転校先の学校はR指定。

selen

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移動が終わり、座席表で確認した自分の席につく。
授業開始のチャイムが鳴り、先生が教科書のページを指定する。
28ページ。
先生が、まだ名前も知らない男子生徒を指名して読ませる。
····· ·····???
滝とは席が離れて、ちょっと聞きづらいけど、隣の席の男子にこっそり話しかける。
「ちょっとごめん、今さ、28ページのどこ読んでるの?」
「ん?ああ、萩原初めての授業だもんな。今は·····。あれ?」
「え?」
「萩原、お前これ、理科教養じゃ無くて地学の教科書じゃん!」
「えっ?!·····あれ、ほんとだ。」
化学室の中に軽く笑いが響いた。
「うっ·····すいません、取ってきます。」
先生に、気をつけろよ、と言われ俺は教室を後にした。
若干迷いながらC組までたどり着いた。
自分の机の中から、理科教養の教科書を出して地学の教科書をしまう。
「·····あれ?」
誰も居ないはずのC組のその席に、佐久間君がつっぷして寝ている。
軽くいびきもかいているから、きっとガチ寝してるんだろう。
みんな移動しているのに気づいてないんだなあ。
俺はさりげなく近づいて、できるだけ優しく肩を叩く。
「さ、佐久間君·····?今、化学室移動だよ。」
「·····あ?」
半開きだった口から、ほつれた糸みたいな声が出た。
「萩原君·····?うっ目痛え。」
欠伸をしながら体を起こして、目をガシガシ擦った。
容姿からして不良っぽい佐久間君の目から、ボロボロと涙が零れる。
「え?!そんなに痛いの?保健室行く?」
俺は、ポッケに入れていたティッシュを差し出す。(花粉症のなごりで俺のポッケにはティッシュが常備されている。)
「んあ、サンキュ。」
差し出したティッシュに、佐久間君の涙がじんわりと染みていくのがよく分かる。
「俺、コンタクトでさ。ずっと付けたまま寝てると乾いて痛くなるんだ。だから保健室とか大丈夫だから。」
「そ、そっか。」
意外と佐久間君の口調は優しかった。
佐久間君の耳上には、大胆にツーブロックが入っている。·····2か、3mmくらいだろうか。
「詩音君、でしょ?下の名前。」
電気が消されて真っ暗な教室に、廊下の明かりが細く差し込む。
ここに来て、初めてファーストネームで呼ばれた。かなり嬉しかった。
「詩音がいい。」
「まじ?」
驚きと、緊張と嬉しさみたいなものが入混ざったような表情で彼はそう言った。
そんな顔で、声で言われると、こっちまで照れる。
「俺の名前」
ガラッとドアが、結構乱雑に引かれる音がした。
「····· ·····なんだよ、そんな怖え顔して。滝。」
顔はこちらに向けたまま、横目で佐久間君はそういった。
「!」
佐久間君の言った通り、滝は睨み付けるような目付きで俺達を·····いや、佐久間君を見ている。
佐久間君は見ていないのに、どうして分かったんだろう。
「お前がそうやってサボるから、萩原が心配してんだろ。」
「いちいちうるせえよ。早く、連れてけば?」
俺は行かないし、と言ってスマホをいじり出した。
「·····萩原、おいで。」
「····· ·····うん。」
滝の口調は優しいのに、表情が怖い。
佐久間君はそのままイヤホンを取り出して耳に突っ込んだ。授業を受ける気はさらさら無さそうだ。
滝は早足で先に行くけど、俺は佐久間君を置いていくことがなんだか心細くて、開けっ放しのドアごしに振り返った。
すると、佐久間君はこっちを見ていて、軽く手を振ってくれた。
僕も頬が緩み、小さく手を振り返した。
「萩原、早く。」
「うん、ごめん。」
滝の雰囲気が怖い。
おいで、とか、早く、とか。
その一言一言に狂気的な束縛を感じた。
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