生徒との1年間

スオン

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顧問1年目3月

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 茜色の光が差す教室に立ち尽くす教師。
 室内には教師ともう一人、制服姿の生徒。
 生徒は男子生徒。当然だ。ここは男子校なのだから。

 室内に木製の机と椅子が並んでいる。男子高生が使うものとしては、少し小さいサイズ感だ。
 どの机も椅子も、使い込まれているのが一目でわかる。
 それだけ、この高校に歴史があるということなのだろう。

 今は3月の後半で、春休み真っただ中だ。
 地方の進学校であるこの高校では、補講もあり春休みもほとんどないようなものだが、この時間にもなると校内には人影がない。
 そんな校内の3年生用の教室で、教師と生徒が向き合っている。
 この高校に赴任してから2年目になろうとしている、世界史担当教師である立成が、明日のオリエンテーションの練習と称して、筒井の提案で教室にいるのだ。
 このため、この2人の関係は、担任とそのクラスの生徒という関係ではない。
 弓道部の顧問とその生徒というつながりだ。

 生徒の筒井は、この冬の全国大会に出場するほどの腕前だ。
 その評判は、職員室でもよく話題になっていた。
 地方進学校らしく、勉強だけではなく部活動にも力を入れている学校だから、好成績を出している筒井は、教師たちからも好意的な印象だ。
 当然、そんな生徒のいる弓道部の顧問である立成の評価も良好だ。
 立成自身は弓道の心得のない部活であるにもかかわらず、そんな良い成果をだしているのだから、良い目で見られている。

 立成が部活に特別なことは何もしていなかった。
 ただ、筒井がのびのびと部活ができるように、当然のことをしただけだ。
 
 同学年がいない筒井が、1年への指導だけでつぶれないよう、所定の練習時間以降の居残り練習に付き合ったり、相談ごとにのったり。
 教師として、ごく当たり前のことをしていただけ。それだけだった。

 それだけだったはずなのだが・・・

(なぜ、俺は、筒井の言うとおりにしてしまうんだ・・・?)

 立成は、自分の手で、身に着けていた服を、靴下を除き全て脱いでいた。
 ジャケット、ワイシャツ、ランニングシャツ、ベルト、スラックス、ボクサーブリーフ・・・
 無理やり脱がされたのではない。自分の手で脱いだのだ。
 屈強な肉体を見せつけるように、大人の男である32歳の雄の生命というものを自らの身体で教育するかのように。

 この高校に赴任してから、1年が経つ。
 この1年で、色々なことがあった。あってしまった。
 
 立成は、まさか、教師である自分が、同性である男子生徒と肉体関係を持つまでになるとは思ってもいなかった。
 きっかけらしいものは無かった・・・と立成は思っている。
 それでも、生徒の筒井は、男性に対し性的欲求をもつ人間であり、立成のその風貌と優しさが、筒井の心をつかむと同時に、その肉欲の的となったということだった。

 (なぜ、筒井は、こんな俺なんかに?)

 このような行為に及ぶたびに、立成は自問するが、それに答えなどない。
 人と人との惚れた腫れたの問いかけなど、人類が誕生してから滅亡するまで、誰も答えが出せないだろう。
 答えは出せずとも、自然と身体が反応する。心がついていくかどうかは、その時次第だ。

 それは立成も同じだった。
 教師として、さらには男同士で、そんな関係など、とんでもないことだ。
 そんなことになることなど、全く考えたこともないのだった。

 それでも、筒井に何かされるたびに、言われるたびに、ただそれだけで自分の身体が燃えるように熱くなってしまう。
 自分の身体ではないかのように。
 
「・・・お、俺は!弓道部顧問の!立成正秋!32歳!仮性包茎の・・・彼女いない歴32年・・・ど、ど、童貞教師!です!!」 
 
 とんでもない自己紹介だ。
 こんな破廉恥な自己紹介を、筒井1人だけとはいえ生徒の前でするなんて。
 
 そうだというのに・・・
 何も考えられなくなってしまう。
 呼吸が荒くなってしまう。
 身体が熱くなってしまう。
 発汗してしまう。

 見たくはないのに、筒井を見てしまう。
 その表情。
 ニコニコとした笑顔をしている。
 普段はのんびりとしていたり、おふざけをするような、なかなか面白い生徒なのだが、こういう行為をするときは何を考えているのか、本当にわからない。
 時々、そんな筒井の表情に、恐怖すら覚えることすらもある。
 もっとも、こんな行為の後は、いつもの筒井に戻るのだが・・・

 今も筒井が笑っているのは、一体何なのか。どうしてこんなことをしていて、あんなふうに笑えるのか。
 こんなことをする教師を見下しているのか。
 毛深く体毛が生えた、少し弛んだ身体を馬鹿にしているのか。
 32歳にして、女性と交際したこともなく、ましてやセックスをしたことのない童貞教師の存在を嘲笑しているのか・・・

 そんなことを考えると、立成の身体はより敏感になったかのようになってしまう。
 全裸の素肌表面にある空気の存在までも、自分の身体を刺激する存在であるかのように。
 そんなことになっているから・・・

「こ、これが、弓道部顧問、立成正秋・・・32歳、・・・・彼女いない歴32年の・・・ど、童貞教師の、ケツ、の、穴・・・です・・・」

 ケツの穴まで、教室でさらけ出してしまっていた。
 しっかりと臀部を突き出し、自分の両手でケツタブを開いて。
 自分でもコンプレックスのデカ尻を何も隠さず、尻表面や、ケツの割れ目の中、そして肛門周りまで。
 びっしりと長い縮れ毛が生え揃っている、自分の尻の全てを、さらけ出してしまった。
 
 屈辱と羞恥に包まれるが、それでも立成の興奮は止まなかった。
 股間にある雄の象徴であるそれは、全裸になる前の準備段階から硬くなり、ケツの穴を筒井に見せつけるころには、壊れた蛇口のように先走りをとろとろと溢れさせている。
 
(どうして・・・どうして、こんな、こんなことをしているっていうのに・・・)

 立成はうつろになりながら、口にはしないがそんなことを考えていても、身体の反応は止まらず、鈴口からのいやらしい汁の流出が止むことはなかった。

 どうしようもなかった。
 理論的な理由はつけられなかった。
 ただ、自分がこういうことで興奮してしまっている、ただその結果があるだけだった。
 現に、強制力など何もないというのに、羞恥で震える手で、さらに震えるケツのケツタブを無理やり開いてしまっているのだから。
 
 茜空が夕闇になるころ。
 教師の自己紹介は、自分の身体の紹介から、恥ずかしい行為の自己紹介で、フィナーレとなった。

「も、もう・・・あぁっ!筒井!いく!いく・・・」

 立成は射精した。
 自分の手で、自分の陰茎をしごくことで。
 2人きりの教室で、生まれて初めて他人見せる、自分の自慰行為。
 こんなことまでしてしまうなんて。
 この教室は、明日からも補習で使うのだろう。
 そんな場所を、自分のザーメンで汚すだなんて・・・
 これから先、俺は、・・・・俺と筒井は、どうなってしまうんだろうか・・・

 異様な状況の中での射精による快楽でもうろうとしながらも、ただただ笑顔の筒井を見ながら、立成はそんなことを考えていた。
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