異世界へようこそ

ホタル

文字の大きさ
上 下
4 / 83
プロローグ

告白

しおりを挟む
『ハァ、疲れた』

部屋の掃除に、これほどまで神経を、使うなんて思いもよらなかった。
ダリルの部屋で、ミズキの目は遠くを見つめていた。

ふふふふふふ、思い出したくも無い・・・

バスルームには、ナメクジの様な生き物に

「ーーぎぃやぁゃゃゃ!」

キッチンには、ゴキ○リの様な生き物が、数匹!

「ーーぐぅうえぇぇぇぇ!」

そして、ベッドの下からは、胸、ボン!腰、キュッ!お尻、ボオオン!!
自分の巨乳を持ち上げる、妖艶なお姉様のエロ本に!

「ーーぎょうえぇぇぇぇ!って?エロ本?」

イヤッホーーーー!!

見てみたい、衝動にかられて、そっと、本を開こうとしたら、電光石火でダリルさんが部屋に入ってきて、本を奪って何処かに行ってしまった。

初のエロ本、チョットだけ見たかった。惜しい!あともうチョットで、中身を見れたのに、ぶつぶつと心の中で、文句を言った。
素早い行動にミズキは唖然とした。

更にあの巨体が瞬時にミズキの手からお宝・・・もといエロ本を取り上げる早業に関心した。


見たっていいじゃない!減るもんでも無いのに!!


ダリルが、部屋に帰ってくるとダリルはミズキみ向かって声を掛けた。
「この部屋はもういいから、少しキッチンで休んでいろ」

「でも、まだ、この部屋は始めたばかりで・・」
まだまだ部屋は汚いまま、2人で片付けた方が効率が良いのはダリルさんも分かっているはず。何を言っているのダリルさん。

「いいから、休んでこい、ここは、俺がするから、ミズキは、や・す・ん・で・ろ!!」
ダリルがは寝室からミズキを遠ざけたくて必死だった。
もうこれ以上ミズキに男のサガの毎夜のオカズを消し去りたかった。


「・・ハイ」
何だろう?この威圧感!逆らえない。逆らっちゃいけない様な感じがしてきた。
ダリルさんて、怒ると怖い人なのかもしれない。なんて思ってミズキは、少しだけ休憩をしてから、別の部屋の掃除にかかった。


「ふぅぅ、こんなもんかしら?」

何とか、人が住める状態になったのは、夕飯どきに差し掛かったところで、一階の居酒屋が始まリ、美味しい匂いが、この部屋にも漂ってきた。

ミズキは、鼻をくんくんさせると、調味料醤油が焼ける、しょっぱい匂い、肉が焼ける、香ばしい匂いがした。若干、焦げる匂いも混じっている。

若干の焦げの匂いは、胃袋を刺激するには十分だった。

ミズキの口の中は、唾液で溢れるくらいにいっぱいになっていた。

それはもう、堤防を決壊する勢いで!

『ごっきゅん』
ミズキの小さな喉が上下した。

何とか、堤防の決壊は免れた。

いつの間にか、ダリルは部屋の掃除を終わらせて、ミズキの、そんな姿を見ていた。ダリルは、クククと口もとの笑みを手で隠すように、肩を震わせて笑いを若干、堪えていた。

ただ、若干堪えただけなので、ミズキに直ぐばれた。

「笑わなくても、いいじゃ無いですか」
「すまん、すまん、俺も腹が減ったから、下の『どんぐり』にでも行こうか?」

「ハイ!!」と元気に返事したものの、よく考えたら、パジャマで、この世界に来てしまったから、お金がありません。もし運良く、お金を持ってきたとしても、日本円では、ただの紙くず同然、この世界で使える訳が無かった。

「・・でも、私・・お金がありません、ダリルさん、お金を貸して貰えませんか?今すぐとは言えませんが、必ず働いて返しますから、ダメですか?」
命を助けて貰った上に、これ以上、ダリルに迷惑が掛かるのは、ミズキとしても、心苦しい。
悲しい、日本人のサガ
いいえ、日本人の美徳でしょう。

「そんな事を気にしてたのか?」
「そんな事では、ありません。大事な事です。」
「そう言うもんかね~」
「そう言うもんです。あと、もう一つお願いが、あります」
「ん?何だ」
「部屋が見つかるまで、ここに居させて欲しいです。出来るだけ早く、出て行きますから、それまでの間だけ・・・」

ミズキが話せば、話すほど、ダリルの表情が曇ってきた。

「すぐに出て行きますから、キッチンの隅でもいいんです・・・・ヤッパリ、ダメですか?」
「・・・言いたい事はそれだけか?」
「・・・はい、今のところは・・そんなところです・・・」
ミズキの声は、小さく消え入りそうだった。

「そうか」
ダリルの眉間にも縦じわが、出来、徐々に深くなっていた。
不機嫌オーラが半端なく、ミズキの肌に突き刺さる。

ミズキは、生まれて初めて、沈黙が怖いと思った。

ダリルさん、「そうか」で終わりですか?ヤッパリ、出て行けですか?私は、正直、ダリルさんに縋り付きたいです。ダメでしょうか?
考えてみれば、この世界で、頼れるのは、ダリルさん、ただ1人だった。
ダリルに見捨てられたらと思うと、怖くて、不安で、どうしていいかわからない。

ミズキの目に、涙が溜まって、今にも溢れそうだった。

「ミズキ、ここに座れ」
ダリルは、ため息をついて、テーブルの椅子に座る様に、促した。
ミズキは、素直に頷いて、椅子にちょこんと座った。

「これから、大事な話をする、聞いてくれ」

ミズキは、涙を拭って、頷いた。
声を出して返事をしたら、我慢していた不安が溢れ、声を出して泣いてしまいそう。
必死に堪えて、頷いた。

「俺には、妹がいた」

「・・・・・・」

「俺がまだ、冒険者として駆け出しだった頃、両親が流行り病で、あっという間に亡くなってな・・その後、直ぐに、妹も、行方が分からなくなった、俺は、両親が死んだ事も、妹が行方不明になった事も、知らずにダンジョンの中で、のうのうと、お宝探しさ!情けない話だろ?妹が、行方不明になって半年後に、俺は両親の死と妹の行方不明を知ったよ・・・妹が辛い時に一緒に居てやれなかった・・・、ダメな兄貴だよな・・・」
ダリルは、苦虫を潰した様な顔で、ギュッと拳を握りしめた。

「ミズキ、お前は・・・どことなく、妹に似ているんだよ、姿形は全然違うが、なんて言うか、雰囲気かなぁ~」
ダリルは困った顔で、弱く笑った。

「私が、妹さんに似ているの?」

「あぁあ似ている、もし、もしも妹が、ミズキと同じ違う世界に飛ばされたと思うと ・・・助けてやりたいし、何とかしてやりたい!だから・・・俺は、お前を助けた。家や、金の事は、気にするな、お前が好きなだけ居て構わない、もとの世界に帰れるまで、居てもいいんだぞ!帰れなくても、ずっとここに居ていいんだ」

軽くポンポンとミズキの頭を手の平で叩いた。

「本当に、ずっと一緒に居ても、いいんですか?ダリルさん、ぐずっ、ぐずっ、ふぇっぐ、・ひっぅぐ・・鼻みじゅが・・・ありぐわとうありがとうだるるざんダリル

ミズキの顔は、くしゃくしゃになって、鼻水と嗚咽で、ダリルに、何度も、何度も、ありがとうと言って泣いていた。
ミズキが落ち着くと、またダリルは、話を始めた。

「そこでだ、ミズキ、俺とお前は、生き別れの兄妹で、この兄を頼って、来た事にする。それでいいか?この世界では、男女が同じ家で暮らすのは家族位で、他人同士が一緒の屋根の下で暮らすのは、タブーとされているから、この方が、都合が良いんだ」

「これから、お世話になります」
ミズキは、椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。

「それじゃ~練習でもするか?」
「んっ?練習?」
「そう、練習だ」
「何の?」
「これから、兄妹になるんだ!流石に、『ダリルさん』じゃマズイだろう?」
「確かに、そうですね、なんて呼べば良いですか?ダリルさん」
「そうだな~『お兄ちゃん』なんて良いか!」
「おっ、おにいにゃん」

しょっぱなから、噛んだぁぁ!
恥ずかしいぞ!わたし!!
何が、なにが!『おにいにゃん』じゃぁーー!

ミズキは顔を真っ赤にして、も一回!もう一回!と再度チャレンジを催促したが!

「合格」
まさかの一発合格!
あり得ないでしょう?
失敗した私が、恥ずかしくて、赤くなるのはわかるが、なぜ、だろう?ダリルの顔も赤かった。

「『おにいにゃん』って、可愛い過ぎるだろう」
口もとに手を押さえて、ミズキに聞こえない様に小声で言った。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 愛人と名乗る女がいる

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、夫の恋人を名乗る女がやってきて……

夫を捨てる事にしました

東稔 雨紗霧
恋愛
今日は息子ダリルの誕生日だが夫のライネスは帰って来なかった。 息子が生まれて5年、そろそろ愛想も尽きたので捨てようと思います。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

処理中です...