドロシーの止める声を無視して、わたしはグラアナの家の扉の前で大きく手を広げた。
「おい、魔女の娘! 邪魔をするな!」
「どけっ!」
「王妃様の命令に背くのは、国王に背くことと同義だぞ!」
怒号が飛び交う。
うぅ、怖い……けど、ここは引いちゃダメだ!
「お願いお願い! 少しでいいから話を聞いてよ!」
「火花、止めろ!」
「そうだよ! 火花ちゃん、危ないよ!」
「火花っ! こっちへ戻ってきなさい!」
ノアくんとドロシーに止められるけれど、私は扉の前に立つ。
「おどきなさい」
王妃様が言う。
「どかないっ!」
絶対どくもんか!
やっぱり!
「シュナのお父さんとお母さんってことは、アトランティカの王様と王妃様ってことだよね?」
『えぇ、そうよ』と、シュナが頷く。
ということはつまり、この男のひとがグラアナが愛した王子様で、女のひとがグラアナを悪い魔女に仕立てた王妃様……。
どっちも穏やかそうでとってもいいひとそうだけど……。
「でも、こんなにたくさんのマーメイドはどうしたの?」
『実はさっき、火花がグラアナに攫われたって、ドロシーたちが王宮へ報せに来てくれたのよ』
「えっ、そうだったの!?」
『それで慌てて火花を助けるために軍を連れてやってきたってわけ』
それは悪いことをしてしまった……。
「だからこんなに武器を持ったマーメイドたちがいるんだね」
このひとたち、みんな私を助けようとしてくれてたんだ。
「みんな、ありがとうございました。王妃様と国王様まで、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると、王妃様と国王様はにこっと優しく微笑んだ。
わぁ。すごくきれいな微笑み。思わず見惚れちゃうよ。
ぽ~っとしていると、王妃様が言った。
「とにかく、あなたが無事でよかったわ。さて、あなたたちは今すぐここを離れて、アトランティカの王宮に隠れていなさい」
「どうしてですか?」
『とうとう、グラアナをこの海から追い出すことが王宮議会で決定したのよ』
シュナは悲しそうに俯きながら言った。
「えっ!?」
どうしてそんなことになってるの!?
「アトランティカへ行ったら、既にタコが全部このひとたちに目撃したことを全部話していてくれたんだ」と、ノアくんが言う。
「タコ?」
ぽん、と真っ赤な顔をした丸いフォルムのタコの顔が過ぎる。
あ、そういえばグラアナについてタコがいろいろ教えてくれたんだっけ。
「シュナだけでなくシュナの友達まで襲うなんて、もう看過できないわ。海の安全は私たちロータス王家が守らなければならない。グラアナは私たちの海にいるべき生き物ではないの」
そんな……!!
ものすごい誤解だよっ!
「待って、王妃様、みんなも! それは誤解だよ! グラアナは悪い魔女なんかじゃないの!!」
慌てて訴える。
「えっ……」
ノアくんは驚いた顔をして、私を見た。
「たしかに最初、私はグラアナに捕まった。だけど、グラアナの家で話を聞いたの。そうしたら、海の魔女のあの噂は全然、まるっきり違ったんだよ!」
「えっ、そ、そうなの?」
ドロシーが驚いた顔をする。
「火花、どういうことよ。ちゃんと分かるように説明して」
ダリアンも私の話を聞こうとしてくれるけれど――。
「こらこら、あなたったらなにを言うの。グラアナは私たちの娘であるシュナの声を奪い、王国に住むマーメイドたちを脅したりもしたのよ。彼女たちからの証言もちゃんとある。悪い魔女以外のなにものでもないでしょう」
「それは違うの! たしかにマーメイドたちを脅したのはグラアナなんだけど……でも、それにはいろいろと事情があったんよ!」
訴えても、王妃様は私を見て憐れむばかり。
「可哀想に……きっとグラアナに恐ろしいことを言われて記憶が混濁しているんだわ」
「まぁ、そうなの?」とダリアン。
「火花ちゃん! 私がいるからもう大丈夫だよっ!」
ドロシーがぎゅっと抱きつく。
違うのに……! どうして誰も分かってくれないの!?
王妃様はグラアナの家をキッと睨んだ。
「皆の者! 今すぐグラアナを私たちの楽園から追い出すのです!」
王妃様が軍に指示を出す。
「おぉー!」
「戦だー!」
「皆の者、我に続けーっ!」
王妃様の一声によって、マーメイドたちはそれぞれ武器をかまえ、一斉にグラアナの家へ向かって侵攻を始めた。
わわっ! 大変だ!
「待って待って!」
私は慌ててドロシーを引き剥がす。
「わっ! 火花ちゃんっ!?」
ドロシーの止める声を無視して、わたしはグラアナの家の扉の前で大きく手を広げた。
「おい、魔女の娘! 邪魔をするな!」
「どけっ!」
「王妃様の命令に背くのは、国王に背くことと同義だぞ!」
怒号が飛び交う。
うぅ、怖い……けど、ここは引いちゃダメだ!
「お願いお願い! 少しでいいから話を聞いてよ!」
「火花、止めろ!」
「そうだよ! 火花ちゃん、危ないよ!」
「火花っ! こっちへ戻ってきなさい!」
ノアくんとドロシーに止められるけれど、私は扉の前に立つ。
「おどきなさい」
王妃様が言う。
「どかないっ!」
絶対どくもんか!
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