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一章

第2話 キャラメイク

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 次は容姿の選択だ。画面に表示されるメッセージにはこう書かれていた。「顔のパーツから体型まで全て調整可能ですが、ニックネーム同様に変更不可ですのでご注意ください」

 NPCのナビが淡々と進行する中、俺はため息をついた。「どうしてこのゲームは、どれもこれも変更不可なんだよ」と不満が口をついて出てしまう。

 横にいる真理が微笑んでこちらを見る。彼女は、自ら作成したキャラクターを嬉しそうに見せてきた。そのキャラはまるで瓜二つで、ただ髪色が薄い青に、触覚が濃い青のツートンカラーになっているだけだった。

「髪色変えた?」

 俺が尋ねると、真理は誇らしげに頷く。

「そうですよ、似合ってます?」
「髪色が変わると印象も変わるよな」

 そう俺は言葉を続けた。真理は目を輝かせながら言う。

「そうなんですか? どう変わってますか?」
「大人っぽく見える」

 すると、真理は少し考え込んだ後、冗談半分で反論してきた。

「なんですか、普段の私に文句でも?」

 その言葉に少し笑ってしまう。さて、他人のことを気にしている場合ではない。まずは自分のキャラクターを完成させることが最優先だ。考えを巡らせながら、呟く。

「俺はどうしようかな……」
「先輩、無視ですか?」

 真理が身を乗り出してきた。

「そうだな、顔バレしたくないからマスクだけにしよう。よし、これで完璧じゃないか!?」

 自信満々にキャラクターを見せると、真理の目が大きく見開かれた。

「……正気ですか?」

 彼女の驚きに少し不安がよぎる。

「つまらなそうな目をしたキャラと交互に見つめて、真理はなにやら考え込んでいる。やっぱりマスクだけではまずいのか?」
「顔バレしたくないのなら、ランダム生成という手もありますが」

 そう真理が提案してくれた。「へー」と俺は興味を示す。

「身長とか、感覚に関わる部分の生成はされませんが、髪型とか髪色などの分かりやすい部分がセットアップされるんですよ」
「それじゃ、そうしてくれ」
「ただし、生成と同時に確定されますけど」

 真理は真面目な顔で付け加えた。

「それっきり?」と俺が尋ねると、彼女は「はい」とまるで自分の意志ではないかのように素直に答えた。

 後戻りはできない。心に決め、画面に表示されたランダム生成のボタンをタップした──しかし、何も起こらなかった。

「へー……先輩、金髪似合いますね」

 真理が笑った声に驚いて画面を見ると、俺のキャラはまるでプリンのような金髪の姿になっていた。思わず「髪色と少々の小手入れって感じだな」と自分に言い聞かせる。どうやら、今回の選択では俺の印象がかなり変わってしまったようだ。「ほぼ顔出ししてるじゃん」と真理が皮肉を言った。

「修正不可能システム盛り盛りのゲーム。大丈夫か?」
「大丈夫ですって。このゲーム、本格的なんですから」
「信用できないね」
「容姿とかはあくまで操作キャラですから、次の設定が大事なんです」

 そう自分を鼓舞するように言った真理に、少し恥ずかしくなりながらも次のステップへ向かう決意を固めた。

『容姿を確認致しました。次に職業選択を行なってください。就く事が可能な初期の職業は5つ。規定回数のptを消費することで新たな職業に就き直すことも出来ます。では、職業選択してください』

「さて、どうするか」

 精密士、重撃士、軽装士、索敵士、奔走士。メニュー欄にある職業選択を一つずつ選ぶと、その職業の付与効果が明記される。各それぞれが何かに補正がかかるようだ。

「私はこれかな、精密士ですかね。遠方からの狙撃カッコいいじゃないですか」
「じゃあ、俺は索敵士かな」

 真理は精密士を選択する。なにもわかっていないが、何もできずにゲームオーバーは格好がつかないと思い、敵の位置が察知できるものをその中から選んだ。

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