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第四章
102 勇者再訪
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マリア様はショタに狙いを定めたらしく、私たちに関わらなくなってくれた。そのおかげで平穏に高等部の一年を過ごせた。
ミーシャはムキムキマッチョになった事でマリア様のターゲットから外れたが、本人は危険物(マリア様の事)が寄って来なくなった事で、それはもう安堵している。
そして、セバスチアーナ様と婚約した!
おおっ!陰ながら応援していた甲斐があったよ!
セバスチアーナ様のご両親であるフリーニ辺境伯夫妻も、正式に婚約するまで気を揉んでいたそうだ。ミーシャは辺境で魔獣退治に参加させてもらった事があり、辺境伯は彼の将来性に期待していたところに娘であるセバスチアーナ様と仲良くしている姿を見て、これは将来うちの戦力に貰おうと思っていたらしい。
もっとも、その時の二人はただ単に学園の同級生というだけで色っぽい空気は無かったそうだが。
そして、二人の共通の友人である私の話で盛り上がり(どんな事を話していたのかは教えてくれなかった)気が付けばいつの間にか――という感じ。
甘酸っぱいねー。ひゅーひゅー。
私の友人の中で王子妃候補となりそうなのは、レナとヴィヴィアナ様くらい。テレーザ様は子爵家の令嬢なので家格的にまずないけど、レナとヴィヴィアナ様は侯爵家の令嬢だからね。
どちらかがなるかもしれないし、全然別の人かもしれない。誰がなるにしても、王子さまとお相手とが良好な関係を築けるといいなー、と思う。
マリア様は乙女ゲームに固執しているみたいだけど、私はもうすっかりそんなのもありましたねー位の気持ちで昇級準備休暇(日本でいう所の春休み)をのんびりと過ごしていた所に、王子さまからの連絡が入った。
曰く、勇者再訪、会談の場を設けるので王城においで――という感じ。
おお、ずーっと音沙汰が無かったから心配していたけど、やっと神様と連絡が取れたのかー。良かった良かった。これで神託が降りればマリア様は「死に戻り」が、ただ神様の力で起こった逆行と同じタイミングだっただけのの思い込みだと分かるだろう。
神託の後は大人しくなる――のかな?どうかな?
◇◇◇
勇者のパーティメンバー候補となっている私とスピネルが、再訪した勇者と面会するのは何ら不思議な事ではなく、早々に会談の場を設けて貰えた。私たちだけと言う訳にはいかないので、他のメンバー候補に選ばれた面々も随時面談の場を作るらしい。
それもこれも神様からの託宣でご破算になるのだから、勇者の心境を察すると気の毒になる。
やだよね、無駄になると分かっていることをするのも、意気盛んなメンバー候補の熱意に申し訳なさを隠しつつお話しするのも。
会談のメンバーは前回と同じく勇者・王子さま・私・スピネルの四人で、場所も同じくサンルームだ。
「ご無沙汰ですー」
久しぶりに会った勇者は、何故かやつれていた。
「大丈夫ですか?」
「あー、うん、大丈夫。ありがとね、ファルナーゼ嬢」
何があったのか分からないけれど、勇者から言いださないのならこちらから聞く事も出来ない。
「えーと、神様と連絡がつきました。でもって、色々と新しい情報もあります。俺がスピネルさん達に報告した後に、神託が降りる予定です」
おお、やっぱりそのお話か。
勇者からもたらされた情報は、私たちに衝撃を与えるに余りあるものだった。
「前回のシシィが巻き戻りを拒否……、原因が神の手落ちによる魂の傷……」
「え?私は8歳で前世の記憶を取り戻したんじゃなくて、8歳のシシィの体に間に合わせで魂を入れられたの?もしかして、それってこの体を乗っ取ったってことじゃ……」
「代替としてシシィに入れられた魂が今のシシィじゃなかったら、本当に闇落ちしていたって事……?」
「あー、うん、そう。ごめん」
いやいやいや、悪いのは神様なんで勇者が謝っちゃダメ。
「勇者殿には難の責も無い」
「けど殿下……俺が前回に暗黒竜を倒していればこんな事態にはなっていなかったわけで」
「いえ、むしろありがとうございます」
「え?ファルナーゼ嬢?」
「私からもお礼を」
「スピネルさん?」
だってさー、巻き戻しが無かったら王子さまは冤罪を賭けたシシィ・ファルナーゼに対しての後悔を抱えたままに死んだってことになるし、私はこの世界にきてスピネルに会う事も無かったし、スピネルはスピネルで暗黒竜になって退治されちゃってたんだよ?
巻き戻しの拒否が無かったら、もしかしたらシシィ・ファルナーゼは傷だらけの魂のままで新しい人生を生きなきゃなならかったかもしれない。
私たちに関して言えば、勇者GJ!よくぞ失敗してくれましたってとこだ。勇者の沽券にかかわるだろうから言えないけど……
「失敗してくれてありがとうございました」
スピネルが言っちゃったよー。勇者が固まっております。
スピネルにしてみたら勇者は記憶にない”前回”で自分を倒しに来た人間。勇者にしてみれば、前回で自分を殺した竜。前回の対峙は今日のような美味しいお茶と綺麗なお菓子を囲んだものではなかっただろうから固まってしまっても仕方ない。
「……ですね。俺が失敗した事とクソジジ……神様がうっかり失敗した事とで、スピネルさんは暗黒竜にならなかった。前回のシシィさんは魂の修復の機会を得た。今のシシィさんは狭間でふらふらせずに新しい人生を手に入れた。殿下は過ちを正す機会を得られた。――俺も、得難い経験をしたと思う事にしますよ」
ああ……確かにこの人だけは神様の被害者だな、うん。
――神様の事をクソジジイと言うのも仕方ない。聞かなかったことにするけどね。
ミーシャはムキムキマッチョになった事でマリア様のターゲットから外れたが、本人は危険物(マリア様の事)が寄って来なくなった事で、それはもう安堵している。
そして、セバスチアーナ様と婚約した!
おおっ!陰ながら応援していた甲斐があったよ!
セバスチアーナ様のご両親であるフリーニ辺境伯夫妻も、正式に婚約するまで気を揉んでいたそうだ。ミーシャは辺境で魔獣退治に参加させてもらった事があり、辺境伯は彼の将来性に期待していたところに娘であるセバスチアーナ様と仲良くしている姿を見て、これは将来うちの戦力に貰おうと思っていたらしい。
もっとも、その時の二人はただ単に学園の同級生というだけで色っぽい空気は無かったそうだが。
そして、二人の共通の友人である私の話で盛り上がり(どんな事を話していたのかは教えてくれなかった)気が付けばいつの間にか――という感じ。
甘酸っぱいねー。ひゅーひゅー。
私の友人の中で王子妃候補となりそうなのは、レナとヴィヴィアナ様くらい。テレーザ様は子爵家の令嬢なので家格的にまずないけど、レナとヴィヴィアナ様は侯爵家の令嬢だからね。
どちらかがなるかもしれないし、全然別の人かもしれない。誰がなるにしても、王子さまとお相手とが良好な関係を築けるといいなー、と思う。
マリア様は乙女ゲームに固執しているみたいだけど、私はもうすっかりそんなのもありましたねー位の気持ちで昇級準備休暇(日本でいう所の春休み)をのんびりと過ごしていた所に、王子さまからの連絡が入った。
曰く、勇者再訪、会談の場を設けるので王城においで――という感じ。
おお、ずーっと音沙汰が無かったから心配していたけど、やっと神様と連絡が取れたのかー。良かった良かった。これで神託が降りればマリア様は「死に戻り」が、ただ神様の力で起こった逆行と同じタイミングだっただけのの思い込みだと分かるだろう。
神託の後は大人しくなる――のかな?どうかな?
◇◇◇
勇者のパーティメンバー候補となっている私とスピネルが、再訪した勇者と面会するのは何ら不思議な事ではなく、早々に会談の場を設けて貰えた。私たちだけと言う訳にはいかないので、他のメンバー候補に選ばれた面々も随時面談の場を作るらしい。
それもこれも神様からの託宣でご破算になるのだから、勇者の心境を察すると気の毒になる。
やだよね、無駄になると分かっていることをするのも、意気盛んなメンバー候補の熱意に申し訳なさを隠しつつお話しするのも。
会談のメンバーは前回と同じく勇者・王子さま・私・スピネルの四人で、場所も同じくサンルームだ。
「ご無沙汰ですー」
久しぶりに会った勇者は、何故かやつれていた。
「大丈夫ですか?」
「あー、うん、大丈夫。ありがとね、ファルナーゼ嬢」
何があったのか分からないけれど、勇者から言いださないのならこちらから聞く事も出来ない。
「えーと、神様と連絡がつきました。でもって、色々と新しい情報もあります。俺がスピネルさん達に報告した後に、神託が降りる予定です」
おお、やっぱりそのお話か。
勇者からもたらされた情報は、私たちに衝撃を与えるに余りあるものだった。
「前回のシシィが巻き戻りを拒否……、原因が神の手落ちによる魂の傷……」
「え?私は8歳で前世の記憶を取り戻したんじゃなくて、8歳のシシィの体に間に合わせで魂を入れられたの?もしかして、それってこの体を乗っ取ったってことじゃ……」
「代替としてシシィに入れられた魂が今のシシィじゃなかったら、本当に闇落ちしていたって事……?」
「あー、うん、そう。ごめん」
いやいやいや、悪いのは神様なんで勇者が謝っちゃダメ。
「勇者殿には難の責も無い」
「けど殿下……俺が前回に暗黒竜を倒していればこんな事態にはなっていなかったわけで」
「いえ、むしろありがとうございます」
「え?ファルナーゼ嬢?」
「私からもお礼を」
「スピネルさん?」
だってさー、巻き戻しが無かったら王子さまは冤罪を賭けたシシィ・ファルナーゼに対しての後悔を抱えたままに死んだってことになるし、私はこの世界にきてスピネルに会う事も無かったし、スピネルはスピネルで暗黒竜になって退治されちゃってたんだよ?
巻き戻しの拒否が無かったら、もしかしたらシシィ・ファルナーゼは傷だらけの魂のままで新しい人生を生きなきゃなならかったかもしれない。
私たちに関して言えば、勇者GJ!よくぞ失敗してくれましたってとこだ。勇者の沽券にかかわるだろうから言えないけど……
「失敗してくれてありがとうございました」
スピネルが言っちゃったよー。勇者が固まっております。
スピネルにしてみたら勇者は記憶にない”前回”で自分を倒しに来た人間。勇者にしてみれば、前回で自分を殺した竜。前回の対峙は今日のような美味しいお茶と綺麗なお菓子を囲んだものではなかっただろうから固まってしまっても仕方ない。
「……ですね。俺が失敗した事とクソジジ……神様がうっかり失敗した事とで、スピネルさんは暗黒竜にならなかった。前回のシシィさんは魂の修復の機会を得た。今のシシィさんは狭間でふらふらせずに新しい人生を手に入れた。殿下は過ちを正す機会を得られた。――俺も、得難い経験をしたと思う事にしますよ」
ああ……確かにこの人だけは神様の被害者だな、うん。
――神様の事をクソジジイと言うのも仕方ない。聞かなかったことにするけどね。
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