異世界へようこそ

ホタル

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プロローグ

告白

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『ハァ、疲れた』

部屋の掃除に、これほどまで神経を、使うなんて思いもよらなかった。
ダリルの部屋で、ミズキの目は遠くを見つめていた。

ふふふふふふ、思い出したくも無い・・・

バスルームには、ナメクジの様な生き物に

「ーーぎぃやぁゃゃゃ!」

キッチンには、ゴキ○リの様な生き物が、数匹!

「ーーぐぅうえぇぇぇぇ!」

そして、ベッドの下からは、胸、ボン!腰、キュッ!お尻、ボオオン!!
自分の巨乳を持ち上げる、妖艶なお姉様のエロ本に!

「ーーぎょうえぇぇぇぇ!って?エロ本?」

イヤッホーーーー!!

見てみたい、衝動にかられて、そっと、本を開こうとしたら、電光石火でダリルさんが部屋に入ってきて、本を奪って何処かに行ってしまった。

初のエロ本、チョットだけ見たかった。惜しい!あともうチョットで、中身を見れたのに、ぶつぶつと心の中で、文句を言った。
素早い行動にミズキは唖然とした。

更にあの巨体が瞬時にミズキの手からお宝・・・もといエロ本を取り上げる早業に関心した。


見たっていいじゃない!減るもんでも無いのに!!


ダリルが、部屋に帰ってくるとダリルはミズキみ向かって声を掛けた。
「この部屋はもういいから、少しキッチンで休んでいろ」

「でも、まだ、この部屋は始めたばかりで・・」
まだまだ部屋は汚いまま、2人で片付けた方が効率が良いのはダリルさんも分かっているはず。何を言っているのダリルさん。

「いいから、休んでこい、ここは、俺がするから、ミズキは、や・す・ん・で・ろ!!」
ダリルがは寝室からミズキを遠ざけたくて必死だった。
もうこれ以上ミズキに男のサガの毎夜のオカズを消し去りたかった。


「・・ハイ」
何だろう?この威圧感!逆らえない。逆らっちゃいけない様な感じがしてきた。
ダリルさんて、怒ると怖い人なのかもしれない。なんて思ってミズキは、少しだけ休憩をしてから、別の部屋の掃除にかかった。


「ふぅぅ、こんなもんかしら?」

何とか、人が住める状態になったのは、夕飯どきに差し掛かったところで、一階の居酒屋が始まリ、美味しい匂いが、この部屋にも漂ってきた。

ミズキは、鼻をくんくんさせると、調味料醤油が焼ける、しょっぱい匂い、肉が焼ける、香ばしい匂いがした。若干、焦げる匂いも混じっている。

若干の焦げの匂いは、胃袋を刺激するには十分だった。

ミズキの口の中は、唾液で溢れるくらいにいっぱいになっていた。

それはもう、堤防を決壊する勢いで!

『ごっきゅん』
ミズキの小さな喉が上下した。

何とか、堤防の決壊は免れた。

いつの間にか、ダリルは部屋の掃除を終わらせて、ミズキの、そんな姿を見ていた。ダリルは、クククと口もとの笑みを手で隠すように、肩を震わせて笑いを若干、堪えていた。

ただ、若干堪えただけなので、ミズキに直ぐばれた。

「笑わなくても、いいじゃ無いですか」
「すまん、すまん、俺も腹が減ったから、下の『どんぐり』にでも行こうか?」

「ハイ!!」と元気に返事したものの、よく考えたら、パジャマで、この世界に来てしまったから、お金がありません。もし運良く、お金を持ってきたとしても、日本円では、ただの紙くず同然、この世界で使える訳が無かった。

「・・でも、私・・お金がありません、ダリルさん、お金を貸して貰えませんか?今すぐとは言えませんが、必ず働いて返しますから、ダメですか?」
命を助けて貰った上に、これ以上、ダリルに迷惑が掛かるのは、ミズキとしても、心苦しい。
悲しい、日本人のサガ
いいえ、日本人の美徳でしょう。

「そんな事を気にしてたのか?」
「そんな事では、ありません。大事な事です。」
「そう言うもんかね~」
「そう言うもんです。あと、もう一つお願いが、あります」
「ん?何だ」
「部屋が見つかるまで、ここに居させて欲しいです。出来るだけ早く、出て行きますから、それまでの間だけ・・・」

ミズキが話せば、話すほど、ダリルの表情が曇ってきた。

「すぐに出て行きますから、キッチンの隅でもいいんです・・・・ヤッパリ、ダメですか?」
「・・・言いたい事はそれだけか?」
「・・・はい、今のところは・・そんなところです・・・」
ミズキの声は、小さく消え入りそうだった。

「そうか」
ダリルの眉間にも縦じわが、出来、徐々に深くなっていた。
不機嫌オーラが半端なく、ミズキの肌に突き刺さる。

ミズキは、生まれて初めて、沈黙が怖いと思った。

ダリルさん、「そうか」で終わりですか?ヤッパリ、出て行けですか?私は、正直、ダリルさんに縋り付きたいです。ダメでしょうか?
考えてみれば、この世界で、頼れるのは、ダリルさん、ただ1人だった。
ダリルに見捨てられたらと思うと、怖くて、不安で、どうしていいかわからない。

ミズキの目に、涙が溜まって、今にも溢れそうだった。

「ミズキ、ここに座れ」
ダリルは、ため息をついて、テーブルの椅子に座る様に、促した。
ミズキは、素直に頷いて、椅子にちょこんと座った。

「これから、大事な話をする、聞いてくれ」

ミズキは、涙を拭って、頷いた。
声を出して返事をしたら、我慢していた不安が溢れ、声を出して泣いてしまいそう。
必死に堪えて、頷いた。

「俺には、妹がいた」

「・・・・・・」

「俺がまだ、冒険者として駆け出しだった頃、両親が流行り病で、あっという間に亡くなってな・・その後、直ぐに、妹も、行方が分からなくなった、俺は、両親が死んだ事も、妹が行方不明になった事も、知らずにダンジョンの中で、のうのうと、お宝探しさ!情けない話だろ?妹が、行方不明になって半年後に、俺は両親の死と妹の行方不明を知ったよ・・・妹が辛い時に一緒に居てやれなかった・・・、ダメな兄貴だよな・・・」
ダリルは、苦虫を潰した様な顔で、ギュッと拳を握りしめた。

「ミズキ、お前は・・・どことなく、妹に似ているんだよ、姿形は全然違うが、なんて言うか、雰囲気かなぁ~」
ダリルは困った顔で、弱く笑った。

「私が、妹さんに似ているの?」

「あぁあ似ている、もし、もしも妹が、ミズキと同じ違う世界に飛ばされたと思うと ・・・助けてやりたいし、何とかしてやりたい!だから・・・俺は、お前を助けた。家や、金の事は、気にするな、お前が好きなだけ居て構わない、もとの世界に帰れるまで、居てもいいんだぞ!帰れなくても、ずっとここに居ていいんだ」

軽くポンポンとミズキの頭を手の平で叩いた。

「本当に、ずっと一緒に居ても、いいんですか?ダリルさん、ぐずっ、ぐずっ、ふぇっぐ、・ひっぅぐ・・鼻みじゅが・・・ありぐわとうありがとうだるるざんダリル

ミズキの顔は、くしゃくしゃになって、鼻水と嗚咽で、ダリルに、何度も、何度も、ありがとうと言って泣いていた。
ミズキが落ち着くと、またダリルは、話を始めた。

「そこでだ、ミズキ、俺とお前は、生き別れの兄妹で、この兄を頼って、来た事にする。それでいいか?この世界では、男女が同じ家で暮らすのは家族位で、他人同士が一緒の屋根の下で暮らすのは、タブーとされているから、この方が、都合が良いんだ」

「これから、お世話になります」
ミズキは、椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。

「それじゃ~練習でもするか?」
「んっ?練習?」
「そう、練習だ」
「何の?」
「これから、兄妹になるんだ!流石に、『ダリルさん』じゃマズイだろう?」
「確かに、そうですね、なんて呼べば良いですか?ダリルさん」
「そうだな~『お兄ちゃん』なんて良いか!」
「おっ、おにいにゃん」

しょっぱなから、噛んだぁぁ!
恥ずかしいぞ!わたし!!
何が、なにが!『おにいにゃん』じゃぁーー!

ミズキは顔を真っ赤にして、も一回!もう一回!と再度チャレンジを催促したが!

「合格」
まさかの一発合格!
あり得ないでしょう?
失敗した私が、恥ずかしくて、赤くなるのはわかるが、なぜ、だろう?ダリルの顔も赤かった。

「『おにいにゃん』って、可愛い過ぎるだろう」
口もとに手を押さえて、ミズキに聞こえない様に小声で言った。







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