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第一章
07 懺悔と後悔
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―― シシィ・ファルナーゼの懺悔
ごめんなさい。
弱くてごめんなさい。強くなる方法が分かりませんでした。
ファルナーゼ侯爵家の唯一の子であるわたくしにかかった期待に潰されてしまってごめんなさい。
両親の良いところばかりを集めたようなと言われておりましたが、お父様にもお母様にも備わっていた強さやしたたかさという貴族に必須の武器が、わたくしにはどうしても身に付ける事がかないませんでした。
蜂蜜のようなブロンドとアメジストのような瞳、宮廷の薔薇と言われたお母様によく似たといわれる華やかで整った顔立ち。
それを持って産まれたわたくしは、確かに女性として恵まれた立場だったでしょう。
勉強や作法、楽器や刺繍などの淑女の嗜みは苦労せずとも取得できるものでした。
覚えが良いことも、器用であることも、そうでない方から見れば羨ましいと思われるものだったでしょう。
でも、わたくしに出来るのはそれだけでした。
それを使って何かを生み出すことも、役立てる事も出来ませんでした。
アルナルド王太子殿下に選ばれて王太子妃教育を受けたとき、教師の方々からお褒めのお言葉を頂いて期待に応えなければいけないと思いはしても、期待に応えたいという気持ちは沸いてきませんでした。わたくしは、欠陥がある人間なのだと思います
どんどん自分という存在が薄くなって、周囲とわたくしの間の認識の差にある摩擦で擦り切れそうになっているときに、殿下から断罪されました。
ああ……なんということでしょう。
これで、わたくしはもう何かを考えることも、何かを為すこともしなくて良いのです。
降ってわいた幸運に、私は笑みを堪えることは出来ませんでした。
お父様、お母様、お義兄さま、こんなわたくしでごめんなさい。
わたくしは、殿下の仰られるようなことはなにひとつしておりませんが、このまま思し召しに従い毒杯を賜る事に致します。
ファルナーゼ家には害が及ばないようにして下さるという温情を伺い、後顧の憂いなく死を受け入れたわたくしは、やはり欠陥のある人間です。ファルナーゼ家に生まれてごめんなさい。
どうか、一日も早く私のことを忘れてくださいませ。
―― マリア・アルトワの後悔
あーあ、攻略失敗しちゃった。
リスタート出来たはいいけど、死ななきゃリセットできない訳?リセットボタンどころかステータス画面も好感度グラフも何にもなくて手探りでやってるのに、やり直しが死に戻りって何このクソゲー。
王子は攻略途中まではチョロイけど、ハッピーエンドにするにはステ上げが重要だって分かっててさぼっちゃった私が悪い。けど、数字で見えないんだもん。ステ上げのモチベ継続なんて無理。
パールス国王が手を付けた端女の子が美しく成長して、王族の一員とは認められないものの王の庇護を受けるようになり、腹違いの兄や姉、王妃や愛妾らから苛められ緊急避難のために隣国へ留学。そこで出会ったイケメンと恋に落ちる乙女ゲー「ローズガーデンのマリア」のヒロインに転生したと分かったのは5歳の時。
王様が手を付けるだけあって、母は人目を惹く美しい容姿をしていた。
ま、私もそうなんですけどね。
王妃は大国ラランジャから嫁いできた、あまり見目に恵まれなかった王女様。
当然、その子供らの容姿も推して知るべし。
だから、王様に可愛がられている美しい私が目障りだし憎い。要は嫉妬だよね。
ゲームでは虐められても仕方ないとじっとこらえているヒロインだったけど、馬鹿だよねー。王様に可愛がられているんだから、チクればいいじゃん。国の一番上の人が味方なんだから我慢する必要ないでしょ。
と、いうことで、私はさりげなーく王様が苛めに気付けるように振る舞った。
あからさまにしないところがミソだ。
だって、純真でピュアで心優しいヒロインだもん。いい子は正面切ってチクったりしないもんでしょ、多分。
可哀想な私を演じていたら、王様がいやに過保護になっちゃって留学を止められそうになっちゃったのは想定外。私のことは可愛いけど、大国から嫁いだ王妃や未来の国王となる異母兄をないがしろにするのはマズいはずなんだけどなぁ。
それもこれも私が魅力的なヒロインだったからで仕方ない、うん。
本来なら留学するまでドアマットやってるはずだったんだけど、そうそうにあちらが悪役という事になってくれたから、過ごしやすかった。
それでも、やっぱりせっかくゲームの世界に転生したんだから、楽しまないと勿体ないので王様に甘えて甘えて、なんとかもぎ取ってエシュトロン国に行ったのに、バッドエンドだもんなぁ。
正直、王子は推しと言う訳ではなかったんだけど、どうせなら国のてっぺんに昇りたいじゃん。血筋的には私も王族なんだし。
二回目の攻略はどうしようかなぁ。
リスタートが8歳という事で、この国での居心地はもう改善されていていいからゆっくり考えよう。
死にたくはないけど、最悪の場合はまた死に戻ればいいしね。
ごめんなさい。
弱くてごめんなさい。強くなる方法が分かりませんでした。
ファルナーゼ侯爵家の唯一の子であるわたくしにかかった期待に潰されてしまってごめんなさい。
両親の良いところばかりを集めたようなと言われておりましたが、お父様にもお母様にも備わっていた強さやしたたかさという貴族に必須の武器が、わたくしにはどうしても身に付ける事がかないませんでした。
蜂蜜のようなブロンドとアメジストのような瞳、宮廷の薔薇と言われたお母様によく似たといわれる華やかで整った顔立ち。
それを持って産まれたわたくしは、確かに女性として恵まれた立場だったでしょう。
勉強や作法、楽器や刺繍などの淑女の嗜みは苦労せずとも取得できるものでした。
覚えが良いことも、器用であることも、そうでない方から見れば羨ましいと思われるものだったでしょう。
でも、わたくしに出来るのはそれだけでした。
それを使って何かを生み出すことも、役立てる事も出来ませんでした。
アルナルド王太子殿下に選ばれて王太子妃教育を受けたとき、教師の方々からお褒めのお言葉を頂いて期待に応えなければいけないと思いはしても、期待に応えたいという気持ちは沸いてきませんでした。わたくしは、欠陥がある人間なのだと思います
どんどん自分という存在が薄くなって、周囲とわたくしの間の認識の差にある摩擦で擦り切れそうになっているときに、殿下から断罪されました。
ああ……なんということでしょう。
これで、わたくしはもう何かを考えることも、何かを為すこともしなくて良いのです。
降ってわいた幸運に、私は笑みを堪えることは出来ませんでした。
お父様、お母様、お義兄さま、こんなわたくしでごめんなさい。
わたくしは、殿下の仰られるようなことはなにひとつしておりませんが、このまま思し召しに従い毒杯を賜る事に致します。
ファルナーゼ家には害が及ばないようにして下さるという温情を伺い、後顧の憂いなく死を受け入れたわたくしは、やはり欠陥のある人間です。ファルナーゼ家に生まれてごめんなさい。
どうか、一日も早く私のことを忘れてくださいませ。
―― マリア・アルトワの後悔
あーあ、攻略失敗しちゃった。
リスタート出来たはいいけど、死ななきゃリセットできない訳?リセットボタンどころかステータス画面も好感度グラフも何にもなくて手探りでやってるのに、やり直しが死に戻りって何このクソゲー。
王子は攻略途中まではチョロイけど、ハッピーエンドにするにはステ上げが重要だって分かっててさぼっちゃった私が悪い。けど、数字で見えないんだもん。ステ上げのモチベ継続なんて無理。
パールス国王が手を付けた端女の子が美しく成長して、王族の一員とは認められないものの王の庇護を受けるようになり、腹違いの兄や姉、王妃や愛妾らから苛められ緊急避難のために隣国へ留学。そこで出会ったイケメンと恋に落ちる乙女ゲー「ローズガーデンのマリア」のヒロインに転生したと分かったのは5歳の時。
王様が手を付けるだけあって、母は人目を惹く美しい容姿をしていた。
ま、私もそうなんですけどね。
王妃は大国ラランジャから嫁いできた、あまり見目に恵まれなかった王女様。
当然、その子供らの容姿も推して知るべし。
だから、王様に可愛がられている美しい私が目障りだし憎い。要は嫉妬だよね。
ゲームでは虐められても仕方ないとじっとこらえているヒロインだったけど、馬鹿だよねー。王様に可愛がられているんだから、チクればいいじゃん。国の一番上の人が味方なんだから我慢する必要ないでしょ。
と、いうことで、私はさりげなーく王様が苛めに気付けるように振る舞った。
あからさまにしないところがミソだ。
だって、純真でピュアで心優しいヒロインだもん。いい子は正面切ってチクったりしないもんでしょ、多分。
可哀想な私を演じていたら、王様がいやに過保護になっちゃって留学を止められそうになっちゃったのは想定外。私のことは可愛いけど、大国から嫁いだ王妃や未来の国王となる異母兄をないがしろにするのはマズいはずなんだけどなぁ。
それもこれも私が魅力的なヒロインだったからで仕方ない、うん。
本来なら留学するまでドアマットやってるはずだったんだけど、そうそうにあちらが悪役という事になってくれたから、過ごしやすかった。
それでも、やっぱりせっかくゲームの世界に転生したんだから、楽しまないと勿体ないので王様に甘えて甘えて、なんとかもぎ取ってエシュトロン国に行ったのに、バッドエンドだもんなぁ。
正直、王子は推しと言う訳ではなかったんだけど、どうせなら国のてっぺんに昇りたいじゃん。血筋的には私も王族なんだし。
二回目の攻略はどうしようかなぁ。
リスタートが8歳という事で、この国での居心地はもう改善されていていいからゆっくり考えよう。
死にたくはないけど、最悪の場合はまた死に戻ればいいしね。
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