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最終章~あたしの大事な人~
どうしてここに
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「ねぇ……ど……どう……」
おもむろに手にしたスマホで電話をかけるけど、言葉になんかならない。
『心海?どうした?』
「わかん……な」
『おい、どうしたんだよ』
うまく話せないあたしに音哉が電話の向こうで焦っていることだけはわかる。
「おと……や……どう……しよ」
『お前、いま実家か?』
「う、ん……」
『行くから待ってろ!』
そのまま電話は切れたみたいで画面には〝通話終了〟と表示されている。
「あれ……音哉って……」
同じ地元だとは話したことがあったけど、実家の場所なんて言っていたかな。
でも、何もきかれなかったから忘れているだけかもしれない。
いま、ひとりでいることが怖かった。
さっき目にした写真の画像が頭にこびりついて離れない。
そんなはずないのに。
どうして、ここにその写真があるのかわからなかった。
たしかに見覚えがあった。
だって、悪魔のスマホの待ち受けの画像と同じだったから。
悪魔が大切にしている女性とのツーショット。
……どうして、これがここに。
✱✱✱
「心海!?」
バンッと部屋のドアがあいて、音哉が入ってくる。
「あれ……」
「チャイム鳴らしたけど出てこねぇから焦った」
「え……」
チャイムなんて全然きこえなかった。
「なに、あったんだよ?」
座り込んでるあたしの向かいに座ってポンポンっと、頭を撫でてくれる。
「これ……」
机の上においた、パンドラの箱を指さす。
「これ?」
あたしの言葉に立ち上がって、箱をあける。
「これ、あの御曹司……?は……?うちの高校の制服?」
「だよね……は?だよね……?」
「は?コスプレでもしたのか?にしても二人共高校の制服きただけでこんなに若返るか?」
冗談ぽく言ってる音哉だけど、声が震えてる。
分かってる、これが今じゃないってこと。
音哉もわかってる。
「なんで……?ねぇなんでこの写真がここにあるの?」
「は?この写真って……」
「だって!暁の待ち受け……っ、暁がずっとすきな人……はぁっ……」
息がうまできなくて、言葉にうまくできない。
「心海もういいから……喋るな」
音哉があたしのことを落ち着かせようと抱きしめてくれてるけど、止まれない。
「暁の高校の時の元カノ……はぁ……この人ににてるからあたしは……はぁ……」
息がうまくできない。
自分が自分ではないような、自分なんか存在しないようなそんな感覚に溺れてる。
「おい、もういいから!心海!わかったから!落ち着け!」
両頬をパンッと両手で叩かれる。
痛いなんて感じなかった。
それよりも、手汗がやばくてそして息なんかさっきよりもやばくて。
「だって……はぁ……もう……」
「心海!」
「おと……や……」
「おい!心海!」
名前を呼び続ける音哉に体を支えられながら、あたしは自分の意識を手放した。
本当に自分が自分でないようなそんな感覚で、苦しくて怖くて……もうどうしたらいいかなんてわからないままだった。
✱✱✱
「いつからとかそんなの関係ねぇよ。出会った瞬間に好きと思ったら好きなんだよ」
これは……誰が……?
手放した意識のなか、走馬灯のように脳裏に浮かぶ映像。
うちの学校の制服を着た悪魔が女の子にそう話す姿。
相手は……。
あたしに似たあの待ち受けの女の子?
「……よくもそんなこと、恥ずかしくもなく」
「恥ずかしがってなんていられねぇよ。心海を手に入れたいもん」
……っ。
相手は、あたし……?
暁とあたし、厚岸で出会ってた……?
「田舎の女ってちょろいんだな」
場面が通ってた高校の空き教室に切り替わる。
「俺さ、日本で1番でかい会社の御曹司なわけ。こんな田舎で一般人と付き合ったらどうなんかなーって思ってな」
……そうだ。
あたし、高校生のときに暁のこと……。
彼氏のこと裏切ってまで、好きに……。
「心海、別れようってなんだよ!」
暁に振られたのに、彼氏に黙っていればよかったのに。
どうしてもそのまま付き合ってるなんて出来なくて。
おもむろに手にしたスマホで電話をかけるけど、言葉になんかならない。
『心海?どうした?』
「わかん……な」
『おい、どうしたんだよ』
うまく話せないあたしに音哉が電話の向こうで焦っていることだけはわかる。
「おと……や……どう……しよ」
『お前、いま実家か?』
「う、ん……」
『行くから待ってろ!』
そのまま電話は切れたみたいで画面には〝通話終了〟と表示されている。
「あれ……音哉って……」
同じ地元だとは話したことがあったけど、実家の場所なんて言っていたかな。
でも、何もきかれなかったから忘れているだけかもしれない。
いま、ひとりでいることが怖かった。
さっき目にした写真の画像が頭にこびりついて離れない。
そんなはずないのに。
どうして、ここにその写真があるのかわからなかった。
たしかに見覚えがあった。
だって、悪魔のスマホの待ち受けの画像と同じだったから。
悪魔が大切にしている女性とのツーショット。
……どうして、これがここに。
✱✱✱
「心海!?」
バンッと部屋のドアがあいて、音哉が入ってくる。
「あれ……」
「チャイム鳴らしたけど出てこねぇから焦った」
「え……」
チャイムなんて全然きこえなかった。
「なに、あったんだよ?」
座り込んでるあたしの向かいに座ってポンポンっと、頭を撫でてくれる。
「これ……」
机の上においた、パンドラの箱を指さす。
「これ?」
あたしの言葉に立ち上がって、箱をあける。
「これ、あの御曹司……?は……?うちの高校の制服?」
「だよね……は?だよね……?」
「は?コスプレでもしたのか?にしても二人共高校の制服きただけでこんなに若返るか?」
冗談ぽく言ってる音哉だけど、声が震えてる。
分かってる、これが今じゃないってこと。
音哉もわかってる。
「なんで……?ねぇなんでこの写真がここにあるの?」
「は?この写真って……」
「だって!暁の待ち受け……っ、暁がずっとすきな人……はぁっ……」
息がうまできなくて、言葉にうまくできない。
「心海もういいから……喋るな」
音哉があたしのことを落ち着かせようと抱きしめてくれてるけど、止まれない。
「暁の高校の時の元カノ……はぁ……この人ににてるからあたしは……はぁ……」
息がうまくできない。
自分が自分ではないような、自分なんか存在しないようなそんな感覚に溺れてる。
「おい、もういいから!心海!わかったから!落ち着け!」
両頬をパンッと両手で叩かれる。
痛いなんて感じなかった。
それよりも、手汗がやばくてそして息なんかさっきよりもやばくて。
「だって……はぁ……もう……」
「心海!」
「おと……や……」
「おい!心海!」
名前を呼び続ける音哉に体を支えられながら、あたしは自分の意識を手放した。
本当に自分が自分でないようなそんな感覚で、苦しくて怖くて……もうどうしたらいいかなんてわからないままだった。
✱✱✱
「いつからとかそんなの関係ねぇよ。出会った瞬間に好きと思ったら好きなんだよ」
これは……誰が……?
手放した意識のなか、走馬灯のように脳裏に浮かぶ映像。
うちの学校の制服を着た悪魔が女の子にそう話す姿。
相手は……。
あたしに似たあの待ち受けの女の子?
「……よくもそんなこと、恥ずかしくもなく」
「恥ずかしがってなんていられねぇよ。心海を手に入れたいもん」
……っ。
相手は、あたし……?
暁とあたし、厚岸で出会ってた……?
「田舎の女ってちょろいんだな」
場面が通ってた高校の空き教室に切り替わる。
「俺さ、日本で1番でかい会社の御曹司なわけ。こんな田舎で一般人と付き合ったらどうなんかなーって思ってな」
……そうだ。
あたし、高校生のときに暁のこと……。
彼氏のこと裏切ってまで、好きに……。
「心海、別れようってなんだよ!」
暁に振られたのに、彼氏に黙っていればよかったのに。
どうしてもそのまま付き合ってるなんて出来なくて。
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