10 / 15
一章
第5話 その2 チュートリアル
しおりを挟む
健一は緊張感を抱きながら、「完了」と書かれた二文字をタップすると、アルファが話し始めた。彼女の声は心強く、同時に少しはにかみを交えたものだった。
『的の中には、触れるだけでHPが削り取られていく個体や、自己防衛の特異性を持つものも存在します。相手が動かない的だからといって、甘く見てはいけませんよ。それでは次に、付属のデバイスを取り出し、起動してください』
真理は彼女の指示に従い、自身の鞄から細長いデバイスを素早く取り出した。健一も手渡され、彼女の行動を見守りながら、自分の手のひらにあるデバイスのボタンを押し、起動操作を行った。
『起動しましたら、メニューにて武器欄から『拳銃』を選択し、装備してください』
アルファは続けて指示した。
緊張した面持ちで、健一はメニュー画面を開き、装備の項目を選択した。目の前に現れた武器の特性が、ひとつひとつ丁寧に表示されていく。『ATK~』と示されるそれは、職業の補正後の攻撃力を表していた。例えば、一番攻撃力に重きを置く「重撃士」だとすると、その物理攻撃力は拳銃の素の数値100に加算され、110に上昇することになる。
候補の中から拳銃を選択すると、触れているデバイスが、一瞬の内に光の粒子に包まれ、鮮やかな拳銃へと変わった。その変化を目の当たりにした健一は思わず息を呑む。自分が持つ道具が、ただのデバイスから実際の武器に変わる瞬間の不思議さに、心躍らせた。
アルファはその様子に満足そうに頷き、再び口を開いた。
『では、次に【黒毒塊】を攻撃してみましょう』
先ほどの【黒毒塊】に加え、今度は別に二体の【黒毒塊】が出現した。健一と真理は、すぐさま拳銃を構えてそれに向かう。二人の視線が揃った瞬間、余すことのない緊張感が漂った。
攻撃が始まると、黒毒塊はその名の通り、グロテスクな液体を周囲に撒き散らし、健一の顔にも飛沫が飛んできた。その液体は刺激臭を放ち、健一は思わず顔をしかめる。顔に付着した煙が立ち上がり、地面に散らばった残骸からもなにやら気配を感じる。
『的は倒されると、スキルポイントをドロップし、消滅します。触れることで、制限のかかったPTを回復することができるのです。また、破壊された自陣の的は少しだけですが自動的に取得されます』
アルファの説明は明確で、彼女の声には自信が満ちていた。
『例えばこのように』
アルファが【黒毒塊】に攻撃を加え、その的が消えた頃には、その場に青い光の粒子が舞っていた。まるで空に向かって飛び立とうとするかのように、光は散らばり、その一部がアルファに取り込まれていく。
『このように、自分で自陣の的を破壊することも可能で、同時にPT回復もできるのです。私からの説明は以上になります。チュートリアルが終わるまで、【黒毒塊】はその場に残り続けるので、是非練習してくださいね。そして、チュートリアルを終える際にはメニューを開き、終了の項目を押してください。それでは、プレイヤーの武運をお祈りします』
アルファは優雅に頭を下げ、次の瞬間、光の粒子と化して、その場から消え去った。
『的の中には、触れるだけでHPが削り取られていく個体や、自己防衛の特異性を持つものも存在します。相手が動かない的だからといって、甘く見てはいけませんよ。それでは次に、付属のデバイスを取り出し、起動してください』
真理は彼女の指示に従い、自身の鞄から細長いデバイスを素早く取り出した。健一も手渡され、彼女の行動を見守りながら、自分の手のひらにあるデバイスのボタンを押し、起動操作を行った。
『起動しましたら、メニューにて武器欄から『拳銃』を選択し、装備してください』
アルファは続けて指示した。
緊張した面持ちで、健一はメニュー画面を開き、装備の項目を選択した。目の前に現れた武器の特性が、ひとつひとつ丁寧に表示されていく。『ATK~』と示されるそれは、職業の補正後の攻撃力を表していた。例えば、一番攻撃力に重きを置く「重撃士」だとすると、その物理攻撃力は拳銃の素の数値100に加算され、110に上昇することになる。
候補の中から拳銃を選択すると、触れているデバイスが、一瞬の内に光の粒子に包まれ、鮮やかな拳銃へと変わった。その変化を目の当たりにした健一は思わず息を呑む。自分が持つ道具が、ただのデバイスから実際の武器に変わる瞬間の不思議さに、心躍らせた。
アルファはその様子に満足そうに頷き、再び口を開いた。
『では、次に【黒毒塊】を攻撃してみましょう』
先ほどの【黒毒塊】に加え、今度は別に二体の【黒毒塊】が出現した。健一と真理は、すぐさま拳銃を構えてそれに向かう。二人の視線が揃った瞬間、余すことのない緊張感が漂った。
攻撃が始まると、黒毒塊はその名の通り、グロテスクな液体を周囲に撒き散らし、健一の顔にも飛沫が飛んできた。その液体は刺激臭を放ち、健一は思わず顔をしかめる。顔に付着した煙が立ち上がり、地面に散らばった残骸からもなにやら気配を感じる。
『的は倒されると、スキルポイントをドロップし、消滅します。触れることで、制限のかかったPTを回復することができるのです。また、破壊された自陣の的は少しだけですが自動的に取得されます』
アルファの説明は明確で、彼女の声には自信が満ちていた。
『例えばこのように』
アルファが【黒毒塊】に攻撃を加え、その的が消えた頃には、その場に青い光の粒子が舞っていた。まるで空に向かって飛び立とうとするかのように、光は散らばり、その一部がアルファに取り込まれていく。
『このように、自分で自陣の的を破壊することも可能で、同時にPT回復もできるのです。私からの説明は以上になります。チュートリアルが終わるまで、【黒毒塊】はその場に残り続けるので、是非練習してくださいね。そして、チュートリアルを終える際にはメニューを開き、終了の項目を押してください。それでは、プレイヤーの武運をお祈りします』
アルファは優雅に頭を下げ、次の瞬間、光の粒子と化して、その場から消え去った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
Cutie Skip ★
月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。
自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。
高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。
学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。
どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。
一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。
こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。
表紙:むにさん
不撓導舟の独善
縞田
青春
志操学園高等学校――生徒会。その生徒会は様々な役割を担っている。学校行事の運営、部活の手伝い、生徒の悩み相談まで、多岐にわたる。
現生徒会長の不撓導舟はあることに悩まされていた。
その悩みとは、生徒会役員が一向に増えないこと。
放課後の生徒会室で、頼まれた仕事をしている不撓のもとに、一人の女子生徒が現れる。
学校からの頼み事、生徒たちの悩み相談を解決していくラブコメです。
『なろう』にも掲載。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる