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50話 快進撃

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 俺達──死ぬ死ぬマンandザ・ファントムズは快進撃を続けている。

 新宿ダンジョン20階のボスをあっさり倒し、過去最高記録の22階を突破。人類未到の地、23階へと足を踏み入れていた。

 こんなにも早くスムーズにダンジョン攻略が進んでいる要因は、久保のスキル【幻術】だ。

 新宿ダンジョンをソロ攻略出来るぐらいなのでやばいスキルだとは思っていた。しかし、想像以上だ。

 何より、成功率がやばい。

【幻術】のサクセスレートは魔力に比例するらしい。そして、久保のステータスは魔力特化型。相性が良過ぎるのだ。

「破ッ!」

 指で印を結ぶと久保の身体が青白く発光する。

 それを見たハイオークが動きを止め、壁を見つめ始める。何やら息が荒い。

「何を見せている?」

「壁に追い詰められた絶世の美女だよ」

 なるほど。オークが興奮するわけだ。股間を剥き出しにし、涎を垂らしている。

「グミ、マリナ!」

「ウゥ……!」
「はい……!」

 二人はタワーシールドを手放し、短剣を持ってハイオークに肉薄する。しかし、豚面のモンスターは反応しない。

 全然、見えていないのだ。自分に襲いかかってくる存在のことを。

 ほぼ100パーセントの成功率、異常にリアルな幻。そして、没入感。

 一度久保の【幻術】にかかれば、モンスターは完全に無防備になる。

 ガハッ! とハイオークの口から血の塊が吐かれる。

 二つの刃が深々と胴を貫いている。しかし、まだ興奮した様子だ。恐ろしい。

 何度も短剣に貫かれた後、ハイオークは生き絶え、拳大の魔石が残った。

 流石にここまで来るとモンスターもタフだ。魔力特化型の久保では攻撃力が足りない。

 俺とグミとマリナでモンスターの初動を抑え、久保が【幻術】で幻を見せる。そして無防備なモンスターを攻撃。ボスのように硬い奴には【ステータス・スワップ】で確殺のバットやフライパンをお見舞いする。

 圧倒的な安定感。

 油断するわけではないが、失敗する未来は見えない。

「よし! 24階に降りたら一度、1階に戻るぞ! 取材の時間だ!」

 俺達は注目を集めている。テレビ局から取材を申し込まれるほどに。

 約束の時間を気にしながらダンジョンを進み、転移部屋に辿り着いた。


#


「今日はなんと! 死ぬ死ぬマンこと八幡タケシ容疑者にお話をうかがえることになりましたー!!」

 アイドルの様な容姿のアナウンサーが元気いっぱいカメラに向かって叫ぶ。

「本日はお忙しいところありがとうございます!」

「とんでもないです」

 向けられたマイクに控えめに答える。

「八幡容疑者は先日なんと! 新宿ダンジョンの最高到達記録を更新しました! そして今日は更にその記録を伸ばしたそうです! おめでとう御座います!!」

「ありがとうございます」

「今までどんな探索者も到達出来なかったステージへ辿り着いたわけですが、どのような心境でしょう?」

「そうですね。新宿ダンジョンの23階に降りた時に先ず浮かんだ言葉は"感謝"です。俺一人では決して到達出来なかった。今まで支えてくれた家族や仲間、視聴者の皆さんへ感謝の気持ちを伝えたいです」

 とりあえず目元を拭うフリをする。

「新宿ダンジョンを攻略した者は"あらゆる願いが叶うだろう"と言われています! 八幡容疑者にはどんな願いがあるのでしょうか?」

「俺の願いはただ一つ。世界平和です」

「素晴らしい!! 八幡容疑者の新宿ダンジョン攻略に、期待です!!」

「是非、応援して下さい」


 インタビュー後、死ぬ死ぬマンチャンネルのコメント欄は荒れに荒れた。
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