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黄金幽谷 不良少年が家を追われ、美貌の伯母に飼われ、岩に囲まれた狭い穴蔵に幽閉され、頭上には楕円形の光が差す

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 めくような白い裸身と、波のようにうねる長い黒髪の幽霊が出るという噂を聞いたが真偽のほどはわからない。 
噂の出所は、神藤家の広大な屋敷にも原因があるかもしれない。 
うっそうたる森林のような常緑樹に囲まれた神藤家は、外からでは中に屋敷があるのかどうかもわからない。 
大通りに面して、車の往来も激しいのだが厚く重なった常緑樹に吸い込まれてしまうのか、そこだけが取り残されたように静寂であつた。 
幽霊の噂が出たのは、神藤家の末娘の美夏が、離婚して戻って来た頃からである。 
石塀を乗り込えて覗きに来る男もいて、長く続く石塀の頭に、竹の忍び返しが設けられた。 
逆にいうと、この忍び返しの竹柵が、白い女体の幽霊の証拠になってしまったのだから噂というものはおそろしい。 
寺院の楼門のような、神藤家の総門は、閉じられたまま、苔が生えている。 
当主の神藤老人は、ほとんど伊豆の別荘に居て、あまりこの屋敷には顔を見せない。 
美夏の母は、美夏を生んでから、離別している。 
神藤老人に、妻妾が何人いたのか、よくわからない。 
政商といわれているが、マスコミの表面に現われたことはない。 
風吹雅明が、神藤家に預けられたのは高校一年の夏休みも終り11の頃である。 雅明の母は、神藤家の長女で、末娘の美夏とは、異母姉妹にたる。 
祖母は違っても、美夏と雅明は、叔母甥の関係ということになる。 
中学時代から、雅明は劣等生であった。 
勉強が好きになれたい反面、いわゆる不純異性交遊が大好きで、シンナー、暴走族の仲間の輪が広がり、若いタレントとも付き合いがあったようで、警察に補導され、やっと裏口入学した高校も無期停学処分になり、神藤家に預けられたのである。 
いや、預けられたというより、風吹家から追放されたといってもいい。 
風吹家の当主が、大学教授であり、文学部部長でもあり、次期総長候補ということもあって、風吹家の体面が重視されたわけであった。
 
が、理由はもう一つある。 
これは、雅男が不純異性交遊に走った動機と一致する。 
雅明は月足らずで生まれている。 
結婚式をあげ、初夜を迎え、月足らずで男子出生という図式なのだが、風吹家の当主は、疑問を持つたらしい。 
雅明の父が、神藤老人だという疑惑である。
雅明の母は、長女ということもあり、父の神藤老人に溺愛され、婚期を逸してしまっている。 
これも晩婚の風吹教授といっしょになったのは、持参金めあてだといわれている。 
神藤家の金で、風吹教授は、文学部長を買うことが出来たというのである。 
そして、次は、大学総長であった。  
風吹教授は、すでに妊娠していた、雅明の母をもらったことになる。 
それが事実だとすると、雅明は、神藤老人の孫であり、実子でもある。
美夏とは、甥であり、弟にもなる。 
血液型では、どちらも父にあてはまる。 
したがって、雅明の父はどちらともいえない。 
本当の月足らずであれば、風吹の子だし、そうでなければ、神藤老人の子である。 
雅明の母も、よくわからないのかもしれない。 
とにかく、雅明は、風吹教授の長男として届けられている。 
三年たって、雅明の弟が生まれ、風吹教授の溺愛は、弟中心になる。 
劣等生であっても、雅明は、本来頭は良いのである。 
出生の秘密を理由にして、勉強より面白い不純異性交遊に走ってしまったようなところがある。
生まれつき、深刻になれないというのか、妙に醍めていて、反抗しているつもりはないのだが、いつのまにか劣等生の烙印をおされていたといった方がいいかもしれない。 金をばらまいて、猟官運動をしている父を内心嘲笑っていたようにも見える。 
不純異性交遊に眉をひそめ、雑誌のヌードでさえ、いやらしいと捨ててしまう母が、夫に内諸で、年下の男とラブホテルに行くのを知って、雅明は内心嘲笑したかもしれない。 
タレントと付き合い、有名になって捨てられ、ベッドでもつれ合っている写真を公開して、暴力団に追われ、自殺するような、派手なシーンが来る前に、雅明は、都会の孤島、お化け屋致ともいわれる、本家の神藤家に追放されてしまった。 
追放された日、雅明の母は不在であった。 
ホストタラブから呼び出し電話があり、いそいそとでかけたことは知っている。 
今頃、ラブホテルで、中年になって、ますます肥満してきた、白い肉の塊りを、ダブルベッドで※かしているのに違いない。 
父の風吹教授は、私設秘書の若い女と、講演旅行中であった。 
講演旅行は表のことで、秘書の若い女と、どこかの温泉にしけこんでいるのだろう。 見送ってくれた分は、弟の中学一年生で、うらやましそうに、「ぼくは東大受験で遊べないからつまらない」と手を振った。 


 雅明は、弟に、はじめて明かるい微笑を見せた。 
風吹家を継ぐのは、弟に決まったようなものである。   
停学が解かれても、雅明は、もう高校に行く気はなかった。 
早くから童貞を失なってしまって、ますます白けてしまったのかもしれない。 
少年院より、お化け屋敷の方が、まだ自由があると判断したのだろう。 
ハイヤーで迎えに来てくれた谷津子は、神前家の執事の深水の妻である。 
バックボタンのブラウスにスカートなのだが、小作りにしては、胸も重たげにふくらみ、尻もむっくりと盛り上って、ボタンが飛びそうな、はちきれそうな肉体であった。
ブラジャーをつけていないのか、陽光のかげんで、薄いブラウスに、丼のような乳房が透けていた。 
頬の白いベールと、白い手袋は、もしかしたら、美夏のお下がりかもしれない。 
部厚い底のハイヒールを履いているから、むっくりふくれた尻が、よけいにぶりぶりと腰を振って歩くことになる。 
三十をかなり越えていると思うが、齢よりは若く見えた。 
ハイヤーの中で、谷津子の無遠態な手が、雅明のGパンの内股のあたりに置かれていた。 
初対面なのだが、そんな気はしない。 
赤ん坊の頃、雅明は谷津子に抱かれたことがあるのかもしれない。 
雅明の年頃は、年上の女に弱い。 
人妻となるとよけいだろう。 
谷津子のふっくらとした手が、雅明のGパソの固い盛り上がりをつかんだ。 
ハイヤーの初老の運転手は、客に関心がないように装っていろ。
 
「坊っちゃま」 
 
と谷津子は雅明にささやいた。
 
「もう女をご存知なんですってね」 
 
ご存知という年頃ではないだろうが、不純艮住交遊ともなると、乱交まで経験していることになるから、年頃にしては進んでいるといえないこともない。 
谷津子が妙に機嫌が良いのは、雅明の養育係をいいつけられたことに関係があるのだろうか。 
養育係という範囲がどこまで許されているのか、谷津子の手がうれしそうに、雅明の固い盛り上がりをつかんでいるのを見ると、妙な予感がしてくる。 
雅明は、谷津子の無作法な手をはらいのけるわけでもなく、谷津子のやわらかい手の中で、ますます固く膨張させていた。 
この年頃は特に強い。 
鼻血や夢精に悩まされなくなれば、かえって、雅明は幸福かも知れない。 
Gパンの上から、やわやわと手をもみほぐすだけで、それ以上は進まなかった。 
お楽しみはあとで、という谷津子のうれしそうな顔であった。 
寺院の楼門のような、神藤宗の総門の前で12は止まらず、長く続く石塀をぐるりと廻り、勝手口でようやくハイヤーは止まった。 
勝手口といっても、屋根つきの重厚な門であった。 
門の中で、雅明は、お手伝いの多恵に挨拶されている。 
谷津子と違って、痩せぎすの、少女々々した女であった。
年頃は、雅明と同じ頃かもしれない。 
血の気のない、青白い顔は、お化け屋敷によく似合う。 
森林のような常緑樹に囲まれた庭の小道は、夏の終りを思わせるように、蜩がかなかなと喧しい。 
雨が多かったせいか、厚く重なった樹木にさえぎられて、あまり陽光が差さないせいか、庭全体がたんとなく湿地帯のように感じられた。 
雅明は、黙々と、谷津子のあとから、裏庭の、苔の下路を歩いた。
古風な西洋館が、樹木の谷間に現われる。 
玄関の二階のバルコニーを、紅色の花もたわわに、百日紅が囲んでいる。 
洋風な角形の池に、ライオンの水口をつけた壁泉がある。 
池に黄金の鯉がはねた。

池のほとりのパーゴラにつけられた、菱組りトレリス(透し垣)に、通草のつるが巻きついている。 
実は、長楕円形で、熟すと縦に割れ、悩ましいほど女によく似ている。 
花は紅紫色、果実はぽってりと甘い。 
その奥に、薔薇のアーチが見える。 
本庭の奥を区画する出入口になる。 
アーチの奥一帯の庭がい白い女体の幽霊が出没するという噂が立ったところである。 洋館には入らず、その隣りに、門番のように建てられている、平屋の小洋館に雅明は案内された。 
執事の深水の顔に見覚えがあった。 
神藤家と風吹家の間の連絡役で、母の居間でよく見掛けた顔である。 
プロレスラーのように、筋肉の盛り上った部厚い胸に、雅明の母もふらふらと倒れてしまったことがあるかもしれない。 
浅黒い顔は、鬼瓦のようにも見えるが、雅明にとって、執事の深水は、所詮使用人で、それほどこわい男だとは思っていない。 
神藤老人の不在の留守番役と、出戻りの美夏の守役として、重要な仕事をしているわけであった。 
屈強な中年男といえた。 
小洋館に入ると、すぐ、雅明は浴室に導かれた。

「汗を流して下さい、坊っちゃま」
 
「まだ早いな」 
 
午後の陽光はまだ明かるい。
 
「お風呂に、早いも遅いもありせんわ」 
 
と谷津子が云った。
 
「幽霊に会うのがさ」 
 
雅明はにやりとした。 
雅明も、幽霊の話は知っていたのである。 
神藤家とつながりのある雅明にしてみれば、幽霊に該当する女は、出戻りの叔母しかいない。 
女主人である叔母の美夏に会う前に、さっぱりと沫浴させられるのだろうから、雅明はふとロに出してみたのである。
 
「幽霊だなんて」 
 
谷津子が雅明を軽く打つ真似をした。 
 
「いやな坊っちゃま」
 
「だって、出るんだろう」
 
「でるって」
 
谷津子は楽しそうに笑っている。
 
「お化けがさ」
 
「まさか」
 
「噂だぜ」
 
「そうですか」 
 
谷津子の手が、雅明のGパンにかかった。
 
「さ、お脱ぎになって」 
 
谷津子が、幽霊の噂を知らないわけはなかった。
 
「あら、むけていますわね」 
 
Gパンといっしょにブリーフも取られて、ぴんと張り詰めた雅明のものが、谷津子の眼の前にそそり立った。 
無造作に張り詰めたものを握られ、むけている先端をしげしげと見つめられて、
 
「よせよ」 
 
雅明は真っ赤になった。 
若いせいか、綺麗にしても、恥垢が白い雪の結晶のように、張り詰めたものに浮いている。 
 
「この匂い好き」 
 
谷津子の顔が輝いて、雅明は腰を抱かれて引き寄せられた。
谷津子のぽってりした赤い唇が、睡液をあふれさせながら、白い雪の結品を浮かせている雅明の露出したものを、あっという間に含んだ。
 
「この味、大好き」
 
むけた先端に膜を張る、透明な粘液と共に、谷津子は、雅明の恥垢を舌で舐めてしまっていた。
 
「おいしい」 
 
もぐもぐと舌と唇でもみほぐされ、雅明の露出されたものが、ぐぐっと、谷淳子のロの中で膨張する。 
 
「はなして」 
 
あわてて雅明が谷津子の肩をつかんだ。
 
「いや」 
 
谷津子の笑顔は消えない。 
雅明の養育係としては、雅明を独占してもかまわないのかもしれない。
 
「だって!」 
 
雅明は困ったような顔をした。
 
「オシッコが出そうだよ」
 

「オシッコではないでしょう」 
 
笑いながら谷津子は、舌と唇でますます膨張してくる雅明のものをもみほぐした。 
 
「してしまう」 

「してもいいのよ」 
 
もし早い歳に男の子を生んでぃれば、谷津子と雅明は、母子の関係の歳の差といってぃぃ。
乱交まで知っているといっても、雅明は支13だ子供なのである。 
谷津子にいいようにあしらわれている。 
白い女体の幽霊だと思われる、叔母の美夏のことを忘れそうであった。 
 
「飲ませて」           
 
谷津子は頬をへこませながら云った。   
強く吸っている。 
 
「坊っちゃまの、若くて力強いものを飲ませて」   
 
鬼瓦のような、谷津子の夫の深水が、のっそりと顔を出し、雅明は全身を硬直させた。 
その瞬間、雅明の下半身が噴火した。 

「あっ」 
 
「うっ」
 
夫にうしろから覗かれているのに気がついていないのか、谷津子は眉をひそめて呻いた。 
雅明の腰が前に突き出され、下半身がひくひくと脈打った。

「ううっ」 
 
谷津子の太い喉が、ごくりと鳴り、白い濃い粘液が、じわじわと、谷津子のぽってりした赤い唇からあふれ出た。 
鬼瓦の浅黒い顔が、にやりとした。 
そのままくるりと背中を向けた。 
妻の不貞の行為に、何も云わない。 
いや、深水夫妻の間に、不貞という言葉は無いのかもしれない。 
 
「ああ、おいしかった」 
 
赤い唇からあふれた雅明のねっとりした白い粘液を、舌でゆっくりと拭うと、 
 
「これからも飲ませてもらうわね」  
 
既得権でも得たように断言した。  
雅明の妙な予感は的中しつつあった。  
谷津子も、パックボタンのブラウスとスカートを脱いでいる。  
ビーチのキャミソールは、乳牛のようにふくらんだ重たげな乳房で、今にも破けそうに 見える。  
ビーチのビキニショーツは、濡れた花唇にめり込み、黒い濃い恥毛が派手にはみだしている。 
尻朶から押し出されたビキニは、もっこりしたお尻の谷間に押し込まれ、背中から見たら穿いているようには見えない。 
キャミソールとビキニショーツを丸め、全裸の谷津子が、当然のような顔で浴室に入った。 
「洗ってあげましょう、坊っちゃま」 
 
若い精の吸引者は、まるで愛玩動物を得たように、満面微笑を浮かべて、バスタブに沈んでいる雅明に、親しみをこめて湯をかけた。
 
「あら、まだ立っている」 
 
湯の底から、雅明の黒い恥毛が、谷津子ほどではないが、黒い藻のようにゆらぎ、萎えることを知らない、若い雄々しいものが、湯の中を下から突き上げていく。 
 
「上の毒見はしたから、ついでに、下の毒味もしようかしら」 
 
小作りにしては、肉感的な、谷津子の裸体がバスタブに入り、あわてて雅明は立ち上った。 
湯が勢いよくあふれた。 
 
「逃げなくてもいいでしょう」 
 
パスタブの縁をつかみ、肉付きの良い、むっちりしたお尻を雅明に向け、
 
「うしろから入れて」 

とにっこりした。 
谷津子のまろやかな背中から、湯がはじけて、雫が露となって転がった。 
ルノアールの裸婦のような、豊満な白い肉体に、雅明が興奮しないといったらうそになる。 

「ね、入れて」 
 
谷津子のふっくらした指が、厚く重なった花弁を開き、肉襞の中から湯をあふれさせた。 そのまま、谷津子の突き出したお尻に進めば、雅明の萎えないままのものは、すっぽりと花唇に吸い込まれてしまいそうであった。 
ただ、動けばいいのである。  
 
「早く」 
 
人妻の甘い声には弱い。  
雅明は硬直したものの先端を、うしろから 谷津子の湯に濡れる花唇にあてがった。  「あっ」  
食虫花のように花弁が雅明の硬直したもの にからみつき、湯をはじいて肉襞に引き摺り込んだ。  
雅明の下半身に力が漲った。
谷津子の肉襞が、まるで磯巾着のように、 紅色の触手を熱く蠢かして、雅明の埋没したものをじわじわと締めつけろ。  
尻を向けた谷津子のうしろに立っているだけで、雅明の硬直したものは、肉襞を縮めて くる妖しい蠕動に、ますますのぼせあがって膨張した。 
同じ年頃の仲間の、不純異性交遊とは、花唇に挿入してからの感覚が、まるで違っている。 
乱交はしても、若すぎる雅明は、まだ童貞に近いのである。
 
「あっ、あっ!」  
 
花肉の蠕動に驚く雅明の手をつかみ、谷津子は、乳牛のようにふくらんだ乳房を、うしろからわしずかみにさせた。 

「これから毎日、美夏さまのためにも、お毒味をしようかしら」 
 
まるで若い愛人を得たように、谷津子は目を細めて、
 
「いいわ」 
 
と喘いだ。
 
「すごく感じる」 
 
雅明は頭の芯がしびれておかしくなった。
 
「子宮の奥まで、坊ちゃまの鋭いものが、ぐさっと突き刺ったみたい」 
 
バスタブの中で、湯をあふれさせながら、うっとりと、谷津子は云った。 
 
「久し振りだわ、こんな感じ」 
 
「-」 
 
「気持が良すぎるわ」 
 
脱衣室に、深水の影がしたが、浴室の中まで覗かずに、足音が遠いている。 
浴室での妻の喘ぎを深水は聞いているのに違いない。 
 
「ああ、いい……」 
 
谷津子は、若すぎる雅明を相手にして、一人で喜んでいる。
 
「いく、いく、死んじゃう」 
 
谷津子の嬌声に、雅明の漲った下半身が、 堰を切ったように噴火した。  
 
「ああ、子宮に、坊っちゃまのが、どっく、どっくかかっている」  

と谷津子が首を振って叫んだ。  

「生温かいものがどくどくたくさんかかってくる」谷玲子の嬌声も派手であった。  

「うっ、うむ」  
 
雅明が下半身を緊張させて、深い嘆息をついた。  
谷津子の雅明を差し込んだ花弁がはじけ、 谷津子のねっとりした愛液と、雅明の放出した白い粘液がまじりあって、ゆっくりと湯をはじいた。
 


湯上りを、谷淳子が、バスタオルでやさしく拭いてくれるのを、全裸の雅明は、仁王立ちになったまま、おとなしく、なすがままにされていた。 
幼いの頃を思い出していたのかもしれない。 
谷津子の口と花唇に、二度も続けて放出していても、谷津子の指が触れると、下半身が充血したように、半萎えのものが頭をもたげてくる。

「若いわね」 
 
感心したように、谷津子は、赤いぼってりした唇で、雅明のひくつくものを軽く含んでくる。 
着がえようとしたが、雅明のシャツもGパンもない。 
 
「美夏様がおまちかねですよ」 
 
執事の深水が、何やら胸にかかえて、また浴室に顔を出した。 
全裸の谷津子は、バスタオルも巻かずに、廊下を歩いている。 

「俺のブリーフは」 

深水の妻と関係したばかりの雅明は、深水の態度が解せぬままに、戸惑いをみせていた。 

「これを穿いて下さい」 
 
手渡された品は、ファスナー付きの、レザーのビキ二であった。 
サポーターといっていいほど、小さく、雅明の股間を諦めつけた。 
 
「きついな」 
 
雅明は顔をしかめた。 
レザービキ二は、雅明の勃起をさせないように穿かせられたとしか思えない。
 
「美夏様から、坊ちゃまへ、プレゼントですよ」 
 
深水の顔には、谷津子のような微笑はない。
 

「美夏様は、ファッショナブルレザーにおくわしいのです」 
 
雅明だって、レザーファッションぐらいは知っている。 
黒光りするレザーキャミソールを差し出されて、雅明は首をひねった。 
女物なら、ブラジャーがついているか、それとも、乳房のところだけ、くりぬかれて穴が開いているのに違いない。 
レザーのへそ出しルックのようなものであった。 
 
「少し小さいな」 
 
脇から胸を狭窄されたようで、息が苦しくなる。
 
「慣れますよ」 
 
深水はこともなげに云った。 
背中についている金の輪が気になったが、

「飾りでしょう」 
 
とあっさりしたものである。
 
「ブーツです」 
 
サイドファスナー付きのストッキングブーツで、ふくらはぎをきつく締めつけ、脚の狭窄感が下から湧き上ってくる。

足首のところにも、金の綸がついている。 
馬を御すための、小さなギアではない。 

「さあ、御案内しましょう」 
 
レザーの、キャミソール、ビキニ、ストッキングブーツの、三点セットを着せられた雅明は、全身を拘束されたように感じながら、黙って、執事の深水のあとに従った。 
 
「あら、お似合いよ、坊ちゃま」 
 
玄関で、まだ何も着ていない谷津子が、火照ったままの肉感的な裸体を見せて、雅明に云った。 
洋風の庭から、薔薇のアーチをくぐると、奥庭は、ちょろちょろと水が流れている。
水字くずしの流れと、繁茂した樹木が重なって、暗い和風の庭に一変する。 
沢留石を渡り、流れの滝口に向って、築山に歩く。 
すすきの紫茶色の花穂が重くたれ、半分埋まった雪見竹呂が、どこか淋しげに見える。 「やはり、お化け屋敷だな」 
とレザーの拘束衣のようなものを着せられ少々血が頭に登ってきた雅明は、減らず口をたたいた。
 
「そんなことをおっしゃるものではありません」 
 
振り返って、深水がたしなめた。 
 
「それとも、幽霊の正体見たり枯尾花、かい」 
 
雅明は古風な川柳をよく知っている。 
すすきの穂にも怯づ、心が落ち着かずわずかの事にも恐れるさま、からとった川柳である。 
 
「静かに」 
 
無駄口をたたく雅明を、深水は制止した。 
昼でも暗い湿地帯のような奥庭は、枯葉がくさりすえたように匂いがする。 
枯れた流れも、そう思うと、何故か佗しくなる。 
レザーの三点セットの若い雅明と、もとの自然にかえりつつあるような、荒れた和風庭園の接点がどこにあるのか、よくわからない。 
 
「あっ」 
 
雅明が何かを見つけて、指を差した。 
芙蓉の灌木の間に、黒い長い髪が風にそよいでいる。 
厚く重なった樹木を通して差し込む、わずかな陽光の中に、白色五弁の芙蓉が、淡紅色に移りかわろうとしていた。 
その淡紅色五弁の大きな花に飾られて、まっ白な女体が、雅明の前に浮かび上がった。
 
「出た」 
 
と雅明が叫んだ。 
 
「お化けが出た」 
 
「おだまりなさい」 
 
深水が雅明の指差す腕をつかん叱責した。 

「美夏様です」 
 
「えっ」 
 
五弁の芙蓉の問に立っている美夏の、黒い長い髪は、顔の半分をかくし、美しい宝珠のような乳房をあらわにし、ふっくらした腰を包んで、足を覆っていた。 

「足が無い」 
 
雅明は、深水の制止もきかずに、また叫んだ。
 
「やはりお化けじゃないか」 
 
美夏と知って、雅明は悪態をついている。 

「噂は本当だったんだ」 
 
「深水」 
 
と芙蓉の精と化した美夏が、静かに口を開いた。
 
「雅明をだまらせなさい」

「はい、お嬢さま」

いきなり両手を背中にひねり上げられて、

「何をする」 
 
雅明はもがいた。
 
「静かにしないからですよ」 

執事の深水の馬鹿力に、雅明はすすきの根もとに組み伏せられた。 
レザーキャミソールの背中につけられていた金の輪が、手枷になる。 
レザーのストッキングブーツの足首についていた金の輪が、連結されて足枷になった。 やはり、叔母の美夏が、甥の雅明に送った品は、革の拘束衣であった。    
 
「畜生、ほどけ」 
 
湿った枯薬の上に倒され、せっかくの湯上りの肌に泥がつく。
 
「この、女お化けめ」

「おだまり」    

美夏の鋭い叱責が飛んだ。

「深水、早く、猿ぐつわを」

「はい、お嬢さま」 
 
空気穴のあいたボールの箝口具が、雅明の口に詰め込まれた。 
 
「うう」 
 
猿ぐつわを噛まされて、雅明は呻いた。 
だらだらと唾液が、ボールの横から染みてくる。

「不動石に立たせて」 
 
長い黒髪だけをまとった全裸の美夏は、深水に命じる。 
水の枯れた滝口の、不動石の上に雅明を立たせ、 
 
「美少年がだいなしね」 
 
美夏は、久し振りに会う、すっかり大人の肉体を持ってきた、甥の雅明を見つめた。
 
「う、うう」 
 
雅明の呻きは、ボールの空気穴を通して、ひゅうひゅうと、風のように吹きぬける。 
三段に落とした滝口の、石組に、雅明がよろけて背をもたれさせた。 
もたれても、不安定な雅明の身体は、今にもくずれ落ちそうに見える。 
 
「その松の枝に首を吊って」 
 
石組の上に見事な枝振りを見せている松を指差して、美夏は云った。 
雅明の首に金の細い鎖が巻きついて、松の枝にくくりつけられる。 
 
「動くと首がしまるわよ」
 
美夏は涼しげに、残酷なことを云った。

「死んでしまっても知らないわ」 
 
首に鎖を巻くことは危険すぎる。 
危険な行為をしたのは、責めの一段階にすぎない。  
雅明をあばれさせたくない意図的なものである。

「そのまま、おとなしくしていらっしゃい」
 
「う、うう」 
 
口から唾液をあふれさせながら、雅明は呻く。顔から血の気が引いている。 
叔母の家に預けられただけで、はじめからこんな残酷な責めにあうとは、雅明は考えてもいなかっただろう。 
松の枝に、鎖で首吊り状態にされ、雅明は理解に苦しんでいる。 
芙蓉のかげから、美夏が枯れた流れに下りる。 
と、芙蓉の枝に、黒髪が巻きついて、美夏の顔があらわになった。 
 
「あっ」
 
あわてて、美夏が顔を覆った。
雅明は息を詰めた。 
一瞬だが、美夏のかくれていた顔半分を見てしまっていた。 
叔母の美しい顔の半分に、火傷のあとのような、ひきつった、ただれた皮膚がある。 まっ白な宝珠のような乳房がふるえ、童女のようにすべすべした股間に、淡紅色の五弁の芙蓉が咲いている。 
何事もなかったかのように、深水が黒髪を芙蓉の枝からほどく。 
長い黒髪の衣装をつけ、五弁の芙蓉で無毛の秘肌を飾った全裸の美夏が、首も自由に動かすことの出来ない雅明の前に立った。

「よくお聞き、雅明」 
 
涼しげな声で、美夏は云った。
 

「雅明を、美夏は、お父さまから頂いたの」
 
「-」
 
「雅明は吹雪の子ではないのよね」
 
雅明は首を振った。
 
「うっ」 
 
首に巻きついた鎖がしまる。
 
「首を振ってはだめ」 
 
笑いながら、美夏は苦しそうにもがく甥をたしなめる。 
 
「お父さまの子か、それとも、お姉さまの愛人の子か、お姉さまにもわからないのよ」 美夏は、平気で、雅明を傷つける。 
 
雅明が、出生の秘密を知らないわけでないことを、美夏は雅明の母、姉から数えられているのだろう。 
 
「お姉さまの愛人」 
 
といって、美夏はちらっと、執事の深水を見た。
深水の顔に変化はない。
 
「誰も知らないの」 
 
ますます、雅明の本当の父が誰だかわからなくなる。 
が、そんなことはどうでもいい。 
誰だって、両親を、本当の父母だと信じているだけのことなのだから。
 
「お父さまから頂く条件はね……」 
 
全裸の美夏の花唇に挿入された、淡紅色五弁の芙蓉に、しっとりと愛蜜があふれている。
 
「雅明を一生この屋敷から外に出さない」
 
「うう」
 
雅明が眼を見ひらいて、全裸の葵夏を見つめた。 
驚愕と不安と恐怖が、一度に雅明を襲ったようであった。
 
「お父さまも、風吹も、家名の方が大切なのよね」 
 
離婚してきた美夏も、あるいは同じことなのかもしれない。 
離婚の原因は、顔の火傷のようにただれた痣にあるらしい。 
結婚前、美夏は顔を整形している。 


その美容整形が、逆に、美夏の顔を破壊してしまったのだろうか。 
奥庭の離れに引き籠もった美夏は、自然にかえりつつある奥庭の、四季の花々の中に、全裸で立つようになった。 
自然のままに、生まれたままの容姿を保てばよかった、悔恨の情が、花々の中に、美夏の黒髪と白い裸身を舞わせている。 
それが、白い女体の幽霊の噂になった。 
「雅明はお父さまからも、風吹の家からも追放されたの」 
全裸の美夏が、雅明のレザービキニのファスナーを下ろした。 
レザービキニで圧し潰されていた、大人に成長したものを、しなやかな指でほじくり出した。
 
「うう」

叔母の手の中で、雅明の露出したものが、みるみる膨張した。
 
「立派ね」 
 
美夏の白い指が、雅明の黒い恥毛にからまった。
 
「毛もはえたのね」 
 
雅明の顔に、羞恥と困惑が浮かんだ。 
叔母に責められて、雅明は戸惑っている。
 
「固いわ」 
 
美夏のやわらかい指が、雅明の硬直しきったものを、やわやわともみほぐす。 
 
「う、うう」 
 
首の鎖は限界にきている。 
首を締められ、よけいに、雅明の下半身は膨張する。 
 
「谷津子さん、もう、お毒味したのでしょう」 
 
深水を振り返って、美夏が聞いた。
 
「はい、いや……」 
 
深水の答は歯切れが悪い。
 
「いいのよ。谷津子さんに、雅明の下の病気を調べてもらったのだから」 
 
美夏は、不純異性交遊で捕導された雅明を信じていなかったらしい。 
谷津子のロと花唇で、雅明の病気を調べるとは、深水も気がっかなかった。

「雅明」  
 
声をあらためて、美夏が云った。 
 
「外に逃げないように、雅明の眉を剃るわよ」 
 
「-」
 
「髪も剃るわ」 
 
雅明の呻き声が絶えた。 
絶望と恐怖が雅明の呻きを殺している。
 
「生えかけた恥毛は、あとのお楽しみにとっておくことにしましょうね」 
 
雅明の恥毛をつまんで、美夏は、くすっと笑った。 
眉と頭の毛を剃られた雅明は、叔母の美夏の捕らわれた稚児になる。 

「このレザーファッション、お気に召しましたか」    
 
急にやさしく云って、また、くすっと笑った。 
 
「若い男の子には、とてもナイーブだとは思わないこと」 
 
また声をあらためて、
 
「深水、雅明の眉を剃り落して」 
 
ときびしく云った。
 
「うう」
 
これ以上首を振っては、鎖がしまりすぎる。 
首をのばして、雅明は呻いた。 
やめてくれ、はなしてくれ、許して、雅明の見ひらいた眼に、涙が浮かんでいる。 
 
「かしこまりました」 
 
深水は丁寧に美夏に会釈した。 
眉を剃り落とすのを確認するかのような、頭の下げ方であった。 
深水の手に鋭利な剃刀が握られている。
ボールの箝口具をはめられ、だらだらと唾液をあふれ続けている雅明の頬に、深水は剃刀をあてがった。 
 
「動くと傷がつきますから、おとなしくしていて下さいよ」 
 
深水は低い声で云った。
 
「いいですね、坊ちゃま」
 
「うっ、うう」 
 
深水の手が、雅明の首を締めている金の細い鎖をなぞる。 
レザービキニから霧出したままのものは、不思議なことに、膨張したまま脈打っていた。 恐怖と不安が、逃に、雅明の下半身を充血している。      
剃刀が眉にあてがわれた。 雅明が目を閉じる。 
濃い眉だが、あっさりと剃り落された。 
雅明の膨張したものの先端から、透明な粘波が光り、糸を引いて、レザーブーツの間にたれ、足枷を濡らして止まった。 
残った眉が、消える。 
眉の無い顔は、奇妙な雰囲気をかもしだす。 
 
「幽霊がまた一人、ふえたわね」 
 
美夏は、楽しそうに笑った。 
 
「眉が生えるまで、外に出られないわ」 
 
深水が鋏を手にして、雅明の長髪を乱暴に短く刈り始めた。 
枯れた流れの、滝口の不動石の上に、雅明の髪が、はらはらと散る。 
観念したのか、雅明のロから、呻きも、唾液も消えた。 
虎刈りの頭を、おかしそうに、美夏は眺めている。 
若い男の、愛玩用動物を飼育する楽しみにひたっている。 
短かくなった頭に、剃刀があてられる。 深水の手は早い。 
慣れている。 
美夏は元来無毛ではない。 
もしかしたら、美夏の秘肌を剃毛しているのは、深水なのかもしれたい。
髪の無い雅明の頭は、けっこう形が良い。 
傷が少しついたようだ。
 
「鼻も吊りましょうか」 
 
髪を剃り終えた深水に、美夏が云った。 
まだ、美少年の顔を破壊したいような口振りであった。 
畜化をめざすためには、顔を責めた方がいいということか。 
太い針金を鉤形に折り曲げた、鼻吊具が、丸坊主にされた、眉のない顔の、雅明の鼻孔をひっかけ、ぐぐっと上に吊り上げた。 
ひたいで、箝口具のバソドに接続する。 
針金が少し左右に開き、雅明の鼻孔が少し広がったため、針金の形を変えてせまくするやはり、鼻吊りは、鼻孔を上にまっすぐ伸ばさないと、美的ではない。 
雅明の呻き声は、くぐもって聞こえない。 

「マスクで顔を包んで」 
 
美夏の責めは、なかなか止まらない。 
鼻吊り、ボールの箝口具をされたささ、レザーの全頭式マスクが、雅明の頭からすっぽりかぶせられた。 
眉のない、頭髪のない顔が、顔の無い男になる。 
鼻の穴だけが開けられた、黒光りするレザーの全頭式式マスクをかぶされた雅明は、ようやく松の枝から、首輪の鎖をはずされた。 
そのまま、よろよろと、不動石にくずれ落ちる。

「このままにしておきますか」 
 
深水が美夏に聞いている。 
 
「穴の中に入れましょう」 
 
美夏の楽しそうな声が耳元でする。 
レザービキニのファスナーが閉じられ、硬直したものが無理に押し込まれ、圧し潰された。 
叔母の美夏は、まだ甥の下半身を襲って来ない。 
滝口から築山へ、目かくしをされたまま、後手枷、足枷の雅明は、落葉を踏んでよたよたと歩く。 
全裸の美夏が、黒髪をなびかせて、茶室のような小さな平屋に消えた。
その平屋を右に見て、深水は、目の見えない雅明の肩をつかみ、築山を下りる。 
湿った空気が、深まって、道が途絶えたような気がしたときだ。 
不意に、 
 
「坐れ」 
 
雅明は、肩を上から押さえられ、腰がくだけた。 
ひやっとした石の冷たさが、レザービキニと、ストッキングブーツの間の肌に、鋭く感じて、雅明は首をすくめた。 
叔母のいった、穴の中に入れられたらしいことが、鼻孔から吸い込まれる、湿気の強い匂いと冷気で察しられる。 
耳をすますと、小さな流れが足もとでした。
庭の小さな流れが、穴の中に通っているらしい。
 
「しばらくの間、ここが、住まいだと思えばいい」 
 
深水の声が遠のいていく。
 
「死にやしないから、安心して、寝ているんだな」 
 
なにかしら、穴の入口を閉じるような気配がする。 
それは気のせいかもしれないし、本当に密閉されたのかもしれない。 
恐怖と不安に、冷気が重なって、雅明のレザーファッションで包まれた身体が、まるで、死人のように冷たくなった。 
レザーの全頭式マスクで、暗黒の世界に閉じ込められた雅明の心理状熊はどうだったのだろう。 
目隠しにより暗黒世界に入り、現実から遊離したことは、雅明の心理に、転換をあたえて当然だと思う。 
現実遊離は、風吹家からの追放、叔母美夏への奴属を確定する、荒療治といえないこともない。 
ただ、目隠しをされたまま、未知の穴倉に放置された不安と恐怖は、そう簡単には消えなかったのに違いない。  
穴の中の雅明は、全頭式マスクの小さな鼻の穴から、湿ってすえたような地下の匂いをかぎ、耳をすませて、すぐ近くを流れる小さな水の音を聞いていた。 
石棺に寝ているような冷気は、緊張を持続しているせいか、それほど寒くは感じなかった。 
時間の経過は、暗黒の中では無感覚になる。 
谷津子が迎えに来てくれたとき、雅明は、このような、奇妙な世界に入るとは、予想もしていなかったことだろう。 
一瞬のうちに、雅明は、現実遊離を強いられ、叔母の美夏に飼育されることになった。 鼻吊りの針金の鉤が、無感覚になっていた。 
箝口具をはめられた口は、からからであった。 
唾液も渇ききっている。 
水が飲みたいが、猿ぐつわと全頭式マスクで二重にロをふさがれていては、不可能であった。 
水の流れが、ささやくように聞こえるのが、かえって苦痛になる。 
美夏に飼育されることに、雅明の抵抗する気持は失われていた。 
不鈍異性交遊もそうだったが、雅明には、なんとなく流れには乗るが、底には沈まないという性格がある。 
美夏に飼育されても、流れに逆らわずに、身を委ねているのに違いない。 
尿をこらえきれずに失禁してしまい、濡れたレザービキニが、ますます下半身を圧迫して、激痛さえ走る。 
まだ未成年の雅明を、不能にするのではないかと疑うほど、小さいレザービキニの狭窄は激しさを増していた。 
観念してしまうと、拘束された状況に、それなりに身を委ねている自分を発見するかもしれない。 
苦痛や不安を忘れるためには、逆に、拘束された状態に陶酔すればいい。
檻禁された、雅明の、早い頭の転換であった。 
誰にでも、被虐に甘んじる性格はある。 
それが強度に表に現われ、遊びとして定着すると、被虐を甘受することによって、現実遊離をはかり、ストレスを解消する、という段取りになるのだろう。
渇きに空腹が加わって、雅明の苦痛が別のところから、新たに湧き上がった。 
餓死はさせられまいという安心感がなければ、空腹には勝てない。
雅明は、簡単な朝食をとっただけだったのに気がついた。 
食事は簡単な上、谷津子のロと花唇に、ニ度も若い精を放出しているのである。 
その上、レザーの拘束衣を着せられ、眉と頭髪を剃られて、穴倉に檻禁されてしまった。雅明のエネルギーは、かなり消耗していたことだろう。 
眠ってしまったのか、起きていたのか、暗黒の中で、しばしば、雅明は首をひねった。 自分でもよくわからないことがある。 
夢を見たから、眠ったのだろうとも思う。 
夢は、明かるい外を歩いているのと、水を飲んでいるのと、誰か、黒い影に追いかけられ、金縛りにあったように、全身硬直してしまったという、なんとなく、穴倉に檻禁されていることに原因があるものをみている。
濡れたレザービキニが気持悪い。
誰かが、雅明のストッキングブーツを脱がせている。
足枷ははずされたらしい。 
人の気配に気がつかなかったのは、待ちくたびれて、死んだように眠ってしまったのだろう。
レザービキニが脱がされ、圧迫された下半身が解放され、下腹の激痛がうそのように去った。
が、股間に、重い鎖の感触が新たに加わった。 
全頭式マスクが取られた。
 
「元気かね」 
 
執事の深水が、雅明を覗き込んだ。

「顔色は悪くない」 
 
雅明の鼻孔から、鼻吊具をはずす。 
雅明の鼻をつまみ、もみほぐして、
 
「鼻血もでていない」 
 
深水は医者みたいなことを云った。 
ボールの箝口具がとられ、雅明のこわばった口が、痴呆のように開けられたまま、無言で深水を見上げていた。 

「おとなしくしているのなら、手枷も取ってやる」 
 
深水が雅明に念を押した。 雅明は黙ってうなずいた。 
後手枷がはずされ、レザーキャミソールが脱がされて、雅明は全裸になった。 
手枷をはめられた手首をもみ、頭に手をやって髪が切られているのを確め、思い出したように、剃られた眉のあとをさがした。
レザービキニにかわり、太い重い鎖が、十字帯のように股間にあてがわれ、腰から更に鎖が延びて、土中に埋められた杭にくくりつけられていた。
腰の鎖に、大きな錠前がぶら下がっている。

「鍵は、美夏様がお持ちになっている」 
 
と深水が低い声で云った。
深水は立っているが、穴倉の天井にはとどいていない。 
かなり深い洞窟のようにも思えるが、何か人工的な感じもしないわけではない。 

「ここは、滝壺のあとだ」  
 

と深水が説明した。
茶室のような小さな平屋が建てられている丘陵の片側が、断崖となって削られ、竜口となり、美しい滝の景観が広がっていたらしい。
地震のあと、水脈が途切れ、築山の竜口が変ったらしいが、その流れも、また、細くなっている。 
枯れた滝の窪みを広げ、人工的に断崇の囲いを造り、深い洞窟を出現させたらしい。
が、なんのために、わざわざ、こんな湿った穴倉を造ったのか、その理由がわからない。雅明の怪訝そうな顔に、

「今にわかるさ」 

とはじめて、深水がにやりとした。 
穴倉の明かりは、流れの、二つの出入口ということにたる。 
人工的に造られてない、滝の窪のあたりは、じっとりと湿って、苔が生えている。
糸状の苔が地を這い、五ミりほどの軸を直立させ、披針の形の葉が二列に並んでいる。 その糸状の苔が、光線を反射してきらきら光っていた。 
光り苔らしい。 
 
「身体を洗ったらどうだ」  
 
と清涼な流れを指差して、深水が云った。  
失禁した下半身は洗っていない。
雅明が石床を這うように、細い流れににじり寄った。  
股間の鎖がかなり重いようであった。  
足から流れにすべった。 
 
「冷たい」              
 
雅明は思わず声を立てた。
細い流れだが、清水なのだろうか、冷たぐ肌を刺した。
雅明の下半身を洗うには、清く澄んで水位も充分であった。
深水がバスタオルを雅明に渡して、穴倉から出て行く。 
 
「腹がへった」 
 
雅明は、息を吹き返したかのように、深水の背中に叫んだ。
 
「餓死させるつもりか」 
 
深水が雅明を振り返った。
 
「美夏様がお食事をくださる」
 
深水は、意味深長な含み笑いをした。
穴倉の入り口の戸が閉められる。
流れの出入り口からだけの陽光で、穴倉の中は暗い。
深水の顔を見て安心したのか、やけに空腹が感じられる。
飼育するといっても、鎖につながれて、暗い穴倉に閉じ込められてるとは、奴隷、いや囚人よりひどい。
それもバスタオル一枚の裸体のままである。
いくら若い健康な雅明でも、このままでは発熱してしまう。
レザーの拘束衣を取られてから、眼が冴えてもう眠れない。
光り苔のにぶい反射に、全裸の雅明は眼を凝らす。 
穴倉の天井で足音がする。
と、天井にぽっかりと、矩形の穴があいた。 
明かるい腸光が、矩形の穴の周囲に広がっている。
その明かりが薄暗くなった。 
矩形の穴を、白い足がまたいでいる。 


鎖につながれた雅明が腰を浮かした。 
叔母の美夏に違いなかった。 
白い足首に、まとわりつくように、長い黒髪が風に吹かれている。 
美夏は何も云わない。 
穴倉の中に全裸のまま閉じ込めた甥の雅明を、黙って見下している。 
焚夏が腰をかがめた。 
美夏の、まっ白な弾むような丸いお尻が、矩形の穴にかぶさってくる。 
童女のようにすべすべした股間に、淡紅色の五弁の芙蓉が咲いていた。 
美夏の細い指が、白い肌をすべって、花唇に生けられた芙蓉をぬいた。 
淡紅色の五弁の芙蓉が、はらはらと雅明の顔に散る。
童女のようにすべすべした秘肌が割れ、濃い愛蜜をたたえて蠢く花肉が、雅明の顔の上に開いていた。 
雅明は中腰のまま顔を仰向けた。
と、花肉に埋まっていた花弁をはじくようにして、一条の白線が、美夏の花唇から落下した。 
あたたかい雫が、雅明の顔にはね、呆然として開いているロにはねた。 
美夏の、芙蓉を差し込んでいた花唇から、細い白線が弧を描いて降りそそいでくる。 雅明の喉がごくりと鳴った。 
 
「お飲み、のどが渇いていたのでしょう」 
 
頭上で、美夏の甘い声がした。   
雅明の喉に、渇きがよみがえった。 
雅明の顔に、玉虫色の飛沫が散り、雅明の口に、あたたかい琥珀の液体が踊った。 喉の奥がかっと熱く火照り、飲み下すたびに、胸が灼け爛れるような衝撃が走った。 美夏は、穴倉に閉じ込めた雅明の裸体に、あたたかい小水を注いでいた。 
雅明は、閉じ込められた穴倉が、なんのために造られたのかを知った。 
雅明は、何も知らずに、美夏の厠の下に放置されていたのであった。
目も鼻も、落下する琥珀の液体に叩かれ、視界がぼやけ、鼻孔に侵入して激しくむせた。
美夏は、雅明の渇きを、小水で補おうとしていた。 
雅明は、全身に、美夏のあたたかい小水の洗礼を受け、茫然自失したまま、ただ、ロを大きく開けて、一滴でも多く慈雨の恵みを受けようと必死だった。
雫が、ほとほとと、花弁を伝わってしたたった。 
矩形の穴に、埋まるようにかぶさっている美夏のまっ白なお尻の谷間に、ロを固く閉じていたアヌスが、淡紅色の菊蕾を押し開くように盛り上りを見せ始めた。
花肉に愛蜜をためた花唇から、美夏の馥郁たる芳香が、雅明の頭上に甘露のように舞い落ちた。 
美夏の花唇から、男を誘う濃い甘美な匂いがたちこめていた。 


芙夏が、腰をくねらせた。
ロをすぽめて、蕾のように盛り上がったアヌスがはじけ、黄金の秘宝がゆっくりと顔を出し、そのまま止まった。
雅明は息を止めて、美夏の秘められた菊襞の蠢きを見守っていた。 
美夏のアヌスから顔を出した黄金の秘宝はふっくらとふくらんで、ゆっくりと雅明の口に落ちた。
柔らかい黄金の秘宝が、ねっとりとすべって、雅明のロの中で、甘く溶けた。 
噛みしめるまでもなく、ごくりと、雅明は呑み込んだ。 
また一つ、美夏の淡紅色のアヌスは、やや大きめの黄金の秘宝を生み出していた。「おたべ」 
と美夏の甘い声が頭上でした。 
 
「おなかがすいたでしょう」 
 

夢遊病者のように、雅明は立上った。 
美夏の肉をふるわせている丸いお尻に顔を近づけ、菊襞をはじいて、今にも落下しそうな黄金の秘宝の下に、大きく口を開いた。 
雅明の下半身は充血し、重い鎖の十字帯を押しのけるようにして隆々と勃起していた。 美夏さまがお食事を下さる、と云った深水の言葉を、雅明は理解した。
美夏の厚く盛り上ったアヌスがはじけ、ほかほかとあたたかい、マシュマロのようにやわらかな、黄金の秘宝が、雅明のロに吸い込まれた。
雅明の顔に霞がたち、酔い痴れたように頭が空になり、ロの中で甘く溶ける美夏の生み出した黄金の秘宝を、いつまでも甘受していた。 
また一つ美夏は、厠の床下に閉じ込めた全裸の雅明の顔に、真っ白な豊かなお尻をふるわせて、もっこりしたあたたかい黄金の秘宝を落下する。
穴倉の天井の矩形の穴が閉じられ、闇と静寂が、鎖につながれた全裸の雅明を支配した。 
もし、雅明がこのまま餓死したら、雅明の胃袋の中に、美貌の叔母の、美夏が生み出した黄金の秘宝が残ることになる。
光り苔が一段と美しく煌いた。
(了)
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