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しおりを挟む――残像が弾けた。
小さな女の子が、ベッドに丸くなって、なにかに怯えるように泣いている。
震える肩。悲痛な泣き声。
こちらの胸まで震えてくるようだった。
映像が切り替わった。
静寂の中、ぱら、と紙が擦れる音がする。
セーラー服を着た女の子が、教室の隅で本を読んでいる。顔に見覚えがある。直前の残像で出てきた子だ。成長しているけれど、さっき泣いていたあの幼子の面影を残している。
女の子は、あの頃とはぜんぜん違った。
感情を失ったかのように表情がなく、ひとり、能面のような顔で読書をしている。
周囲は喧騒に包まれているのに、彼女の周りには、どこまでも深い静寂が落ちていた。
チャイムが鳴り、女の子が席を立つ。カバンを持って、教室を出ていく。すべてを拒絶するような、拠り所のないその小さな背中があまりに痛々しくて、思わず手を伸ばす。
しかし、手が彼女の肩に触れかけたとき、残像はふっと、煙のように消えてしまった。
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