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10堂林と対戦
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その後は、人、ジェムーン、人、ジェムーン、ジェムーンと、どんどん戦い続けた。
やはり、榎森が言った通り、人が操られている戦いは、厳しかった。スターターデッキの強さが、俺を苦しめるのだ。また、赤色のカードを使う相手とも戦う時があった。
だが、俺はその全ての戦いに勝てた。たぶん、俺のデッキの方が強いカードがそろっているんだろう。父さんは、そんな強いデッキを俺にくれたのだ。これは、本当に感謝だ。
そして、大分時間が経ち、そろそろ日が暮れる頃。俺はたまたま小学校の近くに来ていたので、ついでとばかりに立ち寄ってみると、そこで見知った姿を二人分見つけた。
「正義の味方、人妻カード使い、青美!」
「同じく正義の味方、キューティーカード使い、黄凛!」
「二人はジャスティス!」
ジェムーン二体の前で、決めポーズをとっているうちの家族。うそみたいだろ。あの二人が俺の家族なんだぜ。
「何やってるんだー二人共ー!」
思わず叫ぶ俺の前で、二人とジェムーン二体の対戦が始まる。
そして。
「これで終わりよ。タカインウエーブフォース。相手は負ける!」
「これで終わり、ワンチャンRZジャスティスストライク。私は勝つ!」
「そんな効果ねえよ」
「二人共すごーい!」
俺とラーレが見守る中、母子そろって勝利したみたいだ。
「必殺、ブルービューティフルジェムシャイン!」
「必殺、イエローファインジェムシャイン!」
二人が決めポーズをしている間に、対戦相手のジェムーン二体が光の円に吸い込まれていく。そして、その場にはジェムーンがおそったのであろう、数人の人の姿が急に現れたのだった。
「あれ、ここは、どこだ?」
「俺は確か、怪物におそわれて、それで」
「皆さん、もう安心してください。皆さんをおそった怪物は、この私、正義の味方、人妻カード使い青美が倒しました!」
「同じく、正義の味方、キューティーカード使い黄凛も怪物を倒しました!」
「正義は勝ちました!」
二人が声をそろえて言うと、周囲から次第に、歓声と拍手が送られる。
「二人共、もっと普通にしていられないのか?」
俺はその中に勇気を出して入っていった。
「あら、赤輝。また会ったわね。どう、あれからジェムーン倒してる?」
母さんにそう言われ、仕方なくうなずく。
「うん。倒してるけど、二人は、一緒にいたんだ」
「ええ。丁度黄凛の学校の近くに寄ったから、見に来たの。そうしたら丁度敵が二人現れたから、親子の力で倒したところよ。ねー黄凛ー?」
「うんっ。あ、お兄のジェムーンはそのお姉さんなんだ。私のジェムーンはね、この子。シェトルだよ!」
黄凛が言う。そういえば、黄凛の横には、黄色髪の美少年がいるな。その子は、俺に頭を下げた。
「こんにちは。ボクは、ジェムーンのシェトルと言います。黄凛さんにはお世話になってます」
「ああ、うん。ジェムーンなら、仕方ないな。仕方ない」
シェトルは人形のようにきれいな子だけど、ラーレのように正の力をたくわえている途中なら、黄凛といることも仕方ないと思える。
「とにかく、黄凛もジェムーンを倒せるのか。なら、少し安心できるかな」
「うん。悪いやつは、この正義の味方、キューティーカード使い黄凛に任せて!」
「その名乗り、どうにかならないのか」
「だって、名乗らないともったいないでしょ?」
「黄凛はもったいないの意味をちゃんと学んだ方が良い」
「とにかく、黄凛が小学校を守っているなら、ここは安心ね。私達は、行っても良いかしら?」
母さんがここでそう言った。すると黄凛はうなずく。
「うん。皆今日は危ないから学校にずっといるみたいで、だからその間私がずっと守ってないといけないんだけど、夜になって眠くなるまでは、私、負けないよ!」
黄凛がそう言う。そうか、夜になったら眠くなってしまうな。それからは、危険じゃないか?
「じゃあ、黄凛一人じゃ危ないってことか?」
「大丈夫よ。もうすぐダーリンの会社からカード戦士隊が警護についてくれるから。きっとあと少しでここに到着してくれるわ」
「カード戦士隊?」
ここで新ワードがでてきたぞ。
「カード戦士隊っていうのは、ジェムカウントで戦う正義の集団よ。彼らが来てくれたおかげで、私は避難所だった市役所から離れることができたの。小学校だけじゃなくて、赤輝の学校にも来るはずよ」
「そんな人たちがいたのか」
それなら、かなり安心できるかもしれない。
「そっか。ならその人達が来てくれるまで、私、正義の味方としてがんばらなきゃ!」
黄凛が両拳を作る。
「うん。頼もしいよ、黄凛さん!」
シェトルが言う。
「そう。皆でがんばろー!」
ラーレが言う。
「イカイッカー!」
イカさんが言う。
「ええそうね。イカさん。それじゃあ、私はしばらくの間、黄凛と一緒にいるわ。やっぱり心配だから。その後は、また悪のジェムーン探しに戻るわね」
母さんが言う。俺はうなずいた。
「うん、わかった。じゃあ俺はもう行くよ。母さんも黄凛も、くれぐれも気をつけてね」
「大丈夫、だって正義は必ず勝つから!」
二人してそう言ったのが、少し不安だった。
気を取り直して、再びジェムーン探しを始める。
ジェムーンの数は、午前中に比べたらもうすっかり減った。今まで夢中になって倒していたんだから当然といえば当然だけど、こうも会わなくなると、少し肩透かしをくらっているように感じる。
「ラーレ、まだジェムーンの気配が感じられないか?」
「うん。どうやら、この辺にジェムーンはいないみたい。どうする、赤輝?」
「うーん。一度学校に戻るか、それとも活動範囲を広げるかのどっちかだよな。学校から遠ざかればそれだけ、何かあった時の対処が遅くなってしまう。それに、今からジェムーンを探す範囲を広げても、もう日が暮れるまでの時間は短い。うーん。よし、ラーレ。今日はジェムーン探しをここまでにしよう。学校に戻って、その後どうするかを決めるぞ」
「うん。全部赤輝の好きにしていいよ!」
「まあ、この地球に来たばかりのラーレが何するか決められるわけないしな」
「うん!」
すぐに戻ってきた、学校で。
「あ、赤輝、前から危険なジェムーンの気配を感じるよ!」
「なんだって、俺がいない間にそんなことになるなんて、皆が危ない、すぐかけつけないと!」
「そうだよ、すぐにかけつけて!」
自分の心とラーレに急かされ、急いで校舎内に入る。
すると、廊下で黒いオーラを放つビーバージェムーンをつれた女子生徒が、男子生徒と戦っているのを見つけた。
「イニシAドラゴンをセレクト。これで私の勝ちよ!」
「なんだって、そんな、うわー!」
丁度俺が来たところで、男子生徒が負け、相手が作った光の円に吸い込まれてしまう。
「く、遅かった。もう被害が出ている!」
「赤輝なら大丈夫。いつもみたいにやれば、問題ないよ!」
ラーレがそう励ましてくれるけど、ジェムーンに操られている様子の女子生徒は、両手を広げて高笑いし始めた。
「あっはっはっはっは。これで私の力が、更に高まる。もっとほしい、もっとよこせえ。強い力が、私を喜ばせる。きえーっけっけっけえ。きえーっけっけっけっけ!」
ちょっと、怖い。根鏡といい、操られた人は皆不気味テンションになるのか?
「しかしひるんではいられない。おい、君は堂林さんだな。劇的ビフォーアフターしているけど、勝負だ!」
俺がそう声をかけると、操られている堂林さんがグルッと体の向きを変えてこちらを見た。
「けっけっけ。次の相手は赤輝、お前だな。早く勝負を始めようじゃないか。そして私の糧となれえー!」
「早く、女らしさを全て失ってしまった堂林さんからジェムーンを引き離さないと。やってやるぞ。ジェムカウントの勝負、受けてたつ。そして、絶対悪のジェムーンの思い通りにはさせない!」
「何をごちゃごちゃ言っている。さあ、始めようか。私が勝利するゲームを!」
俺は怖い堂林さんになるべくひるまないようにしながら、テーブルの前に立った。
「対戦、よろしくお願いします!」
「対戦、よろしくお願いします。けーっけっけっけっけ!」
よし、対戦開始だ。まずはデッキをテーブルに置き、五枚ドローする。引きは、く、大変だ。0コストのカードがないぞ!
「ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
引いたカードは、赤い拳骨マグマアロー。く、これじゃない。これじゃあ1ターン目から動けないじゃないか!
ええと、こういう時はたしか。
「俺は、このターン場に出せるカードがない。だから、手札を二枚デッキの下に置いて、二枚ドローする!」
父さんから教えてもらった、こういう時の手段だ。手札に1、2、3コストのカードを一枚ずつ持って置き、二枚のカードをチェンジする。
「よし、0コストのカードがきた。次からは動けるぞ!」
「きえーっけっけっけ。けどこれで赤輝と私の場にあるカードの差は一枚分開いたあ。これはなかなか覆すことができない大きな差だぞお。これでますます私の勝ちはゆらがないだろうな。それ、私はスタートドラゴンをセレクトだあ!」
堂林さんは俺とは違いカードを場に出した。く、相手は黄色カードのデッキか。上手く効果を使われ続けられたらやっかいだぞ。
「スタートドラゴンの効果発動。手札にある同数コストカードを二枚デッキ下に置き、カードを二枚引く。その後デッキをシャッフルしてから、このカードを+1ゾーンへ移動させる。けえーっへっへっへ!」
「く、いきなりピンチだぞ」
これで俺と堂林さんのジェム差は、2。このままじゃまずいぞ、なんとかしないと!
「ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
引いたカードとかは、今は気にしていられない。なんとかして、堂林さんとの差をなくすんだ!
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は便乗戦士チューンを場に出す!」
「私はモクモクリュウをセレクトー!」
堂林さんがここで出したのは、やはり1コストのカードだった。
「モクモクリュウの効果発動。場に出た時、手札の同数コスト二枚をデッキ下に置き、2枚引く。その後デッキをシャッフルし、自分の場にあるカード2枚までをアンタップするう。私はこの効果で、スタートドラゴンをアンタップう!」
スタートドラゴンがアンタップされる。なんて効果だ。このカードをまた終盤で出されでもしたら、俺は負けてしまうかもしれないぞ。
「赤輝、戦いを恐れないで。手を伸ばさなければ、欲しいものは手に入らない。この戦いは必要なことなんだよ!」
「!」
ここで、ラーレに励まされる。俺は、ラーレを見て、思わず笑った。
「ああ、そうだな。ラーレの言う通りだ。勝利を求めて、全力を尽くす。それが、戦うってことなんだ。俺はがんばるぞ、ラーレ!」
「うん。大丈夫、赤輝は負けないよ!」
ラーレが一番近くでぴったり応援してくれる。ようし、全身に力が入る。これなら俺は、まだ戦える!
「カウントタイム、ヒールタイム、ドロータイム。ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
例え相手がちょっとくらい有利だからって、それでもう戦意を失ったりはしない!
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺はネオファイターツーロを場に出す!」
「私はあ、おしEドラゴンをセレクトー。効果発動。手札から1、2コストのカードをデッキ下に置き、二枚引いてからシャッフルし、その後3枚引いて、手札二枚をデッキの上か下に送るう!」
なんて効果だ。これで、堂林さんは手札を充実させたぞ。けど、こっちだってここからだ!
「ネオファイターツーロの効果はバトルだ。スタートドラゴンとバトル!」
「ツーロー!」
「スタートー!」
ツーロとスタートドラゴンの立体映像がバトルする。けど、パワーはこちらが上。だからバトルもこちらの勝ちだ!
「バトルに勝ったツーロは+1ゾーンへ移動。そしてチューンの効果でチューンも+1ゾーンへ移動だ!」
「ぐうう、スタートドラゴンはノーマルゾーンに戻り、更に裏返しにされるう。だが次はこうはいかないい」
「こっちだって、負ける気はない。これで、カウントタイム、ヒールタイムだ!」
今、こちらの場には2枚のカード。相手の場には3枚のカードがある。そして、ここでアンタップ状態のカードはお互い2枚。ここからひっくり返すぞ!
「ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺はネオファイターサンガスを場に出す!」
「私は戦Eドラゴンをセレクトー!」
お互いに2コストクリーチャーを出す。これは、どうなる!
「戦Eドラゴンの効果発動う。手札の同コストのカード二枚をデッキ下に送り、二枚ドローし、シャッフル。その後、このカードのパワーを+10し、バトルするう!」
「こっちだって、サンガスでバトルだ!」
「サンガー!」
「タタカE!」
サンガスと戦Eドラゴンの立体映像がバトルする。ああ、サンガスが負けた!
「勝った戦Eドラゴンはー、+1ゾーンへ移動ー」
「負けたサンガスはタップする」
ここでの有利は譲ったけど、本命は次のターンだ。そう意識を切り替えよう。
「カウントタイム、ヒールタイム。ドロータイム。ドロー!」
「ドロー!」
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は赤い拳骨マグマアローを場に出す!」
「私はあ、イニシAドラゴンをセレクトオオ!」
俺は場のカード3枚をタップ。堂林さんはスタートドラゴン、モクモクリュウ、おしEドラゴンをタップした。く、ひょっとしたら、堂林さんもこのターンで決めにきたか?
「イニシAドラゴンの効果発動う。数字を一つ選び、自分はそのコストのカードを好きなだけデッキの下に置いてもよいー。その後、置いた分カードを引き、シャッフルし、引いた数-1枚の場のカードを、タップ状態かアンタップ状態にすることができるう。更に、その時カードを3枚以上引いた場合、場の0コストのカードを一枚裏返しにできるう!」
ん、なんか効果の説明が長かった気がするけど、ひょっとして強い効果か!
「私はあ、手札にある三枚の1コストカードをデッキの下に置くう。そうすることで、カードを3枚引き、デッキをシャッフルした後、おしEドラゴンをアンタップし、念のためマグマアローをタップさせるう。そしてその後、便乗戦士チューンを裏返しにするうー!」
ここで俺のマグマアローがタップされ、更にチューンが裏返しにされてしまった。これじゃあチューンの分の+1ゾーンの効果も、発揮されないぞ!
「更にスタートドラゴンの効果を今発動。手札を入れ替えて、+1ゾーンに移動させるう!」
く、こうして少しずつおされるのも厄介だ。けどこっちはもうこのままいくしかない。バトルだ!
「ここでマグマアローのバトル発動。イニシAドラゴンとバトルだ!」
「マグマー!」
「イニシー!」
人型戦士とかっこいいドラゴンのバトル映像が生まれる。けど、パワーはマグマアローが上。よって勝利時効果も発動させてもらうぞ!
「マグマアローが勝って、+1ゾーンに移動。そして、マグマアローの勝利時効果、自分のカードを二枚までアンタップする。俺がアンタップするのは、マグマアローとサンガス。これでカウントタイムだ!」
「私の場には、イニシAドラゴンのジェム4。おしEドラゴンのジェム3。そして+1ゾーンに一枚あって、合計8よ」
「俺の場にはマグマアローの4。サンガスの3。そして+1ゾーンのカード二枚を合わせて、合計9だ!」
「ふう、危ないところだったわ。けど、次で決めるう。ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
ここで引いたカードは、二枚目のマグマアローだった。
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は赤い拳骨マグマアローを場に出す!」
「私はカンDドラゴンをセレクトオ。そして効果発動う。このカードが場に出た時、手札の同数コストのカードを好きな数デッキの下に置き、その枚数カードを引く。その引いたカードの中に、デッキ下に置いたカードのコストと同数のコストの黄色クリーチャーがいれば、そのカードを好きなだけ、効果を無効化して場に出すことができるうー!」
「な、なんだってえ!」
黄凛のワンチャンRZドラゴンみたいなのが出てきたぞ。しかも、コストは4。ジェム5の超大型カードだ!
「私はコスト1のカードを四枚デッキの下に置く。これで、四枚ドロー。そしてコスト1のカードが、なんですってえ、一枚もないー!」
「よし、相手は自爆したあ!」
「今だよ、赤輝、決めちゃって!」
ラーレの応援が入る。これで俺の、勝ちだー!
「マグマアローでスタートドラゴンとバトルだ!」
「マグマー!」
「スタートー!」
このバトルで勝って、相手の+1ゾーンのカードを減らすぞ!
「マグマアローの効果発動。マグマアローとサンガスをアンタップさせる。ここでカウントタイム。マグマアロー二枚とサンガス、そして+1ゾーンのカードを合わせて、俺のジェム数は14だ!」
「私のジェムは、9。おのれ、おのれ赤輝いー!」
ひいっ。クラスメイトに鬼のような形相でにらまれてしまった!
「成仏してくれ、堂林さん!」
「こんなはずは、こんなはずはー!」
こうして、堂林さんの隣に立つビーバージェムーンが、俺が作った光の円の中に吸い込まれ、そのかわりにこの場にたくさんの人が急に現れる。そして堂林さんが力を失い、倒れた。
「よし、今回も赤輝の勝利!」
「堂林さん、大丈夫!」
喜ぶラーレを首につけたまま、俺は堂林さんを気にかける。
「ん、あれ。市舞、君?」
「よかった、正気に戻ったんだね、堂林さん!」
「私は、たしか、ビーバーにジェムカウントで勝って、その後は、うっ、頭が」
「少し休んでいるといい。それと、ジェムーン退治は俺に任せて。堂林さん、勇敢に戦ってくれてありがとう」
「ねえ、赤輝君。教えて。私はいったい、今までどうしてたというの?」
「うん。堂林さんは、ビーバージェムーンに操られていたんだ」
こうして、すぐにこの場の収拾をつけた俺は、堂林さんを見送りつつ、ビーバーに倒されていたせいで今この場に現れた、学校関係者以外の人達を校外へと送り届けることにした。
学校での対戦も終わり、ひと段落した後。俺は校門前で、学校に入ってくる大型トラックを見て、気になった。
「なんだ、この車」
「君、外は危ないよ。知っているだろう。怪物が今各地を暴れ回っているんだ。決して校外に出てはいけないよ」
トラックが止まって、中に乗っている人がそう言ってきた。俺はまず、疑問に思ったことを訊く。
「あの、あなた達はどこから来たんですか。怪物にはおそわれなかったんですか?」
「ああ、もちろん怪物とは出会ったよ。でも、倒してきた。俺達は怪物と戦う正義の味方、カード戦士隊なんだ。ここへは、皆を守りに来た」
なるほど。この人達がカード戦士隊か。母さんが言っていた。
「カード戦士隊。あなた達がそうなんですか。助かります」
「ん、俺達のことを知っていたのか。ん、よく見れば君、顔の長さが緑威隊長にそっくりだな」
俺、そこしか父さんに似なかったんだな。
「緑威は俺の父さんです」
「そうだったのか。それじゃあ、今まで君がここを守っていてくれたんだな。ありがとう。これからは、俺達が守るよ。安心したまえ」
「あの、父さんとは、知り合いで?」
「ああ。詳しい話は、車を停めてからにしよう。それじゃあ、また」
こうして、カード戦士隊は校内にトラックを停めに行った。
俺は、少し迷ってから、ラーレのジェムーンレーダー機能を信じて、トラックの方へと向かった。
やはり、榎森が言った通り、人が操られている戦いは、厳しかった。スターターデッキの強さが、俺を苦しめるのだ。また、赤色のカードを使う相手とも戦う時があった。
だが、俺はその全ての戦いに勝てた。たぶん、俺のデッキの方が強いカードがそろっているんだろう。父さんは、そんな強いデッキを俺にくれたのだ。これは、本当に感謝だ。
そして、大分時間が経ち、そろそろ日が暮れる頃。俺はたまたま小学校の近くに来ていたので、ついでとばかりに立ち寄ってみると、そこで見知った姿を二人分見つけた。
「正義の味方、人妻カード使い、青美!」
「同じく正義の味方、キューティーカード使い、黄凛!」
「二人はジャスティス!」
ジェムーン二体の前で、決めポーズをとっているうちの家族。うそみたいだろ。あの二人が俺の家族なんだぜ。
「何やってるんだー二人共ー!」
思わず叫ぶ俺の前で、二人とジェムーン二体の対戦が始まる。
そして。
「これで終わりよ。タカインウエーブフォース。相手は負ける!」
「これで終わり、ワンチャンRZジャスティスストライク。私は勝つ!」
「そんな効果ねえよ」
「二人共すごーい!」
俺とラーレが見守る中、母子そろって勝利したみたいだ。
「必殺、ブルービューティフルジェムシャイン!」
「必殺、イエローファインジェムシャイン!」
二人が決めポーズをしている間に、対戦相手のジェムーン二体が光の円に吸い込まれていく。そして、その場にはジェムーンがおそったのであろう、数人の人の姿が急に現れたのだった。
「あれ、ここは、どこだ?」
「俺は確か、怪物におそわれて、それで」
「皆さん、もう安心してください。皆さんをおそった怪物は、この私、正義の味方、人妻カード使い青美が倒しました!」
「同じく、正義の味方、キューティーカード使い黄凛も怪物を倒しました!」
「正義は勝ちました!」
二人が声をそろえて言うと、周囲から次第に、歓声と拍手が送られる。
「二人共、もっと普通にしていられないのか?」
俺はその中に勇気を出して入っていった。
「あら、赤輝。また会ったわね。どう、あれからジェムーン倒してる?」
母さんにそう言われ、仕方なくうなずく。
「うん。倒してるけど、二人は、一緒にいたんだ」
「ええ。丁度黄凛の学校の近くに寄ったから、見に来たの。そうしたら丁度敵が二人現れたから、親子の力で倒したところよ。ねー黄凛ー?」
「うんっ。あ、お兄のジェムーンはそのお姉さんなんだ。私のジェムーンはね、この子。シェトルだよ!」
黄凛が言う。そういえば、黄凛の横には、黄色髪の美少年がいるな。その子は、俺に頭を下げた。
「こんにちは。ボクは、ジェムーンのシェトルと言います。黄凛さんにはお世話になってます」
「ああ、うん。ジェムーンなら、仕方ないな。仕方ない」
シェトルは人形のようにきれいな子だけど、ラーレのように正の力をたくわえている途中なら、黄凛といることも仕方ないと思える。
「とにかく、黄凛もジェムーンを倒せるのか。なら、少し安心できるかな」
「うん。悪いやつは、この正義の味方、キューティーカード使い黄凛に任せて!」
「その名乗り、どうにかならないのか」
「だって、名乗らないともったいないでしょ?」
「黄凛はもったいないの意味をちゃんと学んだ方が良い」
「とにかく、黄凛が小学校を守っているなら、ここは安心ね。私達は、行っても良いかしら?」
母さんがここでそう言った。すると黄凛はうなずく。
「うん。皆今日は危ないから学校にずっといるみたいで、だからその間私がずっと守ってないといけないんだけど、夜になって眠くなるまでは、私、負けないよ!」
黄凛がそう言う。そうか、夜になったら眠くなってしまうな。それからは、危険じゃないか?
「じゃあ、黄凛一人じゃ危ないってことか?」
「大丈夫よ。もうすぐダーリンの会社からカード戦士隊が警護についてくれるから。きっとあと少しでここに到着してくれるわ」
「カード戦士隊?」
ここで新ワードがでてきたぞ。
「カード戦士隊っていうのは、ジェムカウントで戦う正義の集団よ。彼らが来てくれたおかげで、私は避難所だった市役所から離れることができたの。小学校だけじゃなくて、赤輝の学校にも来るはずよ」
「そんな人たちがいたのか」
それなら、かなり安心できるかもしれない。
「そっか。ならその人達が来てくれるまで、私、正義の味方としてがんばらなきゃ!」
黄凛が両拳を作る。
「うん。頼もしいよ、黄凛さん!」
シェトルが言う。
「そう。皆でがんばろー!」
ラーレが言う。
「イカイッカー!」
イカさんが言う。
「ええそうね。イカさん。それじゃあ、私はしばらくの間、黄凛と一緒にいるわ。やっぱり心配だから。その後は、また悪のジェムーン探しに戻るわね」
母さんが言う。俺はうなずいた。
「うん、わかった。じゃあ俺はもう行くよ。母さんも黄凛も、くれぐれも気をつけてね」
「大丈夫、だって正義は必ず勝つから!」
二人してそう言ったのが、少し不安だった。
気を取り直して、再びジェムーン探しを始める。
ジェムーンの数は、午前中に比べたらもうすっかり減った。今まで夢中になって倒していたんだから当然といえば当然だけど、こうも会わなくなると、少し肩透かしをくらっているように感じる。
「ラーレ、まだジェムーンの気配が感じられないか?」
「うん。どうやら、この辺にジェムーンはいないみたい。どうする、赤輝?」
「うーん。一度学校に戻るか、それとも活動範囲を広げるかのどっちかだよな。学校から遠ざかればそれだけ、何かあった時の対処が遅くなってしまう。それに、今からジェムーンを探す範囲を広げても、もう日が暮れるまでの時間は短い。うーん。よし、ラーレ。今日はジェムーン探しをここまでにしよう。学校に戻って、その後どうするかを決めるぞ」
「うん。全部赤輝の好きにしていいよ!」
「まあ、この地球に来たばかりのラーレが何するか決められるわけないしな」
「うん!」
すぐに戻ってきた、学校で。
「あ、赤輝、前から危険なジェムーンの気配を感じるよ!」
「なんだって、俺がいない間にそんなことになるなんて、皆が危ない、すぐかけつけないと!」
「そうだよ、すぐにかけつけて!」
自分の心とラーレに急かされ、急いで校舎内に入る。
すると、廊下で黒いオーラを放つビーバージェムーンをつれた女子生徒が、男子生徒と戦っているのを見つけた。
「イニシAドラゴンをセレクト。これで私の勝ちよ!」
「なんだって、そんな、うわー!」
丁度俺が来たところで、男子生徒が負け、相手が作った光の円に吸い込まれてしまう。
「く、遅かった。もう被害が出ている!」
「赤輝なら大丈夫。いつもみたいにやれば、問題ないよ!」
ラーレがそう励ましてくれるけど、ジェムーンに操られている様子の女子生徒は、両手を広げて高笑いし始めた。
「あっはっはっはっは。これで私の力が、更に高まる。もっとほしい、もっとよこせえ。強い力が、私を喜ばせる。きえーっけっけっけえ。きえーっけっけっけっけ!」
ちょっと、怖い。根鏡といい、操られた人は皆不気味テンションになるのか?
「しかしひるんではいられない。おい、君は堂林さんだな。劇的ビフォーアフターしているけど、勝負だ!」
俺がそう声をかけると、操られている堂林さんがグルッと体の向きを変えてこちらを見た。
「けっけっけ。次の相手は赤輝、お前だな。早く勝負を始めようじゃないか。そして私の糧となれえー!」
「早く、女らしさを全て失ってしまった堂林さんからジェムーンを引き離さないと。やってやるぞ。ジェムカウントの勝負、受けてたつ。そして、絶対悪のジェムーンの思い通りにはさせない!」
「何をごちゃごちゃ言っている。さあ、始めようか。私が勝利するゲームを!」
俺は怖い堂林さんになるべくひるまないようにしながら、テーブルの前に立った。
「対戦、よろしくお願いします!」
「対戦、よろしくお願いします。けーっけっけっけっけ!」
よし、対戦開始だ。まずはデッキをテーブルに置き、五枚ドローする。引きは、く、大変だ。0コストのカードがないぞ!
「ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
引いたカードは、赤い拳骨マグマアロー。く、これじゃない。これじゃあ1ターン目から動けないじゃないか!
ええと、こういう時はたしか。
「俺は、このターン場に出せるカードがない。だから、手札を二枚デッキの下に置いて、二枚ドローする!」
父さんから教えてもらった、こういう時の手段だ。手札に1、2、3コストのカードを一枚ずつ持って置き、二枚のカードをチェンジする。
「よし、0コストのカードがきた。次からは動けるぞ!」
「きえーっけっけっけ。けどこれで赤輝と私の場にあるカードの差は一枚分開いたあ。これはなかなか覆すことができない大きな差だぞお。これでますます私の勝ちはゆらがないだろうな。それ、私はスタートドラゴンをセレクトだあ!」
堂林さんは俺とは違いカードを場に出した。く、相手は黄色カードのデッキか。上手く効果を使われ続けられたらやっかいだぞ。
「スタートドラゴンの効果発動。手札にある同数コストカードを二枚デッキ下に置き、カードを二枚引く。その後デッキをシャッフルしてから、このカードを+1ゾーンへ移動させる。けえーっへっへっへ!」
「く、いきなりピンチだぞ」
これで俺と堂林さんのジェム差は、2。このままじゃまずいぞ、なんとかしないと!
「ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
引いたカードとかは、今は気にしていられない。なんとかして、堂林さんとの差をなくすんだ!
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は便乗戦士チューンを場に出す!」
「私はモクモクリュウをセレクトー!」
堂林さんがここで出したのは、やはり1コストのカードだった。
「モクモクリュウの効果発動。場に出た時、手札の同数コスト二枚をデッキ下に置き、2枚引く。その後デッキをシャッフルし、自分の場にあるカード2枚までをアンタップするう。私はこの効果で、スタートドラゴンをアンタップう!」
スタートドラゴンがアンタップされる。なんて効果だ。このカードをまた終盤で出されでもしたら、俺は負けてしまうかもしれないぞ。
「赤輝、戦いを恐れないで。手を伸ばさなければ、欲しいものは手に入らない。この戦いは必要なことなんだよ!」
「!」
ここで、ラーレに励まされる。俺は、ラーレを見て、思わず笑った。
「ああ、そうだな。ラーレの言う通りだ。勝利を求めて、全力を尽くす。それが、戦うってことなんだ。俺はがんばるぞ、ラーレ!」
「うん。大丈夫、赤輝は負けないよ!」
ラーレが一番近くでぴったり応援してくれる。ようし、全身に力が入る。これなら俺は、まだ戦える!
「カウントタイム、ヒールタイム、ドロータイム。ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
例え相手がちょっとくらい有利だからって、それでもう戦意を失ったりはしない!
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺はネオファイターツーロを場に出す!」
「私はあ、おしEドラゴンをセレクトー。効果発動。手札から1、2コストのカードをデッキ下に置き、二枚引いてからシャッフルし、その後3枚引いて、手札二枚をデッキの上か下に送るう!」
なんて効果だ。これで、堂林さんは手札を充実させたぞ。けど、こっちだってここからだ!
「ネオファイターツーロの効果はバトルだ。スタートドラゴンとバトル!」
「ツーロー!」
「スタートー!」
ツーロとスタートドラゴンの立体映像がバトルする。けど、パワーはこちらが上。だからバトルもこちらの勝ちだ!
「バトルに勝ったツーロは+1ゾーンへ移動。そしてチューンの効果でチューンも+1ゾーンへ移動だ!」
「ぐうう、スタートドラゴンはノーマルゾーンに戻り、更に裏返しにされるう。だが次はこうはいかないい」
「こっちだって、負ける気はない。これで、カウントタイム、ヒールタイムだ!」
今、こちらの場には2枚のカード。相手の場には3枚のカードがある。そして、ここでアンタップ状態のカードはお互い2枚。ここからひっくり返すぞ!
「ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺はネオファイターサンガスを場に出す!」
「私は戦Eドラゴンをセレクトー!」
お互いに2コストクリーチャーを出す。これは、どうなる!
「戦Eドラゴンの効果発動う。手札の同コストのカード二枚をデッキ下に送り、二枚ドローし、シャッフル。その後、このカードのパワーを+10し、バトルするう!」
「こっちだって、サンガスでバトルだ!」
「サンガー!」
「タタカE!」
サンガスと戦Eドラゴンの立体映像がバトルする。ああ、サンガスが負けた!
「勝った戦Eドラゴンはー、+1ゾーンへ移動ー」
「負けたサンガスはタップする」
ここでの有利は譲ったけど、本命は次のターンだ。そう意識を切り替えよう。
「カウントタイム、ヒールタイム。ドロータイム。ドロー!」
「ドロー!」
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は赤い拳骨マグマアローを場に出す!」
「私はあ、イニシAドラゴンをセレクトオオ!」
俺は場のカード3枚をタップ。堂林さんはスタートドラゴン、モクモクリュウ、おしEドラゴンをタップした。く、ひょっとしたら、堂林さんもこのターンで決めにきたか?
「イニシAドラゴンの効果発動う。数字を一つ選び、自分はそのコストのカードを好きなだけデッキの下に置いてもよいー。その後、置いた分カードを引き、シャッフルし、引いた数-1枚の場のカードを、タップ状態かアンタップ状態にすることができるう。更に、その時カードを3枚以上引いた場合、場の0コストのカードを一枚裏返しにできるう!」
ん、なんか効果の説明が長かった気がするけど、ひょっとして強い効果か!
「私はあ、手札にある三枚の1コストカードをデッキの下に置くう。そうすることで、カードを3枚引き、デッキをシャッフルした後、おしEドラゴンをアンタップし、念のためマグマアローをタップさせるう。そしてその後、便乗戦士チューンを裏返しにするうー!」
ここで俺のマグマアローがタップされ、更にチューンが裏返しにされてしまった。これじゃあチューンの分の+1ゾーンの効果も、発揮されないぞ!
「更にスタートドラゴンの効果を今発動。手札を入れ替えて、+1ゾーンに移動させるう!」
く、こうして少しずつおされるのも厄介だ。けどこっちはもうこのままいくしかない。バトルだ!
「ここでマグマアローのバトル発動。イニシAドラゴンとバトルだ!」
「マグマー!」
「イニシー!」
人型戦士とかっこいいドラゴンのバトル映像が生まれる。けど、パワーはマグマアローが上。よって勝利時効果も発動させてもらうぞ!
「マグマアローが勝って、+1ゾーンに移動。そして、マグマアローの勝利時効果、自分のカードを二枚までアンタップする。俺がアンタップするのは、マグマアローとサンガス。これでカウントタイムだ!」
「私の場には、イニシAドラゴンのジェム4。おしEドラゴンのジェム3。そして+1ゾーンに一枚あって、合計8よ」
「俺の場にはマグマアローの4。サンガスの3。そして+1ゾーンのカード二枚を合わせて、合計9だ!」
「ふう、危ないところだったわ。けど、次で決めるう。ドロータイム、ドロー!」
「ドロータイム、ドロー!」
ここで引いたカードは、二枚目のマグマアローだった。
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は赤い拳骨マグマアローを場に出す!」
「私はカンDドラゴンをセレクトオ。そして効果発動う。このカードが場に出た時、手札の同数コストのカードを好きな数デッキの下に置き、その枚数カードを引く。その引いたカードの中に、デッキ下に置いたカードのコストと同数のコストの黄色クリーチャーがいれば、そのカードを好きなだけ、効果を無効化して場に出すことができるうー!」
「な、なんだってえ!」
黄凛のワンチャンRZドラゴンみたいなのが出てきたぞ。しかも、コストは4。ジェム5の超大型カードだ!
「私はコスト1のカードを四枚デッキの下に置く。これで、四枚ドロー。そしてコスト1のカードが、なんですってえ、一枚もないー!」
「よし、相手は自爆したあ!」
「今だよ、赤輝、決めちゃって!」
ラーレの応援が入る。これで俺の、勝ちだー!
「マグマアローでスタートドラゴンとバトルだ!」
「マグマー!」
「スタートー!」
このバトルで勝って、相手の+1ゾーンのカードを減らすぞ!
「マグマアローの効果発動。マグマアローとサンガスをアンタップさせる。ここでカウントタイム。マグマアロー二枚とサンガス、そして+1ゾーンのカードを合わせて、俺のジェム数は14だ!」
「私のジェムは、9。おのれ、おのれ赤輝いー!」
ひいっ。クラスメイトに鬼のような形相でにらまれてしまった!
「成仏してくれ、堂林さん!」
「こんなはずは、こんなはずはー!」
こうして、堂林さんの隣に立つビーバージェムーンが、俺が作った光の円の中に吸い込まれ、そのかわりにこの場にたくさんの人が急に現れる。そして堂林さんが力を失い、倒れた。
「よし、今回も赤輝の勝利!」
「堂林さん、大丈夫!」
喜ぶラーレを首につけたまま、俺は堂林さんを気にかける。
「ん、あれ。市舞、君?」
「よかった、正気に戻ったんだね、堂林さん!」
「私は、たしか、ビーバーにジェムカウントで勝って、その後は、うっ、頭が」
「少し休んでいるといい。それと、ジェムーン退治は俺に任せて。堂林さん、勇敢に戦ってくれてありがとう」
「ねえ、赤輝君。教えて。私はいったい、今までどうしてたというの?」
「うん。堂林さんは、ビーバージェムーンに操られていたんだ」
こうして、すぐにこの場の収拾をつけた俺は、堂林さんを見送りつつ、ビーバーに倒されていたせいで今この場に現れた、学校関係者以外の人達を校外へと送り届けることにした。
学校での対戦も終わり、ひと段落した後。俺は校門前で、学校に入ってくる大型トラックを見て、気になった。
「なんだ、この車」
「君、外は危ないよ。知っているだろう。怪物が今各地を暴れ回っているんだ。決して校外に出てはいけないよ」
トラックが止まって、中に乗っている人がそう言ってきた。俺はまず、疑問に思ったことを訊く。
「あの、あなた達はどこから来たんですか。怪物にはおそわれなかったんですか?」
「ああ、もちろん怪物とは出会ったよ。でも、倒してきた。俺達は怪物と戦う正義の味方、カード戦士隊なんだ。ここへは、皆を守りに来た」
なるほど。この人達がカード戦士隊か。母さんが言っていた。
「カード戦士隊。あなた達がそうなんですか。助かります」
「ん、俺達のことを知っていたのか。ん、よく見れば君、顔の長さが緑威隊長にそっくりだな」
俺、そこしか父さんに似なかったんだな。
「緑威は俺の父さんです」
「そうだったのか。それじゃあ、今まで君がここを守っていてくれたんだな。ありがとう。これからは、俺達が守るよ。安心したまえ」
「あの、父さんとは、知り合いで?」
「ああ。詳しい話は、車を停めてからにしよう。それじゃあ、また」
こうして、カード戦士隊は校内にトラックを停めに行った。
俺は、少し迷ってから、ラーレのジェムーンレーダー機能を信じて、トラックの方へと向かった。
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