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第2章~逃げ出したい気持ち~
元カノ
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「なぁ、お前大丈夫なの?」
翌朝。
医務室に仮眠をしにきた燿くんになぜだか心配をされる。
「何が?」
「ほら、副社長の前の彼女来てるじゃん」
「前の彼女……?」
あたしが何も知らないことを知ったのだろう。
ヤバいという顔になる燿くん。
「会社中の噂だからてっきり知ってるのかと思ってた」
「ここにはあまり噂もこないから」
普通に仕事をしてる人達とは違って、あまり会社内をうろつかないせいか噂も耳には入らない。
「ごめん、俺余計な事言ったかな」
「ううん。大丈夫。どんな人?」
「あれだよ。Tコーポレーションの社長令嬢」
燿くんがスマホを触りながら口にする。
「社長令嬢……」
社長令息と社長令嬢。
それにTコーポレーションは、MMコーポレーションに次ぐ大企業。
提携を結んでも支障がない企業だ。
「ほら、これ」
あたしにスマホの画面を見せてくる。
Tコーポレーションのホームページで。
そこの会社概要のところに噂の社長令嬢が映っていた。
「……っ」
〝高藤葉菜〟
それは、昨日あたしがホテルで見た。
学くんと一緒にいた女の人だった。
「大丈夫?」
燿くんが心配そうに見る。
「昨日、この人とホテルにいた……」
「は?」
あたしの言葉に怪訝な顔になる。
「見たんだよね。二人でいるところ」
そうか、元カノってことか。
なぜ、あたしだったんだろう。
提携会社の社長令嬢。
最も結婚にふさわしい相手ではないだろうか。
なにも、あたしじゃなくて。
この人でよかったんじゃ……?
「なんでこの二人が結婚しなかったんだろう……」
「んー。二年前に女のほうが海外に行くことになって別れたとは聞いてる」
「海外……」
じゃあ、もしかしたら二人は。
嫌いになって別れたわけじゃない?
「だいたいお前、あの教育実習生のことは忘れたの?」
「あぁ……」
──教育実習生
燿くんの言うその人こそが、学くんだ。
燿くんは、学くんとあまり関わりがなかったから彼の顔を覚えてないみたいだけど。
「その前に大学の時も彼氏いたじゃん」
「あの浮気のね」
「……」
燿くんに逐一なんでも報告してきたあたし。
だから、浮気されて別れたことも知ってる。
「お前、男運がことごとく悪いよな」
「そんな狙ってるつもりないんだけどなぁ……」
「あの教育実習生だって最後の約束の日にこなかったわけじゃ……「それが俺なわけだけどね」
学くんの声を遮って、入口から聞こえたそんな声。
「学くん……」
「え、副社長?」
入口を見れば、学くん。
そして、横には噂に聞いていた元カノ。
昨日の女の人がいたのだ。
「霧島のことは、俺はあのころから知ってるよ。生徒会長」
「へ……。全然俺、気づかなくて」
燿くんが焦ったように話す。
翌朝。
医務室に仮眠をしにきた燿くんになぜだか心配をされる。
「何が?」
「ほら、副社長の前の彼女来てるじゃん」
「前の彼女……?」
あたしが何も知らないことを知ったのだろう。
ヤバいという顔になる燿くん。
「会社中の噂だからてっきり知ってるのかと思ってた」
「ここにはあまり噂もこないから」
普通に仕事をしてる人達とは違って、あまり会社内をうろつかないせいか噂も耳には入らない。
「ごめん、俺余計な事言ったかな」
「ううん。大丈夫。どんな人?」
「あれだよ。Tコーポレーションの社長令嬢」
燿くんがスマホを触りながら口にする。
「社長令嬢……」
社長令息と社長令嬢。
それにTコーポレーションは、MMコーポレーションに次ぐ大企業。
提携を結んでも支障がない企業だ。
「ほら、これ」
あたしにスマホの画面を見せてくる。
Tコーポレーションのホームページで。
そこの会社概要のところに噂の社長令嬢が映っていた。
「……っ」
〝高藤葉菜〟
それは、昨日あたしがホテルで見た。
学くんと一緒にいた女の人だった。
「大丈夫?」
燿くんが心配そうに見る。
「昨日、この人とホテルにいた……」
「は?」
あたしの言葉に怪訝な顔になる。
「見たんだよね。二人でいるところ」
そうか、元カノってことか。
なぜ、あたしだったんだろう。
提携会社の社長令嬢。
最も結婚にふさわしい相手ではないだろうか。
なにも、あたしじゃなくて。
この人でよかったんじゃ……?
「なんでこの二人が結婚しなかったんだろう……」
「んー。二年前に女のほうが海外に行くことになって別れたとは聞いてる」
「海外……」
じゃあ、もしかしたら二人は。
嫌いになって別れたわけじゃない?
「だいたいお前、あの教育実習生のことは忘れたの?」
「あぁ……」
──教育実習生
燿くんの言うその人こそが、学くんだ。
燿くんは、学くんとあまり関わりがなかったから彼の顔を覚えてないみたいだけど。
「その前に大学の時も彼氏いたじゃん」
「あの浮気のね」
「……」
燿くんに逐一なんでも報告してきたあたし。
だから、浮気されて別れたことも知ってる。
「お前、男運がことごとく悪いよな」
「そんな狙ってるつもりないんだけどなぁ……」
「あの教育実習生だって最後の約束の日にこなかったわけじゃ……「それが俺なわけだけどね」
学くんの声を遮って、入口から聞こえたそんな声。
「学くん……」
「え、副社長?」
入口を見れば、学くん。
そして、横には噂に聞いていた元カノ。
昨日の女の人がいたのだ。
「霧島のことは、俺はあのころから知ってるよ。生徒会長」
「へ……。全然俺、気づかなくて」
燿くんが焦ったように話す。
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