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2章
想いの深さ
しおりを挟む暗い洞窟の中をランタンも無しに前へと進んで行く。
あともう少しでミズキと別れた場所に着く。
ジェリドは少しだけ歩くスピードを上げた。
さっき分かった事だが、ミズキは幽霊の類が苦手の様だ。
今頃怯えているだろうか?
それともまだ強がっているのだろうか?
ランタンをミズキに渡しておいたから少しは怖くないだろう。
だが、暗闇に俺がいない事で少しは怖がって欲しい。そして俺の姿を見て安堵の表情を見せて欲しい。
さっきみたいに怖がって俺に縋りつけばいい。
5年ぶりだろうか?ミズキが俺の腕を掴んで離さなかったのは。
本人も気付いていなかった様だ。
よほど怖かったのだろう。
ランタンの柔らかい光に照らされたミズキの顔が真っ青だった事をジェリドは思い出して少しだけ笑った。
そして小指に付いている柔らかく光る指輪をそっと羽根が触れるように触れた。
愛おしくてたまらない。
ミズキが愛おしい。
この想いに気付いてからは何度眠れない夜を過ごした事だろうか?
5年もの間ずっと忘れられなかった。
俺の本能が愛おしさを憎しみに変えてでも忘れる事をしなかった。
たった一人の俺の半身。
ミズキ・・・・。
どうか俺を求めてくれ。
柔らかい微笑みを俺だけに向けてくれ。
俺の髭を触って笑ってくれ。
それだけで良いんだ。
それだけで俺は幸せになれる。
お前の怒った顔が好きだ。
もちろん笑顔も好きだ。
拗ねた顔も好きだ。
泣いた顔も好きだ。
ドヤ顔も好きだ。
恥ずかしがるお前が一番好きだ。
どうしようもないくらいにお前に惹かれている。
だから、ダリルを見ないでくれ。
ダリルの隣で微笑まないでくれ。
ダリルを愛さないでくれ。
昔、ダリルの隣で幸せなミズキを見るのも悪く無いなんて思っていたが・・・今では、そんな事微塵も無い。
思っただけで吐き気がする。
ダリルの腕の中にいるお前を見ただけで、気が狂いそうだ。
辛くて苦しくて息が出来なくなる。
やっとここまで来たんだ。
さっさとこの依頼を片付けよう。
そしてミズキの口から真実を聞き出し、ランスロットからミズキを奪い返そう。
ミズキが自由になれば、必ず俺か、ダリルの元へ帰ってくる。
・・・渡せない。
自分の気持を誤魔化せない。
ダリルにも渡さない。
思った以上に俺は狭量だったようだ。
ふと溜息を付いて、ミズキと別れた場所に着いたが・・・・誰も居ない。
「あのじゃじゃ馬!!!」
ここで待ってろと言っただろうが!!!
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