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 今回、ピンク頭さんは洗礼以降に魅了の力が芽生えたものの、本人に魅了の力の自覚があったため悪質だったのだ。彼女は魅了だけでなく魔力を全て封じる措置が取られたのちに国の北限にある、気候も戒律もこの国で一番厳しい修道院へと移送されることが決定したとか。


「第二王子殿下やその側近らが持つ護符が魅了の反応を示して変色したために、早々にピンク頭の魅了能力は把握されていてね。ただ、それが彼女の意識下か無意識かの見極めと共に、彼女の背後に作為や謀略が無いかの捜査をしていたんだって」

「無かったんですね?」

「そう、ピンク頭は故意に殿下や側近にその力をふるって篭絡しようとしていた。本人は”篭絡”ではなく乙女ゲーム的”攻略”のつもりだっただろうけど」

「でも、護符で殿下方にはその力は及ばなかった」

「護符の事を知らなかったのか、知っていてなお自分の力に自信があったのかは知らないけどな。殿下方は背後関係の調査の時間稼ぎに、ピンク頭が傍にいることを許容していたんだと。で、ピンク頭に近づく男を排除してた。罪状がハッキリするまでは魅了持ちであることの公表は差し控えられていたからさ」

 でも、俺は近づいてたんじゃなくて纏わりつかれていた被害者なのに威嚇されてたんだぜ?すげー、かわいそうじゃん。そういうスタン様がしょんぼりして見えたので癒やしてあげたいと思ったけれど、癒しを求めてきたスタン様を抱きしめるのと違って、自分から抱きつくのは中々難しい。


「で、カシを恫喝したときの”魅了が効かない”発言だ」

「無意識ではなく故意であることが確定ですね」

「そう。で、ピンク頭の家が無関係であることも調査の結果はっきりした。カシのお手柄だ」

「スタン様のお役に立てましたか?」

「うん、ばっちり役に立ってくれたよ、カシ、ありがとう」

 やった!褒めてもらえた。


「魅了の力は使っているうちに本人も蝕まれるのではないかと言うのが、以前の魅了事件を見てきた先生の見解だ」

「そうなんですか」

「ああ。だから、ピンク頭もその力さえなければもっとまともにこの世界で生きられたのかもしれない。現実と空想の境目が曖昧になって、思うようにならない周囲に苛立ちを感じながら生きていたのは結構しんどかっただろうと思う。光の聖女だなんて、誰も聞いたことのないような称号を勝手に自分でつけてたけど、この世界に似た乙女ゲームが本当にあったかどうかも怪しいしな。もうそれは確認のしようがないけど。……魅了の力を封じられたことで、本人も楽になれるといいんだけどな」

「ピンク頭さんも大変だったんですね」

「第二王子殿下らも俺も迷惑はかけられたけど、実際に本人も気の毒だとは思う。洗礼時に魅了の資質が確認できれば、その時点で封じられてピンク頭も生き易かっただろうから。まあでも、修道院入りと言っても永預かりじゃなく短預かりだから、本人次第で社交界は無理でも普通の生活に戻れるんだし、しっかりやって欲しいよ」

 永預かりは本人希望の元で修道院で一生を神に捧げる生活を送ること。短預かりは、今回のように騒動をおこしたり、言動に問題があったりする貴族子女が神に仕えるという名目のもとで修行生活をする事だ。ただし、期間が決められている訳ではないので、そこを出られるかどうかは本人次第。ピンク頭さんが今後どうなるかは彼女次第だ。

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