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「うそだろ…」
思わず口から、心の声が漏れてたらしく、俺の友達の鈴木が俺の方へとゆっくり視線を向ける。
その鈴木の顔は、今まで見たことも無いくらい、憐れみが込められていた。
掲示板に貼られている紙。その書かれてある文字の見間違いはあっても、友達の表情を見間違えるなんてことは無い。鈴木の顔は間違いなく、困惑と同情と驚きが混ざった不吉な顔だった。つまり俺は…

「あの異常クラスに入れられるのか?」

俺は一気に視界が遠くなった。



この4月で高校二年生になることができた俺こと、杉谷 守は、友達の鈴木と同じクラスになれるかとか、そういったウキウキ半分、不安半分の状態で、クラス替えを見に行った。
一緒にクラス替えを見に行った鈴木に言われたある一言が、ラノベとかアニメで言う所のフラグと言うものだったんだろうか。

「なんか、問題児だけを集めたクラスができるらしいよ。」

ふーん。それが鈴木の話を聞いて俺が思った感想だ。それ以上も以下も無い。
確かにこの学年は問題児が多いからな。無理もない。
まあそんなの俺には関係無いけどな…なんて思いながら鈴木とクラス替えを見に行った__というのが、今から5分くらい前に起こった出来事だ。
そしてたった今、俺の前に立ちはだかる、F組のクラス名簿。
そこにはハッキリと「杉谷 守」と記されている。
けれど俺には、問題児扱いされるような心当たりは無いし、鈴木も信じられない様子。
なぜ俺がこんな目に…
鈴木に助けを求めるような視線を送ると、少し視線をそらされた。
俺は「鈴木ィ…」と情けない小さな声を漏らすと、鈴木は険しい顔を俺に向けた。そして俺の肩に手をポンと置くと、

「杉谷、おまえのことは忘れないぞ…」
「見捨てやがったなぁぁぁぁ!」

なんて奴だ。友達がこんなに大変な目にあってるというのに。
とか言ってても、鈴木がこのクラス編成にしたわけでは無いし、こいつに怒っても仕方が無い。それに俺は本当に素行が普通。そんな俺がこのクラスになったのは、きっとなにか理由でもあるんだろう。
決まってしまったクラスはどうにもならない。とりあえず今、おれがするべき事は、担任に問いただすことだ。
担任の名前は見たことない人だから、きっと新任なんだろうけど、この際、新任とかは関係ない。なんで俺が問題児としてそのクラスに入れられてるのかを聞き出さねば、腹の虫がおさまらない。
俺はそのためにF組のある方へつま先を向ける。
「じゃ、鈴木、元気でやれよ…」
「お前もな。っていうか、お前の方がな。」
「はは、そうだな」

俺たちはお互い背中を向けて歩き出した。
涙目になってたのは言うまでもない。

_____________________


「F組はここだよな」
教室の扉の上のプレートにクラスも書いてあるのに、なぜかここで合ってるんだよな?と不安になる。同じクラスだった奴が一人も居ない、問題児だらけの教室だからか。俺は意を決して扉を開けようとその手を伸ばすと、後ろから不意に話しかけられた。
「お前もこのクラスになっちゃったのか?」
少し明るい男子の声。その声の主の方へとふりかえると、少し変わった髪型の、けれどごく普通の男子がそこに居た。
もみあげを長く伸ばし、前髪はパッツン。後ろの髪はツーブロックにしていて、ロックバンド好きな女性がしてそうな髪型。それ以外は話し方も、制服も、程よく崩された感じ。なんだ、異常なんて言うけど、普通のやつも居るんじゃん。
そう思って俺は右手を差し出した。
「ああ。俺は杉谷 守。好きに呼んでくれ。」
「守、だな。俺は坂上 圭太。よろしくな。」そう言って軽く握手。俺はこういう場になるといつも握手をするけど、照れられることが多い。それでも圭太は普通に手を握り返して来る。きっとフレンドリーで、こういうことに抵抗がないんだと思う。
圭太も俺と同じで、異常なんてこと無いじゃんなんて考えてたら、ふと思い出したかのように、圭太は俺に疑問を口にする。







「所で、お前の好きな幼女は?」




は?
「だから、幼女。清純派幼女?それとも今時幼女?俺的にはその中間くらいの、色白の幼女が好みでさ~」

前言撤回。こんなロリコン、異常じゃ無い訳が無い。
俺は永遠に終わらなさそうな幼女話から逃れるように、教室へと入って行った。
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