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最終話

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「アーサー」

 名前を呼ばれ、ハッとした。

「あ、うん。なに?」
「あのね、今日フィーネと地下森林の奥に行ったとき……不思議な洞窟を見つけたのだけど」
「洞窟? 地下森林の奥に?」
「あそこ……不思議な匂いがしたんです」
「不思議な匂い?」
「はい。上手く言えないのですけど……あれはたぶん」

 宝石の匂い。アナスタシアはぽつりとそう言った。

 アーサーは驚いた顔をして、アナスタシアを見る。
「宝石に匂いなんてあるの?」

 それは知らなかった。アーサーは試しにケープの留め具に使われているアメジストを鼻先に持っていく。しかし、特別匂いはしない。それを見ていたアナスタシアはくすくすと肩を揺らして笑った。

「私、もともと鼻が良くて……とはいっても、宝石に関してはなんですが」

 なんでも、アナスタシアが住んでいたマルク王国の南部では、宝石はほとんど取れなかったという。そのため、市場には偽物がよく出回っていたそうだ。

「私は、物心ついた頃からうちに来る商人の宝石を見ていたので」

 だから、本物か偽物か分かるようになったのかもしれない。

「あの洞窟からは、ゴールドと、それから……水晶の香りがしました」
「……そう、なのか……?」
「私はこの国に来て日が浅いですし、口を挟む権利もありませんが……掘ってみる価値はあるかもしれません」
「…………一か八か、か」

 かくして、アナスタシアの言うとおり、洞窟の奥を採掘してみると、大量の金が発掘されたのである。さらにそのすぐ近くには水晶で埋め尽くされた鍾乳洞と水源まであった。

 ずっと夢を追い続けていた無邪気な国民は、大喜びした。

 アーサーは発掘を支持したのはアナスタシアであると彼女の快挙を国民に知らせ、アナスタシアはあっという間に国民に受け入れられたのである。

 そしてその半年後……アナスタシアとアーサーの結婚式が執り行われた。
 
 美しいレースと刺繍が施された純白のマーメイドドレスをまとったアナスタシアはまるで花の精のよう。同じく純白のタキシード姿のアーサーは絶世の美青年であった。

 王家も国民も美しいふたりの結婚にため息を漏らし、盛大に祝福した。

 その後、アーサーは王位を継承し、レグール国王となった。大きな資源を得た新たなレグール王国はたちまち世界最大の大国となり、仕事を求めたたくさんの人々が他国から流れ込んできた。それに比例して、近郊の国々は衰退していった。

 他国の荒廃にアーサーとアナスタシアは心を痛め、各国と同盟を組み、お互いを支え合うこととした。

 もちろん、アーサーは敵対したマルク王国にも手を差し伸べようとした。しかし、前国王から王位の座を引き継いだグルー国王はそれを拒絶。

 結果、国民はこぞって他国(特にレグール王国)への亡命を始め……マルク王国はみるみる衰退し、滅亡の一途を辿った。

 そして、マルク王国は最終的にレグール王国の領土となったのである。
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みんなの感想(1件)

ほたる
2024.05.27 ほたる

もう少し、マルコ王国とクズ王子のざまぁが読みたかったな。

朱宮あめ
2024.05.27 朱宮あめ

ほたるさま、感想ありがとうございます!

たしかに、私も書いていてなんか淡白だなぁ……と感じていたところ、ピンポイントな感想でございました!

足りない部分がじぶんでは割とぼんやりとしか見えていなかったりするので、こういったご感想はとてもありがたいです!

次書くときの参考にさせていただきますね!!
そのときはまた読みに来てくださいね!!

朱宮あめ

解除

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