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結婚を決めた父を恨みます。

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「失礼します。旦那様、お客様がいらしておりますがいかがいたしましょうか?」
家令のセバスが気まずそうに入って来た。

「・・・今、忙しい、お客様には返って貰え」

「ですが・・・その・・・」

「帰って貰えと言っている!結婚式の次の日に訪問する失礼な客の相手など出来るか」
言葉は丁寧だが、怒りがクロード全身から滲み出ている。
クロードの目は相変わらずマリアにむいていた。
そんな静かに憤慨するクロードの手を振りほどく勇気はない。


「あらあらあら~?新婚早々夫婦喧嘩かしら?クロード!しつこい男は嫌われるわよ?知ってる?私がお嫁さん貰っちゃおうかな~?」
「うるさい!誰が渡すか!!・・って・・・団長?どうしてここに?それからマリアは渡しませんよ」

クロードが団長と呼んだ人は・・・女性だった。
・・・団長?・・・この人が?

確かに、紺色で胸元に赤い刺繍の入った双璧騎士団の服を着ているが・・・。
栗色の髪を上手に巻き上げ、まだ幼さが残っている少女。

『かわいい』マリアのアナベルへの第一印象だった。

マリアはじっと団長と呼ばれた少女を見た。
そんなマリアの視線に気付いた少女はニッコリと笑って。
「アナベルよ、貴女はマリアねヨロシク」とアナベルはマリアに触れようと手を伸ばした。

「団長、何の様ですか?」
クロードはマリアとアナベルの間に割って入った。
そして声のトーンは今まで聞いたことがないくらい低いものだった。

マリアの目の前にはアナベルとマリアの間に割って入ったクロードの背中がある。
アナベルの姿がすっぽりとクロードの広い背中に隠れている。
まるでマリアからアナベルを隠す様に。

「そうそう、クロード結婚早々、申し訳ないけど休暇は返上してもらう事になったわ~」
「・・・何をバカな事を」
「そうなのよ!バカな事が起こっちゃってね、貴方怒ると怖いんだもの、団員の誰もが貴方を迎えに来たがらないから、団長の私が直々に貴方を迎えに来たのよ!うれしい?」
「嬉しくありません・・・・それからバカな事という事は」
「クロード!ここでする話ではないわねぇ~、直ぐに騎士団本部に来て頂戴!」
クロードの背中越しに、クロードとアナベルの会話が聞こえてくる。

「それからマリア貴女に合えて嬉しいわ、クロードに飽きたら私の所に来て頂戴、必ずよ~!」
クロードの脇からアナベルは覗き込んでマリアと目が合った。
「はい、その時はよろしく・・・」
「団長、行きましょう!」
マリアは手を伸ばそうとして、クロードの言葉にさえぎられた。

「セバス!マリアを外に出すな必ず誰かマリアに付けろ」
そして的確に家令やメイドの指示をして、最後に「マリア・・・俺が・・帰って来てから話をしよう」と言ってマリアの顔を見ずにクロードは屋敷を出て行ってしまった。


マリアはセバスに促されて主寝室の隣の自分の部屋に戻った。
さすがに部屋の中まではメイド達は入って来なくてホッとした。
一人になると、結婚式からの怒涛の出来事が頭の中をかき乱した。

結婚式に、アナベルは居なかった。
クロードの上司なのに・・・。

マリアは疑問のパズルを組み合わせていく。

団長は女!団長は少女!クロードは団長の愛人!

そして私はクロードとマリベルの隠れ蓑。

パズルが出来上がると、全てが腑に落ちた。

お飾りの妻ってところかしら?
つまりそうゆう事ですね。
淡々と自分の立場を分析している。
涙の一つも出ない。
当たり前ですが。

それにしても、お父様どうしてこの結婚を承諾したんですか?
クロード、私を巻き込まないで、静かに暮らしたいだけなのに。




騎士団本部では・・・・。

「マリアに手を出さないでください、団長」
「ダメ~?私・・・気に入っちゃたの~マリアちゃんの事!私の好みど真ん中なんだもの!可愛いわぁ~欲しいわぁ~あの子」
「可愛く言ってもダメです!貴女の趣味にとやかく言うつもりはありませんが!マリアだけは絶対に渡しませんよ」

クロードはアナベルに分らない様にため息をついた。
とんでもない人に気に入られてなマリア、よりにもよって同性愛の団長に気に入られるなんて、だから団長を結婚式にも呼ばなかったのに・・・・。これは困った事になったぞ。

「まあいいわ、そのうちクロード捨てられそうだしぃ~」
「縁起でも無い事言わないでください!!結婚したばかりなのに・・・」
「クロードも焦る事も有るのね?これから楽しみね~クロード」
クロードの反応に驚き、楽しそうに笑うアナベルと反対に、クロードは末恐ろしくなった。
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