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第3章 魔王編

魔王4

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魔王のいる広間へとやってきた

映像通り奥には階段があり椅子が1つ置いてある

薄暗くてよく見えないけどシルエットで1人座っているのが確認できた。

海斗達はゆっくりと近づいていくが魔王は動こうとも喋る事もない

罠か?

「ねぇ、海斗さん。もしかして魔王気絶してるんじゃないかな?」

ヨシユキが目を凝らしながら伝えてくる

そんな馬鹿なと思いズームをかけて見てみた

・・・うん、気絶してるね

皆んなに伝えて目の前までやってきた

魔王はものの見事に気絶している。そりゃ静か過ぎるはずだ

レオンが思いいたったように言う

「そうか!塔の最上階から落ちたら気絶するのは当然だな」

そう言われて、あぁ!そう言われてみればそうだねと納得した

即死確定のフリーホールをするようなものだから気を失っても仕方がない


「んで、どうするよコレ?」


レオンは気絶してるうちに魔王を倒そうかと武器を握っている

「戦いになれば命を奪う前提で動いていたけど今なら動きを封じて話を聞けるチャンスがある。処分はその後で考えようか」

アルフはそう言ってロープを取り出して魔王をキツく縛り首輪を取り付けた

それは何かと尋ねると、魔法を使えないようにする為の首輪だそうで念の為付けとくのだそう

メアが魔王を見ながら「なんか呆気なかったですね」と呟く


まあ、100階にもなる大型ダンジョンが1階層のダンジョンになってしまい、魔王をこんなにも簡単に捕まえることが出来たらそんな気持ちにもなるだろうね


「うぅ・・」

気絶していた魔王が薄らと目を開いてゆっくりと辺りを見回す。
そして自分が縛られている現状と取り囲まれている状況は理解したみたいだ

「お!お前らいつの間に!?100階層のダンジョンは?あの衝撃は何だったんだ!?」

魔王が矢継ぎ早に叫んでくる。思っていた以上に混乱しているね

「塔は無くなったよ。ちなみに君が気絶したのはこの広間が落ちたからだろうね」

アルフが剣を取り出して答えながら魔王の首筋に当てる

「ひっ!?」

剣を突きつけられた事に恐怖し、逃げようとするが縛られて身動きが取れずバタバタと芋虫のように這いずる事しか出来ない

レオンが魔王を掴み動きを封じる。観念して大人しくなったのを見計らって気になることを聞いていく事にする

彼の名前は安在シュウマ、サラリーマンだそうだ。彼は他の同期数名と一緒に巻き込まれて此処へとやってきた

ただ本人はその日スーパーに行く気が全くなかったが、半ば強引に連れてこられたそうだ。

そう、彼はその同期生からいじめを受けていた。そして彼等からこのスーパーで万引きをしてこいとの指令を受けて、見張られている最中だったそう。中学生のイジメみたいな関係と言う感想が浮かんでくる

そして魔王を選んだのも彼等だ。

彼等の実験台にされて初めに押せと言われ、選ばれた後も魔王という事で虐められスーパーで奴隷として働かされていた

東堂兄妹はその話を聞いてハッとする

そう言えばグループの中にそういう集まりがいた事を

2人とも複雑な表情をしながら話を聞き続ける

そして東堂兄妹が居なくなってからもイジメは続き、それどころか異世界のストレスもあったのだろう、次第にエスカレートしていく

彼は心身ともに疲弊しきっていた。

ある日、彼が虐めから逃れる為に一時スーパーの外へと避難した時、1匹のゴブリンに出会す

彼は怯えて腰を抜かし後退りするがゴブリンの異様な行動に驚いた

ゴブリンがシュウマに傅いたのだ

怪訝に思いながらも様子を見ていると目の前に透明なウィンドウが表示されゴブリンが配下になった事が分かった

その時、シュウマの中に黒い感情が芽生える

ゴブリンを従え、近場のゴブリンやウルフなどの魔物を次々と配下に収めスーパーへと戻ってきた

戻ったシュウマは同期生達を外へと連れ出し魔物に襲わせ復讐心を満たす。そこに罪悪感は無かった

残った日本人達は恐怖し次の犠牲になると思い散り散りに逃げ出すが魔物の数に負け殺されてしまう

シュウマにとって見て見ぬふりをした人達も同罪と考え後悔はしなかった

そして人を殺した事により魔物召喚や魔王城として塔を建設する事が出来る様になり、もっと魔王らしく人や街を襲えばこの世界で最強になれるのではないかと思ったんだそうだ

「だから俺は悪くない!悪いのは全部アイツらだったんだ!」


「だからといってお前のやった事は許される事じゃない」

レオンが冷たく突き放す。俯くシュウマを一瞥してどうするのかを話し合う事にした

「今回の件はこの国の大事になりかねない事態だったから王都へ連行し、王に処罰してもらう事になるね」

アルフの言葉に東堂兄妹が悲痛な表情を浮かべる。犯罪を犯したとはいえ、同じ日本人だ。この世界に飛ばされて数日間一緒にいた仲間意識もあるのだろう

「「海斗さん・・」」

2人の困惑顔も理解出来る。けど犯罪は犯罪だ、自分達が負けていれば被害は相当出ていただろう。けれどせめて

「アルフさん、出来れば極刑以外でお願い出来ませんか?」

「?それは難しいと思うけどどうしてだい?」

「今回の件で悪いのはコイツでしたが環境のせいでこんな事件を起こしたんです」

「それを言ってしまえば、稼ぐ事が出来ず止む無く盗賊などに身を落とした者達にも言えることだ。国の法律では盗賊になった者や重罪を犯した者達は基本生死問わずになっている。例外はなくね」

「そうなんですが、勿体無いと思いませんか?」

海斗の勿体ない発言でアルフは怪訝な顔を見せた

「彼の魔物を使役するのは非常に有効だと言う事です。そして今回の事件が元々の性格ではなく環境によって生み出された結果なら・・」

そこまで言って気がついたアルフは目を見開き黙り込む

「海斗、どう言う事だ?処刑はしないって事なのか?」

レオンはまだよく理解できてない様だ

「ふむ、海斗君の意見も分かるけど裏切られないと言う保障は無いよね。王都へ連れて行き、もし処刑を免れたとしても彼の今後の自由は一切無くなると思うよ」

アルフの不安は最もだ。だけど

「死なれるよりはいいと思います」

「・・分かった。王にはその様に進言してみるよ。期待はしないでね」

アルフの言葉に兄妹は安堵したようだ。まぁ俺としても同郷が目の前で死ぬのは抵抗あるからね。よかったと思う

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