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第四章
97 事件Ⅱ 7
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スピネルの兄の事はさておき、先ずはこの事態の収拾をせねば。
ドエス先生を引き摺るのはスピネルに任せてヴィヴィアナ嬢をエスコートして部屋を出た私は、その惨状を見て崩れ落ちた。
「シシィ?」
「スピネルぅーっ」
酷い。
こんな残虐な行為があるものか。こいつらはもう極刑確定だ。
「スピネルにお土産にしようと思って買ったいちご大福が……」
見るも無残。レナのお店で買ったいちご大福が食い尽くされている。
「シシィが私の為に……?成程。悪行を為した者どもの腹掻っ捌いてシシィが私の為に購入してくれたいちご大福を取り出そう。私が食べることの出来なかったシシィの心づくしがコイツ等の腹に収まっていることは許し難い」
激しく同意!
「いや、待ってよマティ?いちご大福?って何だかわかんないけど、お兄ちゃんが買ってあげるから」
「兄上が買ってくれても意味がありません。ただのいちご大福ではないのです。シシィが!私の為に!購入してくれたいちご大福なのです」
ああ、そういえばレナのお店の新商品だから、スピネルもいちご大福を知らない筈。私の言葉から食べ物であることは分かっても、それがどういうものか分からない。なのに、私がスピネルへのお土産だと言っただけで、ここまで言ってくれる。
うん、落ち着いた。
「こんな奴らの血でスピネルが汚れるのも困るから、今度、レナのお店で一緒に食べよう?」
「確かに、シシィに汚いもの見せるのも嫌だな。それに――デートの誘いが嬉しいから勘弁してやろう」
おお……そうか、デートの誘いになるのか。スピネルが嬉しいなら私も嬉しいよ。隣でお兄さんがやれやれといった顔をしているけど気にしない。
『無事でよかったのぅ』
『ええ、本当に』
「いっちゃん、そうちゃん、助けに来てくれてありがとう」
「わぁー。この子たちがシシィ様のお友達のユニコーンとさんとバイコーンさんですか?」
「可愛いでしょ?」
「ええ、とても可愛らしいですわ」
ああ、そう言えばすっかり口調がお嬢様モードから離れて素になってる。これから戻してもこっちが素だってバレてるなら体裁付ける必要はないのかな?
「あー、あのー、ごめんなさい。私、喋り方が雑でしたね」
「あらまあ、うふふふふ。どうぞ、楽に話してくださいませ。シシィ様がくだけて話してくださるのは、もっと仲良くなれたようで嬉しいですわ」
「ありがと、ヴィヴィアナ様。お嬢様モードも慣れたもんだけど、こっちの方が素だから楽だったりして」
これを機会に、セバスチアーナ様達にも素の自分を出していってもいいかも。
「シシィ、この男はどうする?」
スピネルが引き摺っていたドエス先生を私の前に放り投げる。
「ねー、いっちゃんそうちゃん、この人が私の大事な友達を虐めたから、ちょっと反省してもらうために狭間に連れて行ってもらうってこと出来る?」
『そなたの何番目の友達だか分からぬが、妾は二番目の友達じゃからな。下の者を虐げしその男を調教してやるのも吝かではない』
『二番目はあたくしですわ。でもそうね。貴女が望むならあたくしが躾てあげてもよろしくてよ』
いっちゃんとそうちゃんが、前足で地面を抉るように蹴る。威嚇かな?ドエス先生の顔が青を通り越して白くなって、汗がダラダラと流れている。
「わー、いっちゃんもそうちゃんも頼りになるー。流石、私のお友達!ユニコーンのいっちゃんが躾けてくれて、バイコーンのそうちゃんが調教してくれるって。良かったね、アレキサンドエス先生。真っ当な人間になれるよ」
いっちゃんとそうちゃんのどちらが二番目かには言及しない。また、面倒な事になるから。
で、ひとっこ一人いない狭間で、十分に反省してドSからもドクズからも卒業してください。仮にも学校の先生なんだから、聖職者とは言わんけど真面目で良心的な人格を面に出しておいてほしい。
プライベートはとやかく言わないから。
「申し訳ありませんでしたっ」
絞め落とされ拘束され、私に蹴られてスピネルに引き摺られた体のダメージと、メンタルがゴリゴリと削られたせいで半分死んだようになっていた先生が、がばっと起き上がると頭で地面を割りたいのかと思うほどの勢いで土下座した。
「先ほど私が言った言葉は全て撤回いたしますっ。絶対にこの件に関して他言いたしませんっ。魔法誓約書にサインをしてもかまいませんっ。今後、ファルナーゼ嬢にもソルミ嬢にも不利益な行動をとらない事を誓いますっ。ですからっ、どうぞ、お許しくださいっ」
「……だって。どうする、ヴィヴィアナ様?」
「……私はこの件が外部に漏れない事を確約して頂ければそれで問題ありませんわ。それより、先生にこのような姿を取らせていることの方が苦痛です」
えー、いいじゃん、土下座位させたって。ヴィヴィアナ様を虐めたドクズなんだから、土下座させた状態で頭を踏みつけてやりたいくらいなんだけど。
でも、ま、優しいヴィヴィアナ様にはこの光景はキツイか。なら仕方ない。
「ヴィヴィアナ様のお許しが出た。疾く起立っ!」
「ハッ!」
上官に従う下士官の如く、命令に素直に従って立ち上がったドエス先生。白い顔も流れる汗も変わらないけど、立てる位にはなったようだ。
「この件に関し心無い流言が確認できた時点で、狭間での一時預かりではなく無期滞在を課す。心しておくように」
「ハッ!」
「今後、私やヴィヴィアナ様にだけでなく、学園の生徒に対し横暴な言動が見られた場合、ユニコーンの躾とバイコーンの調教が待っていると思いなさい」
「ハッ!」
「よし、今回のみ見逃す。今後は行いに十分注意すること。常に私の目が注視していると思いなさい」
「ハッ!」
なんだろ、軍隊ごっこ、結構楽しい。――って、これじゃ私がドSだよ!?
ドエス先生を引き摺るのはスピネルに任せてヴィヴィアナ嬢をエスコートして部屋を出た私は、その惨状を見て崩れ落ちた。
「シシィ?」
「スピネルぅーっ」
酷い。
こんな残虐な行為があるものか。こいつらはもう極刑確定だ。
「スピネルにお土産にしようと思って買ったいちご大福が……」
見るも無残。レナのお店で買ったいちご大福が食い尽くされている。
「シシィが私の為に……?成程。悪行を為した者どもの腹掻っ捌いてシシィが私の為に購入してくれたいちご大福を取り出そう。私が食べることの出来なかったシシィの心づくしがコイツ等の腹に収まっていることは許し難い」
激しく同意!
「いや、待ってよマティ?いちご大福?って何だかわかんないけど、お兄ちゃんが買ってあげるから」
「兄上が買ってくれても意味がありません。ただのいちご大福ではないのです。シシィが!私の為に!購入してくれたいちご大福なのです」
ああ、そういえばレナのお店の新商品だから、スピネルもいちご大福を知らない筈。私の言葉から食べ物であることは分かっても、それがどういうものか分からない。なのに、私がスピネルへのお土産だと言っただけで、ここまで言ってくれる。
うん、落ち着いた。
「こんな奴らの血でスピネルが汚れるのも困るから、今度、レナのお店で一緒に食べよう?」
「確かに、シシィに汚いもの見せるのも嫌だな。それに――デートの誘いが嬉しいから勘弁してやろう」
おお……そうか、デートの誘いになるのか。スピネルが嬉しいなら私も嬉しいよ。隣でお兄さんがやれやれといった顔をしているけど気にしない。
『無事でよかったのぅ』
『ええ、本当に』
「いっちゃん、そうちゃん、助けに来てくれてありがとう」
「わぁー。この子たちがシシィ様のお友達のユニコーンとさんとバイコーンさんですか?」
「可愛いでしょ?」
「ええ、とても可愛らしいですわ」
ああ、そう言えばすっかり口調がお嬢様モードから離れて素になってる。これから戻してもこっちが素だってバレてるなら体裁付ける必要はないのかな?
「あー、あのー、ごめんなさい。私、喋り方が雑でしたね」
「あらまあ、うふふふふ。どうぞ、楽に話してくださいませ。シシィ様がくだけて話してくださるのは、もっと仲良くなれたようで嬉しいですわ」
「ありがと、ヴィヴィアナ様。お嬢様モードも慣れたもんだけど、こっちの方が素だから楽だったりして」
これを機会に、セバスチアーナ様達にも素の自分を出していってもいいかも。
「シシィ、この男はどうする?」
スピネルが引き摺っていたドエス先生を私の前に放り投げる。
「ねー、いっちゃんそうちゃん、この人が私の大事な友達を虐めたから、ちょっと反省してもらうために狭間に連れて行ってもらうってこと出来る?」
『そなたの何番目の友達だか分からぬが、妾は二番目の友達じゃからな。下の者を虐げしその男を調教してやるのも吝かではない』
『二番目はあたくしですわ。でもそうね。貴女が望むならあたくしが躾てあげてもよろしくてよ』
いっちゃんとそうちゃんが、前足で地面を抉るように蹴る。威嚇かな?ドエス先生の顔が青を通り越して白くなって、汗がダラダラと流れている。
「わー、いっちゃんもそうちゃんも頼りになるー。流石、私のお友達!ユニコーンのいっちゃんが躾けてくれて、バイコーンのそうちゃんが調教してくれるって。良かったね、アレキサンドエス先生。真っ当な人間になれるよ」
いっちゃんとそうちゃんのどちらが二番目かには言及しない。また、面倒な事になるから。
で、ひとっこ一人いない狭間で、十分に反省してドSからもドクズからも卒業してください。仮にも学校の先生なんだから、聖職者とは言わんけど真面目で良心的な人格を面に出しておいてほしい。
プライベートはとやかく言わないから。
「申し訳ありませんでしたっ」
絞め落とされ拘束され、私に蹴られてスピネルに引き摺られた体のダメージと、メンタルがゴリゴリと削られたせいで半分死んだようになっていた先生が、がばっと起き上がると頭で地面を割りたいのかと思うほどの勢いで土下座した。
「先ほど私が言った言葉は全て撤回いたしますっ。絶対にこの件に関して他言いたしませんっ。魔法誓約書にサインをしてもかまいませんっ。今後、ファルナーゼ嬢にもソルミ嬢にも不利益な行動をとらない事を誓いますっ。ですからっ、どうぞ、お許しくださいっ」
「……だって。どうする、ヴィヴィアナ様?」
「……私はこの件が外部に漏れない事を確約して頂ければそれで問題ありませんわ。それより、先生にこのような姿を取らせていることの方が苦痛です」
えー、いいじゃん、土下座位させたって。ヴィヴィアナ様を虐めたドクズなんだから、土下座させた状態で頭を踏みつけてやりたいくらいなんだけど。
でも、ま、優しいヴィヴィアナ様にはこの光景はキツイか。なら仕方ない。
「ヴィヴィアナ様のお許しが出た。疾く起立っ!」
「ハッ!」
上官に従う下士官の如く、命令に素直に従って立ち上がったドエス先生。白い顔も流れる汗も変わらないけど、立てる位にはなったようだ。
「この件に関し心無い流言が確認できた時点で、狭間での一時預かりではなく無期滞在を課す。心しておくように」
「ハッ!」
「今後、私やヴィヴィアナ様にだけでなく、学園の生徒に対し横暴な言動が見られた場合、ユニコーンの躾とバイコーンの調教が待っていると思いなさい」
「ハッ!」
「よし、今回のみ見逃す。今後は行いに十分注意すること。常に私の目が注視していると思いなさい」
「ハッ!」
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