20 / 23
ダンジョンに咲く薔薇
異変
しおりを挟む
「ベン殿、見えてきましたぞ!」
ディルがこちらを振り返り嬉しそうに手招きをする。少し早足で近寄ると、見えてきたのは魔結晶の鉱床と涼しそうに咲く薔薇の花だった。
「青い花なのか。アナルローズは」
「ええ。世界でも青い花というのはアナルローズだけだと言われています」
ディルはどこか誇らしげだ。
「昔、ある貴族がアナルローズに惚れ込んでダンジョンの外で育てられないかと研究させたそうです。結局、駄目だったそうですがね」
それほどの美しさだと言いたいのだろう。
「では、私はアナルローズを採取しますね」
そう言ってディルはスキルでアナルローズを氷漬けにし始めた。氷の彫刻で作られたような薔薇は美しさを増す。
「そうしないと薬効がなくなるのか?」
「ええ。その通りです。アナルローズは非常に繊細な花なので」
ディルは黙々とアナルローズを採取し、俺は俺で魔結晶を壁からえぐりとる。やはり一番乗りというのは素晴らしい。上質な魔結晶が簡単に採れてそろそろリュックも満杯だ。
「……おかしい」
「どうした?」
「この振動、感じませんか?」
ディルがサッと地面に伏して耳を当てる。その顔は険しい。
「急ぎましょう!!」
バッと起き上がったディルが走り始める。何があったのか分からないが、その表情からして深刻だ。リュックを背負い、慌てて後を追う。
「ヤツが来る前に脱出しないと!!」
振り返りながらディルはそう叫んだ。……ヤツ? 何のことだ? ここはダンジョンの中だぞ。冒険者ぐらいしかやって来ないだろう?
「あわわわ、どんどん振動が激しくなってます! かなり近いですよ!!」
「何が来るんだ?」
「ドリルワームですよ!!」
ドリルワーム? 初耳だ。
「ドリルワームは超巨大モンスターの入り口を塞いでしまう厄介なモンスターなんです! 冒険者殺しと呼ばれています!!」
「そいつが来たら出られなくなるのか!?」
「その通りです! 急がないと!!」
ディルは驚くほどの速度でダンジョンを駆け抜ける。スキルを使っているのか並んで走るのが精一杯だ。
「見えてきました!!」
薄らと見える光。それはガバガバの肛門から差し込む希望。なんとか間に合ったらしい。さあ──
ガガガガガッ!!
──光は閉ざされた。凄まじい振動がダンジョンを揺らす。回転する凶悪な先端が遠慮なく入ってくる。
「よけろ!!」
力なく立ちすくむディルを抱えて後退する。
「……もう駄目です……もう駄目です。ワシは孫を救えない」
「諦めるな!!」
「……しかし」
「俺をなめるなよ。最果ての村ではこんな時、笑うんだ」
腰の抜けたディルを投げ出し、俺は構えた。
ディルがこちらを振り返り嬉しそうに手招きをする。少し早足で近寄ると、見えてきたのは魔結晶の鉱床と涼しそうに咲く薔薇の花だった。
「青い花なのか。アナルローズは」
「ええ。世界でも青い花というのはアナルローズだけだと言われています」
ディルはどこか誇らしげだ。
「昔、ある貴族がアナルローズに惚れ込んでダンジョンの外で育てられないかと研究させたそうです。結局、駄目だったそうですがね」
それほどの美しさだと言いたいのだろう。
「では、私はアナルローズを採取しますね」
そう言ってディルはスキルでアナルローズを氷漬けにし始めた。氷の彫刻で作られたような薔薇は美しさを増す。
「そうしないと薬効がなくなるのか?」
「ええ。その通りです。アナルローズは非常に繊細な花なので」
ディルは黙々とアナルローズを採取し、俺は俺で魔結晶を壁からえぐりとる。やはり一番乗りというのは素晴らしい。上質な魔結晶が簡単に採れてそろそろリュックも満杯だ。
「……おかしい」
「どうした?」
「この振動、感じませんか?」
ディルがサッと地面に伏して耳を当てる。その顔は険しい。
「急ぎましょう!!」
バッと起き上がったディルが走り始める。何があったのか分からないが、その表情からして深刻だ。リュックを背負い、慌てて後を追う。
「ヤツが来る前に脱出しないと!!」
振り返りながらディルはそう叫んだ。……ヤツ? 何のことだ? ここはダンジョンの中だぞ。冒険者ぐらいしかやって来ないだろう?
「あわわわ、どんどん振動が激しくなってます! かなり近いですよ!!」
「何が来るんだ?」
「ドリルワームですよ!!」
ドリルワーム? 初耳だ。
「ドリルワームは超巨大モンスターの入り口を塞いでしまう厄介なモンスターなんです! 冒険者殺しと呼ばれています!!」
「そいつが来たら出られなくなるのか!?」
「その通りです! 急がないと!!」
ディルは驚くほどの速度でダンジョンを駆け抜ける。スキルを使っているのか並んで走るのが精一杯だ。
「見えてきました!!」
薄らと見える光。それはガバガバの肛門から差し込む希望。なんとか間に合ったらしい。さあ──
ガガガガガッ!!
──光は閉ざされた。凄まじい振動がダンジョンを揺らす。回転する凶悪な先端が遠慮なく入ってくる。
「よけろ!!」
力なく立ちすくむディルを抱えて後退する。
「……もう駄目です……もう駄目です。ワシは孫を救えない」
「諦めるな!!」
「……しかし」
「俺をなめるなよ。最果ての村ではこんな時、笑うんだ」
腰の抜けたディルを投げ出し、俺は構えた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜
黒木箱 末宝
ファンタジー
これは、はみ出し者の物語。
現代の地球のとある県のある市に、社会に適合できず、その力と才能を腐らせた男が居た。
彼の名は山城 大器(やましろ たいき)。
今年でニート四年目の、見てくれだけは立派な二七歳の男である。
そんな社会からはみ出た大器が、現代に突如出現した上位存在の侵略施設である迷宮回廊──ダンジョンで自身の存在意義を見出だし、荒ぶり、溺れて染まるまでの物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる