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after story ②~ふたりだけの生活~

おばぁちゃんになっても

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「ちとせ」


「ん?」



子供たちふたりともの結婚式が終わって、家にはあたしたちふたりだけになった。



「ここまでいろいろあったなぁ」



あたしが見ているアルバムを学くんものぞき込む。



「うん、本当にあっという間だった」


「あれか?寂しくなった?」


「まぁ、少しね.......」



子供たちが小さい頃、あんなに賑やかだった我が家も今では静かだ。

学くんは、50歳を超えた今もまだ格好良くて、イケメンは健在だ。



「もう1人作るか?」


「は?何言ってるの!?ばか!?」


「お前も遠慮がなくなったよなー」



可笑しそうに笑っている。



「遠慮とか今さらでしょ」



何年夫婦をやってきたと思ってるんだ。
ふたり、子供をもうけて幸せな家庭にすることだけを願ってここまでやってきた。



「ねぇ、学くん」


「ん?」


「家族っていいね」



家族を知らなかったあたしが、いまこうして母親を全うできた。
それは、全部学くんとだからできたことだ。



「そうだな。幸せになれてよかった」



あたしのことを自分へと引き寄せる。



「なぁ、ちとせ。お前は今幸せか?」



「うん。結婚したのが学くんでよかったと思ってるよ」


「そうだな。俺もだよ。ちとせとじゃないと、 來輝と光架もできてないってすごい奇跡だよな」


「.......うん」



タイミングが違えば、相手が違えば、絶対に來輝と光架は生まれていないのだ。
あたしたちが高校で出会って、そして学くんに恋をして、学くんも復讐と言いながらあたしのことを好きになってくれて。

その出会いがないと、あたし達は來輝と光架に出会えてない。
そうしたら、來輝と凜菜ちゃんよ光架と航くんも、どちらも出会えていないのだから本当に奇跡で不思議だと思う。



「ちとせのこと、幸せにできてよかった」


「あたしは?ちゃんと、学くんの妻ができてた?ふたりの母親にちゃんとなれてたかな?」


「あぁ、最高の妻だよ。2人にとってもお前は大好きな母親だろう」



母親のいなかった自分がきちんと愛情を注げるのかふあんだったけど、家族みんなが幸せになれたらなら、それでいいのだ。



「よし、報告がてら両方の墓参り行くぞ」


「そうだね、まずは2人にありがとうだもんね」



ことあるごとにあたしと学くんのお母さんお墓に報告にいっていた。

全てがあるのは、2人がそれぞれあたしたちをこの世に産んでくれたからだから。



「これから先、まだまだ何十年もある。ずっと俺と一緒にいてくれよな」


「こちらこそ。次は孫の顔を見るのが楽しみだね」


「お、おばーちゃんになっちゃいますね?ちとせさん」


「そんな、学くんもおじいちゃんですよ?」



こんな会話をしながら、手を繋いでお墓へと向かった。

若い頃の辛かった日々。
そんな日々を乗り越えられるくらいの幸せをもらったあたしたちのこれからはまだまだ続いていく。



「大好きだよ、学くん」



初恋からずっと、変わらない。
この気持ちはきっとこれからも、おばぁちゃんになっても変わらない。


─ ALL FIN ─
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みんなの感想(4件)

青と白で水色

面白かったです。できたら、ちとせや学の親たちの出会い~別れのお話も読んでみたいのですが、どこかにあるのですか?

馬村 はくあ
2019.09.12 馬村 はくあ

はじめまして!
読んでいただきありがとうございます!
実は、いま、この小説をエブで書いてまして、書き終えたらそちらの読者特典で親たちのおはなしを書こうかとおもっていたところでした!
まだ完結させていないので、これからにはなりますが(^_^)

解除
2019.05.17 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

馬村 はくあ
2019.05.17 馬村 はくあ

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
面白かったとの事嬉しいです!
そちらの漫画はよんだことないのですが、主人公が同じ名前なのですね!
今度見てみたいと思います!
感想いただき、嬉しかったです!
ありがとうございました!

解除
玲羅
2019.04.19 玲羅
ネタバレ含む
馬村 はくあ
2019.04.19 馬村 はくあ

はじめまして。
まずは、読んでいただいてありがとうございます!

ご指摘の内容ですが、ちとせと学は異母兄弟ではありません。
ちとせの父親と学はまったく血の繋がりはありません。父親と血の繋がった子供は、環とちとせだけです。学は母親の連れ子です。ちとせの父親が本当の親とは書いていませんでしたが、分かりにくかったら申し訳ありません。
連れ子同士の結婚も可能と調べてから書いてはおりますが、認識が違いましたら、申し訳ありません。

ありがとうございました

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