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怪しい依頼

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「ボス、ご相談が」

「ワン?」

「まだ先のことなのですが、冒険者ランクが上がってこの街での信用が得られたタイミングでスラムからの引っ越しを考えてます」

ボスはいつも包まって寝ている毛布を噛む。

「だ、大丈夫です!もちろんその毛布は新しい家にも持って行きますから!水を飲んでる桶もです!」

「ワンワン」

それならば好きにしろ、か。一番厄介なボスの了解は得られた。

「シシーはどう思う?」

「うーん、そろそろ自分の部屋が欲しいお年頃なんだよねー」

「つまり賛成だな。ならば、これからしばらくの間ハードになるが、文句は言うなよ!」

「えー!ちょっとパイセン待ってよー!幼女に対する強制労働の実態がヤバイじゃん!」

「ガチャガチャ言うな!ギルドに行くぞ、ほら!」

何を言っても無駄なことを知っているシシーは死んだ目をしながらも、俺の後をついて来た。これでよし。


ギルドに着いた俺達は依頼掲示板に群がる人だかりを尻目に、モニカのいる受付カウンターの列に並んだ。

「シシー、これから俺とお前でパーティー登録をするぞ。今までは常設依頼だけだったからパーティーとか意識する必要はなかったが、これからは一般の依頼も受ける。2人で同じ依頼を受けるにはパーティー登録が必要なんだ」

「へー、よく分かんないけど、お兄ちゃんに任せる」

「それでパーティーの登録名なんだが……」

「スマッシュエンジェルス!」

「おま、それ自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

「全然!」

「却下だ」

「ブラッドエンジェルス!」

「却下だ! エンジェルから離れろ」

「スマッシュブラザーズ!」

「それもなんかヤバイ気がするから却下だ!」

「じゃー、シルバースマッシュ!」

「うーん、保留。次」

「えー、サーチ・アンド・デストロイズ!」

「ちょっと長い。却下」

「パワー・イズ・パワーズ!」

「なんだよ、それ! 却下」

「マッシブ・アサルト!」

「うーん保留。て、順番きた」

「おはようジル、シシーも。今日は何かしら?」

「今日はパーティー登録をお願いします。俺とシシーの2人です」

「それは常設依頼以外もやるってことね。いいわ。ルーシーからあなた達の実力は聞いているし、冒険者ランクを上げるには常設依頼だけだと限界がある。冒険者ランクを上げたいんでしょ?」

「はい。Dランクになれば家も借りられると聞きました」

「そうね。確かにDランクになれば借りやすくはなるでしょうね。でも、あなた達は世間からみれば子供よ。過度な期待はダメよ」

「はい。でもそれはまずランクを上げてから心配します」

「ふふふ。で、パーティーの登録名はどうするの?」

「シルバーアサルトでお願いします」

「物騒なパーティー名ね。まぁ、いいけど」

「混ぜた!お兄ちゃんが妹のアイデアを掠め取ったわ!」

「参考にしただけだ」

「兄による妹の才能スポイルの実態がヤバイ!」

「ちょっと、あなた達。後ろがつかえてるのよ」

「「すいません」」

「シルバーアサルトで登録しておくわ。パーティーで依頼を受けたい場合は、代表者が掲示板から依頼票を取って受付へ持ってきて。一般の依頼票には依頼ランクが記載されていて、冒険者ランクに見合った依頼しか受けられないわ。基本的に早い者勝ちだから明日からはもっと朝早くに来ることね」

「「はい! ありがとうございます!」」

明日から朝のボスの散歩はお預けだな。


#



「これにしよう」

「ウホッ! アニキ! この依頼、依頼日から10日も経ってるよ!」

「この手の残り物を上手いこと達成するとギルドからの評価が上がるらしいんだ」

「亡者! ランクアップの亡者! これを受けるんだったら早朝からわざわざギルドに来る必要なかったのに!」

「うるさいなー。ちょっと受付行ってくるからその辺でテキトーに待ってろ」

ヘイヘイとシシーは引き下がり、俺はモニカのいる受付の列に並んだ。



「本当にこの依頼を受けるの? ギルドとしては有難いけど、お勧めしないわよ?」

「受けます」

「何故この依頼が残っているのかわかってる?」

「大丈夫です」

「ならいいわ。この紙を依頼主、今回はこの村の村長に渡したら依頼開始よ。10日以内に達成条件を満たさなければ依頼失敗となって違約金が発生するから気をつけてね」

「はい、気をつけます」

俺は最低限の遣り取りをしてギルドを後にした。あまり話し込むと丸め込まれて別の依頼を勧められてしまう気がしたのだ。しばらくはリスク覚悟で行くと決めたのだ。初日から躓くわけにはいかない。さあ、次は子鹿亭だ。



慣れた手つきで子鹿亭の扉を開けようとすると、まだ営業時間前だったらしく鍵が閉まっていて開かなかった。俺は仕方なく声を上げる。

「すいませーん!」

「……」

「すいませーん!」

「……」

「シシー、お前が呼んでみろ」

「すいませーん!子鹿さーん!シシーが来たよー!」

するとどうだ。ドタドタと騒々しい物音の後に子鹿亭の扉が開いて、厳つい主人が飛び出てくるではないか。

「どうした、シシー!何かあったのか?」

「実はお願いがあります」

俺が話し出すと主人はつまらなそうにこちらを見た。

「なんだ。小僧か」

なんで俺の名前は覚えてないんだ! おかしいだろ! が、しかし、ここは我慢して要件を伝える。

「子鹿亭は最近出前も始めたって聞いたんですけど、本当ですか?」

「おうよ! 最近丁稚の小僧がいるのは知ってるだろ?アイツに出前をやらせることにしたんだ。なんだ、ミートパイを出前にしたいのか?」

「ずっとじゃないんです。明日から長くて10日ほどレガスを離れるんで、その間だけ出前を頼みたいんです。料金は前払いで」

「そいつはいいが、お前達何処に住んでるんだ?」

「それなんですけど、少し分かりにくい場所なんで一度案内しようかと」

「なるほど、そういうことか。ちょっと待ってろ。今、丁稚の小僧を連れてくっから」

そういうと主人は一度店の中に引っ込み、すぐに少年を連れて戻ってきた。少年は仕込みの途中だったらしく汚れたエプロン姿のままだった。

「おい、小僧!今からこの小僧について行って家までの道を覚えてこい。明日から長くて10日間、ミートパイを出前してもらうことになる。こう見えてもお得意様だから粗相するなよ!」

ややこしい!そして失礼!まあ、気にならないので何も言わないが。

「お忙しいとこすいませんが、よろしくお願いします」

「いやー、シェフの命令だし、お客さんなんだから気にしないで」

「助かります。では、行きましょう」


#


「す、すごいところに住んでるね、、」

丁稚の小僧ことピートは俺達のボロ家を見てそう言った。ピートはスラムに近づくにつれてどんどん不安そうな顔になっていたから、あまりこの辺りには馴染みがないのかもしれない。俺よりも頭一つ背の高い少年が不安そうにしているのは変な感じだ。

「汚いところですいません」

「いやいや、そんなこと、、」

「無理無理!ピートさん、無理あるわー!顔に書いてるよ!スラムやべーって!」

とりあえず無言で頭に拳骨を落とすと、シシーは頭を押さえながら静かになった。

「暗くなってからだと危ないので、明るいうちに届けてもらった方がいいかと」

「ああ、そうさせてもらうよ」

「店まで送りますんで、行きましょう」

「あ、妹さん動かないけど大丈夫?」

「大丈夫です。丈夫なんで。放っておきましょう」



シシーを置いて小鹿亭へと戻ると昼の営業が始まるようでいい香りが辺りに漂っていた。

「すいません。長い時間付き合ってもらって。これ、今日と明日からのミートパイ代です」

「大丈夫、大丈夫。もともと小鹿亭はシェフが一人で回してた店だからね。俺が居なくても問題ないのさ。って、ちょっとこれ、大分お金多いけど間違えてる?」

「いえ、危険手当込みなんで」

「えっ、、」

「冗談ですよ。いくらスラムでも昼間から襲われることはそんなにないです」

「たまにはあるみたいな言い方だね」

「ピートさんのことはボスにも言っておくから大丈夫です。何かあったらボスが守ってくれます」

「ぼ、ボスかぁ。やっぱそういう人いるんだね」

「人ではないですけどね」

「、、そうか。聞かなかったことにするよ」

ピートはそう言うと逃げ込むように小鹿亭へ入って行った。ミートパイが出来るまで俺も小鹿亭で待つのだが。


小鹿亭を出た後、俺は街の南門にある乗合馬車の停留所に行き、依頼の村を通過する路線の発車時間を教えてもらった。随分と朝早くに出発するらしい。そういえば馬車に乗るの初めてだな。緊張してきた。今晩は眠れないかもしれない。


#


全然問題なくよく眠れた。そもそも吸血鬼になってからそんなに寝なくても平気なのだけど、普段は規則正しく寝ている。人間だった頃の習慣だ。今後も続けていこうと思う。

一方のシシーだが、こいつもよく寝る。しかも寝相が悪い。そして寝起きまで悪い。揺すっても起きないので軽く蹴飛ばすとやっと目をこすっている。

「いまからボスの散歩に行くから、戻ってくるまでにしっかり起きて準備を整えておけよ。すぐに出発して南門で馬車にのるからな」

「ふぁーい」

「ボス、いきましょう」

「ワン!」

ボスは尻尾を振ってご機嫌だ。俺達がウチを空けるから不機嫌になるかと思ったが、ミートパイの出前の話をしたらそんなことはなかった。話の分かるボスで助かった。俺はいつものコースを少し足早に周り、ボロ家に戻った。さあ、出発だ。


初めての馬車の感想は?と問われれば、最悪だ。別に速くもないし、ただ乗り心地が悪いだけだ。無尽蔵とは言わないが普通の人間とは比べ物にならないぐらい体力がある俺達にとっては何の利点もない乗り物だ。乗ってすぐに飛び降りたい衝動にかられたが、村までの道が分からないから仕方がない。シシーの方をみると、同じ感想のようだ。いつもに増して不機嫌そうな表情をして馬車の前方を睨んでいる。

「どうしたんだい?お嬢ちゃん。そんな難しい顔をして。気分でも悪くなったのかい?」

乗合馬車で俺達の目的地とは別の農村に向かうという初老の男は優し気な声でシシーに話し掛けた。

「そうなの!気分悪いの!馬車による幼女の臀部に対する断続的な衝撃の実態がヤバイの!」

「おお、そうか、、」

シシーの極まった返しに初老の男は黙り込んでしまった。いや、シシーが黙らせたのだった。

こうして全く楽しみのない馬車の旅は正午過ぎまで続いたのだった。


#


馬車を降りた時に御者に尋ねると、依頼元の農村、リボス村はレガスから見て南西にあるとのことだった。大体の道は覚えたし、帰りは走って帰ろうと心に決めた。

リボス村はぐるりと木で出来た柵で囲われていて、その中には4、50戸は家があった。村の西側にはパッと見る限り畑が広がっていて、いかにも農村だ。他の農村を見たことはないのだが。

村の入り口には一応、門があって門番が立っていたが、その門番はレガスのように屈強な兵士ではなくただのおっさんだった。

「すいません。依頼で来た冒険者ですが、村長の家はどこですか?」

「え?冒険者?お前達が?え?」

「後から仲間も来ますから、案内してもらえますか?」

「あー、そういうことか。冒険者にも丁稚みたいなのがあるんだな。こい。こっちだ」

適当に誤魔化すとなんとか村の中に入れてもらえた。子供って不便だわ。


村長の家は他の家よりも大きくて、なるほど長の家だった。余計なことを言われると困るので門番には早々に持ち場に戻ってもらう。

「すいません!レガスから来た冒険者ですが、村長さんはいますか?」

中で少し物音がした後に扉が開いて、ひょろ長い男が出てきた。俺達を見て怪訝な表情を浮かべている。

「何処に冒険者がいるんだ?」

「ここです」

「どういう冗談だ? こっちは村人が何人も行方不明になって気が立ってるんだ。やっと来た冒険者がお前達みたい子供で納得できるか!」

「あの条件だと10日待ってやっと俺達みたいなのがくる程度ってことですよ」

「うるさい! 子供が偉そうに! さっさとレガスに帰れ!」

「正当な理由なしに依頼元が冒険者を断わった場合は依頼元にも違約金が発生する筈ですが、いいんですか?」

「子供に魔物が倒せるわけないだろ! それが理由だ! 帰れ!」

「今回の依頼は村人が行方不明になった原因調査の筈ですが。魔物とはなんのことですか?」

「くっ、こんな田舎で人が居なくなるなんて魔物しかないだろ!」

「まぁ、いいです。魔物を倒す力を示します。村長さんの家のそばの樹ですが、あれ、いらないですよね?」

「なっ、どうするつもりだ?」

「シシー、やれ」

「了解!」

ずっと俺の背後で悶々としていたシシーが張り切ってメイスを握った。

「んしょ」

フルスイングされたメイスは大人2人分はある樹の幹の半ばまで深々とめり込んだ。

「……」

「あっ、ヤバ」

樹がゆっくりと村長の家に向かって倒れそうになったので、反対側に急いで蹴り飛ばす。

ズシーンンン!

地面が軽く揺れ、時が動き始める。

「これで文句ないですよね?では、この紙をどうぞ。これで依頼開始です」

「はは、ははは」

「ところで宿はどこですか?」

「も、門番に聞け」

村長はそれだけ言って自分の家に逃げ込んでしまった。情けないやつだ。


#


門番に聞いたところ村には宿というものはなく、行商人などが来ると空き家をタダで貸しているらしかった。村長、ちゃんと説明しろよ!

門番には村長から許可をもらったと言って空き家を案内してもらい、荷物を置いて早速調査に乗り出すことにした。

「パイセン、どうやって調査を進めるの?」

「口の軽そうなやつに聞く」

「どこにいるの?」

「酒の呑めるところじゃないか?」

「なるー」

俺達は鼻を利かせていい匂いのする建物、食堂を探し当てて中に入った。食堂の中は少し遅い昼食をとる若い男たちの他に、明らかに酔っぱらった老人もいた。こいつだ。こいつに老人向け最終兵器を差し向ける。俺はテーブルで待つのみだ。


「おじーちゃーん!なにしてるのー?」

「おお、お嬢ちゃん!どこから現れたんだい?おじいちゃんびっくりだ」

「レガスから来たの!この村で行方不明者が出たってきいて」

老人は急に険しい顔になって声を潜める。

「お嬢ちゃん、その話、誰に聞いたんだい?」

「え?冒険者ギルドだけど」

「ほう。冒険者ギルドか。冒険者ギルドには依頼が張り出されていたのかい?」

「うん!行方不明者が出たからその原因を調査して欲しいって」

「なっ!それは本当かい!オークの群れの討伐依頼ではなくて?」

「オークの話なんてなかったよー!」

「あいつめーっ!お嬢ちゃんごめんよ!おじいちゃん、用事ができた。ちょっといってくる」

「いてらー!」

シシーは嬉しそうに駆け寄ってくる。

「オークの群れがこの村の近くにいるみたい」

「あの村長、マジ糞だな」

「ブリブリだよねー」

「ああ、ブリブリだ」

「まさかの肯定!で、お兄ちゃん、どうするの?」

「オークの群れを襲う」

「だよねー。何処にいるか聞けばよかったね」

「普通に考えたら西の森だろ。この村が魔物に襲われた様子はないから村人の方がオークの群れに近づいたってことだ。この周辺でわざわざ村人が出掛けそうなところは川か森だろ?森に狩にでも行ってオークに襲われたんだろう」

「じゃ、今日はゆっくりして、明日から探索ってことでー」

「農地を越えてしばらく西に行けば森に当たる筈だ。今から軽く様子を見に行ってみよう」

「鬼畜ニキ!」

「うるせー!行くぞ!」

俺達は食堂でジュースだけ飲んで、そのまま森へと向かったのだった。


#


「もー、パイセン帰ろうーよー。張り切り過ぎだって」

「さっさと終わらせて帰らないとボスが寂しがるだろ。ボスをあんまり長く放っておくと大変なことになるからな」

「どーなるの?」

「凄く拗ねる」

「それは厄介過ぎる!でもさー、今日はマッドボアばっかりじゃん。もうちょっと情報集めてからにしよーよー」

確かに俺は焦り過ぎていたのかもしれない。さっきマッドボアを2頭狩っただけでオークの気配は何処にもない。

「わかった。今日は戻ろう。マッドボアを一頭だけ丸のまま村に持ち帰るぞ。もう一頭は放置だ。血の臭いに釣られてオークが来るかもしれない」

「いいけどパイセンがマッドボア待ってよねー。マッドボアの獣臭苦手」

「わかってるよ。流石にお前にマッドボアを担がせて村に帰ったら風が悪い。俺がやる」

俺だってマッドボアの獣臭苦手なんだけど。



村に戻ると辺りは当然のように真っ暗で、門と幾つかの建物の前にランプが置かれてあるだけだった。

「ひっ!」

俺達の姿を見た門番が控えめな悲鳴を上げた。

「大丈夫ですよ。人間です」

吸血鬼だけどな、と独りごちながら声をかけると、門番は気を取り直したようだ。

「なんだ!冒険者の丁稚か!脅かすなよ!マッドボアが宙に浮かんでるから頭がおかしくなっちまったのかと思ったぞ!」

「ははは、すいませんでした。オークを探しに行ったんですけど、いませんでした」

「オーク?この辺にオークは出ないぞ!もしオークなんていたらこんな村、すぐ潰されちまうぞ」

ガハハと笑う門番に、あははーそうですねー、と答えながら俺は首を捻った。村人が皆、オークのことを知ってるわけではないらしい。なんだかなー。


その後、俺達は昼間の食堂へ向かった。マッドボアを調理してもらう為だ。食堂の中は昼間と違って活気に溢れて賑やかだった。食堂の女将は恰幅のよいおばさんで、威勢良く客をさばいている。

「すいません!女将さん!ちょっといいですか?」

「お、昼間の少年だね。あんた冒険者の丁稚やってるんだって?」

「そうなんです。で、マッドボアを皆さんにご馳走しようと思って店の外に置いてるんですが、」

「なんだって!それは本当かい?おーい、あんた達!この少年がマッドボアの肉を奢ってくれるってよ!店の外に置いてあるらしいから、持ってきておくれ!」

そう言うと10人ぐらいの男がわっと外に出てマッドボアを担ぎ込み、厨房の脇で解体を始めてしまった。

「ひと月ぐらいマトモに肉を食べてないからね。みんな大喜びさ」

女将は腕組みしながらそう言い、解体を眺めている。

「その件ですが、詳しく聞いてもいいですか?」

「なんだい、あんた達。依頼で来たんだろ?何も知らないのかい?」

「話が食い違ってるかもしれないので、念のため」

「ふん、まぁいいか。話は単純だよ。ひと月前に猟師の親子が森に行ったまま帰って来なくなった。5日経っても帰って来ないんで村で有志を募って捜索隊を送ったのさ。だけど、5人いた捜索隊で帰ってきたのは1人だけ。その1人も狂っちまってまともに話もできやしない。それ以来、誰も森には行ってないのさ」

「そこで村長がレガスに行って冒険者ギルドに依頼を出したと」

「そういうことだね。おっ、肩ロースはステーキにするからすぐに寄越しな!今から焼くよ!」

おおー!と盛り上がる男達の熱気にシシーが顔をしかめる。

「わたし、自分以外が騒いでるの苦手ー」

勝手なやつだ。そう思った時だった。食堂の扉が勢いよく開き、昼間の老人が入ってきて叫んだ。

「オークが来るぞ!」


#


オークが来るぞ。

その言葉を聞いて俺は食堂を抜けて一気に加速した。後ろからはシシーが付いてくる。いい子だ。

村の外に出て少し西に走ったところで奴等と遭遇した。オークが五体。身長は俺の倍はあるだろうか、厚い肉に覆われた体は隆々としている。先頭の一体は生意気にも剣をもっている。俺でもメイスなのに。

「シシー!」

「なによ、パイセン!」

「オークは堅いらしい!手加減無用だ!思いっきりいけ!」

「アイコピー!」

俺は一気に踏み込んで先頭の生意気オークに迫り、メイスを下に振る。膝を砕かれたオークが悲鳴を上げて倒れて転げまわる。止めは後だ。強襲に混乱している二体目のオークの頭を吹き飛ばす。シシーも既に一体潰したようで、もう残りは二体だ。背を向けて逃げようとするオークに迫り、後ろからしがみついて牙を立てる。初めて遭遇した魔物の血を吸うのは大事なことだ。シシーも俺と同じようにオークの首に牙を立てている。シシーも随分成長したもんだ。

しばらくすると血を吸われたオークは2体とも血が狂って爆発した。剣持ちの生意気オークはシシーが頭を蹴り飛ばして止めをさした。結構飛んだ。

「思ったより柔らかかったな。オーク」

「ねー。パイセンがわざわざ言うからどんだけって警戒したけど、マッドボアに毛の生えた程度かなー」

「それ、どんだけ毛深いんだよ」

なにやらツボだったらしく、シシーが腹を抱えて転げまわっている。

「毛深いって!ヒー、苦しい」

「とりあえず村に戻るぞ。お前が飛ばしたオークの頭を持っていく。証拠だ」

シシーはまだ転げまわっているが、長引きそうなので置いて行こう。


村に戻ると門の周りには農具で武装した男達が2、30人集まっていた。

「おい!戻ってきたぞ!」

門番のおっさんが俺を大袈裟に指さして叫ぶ。

「おお!どうだった!って、首!」

俺の持つオークの首をみて男達は大騒ぎする。その中であの酔っ払い老人がひと際大きな声を上げる。

「ワシの言った通りじゃったろ!ワシは嘘なんてついてない!」

男達は老人の気迫とオークの首を前にして急に静かになる。

「皆さん、ちょっと村長のところに行きましょうか」


#


集団でぞろぞろと村長の家に行くと、村長はその人数と何よりオークの首を前に観念したように語り始めた。話は単純だ。猟師の親子が森に行って帰って来なくなった。村では捜索隊を送った。捜索隊で戻って来たのは一人。酔っ払い老人の息子だ。その息子は村長と老人の前で言ったそうだ。「森にオークの集落があった」と。壮絶な体験をしたらしい老人の息子は程なくして心が壊れてしまった。オークの件を知るのは村長と老人のみ。そこで村長は老人に提案した。冒険者ギルドに依頼を出してくるから、冒険者が来るまではオークのことは村のみんなには話さないで欲しいと。収穫期を前にオークが村のそばにいるなんて話になれば、大混乱になるし、最悪村から逃げ出すものもでるかもしれない。

「なんで冒険者ギルドにオークの討伐依頼を出さなかったんじゃ!」

「出せなかったんだよ!じーさんはオーク一体の討伐報酬の相場がどんなものか知っているのか?俺は聞いて驚いたよ!大銀貨1枚だぞ!オークの集落となれば何体オークがいると思う?そんな金が村のどこにある!」

「騎士団は?公都の騎士団に頼めばいいんじゃないか」

誰かが声を上げる。

「騎士団は戦争の準備に大忙しだ!誰も取り合っちゃくれない!」

「それで報酬が安くてすむ調査依頼を出して村に冒険者を呼び、時間稼ぎをしようとしたと。あわよくば、オークから村を守ってもらおうと」

俺がそういうと、村長は声を荒げた。

「仕方ないだろ!収穫が終わるまではなんとか時間を稼ぐしかないんだ!収穫ができなきゃ税金も払えない!この村から奴隷が出ることになる!俺だって必死だったんだ!」

「それで村がオークに襲われたら元も子もないじゃろ!」

老人の言葉に村長がつまる。

「村長さん、すいません。色々と正常な判断が出来なくなっているようですが、今あなたに出来ることは一つです」

「なんだ?」

村長は本当に分からないような顔をしている。

「俺達に頼めばいいじゃないですか。オークの集落を潰してくれと」

「出来るのか?そんなことが」

俺は手に持ったオークの首に視線を向ける。

「これなら何体いても問題ないですね。報酬については相談に乗ります」

村長は周囲の様子を伺い、ようやく口を開いた。

「わ、わかった。今まで済まなかった。オークの集落を潰してくれないか」

「わかりました。引き受けます」


#


「ちょっと! 置いて行くなんて酷い! 夜道で襲われたらどうするつもりよ!」

「シシー、既にお前は襲う側だ」

「確かにー!」

「明日から忙しくなるから、さっさと寝ろよ」

「えー、連戦はお肌に触るー」

「安心しろ。お前の肌はルーシーのお墨付きだ」

シシーが何かを思い出して震えている。

「オークの集落の位置も大体目星がついた。オークが何体いるのか分からないが、一度に全部を相手するのは無理だろう。何日かに分けて数を減らす。ある程度減ったところで一気にカタをつけるから、そのつもりで」

ヘイヘイといつもの通り不貞腐れたようにシシーは頷き、さっさとベッドで横になってしまった。

俺も寝よう。そう思ってベッドに向かおうとした時、目の前を羽虫が飛んで行った。素早いタイプだ。叩こうにも、なかなか俺に照準を絞らせない。放って寝るのも気持ちが悪い。糞、止まれ!そう念じながら手の平で叩くと、確かに羽虫は空中で一瞬止まって俺に潰された。なんとも妙な感覚だ。まぁ、寝るけどね。



「この小川だ。これを辿ってしばらく行くと狩猟小屋があるそうだ。捜索隊はその小屋を目指して出発したらしいから、そこまで行けば何かしら手掛かりがある筈だ。ここからは少し慎重に行くぞ」

翌日早朝、俺達は既に森の中にいた。さっさとオークの集落の位置を特定しないと先に進まない。愚図るシシーをベッドから蹴り出して、まだ暗い内から無理矢理出発したのだ。

「おおむねアグリー」

少しムカついたので軽くシシーの頭を小突いてから、俺達は森を慎重に進んだ。森は静かでマッドボアやフォレストウルフにも出会わない。たまに鳥が飛び立つ程度で魔物の気配がここまでしないのは初めてかもしれない。



狩猟小屋だったものは見事に破壊されていて、中の物が周囲に散乱していた。人の死体はないので、ここでオークに襲われたわけではないようだ。しかし、この辺りがオークの活動圏内というのは間違いない。もしかしたら小川のさらに上流の何処かを水場にして集落を形成しているのかもしれない。

「少し休憩にしよう。ここから先にオークの集落がある可能性が高い。今の内に気を休めておけ」

「気を休めることには定評のあるシシーちゃんに任せなさい!」

「デカい声を出すな」

シシーの声に驚いて近くの樹から小鳥が飛び立とうとする。止まれ!そう念じながら小鳥を睨みつけると、小鳥はほんの少しの間だが体を硬直させ、ややあってから空へと飛び立った。昨日の夜感じた妙な感覚が今日になっても消えていない。説明は難しいのだが、俺の念がどうも相手に作用するようなのだ。そして今回は右目の奥が少し熱い。

「ねーパイセン。今なんかした?」

「したかもしれない」

「パイセンから変な威圧感を感じたよー」

「威圧感?」

「うん、そう。動くと殺す!みたいな。あと、パイセンの右目。めっちゃ赤くなってるよ。泣き腫らしたあの時のように」

俺は無言でシシーの脇腹を小突いた。

「放っときゃ治る。そーいう身体だ。さあ、そろそろ行こう。小川の上流を目指すぞ」

オークとの遭遇は近い。


#


「勝った」

俺はオークの集落を見てそうつぶやいた。樹の枝葉を幾重にも積み重ねて作られたオーク達の寝床は如何にも魔物のそれでみすぼらしかった。明らかにウチのボロ家の方が上だ。

「パイセン……オークの家と比べちゃ……」

「いいんだよ。俺達もボスも魔物だ。あんな家に住んでいる奴等になんて負ける気が一切しない」

オークの集落は予想通り小川の上流、こじんまりとした泉の周りに展開されていた。かなり広範囲に渡ってみすぼらしい家が広がっている。一体どれぐらいのオークがいるのやら。

「シシー、石を集めるぞ。奴等に恐怖を教えてやる」

「わー、どっちが魔物かわからないー」

「どっちも魔物だ」


ヒュン

俺が投げた拳大の石が風を切り、オークの頭に命中する。多分即死だろう。横では狙いを外したシシーが悔しがっている。

「外してもいい。どんどん投げて奴等をビビらせるぞ」

ヒュン

ヒュン

ヒュン

ヒュン

オークに命中するのは3分の1程度だが、奴等の混乱はそれ以上だ。寝床から出てきたオーク達が集落の中を闇雲に駆け回っている。オーク同士でぶつかって喧嘩すら始まりそうな雰囲気だ。

「シシー、そろそろ姿を見せて奴等を釣るぞ。俺が集落の近くまで行って奴等を煽って逃げてくるから、お前は釣られたオークを側面から叩け!」

「アイコピー!」

「よし、行く」

茂みから飛び出し、そのまま集落まで駆け抜ける。俺の姿に気付いたオーク達が何体か身構えるがお構いなしに手に持った石を奴等に投げつける。近距離から放たれたそれはオークの頭を弾き飛ばし、その後ろの家も貫通した。

「糞豚どもが!かかってこい!」

あらん限りの大声に、どっとオークが集まってきた。やべ。逃げなきゃ。


ついて来たのは20体弱のオークだ。手に思い思いの武器を持ったオークが意外に速い脚で追いかけてくる。そろそろ狩猟小屋跡地だ。この辺でやろう。俺は足を止めて振り返った。突然止まった獲物にオークは慌て、少しまごつく。

「んっしょい!」

オークの戦列をシシーのフルスイングがぶった切った。3体ぐらいまとめていったかもしれない。恐ろしい幼女だ。横から叩かれたオーク達は振り返って俺から視線を外す。

「どっっせいぃぃ!」

うん。3体いったな。シシーに負けなかった。パイセンとしての威厳は保たれた。オーク達の視線が今度は俺に集まる。

「んしょしょい!」

また3体いったな。やるな、シシー。

「どらっせいぃぃ!」

「んじょじょい!」

「ごらっせいぃぃ!」

「ん……」

もうオークは周りに生きたオークはいなかった。


#


投げて、釣って、叩いておわる。たまにリボス村に戻りつつ、昼夜問わずオークの集落を強襲すること5日目。オークの集落はだいぶ寂しくなってきた。

「ねーパイセン。そろそろいいんじゃない?」

「だな。もう30体ぐらいしかいないだろう。行ってみよう」



オーク達は連日の襲撃に疲れきっているのだろう。俺達が集落の中に入っていっても全く気付く様子がない。もともとみすぼらしかった家は投石によって更に酷くなっている。時々そのボロ家の中からうめき声が聞こえてくるのは、怪我したオークが寝ているからだろう。石、投げまくったからな。2人で。

「ねー、パイセン。オークの群れってボスとかいるのかな?」

拍子抜けした様子のシシーは普通に話してくる。まぁ、この状態なら問題あるまい。

「あぁ、いる筈だぞ。もともとは300以上の群れだったからな。オークの上位種が群れを仕切っていた筈だ。ほら、この死体とか他のオークと違うだろ。体も大きいし肌も黒い。投石で死んじゃってるけど」

「本当だー。デカ黒い。こいつがボスだったとしたらなんかガッカリだねー」

「いや、流石にそれはないんじゃないの?あそこの家とか、明らかに他より立派だろ?ボスの家って感じだよなっと」

そう言いながらオークのボスの家?に投石する。反応がない。シシーも俺に習って投石するが、やはりなしのつぶて。もう、ボスも何処かで殺してしまったのかもしれない。

「よし、入ってみるか」



ボスの家?の中は一言で言うと、悪趣味だった。植物で作った紐に髑髏を通して作った首飾りのような物がいくつも壁に飾られている。

「あっ、コッチの髑髏新しい!」

見ると確かに他より明らかに新しい髑髏が6つ、首飾りとなって飾られてある。

「数もピッタシだな。とりあえずオークの耳を全部剥ぎ取って、この髑髏と何か遺品を持ち帰れば依頼達成になるだろう」

今回の件で集めたオークの耳は既に300体分を超えている。オーク討伐の常設依頼はないから報酬はもらえないだろうが、ギルドの評価には加点となる筈だ。

「ねえ、パイセン。これが首飾りだとしたらちょっと普通のオークには大き過ぎない?」

確かにシシーの言う通りだ。普通のオークはもちろん、黒いオークにも大き過ぎる。

「首じゃなくて、腰に巻くとか」

「えー意味わかんなーい」

ブフォー!

「ん?パイセン、こんなところでやめてくださいよー」

シシーが鼻をつまんで手をパタパタしている。

「俺じゃないし。むしろシシーだろ。便秘気味って言ってたじゃないか」

ブフォー!!

さっきより音が大きい。

「これはヤバそうだな」

「えっ、便所でして下さいよ!」

「そうじゃない!ふざけるな!来るぞ!」

そう言うやいなや、家の壁が吹き飛ばされた。オークのボスのお出ましだ。


#


「大きくて赤黒い!」

「なんだこいつは、たまげたなぁ! 今まで何処に隠れてやがった」

俺とシシーはバラバラに散開しながら感想を言い合った。確かにこいつはデカい。横幅は普通のオーク二体分は優にあるし、縦にも頭二つ分はデカい。隆々とした腕には馬鹿みたいな刃渡りの鉈。そして首には悪趣味な髑髏の首飾り。こいつがオークのボスに違いない。

「俺が正面から行く! シシーはこいつの死角からガンガン殴れ!」

「ラジャ!」

とりあえず一当てだ。唸りを上げて振るわれる鉈に力いっぱいメイスをぶつける。甲高い音が集落に響き、巻き戻すように腕が弾かれる。単純な腕力では負けているようだ。勢いにのった鉈が右左と休みなく振るわれる。最小限の動きで躱しながらスキを探るが、こいつ図体の割に体のキレが凄くて腕の回転も速い。今のところ手が出せない。

ヒュン

投石の風切り音にデカブツの意識が割かれ、鉈の速度が緩んだ。チャンスだ。俺は溜に溜めたメイスを鉈を持つ手に叩きつけた。鉈は手から離れて宙を舞い、それが地面に落ちる前に、シシーの追撃が側頭部に炸裂した。顔の半分が潰れ、そのままオークのボスは崩れ落ちた。

「また伝説を作ってしまった。自分の才能がこわい」

シシーは巨体を背景にして1人格好をつけている。

「不意打ちが決まっただけだろ」

「パイセン、嫉妬は良くない」

うん?

「シシー!飛べ!」

「えっ、うわっー!」

急に息を吹き返したオークがシシーの足に手を伸ばして掴み、そのまま立ち上がった。シシーは宙釣りになり、勢いよく家の残骸に叩きつけられる。

「オゲッ!」

「シシー、生きてたら手を上げろ!」

なんとか生きているようだ。ちょっと休めば回復する筈だ。それよりも、このデカブツだ。シシーに潰された顔は何事もなかったかのように元通りになっている。こいつの復元力は異常だ。ゆっくりと鉈を拾い上げ、悠然と構える。これからが本番だというように。


それからはまさに泥沼だった。暴風のように振り回される鉈を掻い潜ってメイスで殴りつけて潰しても、すぐにその箇所が復元される。シシーが戦線に復帰して2人で殴っても、その状況は覆らない。こいつを倒すには一瞬で命を刈り取る火力が必要だ。

「パイセン!どーするの?こいつ死なないよー!」

クッソ!一発勝負だぞ!

「シシー!俺がこいつを止めたら、全力で頭をやれ!」

「え?」

「小鳥のやつ!」

「ラッジャ!」

デカブツが鉈を振りかぶった瞬間、俺は全身全霊全意識をもって念じる。

「止まれ!糞野郎ぉぉぉ!!」

俺の意思がオークの体を雁字搦めにし、まるで時が止まったような錯覚に陥る。右目の痛みで我に返り、メイスを振りかぶる。

「んっしょい!」

「どっせい!」

右から左から。2人から全力で放たれたメイスはオークの顔の中心でぶつかり合い、そこにあったものは粉みじんに吹き飛んだ。何もなきゃ、復元も糞もない。巨体はぷつり糸が切れたように沈み、俺もそれに続いて地面に寝そべった。


#


「お願いします」

俺はリボス村の村長から受け取った紙をモニカに渡した。

「調査依頼達成ね。ちなみに原因はなんだったの?」

「こいつらですね」

俺はオークの耳が山盛り詰まったズタ袋をカウンターの上に置いた。モニカは慣れた手つきでズタ袋の口を開けて目を見開いている。

「これ、全部オーク?」

「ときどき色が違うやつも混ざってます」

「えっ、ハイオークもいたの?ずいぶん大きな群れだったのね」

「あと、これ」

俺はオークのボスの心臓の横に埋まっていたものを取り出してモニカに見せる。

「っ、どうしたのよ、これ!こんな大きな魔石がオークから取れたの?」

「群れのボスみたいなやつから取れました」

「それはどんなオークだったの?」

「とにかく体がデカくて肌が赤黒いヤツでしたね」

「オークロード……」

「オークロードっていうんですね。なかなか厄介なヤツでしたよ」

「当たり前でしょ! 最低でもCランク5人パーティーが相手する魔物よ! EランクとFランクの二人パーティーで戦うなんて自殺行為よ!」

「へー」

「へー、じゃない! なぜ戦ったのよ?ヤバい相手ってわからなかったの? 戦わずして魔物の強さを測れるのも重要な冒険者の資質よ。あなた達が異常に強いのは聞いているけど……」

「モニカさん、後ろがつかえているので」

「とにかくもっと慎重になりなさい!はい、これ今回の依頼達成報酬よ。魔石はギルドの買い取りカウンターか魔道具屋に行けば換金できるわ」

「はい、ありがとうございます」

俺は待たしてあったシシーを連れてギルドを出た。

「パイセン、どうだった?」

「怒られた」

「えっ、なんでー?」

「オークロードにEランクとFランク2人で挑むなんて自殺行為だーって」

「オークロード?」

「大きくて赤黒いやつ」

「あー、あいつね。まぁ、私もやられたしなー」

「あれ、普通の人間なら死んでたな。首がいけない方向に向いてたから」

「あれは受けの美学だから!オーディエンスはああいうのを求めているんだから!」

「知らねーよ」

「ねえ、これ何処に向かってるの?」

「商人区の魔道具屋。魔石買い取ってくれるらしい。魔道具にも興味あるしな」

ところで魔道具屋って何処にあるんだ?
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