片想われ ~in two world~

佐倉 みゆ

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第1章 ー始まりー

3夢 *意地っ張り*

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透き通る水は、群青の空の様だった。

目に見える世界は、現実だとは信じ難く、まるで天の世界のように感じた。

そんな素敵な空間も長くは続かず、水壁を超えるとそこは・・・もっと幻想的な世界が広がっていた。





「ここが・・・夢癒?」


初めて見る夢癒の世界は、ヨーロッパの様な繊細で歴史を感じさせる、それでいて、絵本の世界に出てくる様なパステルカラーの建物が並んでいる。


「綺麗・・・好きだな・・・」


その言葉は、勝手に呟いていた。


「本当ですか?ありがとうございます。嬉しいです。」


横を見ると、ニヤニヤとうざったらしい顔でこちらを見ているフェリールがいる。


「あの、別にあなたに言ってる訳じゃ・・・」

「分かってます。私はこの街を気に入ってもらえて、嬉しくてつい笑ってしまっただけですよ?」


この人は・・・むかつかせる天才かもしれない。
でも、こんなやり取りに少し慣れてきた自分に、さらにイラつく。


「私だって、分かってましたよ?でもあなたがもし浮かれやろうだった時のためにいちおう・ ・ ・ ・言っておいただけです。そこ、お忘れなく。」


精一杯の意地っ張り。こいつに少し当たりたい気分。少しはこの人にも責任がある、と信じて。


「はいはい分かりました。そういうお年頃ですもんね?」

「なにを・・・!」

「ではそろそろ行きましょう?今日はしなくては行けない事がたくさんあります。」


おっと、ここで話を遮られるとは・・・いいぞ?いつか立場逆転させてやる。
と言っても、この人と会うのは今日が最後だ。なんだか友達の様な気分でいたが。


「【今日は】?言っておきますけど、今日が最後なんで。ここに来るの。」

「はい。だからこそいろんな事を体験してもらおうと思って。」

「??
お手伝いじゃないんですか?」

「お手伝いもですけど、何よりあなたにこの世界の良さを知ってもらいたくて。」


この人・・・たまに心を持っていかれそうになる・・・
本当はいい人なんだろな・・・


「ついでに僕のことも知って下さいね?」


こういうところは除いて。


「はいはいそーいうきもい事言わないで下さーい。移りますー。」

「そーですか?それ言われるとさらに言いたくなるなー」

「次言ったら許さない。」

「わー怖い怖い。やめますやめます。」

「クスッ」

「あ、今笑った?」

「わーやめて。それ言われたら私のSキャラが壊れるからー!」

「絶対笑った。」

「笑ってないです。」

「嘘だ。」

「笑ってない事にして。」

「却下。」

「えー?なんでそんなことピーチクパーチク・・・」


こんなくだらない言い合いをしながら、夢癒の世界を歩いた。
案外楽しかった、なんて。誰にも言わないけど。


「・・・楽しみ」

「えっ?すいません。聞こえなかったです。もーいっかい・・・」

「フフッ何でもないですよ?
早く行きましょ!」



早足で向かった先・・・それは、私の第2の人生のスタートライン。




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