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君が恋しい2
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裏路地をくまなく『こんな所に人がいるわけが無い』という所までライラを探しても彼女は見つからなかった。
諦めて中央の広場まで戻ってくると。
娼館に入って行ったベクトルとギリムが人身売買のゴロツキたちを護送の馬車に押し込んでいる最中だった。
そしてその場所には数人の少女から大人の女性まで放心した状態で座っていた。
カルバンはライラの居場所がわかればと声をかけた。
「おい、大丈夫か?」
カルバンは放心状態の女に声を掛けたが反応は無かった。
よく見ると女達はヨダレを垂らして呆けていたり放心してるのでは無く薬物による中毒症状で朦朧としていた。
酷いことを・・・。
カルバンの表情が歪んだ。
逃げ出さない様に薬漬けにして娼館などに売りつけるのだろう。
普通は1人で逃げ出したって、誰も責めはしない。
ライラがこの女達を見捨てずにカルバンに助けを求めた事を神に感謝したい。
しかも運良くカルバンに助けを求めた。
これはもう奇跡に近い。
もし、ここら辺にいる男達に声を掛けたら、ライラも薬漬けにされて・・・後は薬欲しさに男に買われる人生を死ぬまで続けて、死体となって解放される。
一歩間違っていたらこんな風になっていたと思うと、ハラワタが煮えくりライラに薬を打った男を探し出し斬り刻みたい衝動にかられている自分に愕然とした。
さっき会ったばかりの女に何を入れ込んでいる。
荒れた感情をを抑え込む様に一度深呼吸をする。
こうすれば大抵落ち着く。
小さい頃から感情をコントロールするのは簡単な作業だった・・・その筈だった。
小さい頃から、兄ディアスを優先させてきた両親は、何かあるとすぐに『お前は後継では無いのだから我慢しなさい』と言われ続けてきた。
だから、欲しい物があってもすぐに諦めたり、感情をコントロールするのは、今では息をする様に当たり前にできた。
今考えれば、後継でも無いカルバンにどんな仕事に就いても1人でもやっていける様にと両親の心遣いだったと分かる。
そう息をするかの様に簡単に感情をコントロール出来た・・・はず。
ライラに会うまでは簡単に抑えつける事が出来るはずだったのに、どうしてもこの荒ぶる魂を押さえつける事が出来ないでいる。
あの気の強いライラに会って、カルバンの何かが崩れ始めていた。
ここに居る女性達の姿はカルバンには、到底受け入れられない現実だった。
それと同時にライラがこんな目に遭わなくて良かったとも思っていた。
「カルバンチョットいいか?」
声をかけてきたのは、少し癖のあるダークブラウンの髪でカルバンと同じくらいの体格で頬に傷がある自衛団の団長クリフだった。
「はい団長」
カルバンは団長に向かって事の経緯を話した。
「なるほどな・・・それで助けを求めて来た女は何処にいる?」
「・・・それが・・・見つかりません」
「そうか?証言を取りたかったのだが・・・見つからないのでは致し方無い、あのご婦人達の薬が抜けてから証言してもらうしか無いな」
薬漬けになってヨダレを垂らしている女達に視線を流した。
「・・・見つけます」
「ん?いやそこまで・・・」
クリフが言い終わる前にカルバンはもう一度言った。
「必ず証人を見つけ出します」
真っ直ぐにクリフを見るカルバンにクリフは『分かった』と言ってカルバンの肩を叩いた。
この時からカルバンは自分の使える捏ねを最大限利用してライラの足取りを掴んだ。
それはある男爵家のパーティ会場に最近ライラと同じ容姿の女が良く見かけると言う情報が意外なところからもたらされた。
その情報源は兄ディアスだった。
しかも、その男爵家のパーティにディアスの代わりに出て欲しいとの事でカルバンは更に驚いた。
決して仲が悪い訳では無いが、兄ディアスは昔から何を考えているのか解らない所がある。
素直に喜ぶべきか悩んでいると、ディアスもカルバンの表情を読み取ったのか、「嫌なら断っても構わない」と言って招待状をカルバンの手から取り上げ様としたが、一瞬だけカルバンの方が早かった。
「有り難く頂くよ兄さん」
「そうか?それなら良い。それからその招待状な!今日のだから」
「えっ?」
「だから今日の招待状だ!」
「・・今日?・今・・・何時だ兄さん」
「今か?ちょうど18時だ招待状のパーティが始まってばかりだ。良かったなカルバン、急げば終わる頃に間に合うぞ」
カルバンはディアスの言葉を半分も聞かずに自室に入り着替え始めた。
諦めて中央の広場まで戻ってくると。
娼館に入って行ったベクトルとギリムが人身売買のゴロツキたちを護送の馬車に押し込んでいる最中だった。
そしてその場所には数人の少女から大人の女性まで放心した状態で座っていた。
カルバンはライラの居場所がわかればと声をかけた。
「おい、大丈夫か?」
カルバンは放心状態の女に声を掛けたが反応は無かった。
よく見ると女達はヨダレを垂らして呆けていたり放心してるのでは無く薬物による中毒症状で朦朧としていた。
酷いことを・・・。
カルバンの表情が歪んだ。
逃げ出さない様に薬漬けにして娼館などに売りつけるのだろう。
普通は1人で逃げ出したって、誰も責めはしない。
ライラがこの女達を見捨てずにカルバンに助けを求めた事を神に感謝したい。
しかも運良くカルバンに助けを求めた。
これはもう奇跡に近い。
もし、ここら辺にいる男達に声を掛けたら、ライラも薬漬けにされて・・・後は薬欲しさに男に買われる人生を死ぬまで続けて、死体となって解放される。
一歩間違っていたらこんな風になっていたと思うと、ハラワタが煮えくりライラに薬を打った男を探し出し斬り刻みたい衝動にかられている自分に愕然とした。
さっき会ったばかりの女に何を入れ込んでいる。
荒れた感情をを抑え込む様に一度深呼吸をする。
こうすれば大抵落ち着く。
小さい頃から感情をコントロールするのは簡単な作業だった・・・その筈だった。
小さい頃から、兄ディアスを優先させてきた両親は、何かあるとすぐに『お前は後継では無いのだから我慢しなさい』と言われ続けてきた。
だから、欲しい物があってもすぐに諦めたり、感情をコントロールするのは、今では息をする様に当たり前にできた。
今考えれば、後継でも無いカルバンにどんな仕事に就いても1人でもやっていける様にと両親の心遣いだったと分かる。
そう息をするかの様に簡単に感情をコントロール出来た・・・はず。
ライラに会うまでは簡単に抑えつける事が出来るはずだったのに、どうしてもこの荒ぶる魂を押さえつける事が出来ないでいる。
あの気の強いライラに会って、カルバンの何かが崩れ始めていた。
ここに居る女性達の姿はカルバンには、到底受け入れられない現実だった。
それと同時にライラがこんな目に遭わなくて良かったとも思っていた。
「カルバンチョットいいか?」
声をかけてきたのは、少し癖のあるダークブラウンの髪でカルバンと同じくらいの体格で頬に傷がある自衛団の団長クリフだった。
「はい団長」
カルバンは団長に向かって事の経緯を話した。
「なるほどな・・・それで助けを求めて来た女は何処にいる?」
「・・・それが・・・見つかりません」
「そうか?証言を取りたかったのだが・・・見つからないのでは致し方無い、あのご婦人達の薬が抜けてから証言してもらうしか無いな」
薬漬けになってヨダレを垂らしている女達に視線を流した。
「・・・見つけます」
「ん?いやそこまで・・・」
クリフが言い終わる前にカルバンはもう一度言った。
「必ず証人を見つけ出します」
真っ直ぐにクリフを見るカルバンにクリフは『分かった』と言ってカルバンの肩を叩いた。
この時からカルバンは自分の使える捏ねを最大限利用してライラの足取りを掴んだ。
それはある男爵家のパーティ会場に最近ライラと同じ容姿の女が良く見かけると言う情報が意外なところからもたらされた。
その情報源は兄ディアスだった。
しかも、その男爵家のパーティにディアスの代わりに出て欲しいとの事でカルバンは更に驚いた。
決して仲が悪い訳では無いが、兄ディアスは昔から何を考えているのか解らない所がある。
素直に喜ぶべきか悩んでいると、ディアスもカルバンの表情を読み取ったのか、「嫌なら断っても構わない」と言って招待状をカルバンの手から取り上げ様としたが、一瞬だけカルバンの方が早かった。
「有り難く頂くよ兄さん」
「そうか?それなら良い。それからその招待状な!今日のだから」
「えっ?」
「だから今日の招待状だ!」
「・・今日?・今・・・何時だ兄さん」
「今か?ちょうど18時だ招待状のパーティが始まってばかりだ。良かったなカルバン、急げば終わる頃に間に合うぞ」
カルバンはディアスの言葉を半分も聞かずに自室に入り着替え始めた。
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