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第1章 最初の街

救出作戦その後2

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ギルドに到着すると、昨日のギルド職員の男性が近づいてきて昨日と同じ個室へと通された。

部屋の中に入るともう1人、40代後半位の渋い男性が座っている。

誰だろう?もしかして貴族とか?

まさか襲撃した俺を捕まえて処分する為に来たのではないだろうか?

逃げるか?しかし、後ろのドアはギルド職員に阻まれている。

絶体絶命だ。

目を泳がせているとギルド職員にソファに座るように言われる。

コレはもう逃げられない。ガチガチに固まりながらソファに腰掛ける。

緊張からか腰掛け位置は浅い、高校の面接の時以来のめっちゃ浅く座っている。

心臓の鼓動でよく聴こえない。

「ーーーので、海斗さーーない事にーー」

「え?」

がっつり聞き逃してしまった。

海斗の表情に、これは聴いてなかったなと思ったギルド職員が1度咳払いする。

そしてもう1度同じ事を繰り返した。

「昨日、海斗さんが提出された書類を確認して人員を増やして事実確認をしているのですが、ほぼ間違いないと判断されました。
ゴンズ様の罪は確実に爵の剥奪、その後処刑の対象となりますので、海斗さんの罪は問われない事になりました。」

え?マジですか!?
良かったー!心臓が止まるかと思った。

聞くと、人身売買の他にと色々と罪を犯していたみたい。

明らかに国の損失になる様な事もしていたので、海斗の襲撃はうやむやにしてくれたみたいになった。

ホッと胸を撫で下ろしていると

「ですが!!今回はかなり運が良かったんです!下手をしたら海斗さんは処刑されていても仕方ない立場だったんですよ!」

「は、はいぃ!」

そこから10分程、ずっと説教をされた。

「まあ、それくらいにしときましょうか」

「しかし、ギルド長!」

「彼も彼なりの正義で動いたんだ。そこは認めてあげなさい」

「・・分かりました」

叔父様!ありがとうございます!ってギルド長!?

1番上の人が出張ってくるってそんなに大事だったんだ!?

「海斗さん、今回の事件で王国側が動く事になりました。派遣先からの事情聴取で貴方の事は必ず話題に上がるでしょう。
はなんとかなると思います。
しかし、貴方の力は王国にとって見逃せない可能性がありまして。幸い、貴方の力だと知っているのはここに居る3人だけです。
なんとか誤魔化せるように頑張ってはみますが。

ですが、顔と名前が一致し、バレる前にこの街を出る事を推薦します。
顔を知っている人からバレる恐れもありますので」

ああ、成る程。

屋敷の警備の時は暗かったから大丈夫だったけど何人かに顔を見られてる。
屋敷に襲撃した時は顔は伏せていたけどNFAを使っていた。

バレる可能性はあるわけだ。
目の前の職員とギルド長はバラすつもりは無いと言ってくれている。

なら、迷惑をかける前に街を出る方が良さそうだ。

「分かりました。お世話になりました」

「いや、こちらこそ依頼表を渡す前に、ちゃんと調べておくべきだった。海斗さんには申し訳ない思いです。」

その後色々話し合って、街にいれるのは1週間が限界。

この国の地図を貰って何処に行けばいいのか聞くと、

この街からは4ヶ所道が出ており、王のいる本都、国の境目にある城塞都市、交易が盛んな商業都市、学生が集まる学園都市だ。

ちなみに方角と距離から、召喚されたお店は国の境目付近だったみたい。

あの4人は歩いて行った方角からして、国跨いで違う国に行っちゃったみたいだね。他の人達はどうしたんだろうか?

海斗は話し合いの結果、学生が集まる学園都市に行く事になった。

この国や世界の事が書いてある本や情報を集めたいと思って、商業都市か学園都市かで迷ったんだけど、
ギルド長から若いから学園都市で魔法とか習ってみたらどうだい?

と、言われた時にファンタジー来たーー!とテンションが上がってしまって決めたのは内緒だ。

異世界特典に魔法があったけど、この世界で普通に覚えれるなら特典は完全に嫌がらせの類いだよ。

異世界に連れ去られてパニックになっている時に魔法とか提示されたらそりゃ押したくなるよな。

あれ?でも俺の『スマホ』みたく成長したらチート級になるのだろうか?

ぶるり

嫌な予感は心の隅に追いやってギルドを後にする。

その足で遠回りをしながら追跡が無いのを確認して、アジトに向かった。

もう完全にバレていると思うけど変幻を使っている。

アジトに着くと外で遊んでいた子供達が寄ってきた。

「あ!おにーちゃんだ」

「カレーの人だ!」

「カレー!」

「カレーの匂いがするー!」

おい、俺はそんなに芳ばしくはないぞ

一応袖を嗅いでみる。うん、匂いはない。

・・はずだよね?

部屋の中からグレンが出てきた。

「おう、やっと来たのか。こっちだ」

くいっと親指を立てて部屋の中を指す。
そして中に入っていくグレンの後を追って中に入っていく。

中にはミリィとアニ、後救出された組が何人か中にいる。

「あ!貴方が海斗さんですね!初めまして。そして助けて頂いてありがとうございます。」

アニが代表してお礼を言って、残りの人達が一斉に頭を下げてくれた。

「いや、無事で良かったよ。あれから何もなかった?」

黒猫のおかげで分かってはいたけど確認してみた。

「うん!追っ手も来ないし調べた感じだとゴンズは罰せられるみたいだから、もう大丈夫だと思う」

良かった。この笑顔を見れただけで頑張った甲斐があったかな

アニ達に笑顔を見せて話しているとグレンが近寄ってくる

「なあ、良かったらこちらの仲間になってくれないか?」

ビックリした。まさか信用してくれただけじゃなく仲間に誘ってくれるなんて。

けど

「・・ごめん、この街に居られなくなったんだ」

全員が驚愕する

「何故だ?まさか!?襲撃の件なのか?」

「まあね・・でも後悔はしてないよ。こうやって笑顔を取り戻せたんだから」

泣きそうになっているアニの頭を撫でてあげる。

「それにさ、元々旅をしたいと思ってたんだよね。ちょいと早いけどそれも良い機会かなって」

何となく気まずい空気が流れる中

「なら、ミリィを連れて行ってやってくれないか?」

「グレン!?」

ミリィが叫んで問い詰める

「お前の小さい時からの夢だったじゃないか。
1人なら心配だけどな。海斗なら任せられる」

「っ~~~!」

ミリィは真っ赤に染まってグレンを揺さぶる

周りはそれを見守る感じでニヤニヤしていた


「取り敢えずだ、海斗はいつまで居られるんだ?」


「一週間かな」


「そうか、なら行く前にここに寄ってくれ。そしてミリィを連れて行ってくれ」


「・・いや、ミリィの気持ちは?」

ミリィは周りを見回して考え込んでしまった。そこにアニが寄ってくる。

「ミリ姉、私達は大丈夫だよ。皆育ってきて家事も仕事も出来るようになってきたよ。
今回の事で少しは街も良くなるし。そろそろ自分の夢を追いかけてもいいんじゃないかな?
離れたってミリ姉はずっと私達の家族なんだから。
皆んなミリ姉に幸せになって欲しいんだよ」


「・・アニ」

抱き合いながら成長していってるアニを見てミリィは涙を流した。

そして一週間後、街を出る時にアジトによる予定で、それまではめいいっぱい家族孝行をしておくと言われ、海斗は宿へと戻っていった。
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