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一学期
GW〜お父さんの実家への帰省(1)
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「ふぁ~、よく寝たぁ~!」
「あら、莉子ちゃん、ようやく目が覚めたの?」
GWの渋滞を避けるため、張り切って、真夜中に車で出発したわたし達家族。
夜通し運転してくれたお父さん、ありがとう~!
窓の外はもう明るくなっていて、新緑が目にまぶしい。
そこには、山と川、畑に囲まれたのどかな田舎の風景が広がっていた。
「莉子、もうすぐお父さんの実家に着くよ。……莉子はすごく久しぶりだから、覚えているかな?」
「ホントね~! いつぶりかしら? 中々ご挨拶にも伺えなかったもの」
「う~ん。全然覚えてないかな。わたし、何歳の時だったの?」
「1番始めは、莉子が3歳の時だろうね。……家訓として、一応天童の名を持つ子どもは、3歳の時に一度本家へ顔を出す決まりがあるからね」
「そうそう、すごく立派な御殿へご挨拶に伺って、緊張したわね~!」
「ハハ、家は分家だから、莉子の顔みせは一瞬で済んだだろう? ソレに比べると、俺の実家はこじんまりしてるから、緊張なんてしないだろうしな」
「3歳の頃なんて、覚えてないよ!」
「しかも莉子ちゃん、本家の御殿ではずっと寝てたわ~。大人しくて良い子ね、と褒められたもの」
「本家はともかく、お父さんの実家では、元気に従兄妹達と走り回っていただろう? ……確かその後も、もう一度くらい帰省したハズだぞ?」
「莉子が小学生に上がってからは、帰省してないわよ? 転勤、転勤で毎年バタバタしていたもの」
「あ~そうなるか……。アクセスもめっちゃ悪いから、車で移動するしかなくて、そうすると帰省するのにも、ある程度日数がいるからなー」
家族で話しながらも、曲がりくねった細道をお父さんは上手に運転していく。
「お? 天狗の腰掛けだ! んん、イヤ、右手に大岩が見えてきただろう? あそこは昔から、そう呼ばれていてね。お父さんも子どもの頃、よくあの辺りで遊んだんだよ」
それから、懐かしそうに嬉しそうに、お父さんは子どもの頃のお話をたくさん語りながら、運転を続けている。
川で魚やザリガニ、色んな生き物を獲ったお話や野山を駆け回って子ども達だけの秘密基地を作ったお話、山で竹の子や山菜を取ったりアケビや栗拾いをしたお話等、どんどん思い出話が出てくる。
良いなぁ~、どれもすごく面白くて、楽しそうだ!
お父さん、意外と野生児だったみたいだ。
せっかくの機会だし、わたしもこのGW中、何かやってみたい!
何だかワクワクしてきたぞー!!
「お父さん! 楽しそうだね―! わたしも色々してみたい。何泊するんだっけ?」
「3泊4日するぞ。久しぶりに従姉弟達と会うんだし、たくさん遊べば良いさ」
「……にしても、あの大岩から、けっこう車で走ってるよね~。お父さんのお家はまだなの?」
お父さんの子どもの頃の行動範囲は、すごく広かったみたいだ。
「もう少し、……あのカーブを越えたら、見えてくるぞ!」
少し先の曲がった道を指し示すお父さん。
わたしはドキドキしながら、車がその道を曲がるのを待ち、そして、その先に現れたモノを見て、驚いた。
「うわっ! でっか?!」
そこには、大きくて立派なお屋敷が建っていた。
お父さん、全然こじんまりなんてしてないよ?!
「あら、莉子ちゃん、ようやく目が覚めたの?」
GWの渋滞を避けるため、張り切って、真夜中に車で出発したわたし達家族。
夜通し運転してくれたお父さん、ありがとう~!
窓の外はもう明るくなっていて、新緑が目にまぶしい。
そこには、山と川、畑に囲まれたのどかな田舎の風景が広がっていた。
「莉子、もうすぐお父さんの実家に着くよ。……莉子はすごく久しぶりだから、覚えているかな?」
「ホントね~! いつぶりかしら? 中々ご挨拶にも伺えなかったもの」
「う~ん。全然覚えてないかな。わたし、何歳の時だったの?」
「1番始めは、莉子が3歳の時だろうね。……家訓として、一応天童の名を持つ子どもは、3歳の時に一度本家へ顔を出す決まりがあるからね」
「そうそう、すごく立派な御殿へご挨拶に伺って、緊張したわね~!」
「ハハ、家は分家だから、莉子の顔みせは一瞬で済んだだろう? ソレに比べると、俺の実家はこじんまりしてるから、緊張なんてしないだろうしな」
「3歳の頃なんて、覚えてないよ!」
「しかも莉子ちゃん、本家の御殿ではずっと寝てたわ~。大人しくて良い子ね、と褒められたもの」
「本家はともかく、お父さんの実家では、元気に従兄妹達と走り回っていただろう? ……確かその後も、もう一度くらい帰省したハズだぞ?」
「莉子が小学生に上がってからは、帰省してないわよ? 転勤、転勤で毎年バタバタしていたもの」
「あ~そうなるか……。アクセスもめっちゃ悪いから、車で移動するしかなくて、そうすると帰省するのにも、ある程度日数がいるからなー」
家族で話しながらも、曲がりくねった細道をお父さんは上手に運転していく。
「お? 天狗の腰掛けだ! んん、イヤ、右手に大岩が見えてきただろう? あそこは昔から、そう呼ばれていてね。お父さんも子どもの頃、よくあの辺りで遊んだんだよ」
それから、懐かしそうに嬉しそうに、お父さんは子どもの頃のお話をたくさん語りながら、運転を続けている。
川で魚やザリガニ、色んな生き物を獲ったお話や野山を駆け回って子ども達だけの秘密基地を作ったお話、山で竹の子や山菜を取ったりアケビや栗拾いをしたお話等、どんどん思い出話が出てくる。
良いなぁ~、どれもすごく面白くて、楽しそうだ!
お父さん、意外と野生児だったみたいだ。
せっかくの機会だし、わたしもこのGW中、何かやってみたい!
何だかワクワクしてきたぞー!!
「お父さん! 楽しそうだね―! わたしも色々してみたい。何泊するんだっけ?」
「3泊4日するぞ。久しぶりに従姉弟達と会うんだし、たくさん遊べば良いさ」
「……にしても、あの大岩から、けっこう車で走ってるよね~。お父さんのお家はまだなの?」
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「もう少し、……あのカーブを越えたら、見えてくるぞ!」
少し先の曲がった道を指し示すお父さん。
わたしはドキドキしながら、車がその道を曲がるのを待ち、そして、その先に現れたモノを見て、驚いた。
「うわっ! でっか?!」
そこには、大きくて立派なお屋敷が建っていた。
お父さん、全然こじんまりなんてしてないよ?!
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