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第十二話 ~退院とあまあま~

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 ──救急搬送されたきよみの母であるこよみは、様々な検査の結果“外傷性くも膜下出血”*1 という病名を告げられ、至急治療をすることになり、緊急手術などを経て快方に向かう事を果たした。そして、およそ二か月という月日が流れた。
 完全に快復をしたこよみは、退院を果たす事が出来た。
 月はすでに十一月を迎え、道に植えられている木々の葉が紅に染まり、段々と散り始めていた。
 二か月の入院期間中、きよみとたけるはこよみに寄り添い、快復を心から願っていた。
 その願いが届き、こよみは驚くべき速度で回復していった。
 担当医の驚く姿を面白おかしく伝えるこよみの姿に、二人は毎度安堵していた。
 退院の日、こよみは迎えに来た二人と共に病室を出た。
 そして、荷物を二人に持たせると、まず向かったのは看護師の集う部屋。“ナースステーション”である。
 数か月、自分の急病に対応し、その後の看病などをしてもらった感謝を込めて、彼女は一言告げた。

 ──『ありがとう』と。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

 感謝を告げたこよみと共に、きよみとたけるは病院を後にした。
 そして、三人が向かったのは全国チェーンのケーキ屋の不三家ふみやである。
 そこで三人は小さなケーキを三切れ買う事にした。
 こよみはホールケーキを買おうとしていたが、さすがに病み上がりには多いという事できよみが止めたことでこよみは思い留まった。
 購入した三人はきよみたちの自宅へ帰宅することにした。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

 帰宅した三人は、まず居室へと向かい、きよみとこよみ親子は、入院中の荷物を寝室に仮置きし、その間にたけるはケーキを食すために三人分の食器を用意した。
 こよみが救急搬送された数日後にたけるときよみは二人で色々と話し合い、こよみの入院している間にきよみのアパートではなく、たけるの自宅で過ごすことにしようかという事になった。
 しばらくしてから意識を取り戻したこよみから許可を得て正式に一緒の時間をたけるの自宅で過ごすことになった。その間は当然ながら、時々アパートに戻って掃除をすることは欠かさずに。
 そのため、アパートの部屋は救急搬送された日と何ら変わっていない。
 変わっているものといえば、きよみの私物がまだたけるの自宅にある事でそれだけは足りない。ただ、それだけである。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

 お茶会の設営が終わり、お茶会をする三人。目の前には同じショートケーキとフォークがそれぞれ置かれている。
 三人してケーキを頬張る。きよみはケーキの甘さに表情をとろけさせ、こよみはきよみ以上に表情がとろけていた。対してたけるは真剣な表情で、ケーキの味をしっかり噛み締めていた、しかし最後には二人の事を見たたけるは我に返り、彼も表情をとろけさせたのであった。
 そのショートケーキはとても甘そうなホイップクリームが沢山乗っており、切れ先とホールの外側に当たる部分の二か所に特大の苺が乗せられているもので、商品名はあまあま苺ケーキ。
 ホールの八等分であるショートケーキは一切れで約四百円、ホールケーキは直径三十センチと大きく、値段は三千円と破格の安さである。
 不三家の中でも一番人気のケーキで、行列も出来るほど。口コミでは連日の如く破格のこのケーキを褒めたたえる言葉が書き並べられる、そんな一品。

       ☆☆☆ ★★★ ☆☆☆

*1……参考資料
①日本神経学会さま“意識障害とは”
②新百合ヶ丘総合病院さま“頭部外傷について”
③MSDマニュアルさま“くも膜下出血”

退院後参考資料
・入院病院参考
……埼玉県さいたま市
・不三家
……某飴の製菓会社“不二家”さま。
・あまあま苺ケーキ
……不二家さま“デラックスショートケーキ”を参考。二一〇ミリで九千円。
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