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3敵と対戦
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翌朝。俺は自転車をこいで学校に向かっていた。
一応父さんに言われた通り、渡されたカードを持っている。折角のお守りなんだ。ご利益があると思おう。
今日も天気が良い。いつも通り、気持ちの良い朝だ。
いつものように学校までもうすぐという所まで来る。そしてそこで、俺はとっさに急ブレーキをすることになった。
いつも通りの、朝だよな?
通学路の先には、見慣れぬ異形の姿があった。もはや怪物といっていいだろう。紙のように白い肌の人型の化け物が、黒い衣装とまがまがしい黒いオーラをまとって俺の目の前を歩いていた。
「これは新手のファッションか?」
今見ている存在は、なんかのドッキリみたいな役であそこにいるのだと思いたい。幸い怪物は一人。ここはUターンして避けよう。
「ウアー、アアアー!」
その時、俺の自転車が突然動かなくなった。
「何、うわ!」
俺の体が自転車から落ちる。そしてゆっくり、怪物の方へと引き込まれていく。まるで、体が強力な掃除機に吸われているみたいだ。
怪物の方を見ると、両手をこちらに向けて近づいてくる。幸い、相手が近づく速さも、俺が引き寄せられる速さも遅い。今の内に、何か抵抗はできるとみた。
しかしいったい何をすればいいというのか。今の俺には、父さんに渡されたお守りカードを手元に出すくらいしかできないぞ。
「えい、カードよ、俺を守れ!」
その時、手にしたカードが光った。
「えー!」
ある程度驚いた後、お守りの効果が効いているのか確かめるため怪物を見る。すると、怪物の前に俺と同じカード、ジェムカウントのデッキが浮いていた。
「えー!」
再び驚く俺。そうしている内に、俺と怪物との間に突然テーブルが現れる。
「えー!」
えーい、何回驚くんだ俺。これじゃあ驚きすぎて日が暮れてしまうぞ。
「もしかして、ここで怪物とカードバトルをやれってことか!」
こくん。と、怪物にうなずかれてしまった。そうか、カードバトルをするのか。よしわかった。ってわかるか!
「父さん、どうなってるんだよ!」
と言いつつ、手元のデッキの順番を確認する。ええと、ひとまず昨日父さんに勝った四枚のカードを一番上に仕組んでおいて、そのまま対戦すれば勝てるな。本当に対戦するのかまだ半信半疑だけども!
「ええと、マグマアロー、マグマアローを一番上にやってー、あ!」
そうこうしていると、勝手にデッキが俺の手から離れ、空中で超不思議現象シャッフルを決めてから、ひとりでにテーブルの上に置かれた。
もしかして、今のはズルはいけないよみたいな強制シャッフルですか?
そして怪物の方のデッキも、空中シャッフルされ、テーブルの上に置かれる。
「これって、このまま対戦しろってこと?」
思わず言うと、怪物はこくんとうなずいてくれた。
うおー、よくわかんねえぞ。何がどうなってるんだー!
「とにかく、勝負!」
俺はテーブルに近づき、デッキからカードを五枚引いた。すると相手のデッキからカードが五枚空中に浮き、まるで手札とてもいわんばかりに滞空する。そして肝心の怪物は、手札の前から動かない。もしかしたら、対戦相手として定位置にいるのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。
これは、とんでもないカードバトルが始まってしまったぞ。
「対戦、よろしくお願いします!」
「うがあああ!」
よし、たぶん意思疎通はできた!
「ドロータイム、ドロー、ってえー!」
意を決してデッキに手を伸ばした時、突然デッキが赤く光り出した。なんだこれ、一体何がどうなってるんだ?
カードを一枚引く。すると、デッキの光は消えた。そして、引いたカードはネオファイターツーロだった。
落ち着け、俺。とにかく、対戦に集中しよう。引いたのはコスト1のカードだが、大丈夫。もう手札には0コストがちゃんとある。
「アレンジタイム。って、なんだー!」
気を落ち着かせようとしたのもつかの間。なんと今度は、俺の手札のカードが全て光り始めた。六枚のカードがオーラを放つようにピカッピカしている。どうしてこうなった。
「ううう、あああ!」
ひいい、怪物も声を出しているぞ。なんでだー!
「ええと、とりあえず、出すカードは選ぶけど」
俺がカードを選んでいる内に、相手の手札の一枚が勝手に動き、デッキの横にまで移動
した。あの自動スタンバイしているカードが、相手が出すカードっていうことか?
と、とにかく、今はアレンジタイムだ!
「お互いに場に出すカードが決まったなら、場に出す。3、2、1、セレクト。俺は燃えるセコンドカムをセレクト!」
「ああああ!」
俺はカムを場に出す。すると相手の方でも、自動スタンバイしていたカードが勝手にテーブルに置かれ、場に出た。
そして、次の瞬間。
「カムー!」
「ギギ、ギギギ」
突然テーブルの上に、カードの絵と同じ感じの小さいやつが現れてしまった。
「な、なんだこれは!」
当然驚く俺。
「カム!」
するとカムは俺の方を見ると、ガッツポーズをする。なんだ、どういうことなんだ、これ。
試しに触ろうとしてみる。だが、俺の手はカムをすり抜けた。
「立体映像、リアルカードバトル?」
全く聞いたことはないが、つまりこれは、カードバトルの演出?
そう思っていると、俺と怪物が出したカードから、一個ずつ光の玉が現れ、宙を舞う。俺の光は赤色で、怪物の光は紫色だ。
「これは、ジェム数か。ということは、もうカウントタイムで、それももう終了した?」
ふとデッキを見てみると、俺のデッキがまた赤く光り出した。そして怪物の方は、もうドローしている。相手は相変わらず全自動だけど、本当に不思議なことが起こってるな、今。
要するに、うーん。こういうことか。
今俺、怪物とカードバトル中。対戦中はテーブルとか光とか立体映像が出て、何かふしぎな力がバトルを演出している。
どういうことだ。わけわからん。
「ええい、とにかくドロー!」
現実になんでを投げかけても仕方ない。とにかく今は、目先の勝利だけを追い求めろ!
引いたカードはネオファイターワウンだった。今は手札にコスト3のカードがないから、それが欲しいんだけど。まあ仕方ない。とにかく4ターン目以内に3コストを引けばいいのだ。まだ可能性はある。
「アレンジタイム。俺はこいつを選ぶ」
「ああ、ああーっ」
「3、2、1、セレクト。俺はネオファイターツーロを召喚!」
「ツー!」
「ギャッ、ギッ」
ここでコストを払い、カムをタップするのも忘れない。そして俺の目の前に、新しくツーロの立体映像が現れた。
相手の場にも、新しいクリーチャーが現れる。0コストのクリーチャーは、自動でタップされたみたいだ。
「よし、それじゃあ、ん?」
俺、ここでふとテーブルの手元側を気にする。そこには、小さい文字で短い文が書かれてあった。
0コスト。クリーチャー、バトルロボイーズ。パワー10。ジェム1。効果無し。
1コスト。クリーチャー、バトルロボニーブ。パワー20。ジェム2。効果無し。
これ、もしかして相手のカードの説明?
「ああああ」
怪物は喋れないみたいだから、このテーブルの機能はわかりやすくていいと思うけど、効果無しのカードってなんだ。それで勝てるのだろうか。いやいや、俺が勝てればそれで全て問題なしなんだけど。でも、ひょっとしたら後で何かどんでん返しを狙っているのかも。
突然のカードバトルといい、不気味なカード。本当に今、現実で何が起こっているんだ。
誰か説明してくれる人がいてくれれば非常に助かる。ぜひそんな展開を望む。
だが悩んでいても待っていてもこの状況が解決するとは思えない。怪物も待っているし、気を取り直して全力勝負続行だー!
「まずカムの効果発動。このカードの次に場に出したクリーチャーのパワーを+10する」
「カーム!」
カムが何かアクションを起こす。おそらく効果を使ったアピールだろう。気にせず進めよう。
「そしてツーロの効果、バトル。タップ状態のイーズとバトルだ!」
「ツーツー!」
「ギーギーギー」
立体映像のツーロとイーズがバトルを繰り広げる。イーズは三角形のビームを放ったが、ツーロが軽くかわして拳をぶちこんだ。
ダメージを受けたジェスチャーをするイーズ。そこでイーズのカードが裏返しになり、同時に立体映像のイーズが消えた。
「ツーロはバトルに勝ったから+1ゾーンに移動!」
ツーロを+1ゾーンへ。するとすぐに、ツーロのカードから赤い光の玉が三つ出て来て、宙を舞った。逆に相手のクリーチャーが発する光の玉の数は、ニーブの周囲を浮く2個だけだ。
やはりこの光は、ジェム数を表しているのだろう。すぐに光は消えて、かわりにタップ状態のカードが光った。
「ヒールタイム」
俺はカムをアンタップする。怪物のカードは、バトルに負けて裏返しにされたものが今タップ状態に変わったから、このターン払えるコストも1コスト分のみだ。 戦況は間違いなくこちらが有利。このまま気をぬかずにいこう。
「3ターン目、ドロー!」
引いたカードはムードメーカーコイヨ。2コストだ。ぐ、3コストはまだか。
「アレンジタイム。俺はこいつを選ぶ」
相手の次のカードも、すぐに場にスタンバイされる。なので、すぐにカードを場に出す。
「3、2、1、セレクト。俺はムードメーカーコイヨを召喚」
「あああー」
コイヨを出して、既に場にある二枚のカードをタップ。一方相手が出したカードは、バトルロボイーズ。二枚目だ。
コストは0だし、これでジェム差が開いた。このまま更に差をつけたいところだ。
「コイヨの効果発動。デッキの一番上を見て、コイヨよりコストが上ならパワー+10し、その後見たカードをデッキの一番上か下に戻す。だからデッキの一番上を見るぞ!」
「コイヨー!」
宣言通りデッキの一番上を確認し、ネオファイターサンガスだったので一番下に送る。2コストではダメなのだ。2コストでは。
「その後更に、このままパワー20でタップしているイーズとバトル!」
「コイヨー!」
「ギギギ、ギギギ」
コイヨとイーズがバトルする。相手のイーズは連戦だが、戦略上、相手のカードを一枚でも多く裏返しにした方が良い。容赦なく戦ってこそ勝利に近づけるってものだ。
相手のタップ状態のイーズが裏返しになる。俺はイーズを+1ゾーンに移動させた。
そこですぐに、コイヨのカードから四つの赤い光の玉、そしてツーロのカードから一つの光が出てくる。これで俺のジェム数は五だ。対して相手は、3。このままいけば圧勝だな。
頼む、圧勝で終わってくれ。これで勝ったからって何がどうなんだとも思うけど、負けたら未来の状況が悪化するなら、勝ちたい。そうなる根拠なんてなんにもないけど、とにかく勝ちたい。
さて、次のターンだ。俺はタップ状態のカードをアンタップさせる。
ヒールタイムを終えた今、俺の場にはジェム数が8ある。つまりあと2増やせば勝てるんだけど、そのためのカードは今手札にはない。
一方相手のジェム数は3で、払えるコストも2だけだから、たぶんこのターンでジェム数10以上にはならないだろう。けど、できればここで決めたい。早く勝利したい。
というわけで、頼むぞ俺のデッキ、いや、父さんからのお守り!
「ドロータイム、ドロー!」
引いたカードはマグマアローだった。昨日も見たコスト3のカード。やったーこれで俺の勝利は堅いぞ!
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は赤い拳骨マグマアローを召喚!」
「あああー」
ここで相手が出したカードは、バトルロボサール。2コストの効果無しクリーチャーだ。ということは、これで勝敗は決まりだ!
「バトル。マグマアローでバトルロボサールを攻撃だ」
「アロー!」
「ガガガ、ガガ」
立体映像のマグマアローが拳型のビームっぽいものを拳から出して、相手のサールは両手からブーメラン型ビームを連射する。しかし、マグマアローのパワーは30、サールのパワーは20。ここでサールは負けて、タップされる。
「マグマアローの効果発動。バトルに勝ったから、二枚アンタップ。俺はコイヨとツーロをアンタップする」
先程タップしたばかりの二枚をアンタップする。すると、それらのカードから、赤い光の玉が発せられた。
赤い光の玉は全部で12。それらが円を形作って、強い光を発する。
「カウントタイム。俺のジェム数は12。相手のジェム数は0。だからこの対戦、俺の勝ちだ!」
「ああああー!」
そこで、怪物が叫び出した。同時に場に出ていたカードの立体映像が、全て消える。
その後、怪物の様子が変化した。というより、俺がそろえた12の赤い光の玉が作った、温かい光を放つ光の円が、怪物の黒いオーラを吸い取り始めた。
「こ、これが、勝利の力か!」
「あー、ああー、あああー!」
叫ぶのをやめない怪物。だが怪物の動きはそれだけで、何もできずにいる。どうやら赤い光の力が、俺の勝利が効いているようだ!
「このまま成仏しろ、怪物!」
「あああー、ああー!」
怪物はもがき、苦しみ、最後まで叫び声をあげて。
「あー!」
次の瞬間。怪物は赤い髪と赤い翼をきらめかせる、天使のような美少女に変化した。服装はさっきの怪物姿の時とほぼ変わりないように見えるが、今の方が清潔そうに見える。
「ん?」
「ん?」
同時に首をかしげる俺と美少女。その時目の前のテーブルが消えて、同時に俺のデッキが勝手に浮き、俺の手の中に戻ってきた。美少女の方のデッキは、ふっと空中で消える。
「らー!」
そして美少女は、なぜか俺に向かって突進してきた。
「なんですか一体ー!」
「らー!」
心の準備もままならず、羽つき美少女による飛行しながらの、ダイレクトとびつきハグをもろにくらう。
う、軽くて柔らかくて良い匂いがする。そして、なんでこうなるの!
「誰か俺に、説明してくれー!」
「らー!」
俺は美少女に顔同士をすりすりこすられながら、半分混乱状態に陥った心の回復をひたすら待った。
数分後。いや、もしかしたら数十分後、へたすると一時間後くらいか?
とにかく俺は、なんとか我に返ることができたので、今自転車をこいでいる。
そして俺の首には、美少女の腕がまきついている。
そして美少女は、俺にだきつきながら空を飛んで、一緒に行動している。
うん。一緒に行動している。
「どういうことだー!」
「らー♪」
幸い美少女は今楽しそうだ。あの怪物と同一人物なのかはわからないが、危険な感じではない。
でも、いつこの美少女があの怪物に戻るかわからないし、そもそも彼女が何者なのかもわかっていない。翼あるし、言葉もろくに喋れないみたいだし、わからないことばかりだ。
一応たぶん、また怪物に戻られても、カードバトルで勝って再びこの姿に変身させられるのなら、今のところ問題は無いとは思うけど。
ていうか、本当父さんからもらったカードゲームには助けられた。これがなければ、俺は今頃どうなっていたことやら。
お守りとして、肌身離さず、持っていろ、か。
「ひょっとして、父さんこうなることを予め知っていたのか?」
「らー♪」
ふむ。
俺今ちょっと、無性に父さんと話がしたくなってきたぞ。
でも今は、学校だ。そっちに行くべきだ。
別に、今更いつも通り授業を受ける、なんてことは思っちゃいない。何せ、怪物と会った後だ。今はただの美少女だけど、こんな大問題ぶらさげて、普通に学生できるわけがない。
けど、同時にこうも思う。今日怪物におそわれたのは、本当に俺だけなのかって。
その不安は、ああやっぱりという確信にと変わった。
校舎の昇降口に、大きなカマキリとゴリラがいた。どちらも黒いオーラをまとっていて、自分の体より小さな昇降口を壊そうとしている。
「あいつら絶対危険だよな。よし、それじゃあカードゲームが通用するか確かめて、通用したら倒そう!」
「らー!」
「あの君、俺の味方ってことで合ってる?」
「らー!」
美少女は当然とばかりにうなずく。そうか、味方っぽいのか。なら、この際今は彼女のことを気にしないことにしよう!
「よし、それじゃあ一緒に行こう。おーい、怪物共ー。俺はここにいるぞ、一体ずつこっちにこーい!」
美少女を首につけたまま声を張り上げると、狙い通りカマキリとゴリラがこちらを見た。
よし、できればこのまま、カードバトルにつなげよう。
いつでも逃げられるように、自転車からは降りないけどな!
それから数分後。
「らー!」
「勝った」
俺が10以上そろえたジェムの光が、丸いゲートを作って負けたゴリラを吸い込む。
カマキリも先程、同じようにいなくなった。美少女の時とは起こる現象が違ったんだけど、まあ、これはこれで良しとしよう。怪物はいなくなったんだし。
美少女がまだ俺の首にしがみついている理由は、やっぱりまだわからないけど。でも、これは今の状況を考えれば割とどうでもいい謎なので、このまま放置しておく。
ところで、カマキリもゴリラも随分弱かったな。使ってきたのはどちらも紫色のカードだったけど、場に出した時に裏返しにすることによって、+1ゾーンに移動したり手札を一枚増やしたりと、微妙な効果ばかり使われた。
はっきり言って、効果を使わない方が強かった。できればこれからもこういう弱い相手と戦いたい。
ここで使っていた、やはり対戦になると同時に現れたテーブルが、今目の前で消える。
俺は自分のデッキをしまい、ほっと一息ついてから、そこで一度冷静に、今までずっと俺にくっついたまま離れない美少女を見た。
「ねえ、ところでさ。そろそろ離してくれない?」
「らー?」
「ほら、ずっとだきついてちゃおかしいでしょ。ていうかなんで俺といるの。どこから来たの?」
「らー、らー。らー!」
「うーん、離してくれないし、話もできないか。まあ、今はいいとしよう。早く教室の様子を確かめたいし。皆、無事だといいんだけど」
「らー!」
俺はこのまま、教室に行くことにした。
一応父さんに言われた通り、渡されたカードを持っている。折角のお守りなんだ。ご利益があると思おう。
今日も天気が良い。いつも通り、気持ちの良い朝だ。
いつものように学校までもうすぐという所まで来る。そしてそこで、俺はとっさに急ブレーキをすることになった。
いつも通りの、朝だよな?
通学路の先には、見慣れぬ異形の姿があった。もはや怪物といっていいだろう。紙のように白い肌の人型の化け物が、黒い衣装とまがまがしい黒いオーラをまとって俺の目の前を歩いていた。
「これは新手のファッションか?」
今見ている存在は、なんかのドッキリみたいな役であそこにいるのだと思いたい。幸い怪物は一人。ここはUターンして避けよう。
「ウアー、アアアー!」
その時、俺の自転車が突然動かなくなった。
「何、うわ!」
俺の体が自転車から落ちる。そしてゆっくり、怪物の方へと引き込まれていく。まるで、体が強力な掃除機に吸われているみたいだ。
怪物の方を見ると、両手をこちらに向けて近づいてくる。幸い、相手が近づく速さも、俺が引き寄せられる速さも遅い。今の内に、何か抵抗はできるとみた。
しかしいったい何をすればいいというのか。今の俺には、父さんに渡されたお守りカードを手元に出すくらいしかできないぞ。
「えい、カードよ、俺を守れ!」
その時、手にしたカードが光った。
「えー!」
ある程度驚いた後、お守りの効果が効いているのか確かめるため怪物を見る。すると、怪物の前に俺と同じカード、ジェムカウントのデッキが浮いていた。
「えー!」
再び驚く俺。そうしている内に、俺と怪物との間に突然テーブルが現れる。
「えー!」
えーい、何回驚くんだ俺。これじゃあ驚きすぎて日が暮れてしまうぞ。
「もしかして、ここで怪物とカードバトルをやれってことか!」
こくん。と、怪物にうなずかれてしまった。そうか、カードバトルをするのか。よしわかった。ってわかるか!
「父さん、どうなってるんだよ!」
と言いつつ、手元のデッキの順番を確認する。ええと、ひとまず昨日父さんに勝った四枚のカードを一番上に仕組んでおいて、そのまま対戦すれば勝てるな。本当に対戦するのかまだ半信半疑だけども!
「ええと、マグマアロー、マグマアローを一番上にやってー、あ!」
そうこうしていると、勝手にデッキが俺の手から離れ、空中で超不思議現象シャッフルを決めてから、ひとりでにテーブルの上に置かれた。
もしかして、今のはズルはいけないよみたいな強制シャッフルですか?
そして怪物の方のデッキも、空中シャッフルされ、テーブルの上に置かれる。
「これって、このまま対戦しろってこと?」
思わず言うと、怪物はこくんとうなずいてくれた。
うおー、よくわかんねえぞ。何がどうなってるんだー!
「とにかく、勝負!」
俺はテーブルに近づき、デッキからカードを五枚引いた。すると相手のデッキからカードが五枚空中に浮き、まるで手札とてもいわんばかりに滞空する。そして肝心の怪物は、手札の前から動かない。もしかしたら、対戦相手として定位置にいるのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。
これは、とんでもないカードバトルが始まってしまったぞ。
「対戦、よろしくお願いします!」
「うがあああ!」
よし、たぶん意思疎通はできた!
「ドロータイム、ドロー、ってえー!」
意を決してデッキに手を伸ばした時、突然デッキが赤く光り出した。なんだこれ、一体何がどうなってるんだ?
カードを一枚引く。すると、デッキの光は消えた。そして、引いたカードはネオファイターツーロだった。
落ち着け、俺。とにかく、対戦に集中しよう。引いたのはコスト1のカードだが、大丈夫。もう手札には0コストがちゃんとある。
「アレンジタイム。って、なんだー!」
気を落ち着かせようとしたのもつかの間。なんと今度は、俺の手札のカードが全て光り始めた。六枚のカードがオーラを放つようにピカッピカしている。どうしてこうなった。
「ううう、あああ!」
ひいい、怪物も声を出しているぞ。なんでだー!
「ええと、とりあえず、出すカードは選ぶけど」
俺がカードを選んでいる内に、相手の手札の一枚が勝手に動き、デッキの横にまで移動
した。あの自動スタンバイしているカードが、相手が出すカードっていうことか?
と、とにかく、今はアレンジタイムだ!
「お互いに場に出すカードが決まったなら、場に出す。3、2、1、セレクト。俺は燃えるセコンドカムをセレクト!」
「ああああ!」
俺はカムを場に出す。すると相手の方でも、自動スタンバイしていたカードが勝手にテーブルに置かれ、場に出た。
そして、次の瞬間。
「カムー!」
「ギギ、ギギギ」
突然テーブルの上に、カードの絵と同じ感じの小さいやつが現れてしまった。
「な、なんだこれは!」
当然驚く俺。
「カム!」
するとカムは俺の方を見ると、ガッツポーズをする。なんだ、どういうことなんだ、これ。
試しに触ろうとしてみる。だが、俺の手はカムをすり抜けた。
「立体映像、リアルカードバトル?」
全く聞いたことはないが、つまりこれは、カードバトルの演出?
そう思っていると、俺と怪物が出したカードから、一個ずつ光の玉が現れ、宙を舞う。俺の光は赤色で、怪物の光は紫色だ。
「これは、ジェム数か。ということは、もうカウントタイムで、それももう終了した?」
ふとデッキを見てみると、俺のデッキがまた赤く光り出した。そして怪物の方は、もうドローしている。相手は相変わらず全自動だけど、本当に不思議なことが起こってるな、今。
要するに、うーん。こういうことか。
今俺、怪物とカードバトル中。対戦中はテーブルとか光とか立体映像が出て、何かふしぎな力がバトルを演出している。
どういうことだ。わけわからん。
「ええい、とにかくドロー!」
現実になんでを投げかけても仕方ない。とにかく今は、目先の勝利だけを追い求めろ!
引いたカードはネオファイターワウンだった。今は手札にコスト3のカードがないから、それが欲しいんだけど。まあ仕方ない。とにかく4ターン目以内に3コストを引けばいいのだ。まだ可能性はある。
「アレンジタイム。俺はこいつを選ぶ」
「ああ、ああーっ」
「3、2、1、セレクト。俺はネオファイターツーロを召喚!」
「ツー!」
「ギャッ、ギッ」
ここでコストを払い、カムをタップするのも忘れない。そして俺の目の前に、新しくツーロの立体映像が現れた。
相手の場にも、新しいクリーチャーが現れる。0コストのクリーチャーは、自動でタップされたみたいだ。
「よし、それじゃあ、ん?」
俺、ここでふとテーブルの手元側を気にする。そこには、小さい文字で短い文が書かれてあった。
0コスト。クリーチャー、バトルロボイーズ。パワー10。ジェム1。効果無し。
1コスト。クリーチャー、バトルロボニーブ。パワー20。ジェム2。効果無し。
これ、もしかして相手のカードの説明?
「ああああ」
怪物は喋れないみたいだから、このテーブルの機能はわかりやすくていいと思うけど、効果無しのカードってなんだ。それで勝てるのだろうか。いやいや、俺が勝てればそれで全て問題なしなんだけど。でも、ひょっとしたら後で何かどんでん返しを狙っているのかも。
突然のカードバトルといい、不気味なカード。本当に今、現実で何が起こっているんだ。
誰か説明してくれる人がいてくれれば非常に助かる。ぜひそんな展開を望む。
だが悩んでいても待っていてもこの状況が解決するとは思えない。怪物も待っているし、気を取り直して全力勝負続行だー!
「まずカムの効果発動。このカードの次に場に出したクリーチャーのパワーを+10する」
「カーム!」
カムが何かアクションを起こす。おそらく効果を使ったアピールだろう。気にせず進めよう。
「そしてツーロの効果、バトル。タップ状態のイーズとバトルだ!」
「ツーツー!」
「ギーギーギー」
立体映像のツーロとイーズがバトルを繰り広げる。イーズは三角形のビームを放ったが、ツーロが軽くかわして拳をぶちこんだ。
ダメージを受けたジェスチャーをするイーズ。そこでイーズのカードが裏返しになり、同時に立体映像のイーズが消えた。
「ツーロはバトルに勝ったから+1ゾーンに移動!」
ツーロを+1ゾーンへ。するとすぐに、ツーロのカードから赤い光の玉が三つ出て来て、宙を舞った。逆に相手のクリーチャーが発する光の玉の数は、ニーブの周囲を浮く2個だけだ。
やはりこの光は、ジェム数を表しているのだろう。すぐに光は消えて、かわりにタップ状態のカードが光った。
「ヒールタイム」
俺はカムをアンタップする。怪物のカードは、バトルに負けて裏返しにされたものが今タップ状態に変わったから、このターン払えるコストも1コスト分のみだ。 戦況は間違いなくこちらが有利。このまま気をぬかずにいこう。
「3ターン目、ドロー!」
引いたカードはムードメーカーコイヨ。2コストだ。ぐ、3コストはまだか。
「アレンジタイム。俺はこいつを選ぶ」
相手の次のカードも、すぐに場にスタンバイされる。なので、すぐにカードを場に出す。
「3、2、1、セレクト。俺はムードメーカーコイヨを召喚」
「あああー」
コイヨを出して、既に場にある二枚のカードをタップ。一方相手が出したカードは、バトルロボイーズ。二枚目だ。
コストは0だし、これでジェム差が開いた。このまま更に差をつけたいところだ。
「コイヨの効果発動。デッキの一番上を見て、コイヨよりコストが上ならパワー+10し、その後見たカードをデッキの一番上か下に戻す。だからデッキの一番上を見るぞ!」
「コイヨー!」
宣言通りデッキの一番上を確認し、ネオファイターサンガスだったので一番下に送る。2コストではダメなのだ。2コストでは。
「その後更に、このままパワー20でタップしているイーズとバトル!」
「コイヨー!」
「ギギギ、ギギギ」
コイヨとイーズがバトルする。相手のイーズは連戦だが、戦略上、相手のカードを一枚でも多く裏返しにした方が良い。容赦なく戦ってこそ勝利に近づけるってものだ。
相手のタップ状態のイーズが裏返しになる。俺はイーズを+1ゾーンに移動させた。
そこですぐに、コイヨのカードから四つの赤い光の玉、そしてツーロのカードから一つの光が出てくる。これで俺のジェム数は五だ。対して相手は、3。このままいけば圧勝だな。
頼む、圧勝で終わってくれ。これで勝ったからって何がどうなんだとも思うけど、負けたら未来の状況が悪化するなら、勝ちたい。そうなる根拠なんてなんにもないけど、とにかく勝ちたい。
さて、次のターンだ。俺はタップ状態のカードをアンタップさせる。
ヒールタイムを終えた今、俺の場にはジェム数が8ある。つまりあと2増やせば勝てるんだけど、そのためのカードは今手札にはない。
一方相手のジェム数は3で、払えるコストも2だけだから、たぶんこのターンでジェム数10以上にはならないだろう。けど、できればここで決めたい。早く勝利したい。
というわけで、頼むぞ俺のデッキ、いや、父さんからのお守り!
「ドロータイム、ドロー!」
引いたカードはマグマアローだった。昨日も見たコスト3のカード。やったーこれで俺の勝利は堅いぞ!
「アレンジタイム。3、2、1、セレクト。俺は赤い拳骨マグマアローを召喚!」
「あああー」
ここで相手が出したカードは、バトルロボサール。2コストの効果無しクリーチャーだ。ということは、これで勝敗は決まりだ!
「バトル。マグマアローでバトルロボサールを攻撃だ」
「アロー!」
「ガガガ、ガガ」
立体映像のマグマアローが拳型のビームっぽいものを拳から出して、相手のサールは両手からブーメラン型ビームを連射する。しかし、マグマアローのパワーは30、サールのパワーは20。ここでサールは負けて、タップされる。
「マグマアローの効果発動。バトルに勝ったから、二枚アンタップ。俺はコイヨとツーロをアンタップする」
先程タップしたばかりの二枚をアンタップする。すると、それらのカードから、赤い光の玉が発せられた。
赤い光の玉は全部で12。それらが円を形作って、強い光を発する。
「カウントタイム。俺のジェム数は12。相手のジェム数は0。だからこの対戦、俺の勝ちだ!」
「ああああー!」
そこで、怪物が叫び出した。同時に場に出ていたカードの立体映像が、全て消える。
その後、怪物の様子が変化した。というより、俺がそろえた12の赤い光の玉が作った、温かい光を放つ光の円が、怪物の黒いオーラを吸い取り始めた。
「こ、これが、勝利の力か!」
「あー、ああー、あああー!」
叫ぶのをやめない怪物。だが怪物の動きはそれだけで、何もできずにいる。どうやら赤い光の力が、俺の勝利が効いているようだ!
「このまま成仏しろ、怪物!」
「あああー、ああー!」
怪物はもがき、苦しみ、最後まで叫び声をあげて。
「あー!」
次の瞬間。怪物は赤い髪と赤い翼をきらめかせる、天使のような美少女に変化した。服装はさっきの怪物姿の時とほぼ変わりないように見えるが、今の方が清潔そうに見える。
「ん?」
「ん?」
同時に首をかしげる俺と美少女。その時目の前のテーブルが消えて、同時に俺のデッキが勝手に浮き、俺の手の中に戻ってきた。美少女の方のデッキは、ふっと空中で消える。
「らー!」
そして美少女は、なぜか俺に向かって突進してきた。
「なんですか一体ー!」
「らー!」
心の準備もままならず、羽つき美少女による飛行しながらの、ダイレクトとびつきハグをもろにくらう。
う、軽くて柔らかくて良い匂いがする。そして、なんでこうなるの!
「誰か俺に、説明してくれー!」
「らー!」
俺は美少女に顔同士をすりすりこすられながら、半分混乱状態に陥った心の回復をひたすら待った。
数分後。いや、もしかしたら数十分後、へたすると一時間後くらいか?
とにかく俺は、なんとか我に返ることができたので、今自転車をこいでいる。
そして俺の首には、美少女の腕がまきついている。
そして美少女は、俺にだきつきながら空を飛んで、一緒に行動している。
うん。一緒に行動している。
「どういうことだー!」
「らー♪」
幸い美少女は今楽しそうだ。あの怪物と同一人物なのかはわからないが、危険な感じではない。
でも、いつこの美少女があの怪物に戻るかわからないし、そもそも彼女が何者なのかもわかっていない。翼あるし、言葉もろくに喋れないみたいだし、わからないことばかりだ。
一応たぶん、また怪物に戻られても、カードバトルで勝って再びこの姿に変身させられるのなら、今のところ問題は無いとは思うけど。
ていうか、本当父さんからもらったカードゲームには助けられた。これがなければ、俺は今頃どうなっていたことやら。
お守りとして、肌身離さず、持っていろ、か。
「ひょっとして、父さんこうなることを予め知っていたのか?」
「らー♪」
ふむ。
俺今ちょっと、無性に父さんと話がしたくなってきたぞ。
でも今は、学校だ。そっちに行くべきだ。
別に、今更いつも通り授業を受ける、なんてことは思っちゃいない。何せ、怪物と会った後だ。今はただの美少女だけど、こんな大問題ぶらさげて、普通に学生できるわけがない。
けど、同時にこうも思う。今日怪物におそわれたのは、本当に俺だけなのかって。
その不安は、ああやっぱりという確信にと変わった。
校舎の昇降口に、大きなカマキリとゴリラがいた。どちらも黒いオーラをまとっていて、自分の体より小さな昇降口を壊そうとしている。
「あいつら絶対危険だよな。よし、それじゃあカードゲームが通用するか確かめて、通用したら倒そう!」
「らー!」
「あの君、俺の味方ってことで合ってる?」
「らー!」
美少女は当然とばかりにうなずく。そうか、味方っぽいのか。なら、この際今は彼女のことを気にしないことにしよう!
「よし、それじゃあ一緒に行こう。おーい、怪物共ー。俺はここにいるぞ、一体ずつこっちにこーい!」
美少女を首につけたまま声を張り上げると、狙い通りカマキリとゴリラがこちらを見た。
よし、できればこのまま、カードバトルにつなげよう。
いつでも逃げられるように、自転車からは降りないけどな!
それから数分後。
「らー!」
「勝った」
俺が10以上そろえたジェムの光が、丸いゲートを作って負けたゴリラを吸い込む。
カマキリも先程、同じようにいなくなった。美少女の時とは起こる現象が違ったんだけど、まあ、これはこれで良しとしよう。怪物はいなくなったんだし。
美少女がまだ俺の首にしがみついている理由は、やっぱりまだわからないけど。でも、これは今の状況を考えれば割とどうでもいい謎なので、このまま放置しておく。
ところで、カマキリもゴリラも随分弱かったな。使ってきたのはどちらも紫色のカードだったけど、場に出した時に裏返しにすることによって、+1ゾーンに移動したり手札を一枚増やしたりと、微妙な効果ばかり使われた。
はっきり言って、効果を使わない方が強かった。できればこれからもこういう弱い相手と戦いたい。
ここで使っていた、やはり対戦になると同時に現れたテーブルが、今目の前で消える。
俺は自分のデッキをしまい、ほっと一息ついてから、そこで一度冷静に、今までずっと俺にくっついたまま離れない美少女を見た。
「ねえ、ところでさ。そろそろ離してくれない?」
「らー?」
「ほら、ずっとだきついてちゃおかしいでしょ。ていうかなんで俺といるの。どこから来たの?」
「らー、らー。らー!」
「うーん、離してくれないし、話もできないか。まあ、今はいいとしよう。早く教室の様子を確かめたいし。皆、無事だといいんだけど」
「らー!」
俺はこのまま、教室に行くことにした。
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