21 / 24
21
しおりを挟む
今回、ピンク頭さんは洗礼以降に魅了の力が芽生えたものの、本人に魅了の力の自覚があったため悪質だったのだ。彼女は魅了だけでなく魔力を全て封じる措置が取られたのちに国の北限にある、気候も戒律もこの国で一番厳しい修道院へと移送されることが決定したとか。
「第二王子殿下やその側近らが持つ護符が魅了の反応を示して変色したために、早々にピンク頭の魅了能力は把握されていてね。ただ、それが彼女の意識下か無意識かの見極めと共に、彼女の背後に作為や謀略が無いかの捜査をしていたんだって」
「無かったんですね?」
「そう、ピンク頭は故意に殿下や側近にその力をふるって篭絡しようとしていた。本人は”篭絡”ではなく乙女ゲーム的”攻略”のつもりだっただろうけど」
「でも、護符で殿下方にはその力は及ばなかった」
「護符の事を知らなかったのか、知っていてなお自分の力に自信があったのかは知らないけどな。殿下方は背後関係の調査の時間稼ぎに、ピンク頭が傍にいることを許容していたんだと。で、ピンク頭に近づく男を排除してた。罪状がハッキリするまでは魅了持ちであることの公表は差し控えられていたからさ」
でも、俺は近づいてたんじゃなくて纏わりつかれていた被害者なのに威嚇されてたんだぜ?すげー、かわいそうじゃん。そういうスタン様がしょんぼりして見えたので癒やしてあげたいと思ったけれど、癒しを求めてきたスタン様を抱きしめるのと違って、自分から抱きつくのは中々難しい。
「で、カシを恫喝したときの”魅了が効かない”発言だ」
「無意識ではなく故意であることが確定ですね」
「そう。で、ピンク頭の家が無関係であることも調査の結果はっきりした。カシのお手柄だ」
「スタン様のお役に立てましたか?」
「うん、ばっちり役に立ってくれたよ、カシ、ありがとう」
やった!褒めてもらえた。
「魅了の力は使っているうちに本人も蝕まれるのではないかと言うのが、以前の魅了事件を見てきた先生の見解だ」
「そうなんですか」
「ああ。だから、ピンク頭もその力さえなければもっとまともにこの世界で生きられたのかもしれない。現実と空想の境目が曖昧になって、思うようにならない周囲に苛立ちを感じながら生きていたのは結構しんどかっただろうと思う。光の聖女だなんて、誰も聞いたことのないような称号を勝手に自分でつけてたけど、この世界に似た乙女ゲームが本当にあったかどうかも怪しいしな。もうそれは確認のしようがないけど。……魅了の力を封じられたことで、本人も楽になれるといいんだけどな」
「ピンク頭さんも大変だったんですね」
「第二王子殿下らも俺も迷惑はかけられたけど、実際に本人も気の毒だとは思う。洗礼時に魅了の資質が確認できれば、その時点で封じられてピンク頭も生き易かっただろうから。まあでも、修道院入りと言っても永預かりじゃなく短預かりだから、本人次第で社交界は無理でも普通の生活に戻れるんだし、しっかりやって欲しいよ」
永預かりは本人希望の元で修道院で一生を神に捧げる生活を送ること。短預かりは、今回のように騒動をおこしたり、言動に問題があったりする貴族子女が神に仕えるという名目のもとで修行生活をする事だ。ただし、期間が決められている訳ではないので、そこを出られるかどうかは本人次第。ピンク頭さんが今後どうなるかは彼女次第だ。
「第二王子殿下やその側近らが持つ護符が魅了の反応を示して変色したために、早々にピンク頭の魅了能力は把握されていてね。ただ、それが彼女の意識下か無意識かの見極めと共に、彼女の背後に作為や謀略が無いかの捜査をしていたんだって」
「無かったんですね?」
「そう、ピンク頭は故意に殿下や側近にその力をふるって篭絡しようとしていた。本人は”篭絡”ではなく乙女ゲーム的”攻略”のつもりだっただろうけど」
「でも、護符で殿下方にはその力は及ばなかった」
「護符の事を知らなかったのか、知っていてなお自分の力に自信があったのかは知らないけどな。殿下方は背後関係の調査の時間稼ぎに、ピンク頭が傍にいることを許容していたんだと。で、ピンク頭に近づく男を排除してた。罪状がハッキリするまでは魅了持ちであることの公表は差し控えられていたからさ」
でも、俺は近づいてたんじゃなくて纏わりつかれていた被害者なのに威嚇されてたんだぜ?すげー、かわいそうじゃん。そういうスタン様がしょんぼりして見えたので癒やしてあげたいと思ったけれど、癒しを求めてきたスタン様を抱きしめるのと違って、自分から抱きつくのは中々難しい。
「で、カシを恫喝したときの”魅了が効かない”発言だ」
「無意識ではなく故意であることが確定ですね」
「そう。で、ピンク頭の家が無関係であることも調査の結果はっきりした。カシのお手柄だ」
「スタン様のお役に立てましたか?」
「うん、ばっちり役に立ってくれたよ、カシ、ありがとう」
やった!褒めてもらえた。
「魅了の力は使っているうちに本人も蝕まれるのではないかと言うのが、以前の魅了事件を見てきた先生の見解だ」
「そうなんですか」
「ああ。だから、ピンク頭もその力さえなければもっとまともにこの世界で生きられたのかもしれない。現実と空想の境目が曖昧になって、思うようにならない周囲に苛立ちを感じながら生きていたのは結構しんどかっただろうと思う。光の聖女だなんて、誰も聞いたことのないような称号を勝手に自分でつけてたけど、この世界に似た乙女ゲームが本当にあったかどうかも怪しいしな。もうそれは確認のしようがないけど。……魅了の力を封じられたことで、本人も楽になれるといいんだけどな」
「ピンク頭さんも大変だったんですね」
「第二王子殿下らも俺も迷惑はかけられたけど、実際に本人も気の毒だとは思う。洗礼時に魅了の資質が確認できれば、その時点で封じられてピンク頭も生き易かっただろうから。まあでも、修道院入りと言っても永預かりじゃなく短預かりだから、本人次第で社交界は無理でも普通の生活に戻れるんだし、しっかりやって欲しいよ」
永預かりは本人希望の元で修道院で一生を神に捧げる生活を送ること。短預かりは、今回のように騒動をおこしたり、言動に問題があったりする貴族子女が神に仕えるという名目のもとで修行生活をする事だ。ただし、期間が決められている訳ではないので、そこを出られるかどうかは本人次第。ピンク頭さんが今後どうなるかは彼女次第だ。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~
可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる