スラムの少年、吸血鬼になる！ ～もう普通の仕事は無理なので冒険者で日銭を稼ぎます～

訓練

「प्रकाश光よकरते हैं灯れ」

「प्रकाश光よकरते हैं灯れ！」

「うっ、」

「全然駄目じゃん！まさかの魔法幼女シシーちゃん打ち切りの危機！」

俺もシシーも魔言をしっかり唱えた筈だ。しかしライトの魔法が発動することはなかった。これはどういうことだ。

「2人とも。魔力が魔言に同調してないから魔法が発動しないんだ。魔力を魔言に委ねない限り、詠唱魔法は成功しないぞ」

「同調、ですか？」

「そうだ。詠唱魔法は魔力の操作を魔言に委ねて発動させる魔法だ。今のお前達は自分達の魔力をガッチリ握っているから魔言では操作出来ないんだ」

「わかんなーい！どうしたらいいのよ！魔法、マジ、ファッ◯！！」

期待を裏切られたシシーが荒れ始める。

「ひっ！待って！落ち着いて！」

「シシー、出来ないからって師匠に当たるな」

「だってー、」

「よ、要は力を抜いて、事象の顕在化に必要なだけの魔力を手放すんだ」

「何！脱力はシシーちゃんの得意技！スヤァ、प्रकाश光よकरते हैं灯れ」

するとどうだ。シシーの人差し指に眩い光が灯ったではないか。

「出来た！凄い！魔法幼女シシーちゃん、絶賛重版中！！お兄ちゃん、スヤァ、だからね！スヤァ」

そんな簡単に行くもんか。

「スヤァ、प्रकाश光よकरते हैं灯れ」

出来た！俺の人差し指にも光が灯ってる！こいつ、天才か！

「1日目で同調のコツを掴むとは。。アミラ婆ちゃんの言う通り、とんでもない冒険者になるかもしれん」

「प्रकाश光よकरते हैं灯れ！प्रकाश光よकरते हैं灯れ！प्रकाश光よकरते हैं灯れ！प्रकाश光よकरते हैं灯れ」

シシーが右手の指全てにライトを灯し、得意げにこちらを見る。

「ふふふ。この光が放たれる時、この世界に眠る大いなる力が目覚めるのよ！ファイブエレメントバースト！」

「ワンワン！ワンワン！ワオーン！」

「眩しいだろ！馬鹿！本当に馬鹿！」

シシーがライトに魔力を注ぎこんだせいで工房が閃光に包まれた。世界が真っ白で何も見えない。シシーが調子に乗ると本当に碌なことがない。

「おお！いきなりフラッシュボムを成功させるとは。シシーは本当に魔法の才能があるな！女の子でなければ同じパーティーに欲しいくらいだ」

師匠、やめろ。これ以上シシーを調子に乗せるな。ひどいことになる。本当にやめてくれ。

「レガス最年少冒険者にして、稀代の魔法幼女、そしてこの世の美の頂点！シシーちゃん、ここに見参！オオオオォォォ！！」

シシーがライトで全身を包み、雄叫びを上げながら光を増している。なんだか分からないが凄い迫力だ！

「ヤバイ！これは！止めなければ！でも、無理！女に触るなんて無理！」

オオオオォォォ！

光が爆発するように膨張し、工房が震える。なんかヤバイ！どうすりゃいいんだ！師匠！なんとかしろよ！

「師匠！」

「無理無理無理無理！」

「ワン」

シュルルルルー

ボスが一声鳴くと膨張していたライトはあっという間に小さくなり、そのまま消えてしまった。跡地には倒れたシシーが残されている。

「し、師匠。今のは？」

「ふう、助かったな。あれは魔力暴走だ。ライトなんていう小さな事象を再現する魔法に対して馬鹿みたいに魔力を注ぎ込んだせいで、魔力が行き場を失って弾けそうになったんだ」

「ボスがやったのは？」

「たぶんだが、魔力を別の空間に逃がしたのだろう。信じられないが、そうとしか考えられない」

「そんなことが出来るんですか？」

「それはお前達のボスに聞いてくれ。俺はさっきから色々と自信を失っているんだ」

ボスはシシーに駆け寄り、ペロペロと頰を舐めている。そういえば、最後のライトは無詠唱だったな。シシー。馬鹿だけど凄い奴なのかもしれない。馬鹿だけど。