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忍び寄る黒い想い。

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ユックリと流れるワルツの音楽が屋敷の中から溢れている。

時折笑い声も溢れていた。

「それでご子息のクロード君は皇女殿下と御婚約されるのですね、本当におめでとうございます。ローゼフォン公爵」

「ははは、これは、これは、気が早いベンリエット子爵、こればっかりはクロード自身が決める事ですが、皇女殿下に気に入られたクロードは果報者ですよ。
おっともうこんな時間か、それでは私はこれにて、失礼します。」

ローゼホン公爵はニッコリと笑ってその場を後見した。顔はさっきまで笑顔が張り付いたようだったが、ベンリエット子爵が視界から消えると笑顔が歪む。

屋敷を出て馬車に乗り込むと公爵は深くなった眉間を抑えた。


クロードとマリアの結婚してすぐに第2皇女アナスタシアとの婚姻の打診がローゼホン公爵の元に打診があった。


流石にローゼフォン公爵も、マリアと結婚して間もないクロードに皇女殿下との縁談が舞い込むとは思ってもいなかったのでどう対処すれば良いか思案していた。

常識的に考えられない事だけに、一歩でも道を踏み外す訳にはいかなかった。
一歩でも踏みはすせば、公爵家がこの地上から消え去ってしまう事もあり得るからだ。

それだけ王家の力は盤石だ。

王家に対して忠誠を蔑ろにする訳にはいかない。かと言って、クロードが妻のマリアを手放す事はしないだろう。

アレクロードは曽祖父に姿や思考が良く似ている。

数多くの縁談を無視してきた男が、たった1人の女を幼少の頃から一途に想っていた事をつい最近知ったばかりだ。

執着したマリアを手に入れ為に外堀から埋めていく姿に、我が息子ながら末恐ろしく感じた。

曽祖父に似ているアレクロードの気持ちを返させるのは無理だ。
ならば、どうする?

邪魔な嫁を排除すれば良いだけだが、どうやって。

本来ならば、新婚のクロードとマリア夫妻を守らなければいけないのだろうが、ローゼフォン公爵の野心の前では、瑣末な事だった。

降嫁では無く、将来女王となるアナスタシアの伴侶として、クロードが選ばれ、さらに、子が産まれれば、国王又は女王の祖父と言う甘美な響きに、公爵の野心の炎に更なる国王又は女王の祖父と言う薪がくべられた。


どうやらアナスタシア皇女は、クロードに助けられた時に一目惚れをし。父親の国王に泣きつきクロードを皇女アナスタシアの護衛をする様に模索したが、アッサリとクロード本人に断られた。

愛娘の想いを知った第2王妃は、直ぐにクロードに結婚の打診をかけようとしたが、システィーナ第1皇女の手によって握り潰された・・・筈だった。

だが1人の男の橋渡しでローゼフォン公爵のもとに縁談が舞い込んだ。


公爵本人はかなり驚いた。この縁談が後少し早ければと思わずにはいられなかった程に。


だが、皇女殿下との婚姻を持って来た男はもう一つ、公爵が手放しで喜ぶ物も持って来た。
クロードの妻マリアの出生証明書とマリアに関する詳細な書類を持って。

マリアに対する余りにも事細かな情報が載っている書類に目を通しながら

「・・・一体どう言うことかね、君はここ結婚に反対だったと言う事かね」

男は公爵の言葉にコクリと頷く。

「ええ、大反対ですよ」

「そうか、それで、何が望みだ」

「そんなものありませんよ公爵様」
男は深々と頭を下げると「それでは失礼」と言って屋敷から出て行った。

「くえんやつだ」

男が出て行った扉を見つめながら公爵は呟いた。







ワルツの音楽が流れる屋敷から出て直ぐに馬車の乗って、クロードの屋敷に向かった。



「第2王妃殿下直々の婚約を無視しおって!あの馬鹿者は、まだ別れた元嫁を探しているのか?」


ローゼホン公爵はクロードの屋敷に着なり、クロードの居場所を家令に問いただした。だが、家令がまだクロードが屋敷に戻ってこない事を聞くと、「あのバカ息子が!!」とローゼホン公爵は不甲斐ないと吐き捨てた。


何処までも邪魔ばかりする。
忌々しい。




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