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第9章 帝国の魔女
第9章第008話 ロトリー国の王都への道程
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第9章第008話 ロトリー国の王都への道程
・Side:ツキシマ・レイコ
市場で入手した食材は、庁舎に持ち帰ることになりました。
男爵いも、サツマイモ、トマト、ウコンかニンジンかわからない根菜、トウモロコシ。あと、まだよく使い方もわからないハーブや香辛料っぽいもの。
正直ハーブや香辛料ともなると、地球産のものでも名前は知っていても原型はあまり知りません。カレーの実なんてものはほんと奇跡…用意されていた可能性も大ですが。他の物も、完全にこれら作物と同じではないでしょう。
ラクーンの庁舎の調理師さんに、これら食材で料理するところを説明を受けながら見学しました。味見もしながらという役得付きですね。
「クークック」
「そうね。まんまサツマイモね、これ」
イモをまとめて蒸して試食です。レッドさんにも試食は手伝ってもらいます。ラクーンには良くても、人にはよろしくない場合も考えられますし。ラクーン達にも実は良くない食材なんて物がある可能性も。まぁ無用な心配でしたが。
農作物の国外への持ち出しにはロトリー国側の許可が必要ですし。交易に使うか、パテント料を払ってネイルコードで育てるか、その辺は要相談です…ネタリア外相よろしくお願いします。
交易品に向かない野菜類は、是非持ち帰りたいところ。ある程度品種改良されたこれらは、それだけで貴重ですからね。もし許可が出たら、ネイルコードでも研究してもらいましょう。
港町オラサクには、三日ほどの滞在でした。
検疫はほどほどでいいのかな?と思いましたが。互いの租借地が検疫の壁を取っ払っている理由だそうです。黒い女神の知恵ですかね。すでに交流がある場所で問題が無いのなら、検疫省いても問題ないと。
まぁネイルコードの人もセイホウ王国の人も、元をたどれば東の大陸出身ですので。伝染病が突然持ち込まれて…という、昔のアメリカ大陸のようなことは無さそうです。新たに発生する疫病にしても、細くても普段から交流を持っていれば、事前に察知出来るだろうという目論見ですか。
こちらの世界でも、インフルエンザのような流行病はあり。冬には乾燥に注意と手洗いとうがいをしましょう…という啓発を進めているところですが。この辺はある程度はどうしようもないところ。
ウィルスに対抗する医学の乏しいこの世界では、常時接触させて集団免疫に期待した方がまだ良いという判断でしょう。地球の感覚だとちょっと危険にも思いますが。
王都へ出発です。馬車で朝に出発すれば、夕方には着くくらいだそうです。
露天の馬車にホロがかけられています。それでも座席とか作りはしっかりしているので、安っぽさは無いですね。オープンカータイプと思えばいいかな。
セレブロさんにも専用馬車が用立てられましたが。マーリアちゃん曰く、セレブロさんは歩きたいんだそうです。船旅が長かったからですかね。陽気も肌寒いくらいですし、ウォーキングにはちょうど良いですか。
他のラクーン達や馬は最初セレブロさんにおっかなびっくりでしたが。アライさんやマーリアちゃんと戯れる様は大体目撃されていますので。少し経ったら皆慣れたようです。
街道の右、少し低いところには河が流れ。堤防も築かれています。堤防に生えている木々の大きさからして結構経っていそうですね。
周囲には畑が広がっています。ネイルコードを出発したのが初夏、今はもう晩秋といったところですか。畑は既に刈り取られ。所々草が生えています。
『トウモロコシを収穫したあとは、残った茎や根を焼いて漉き込んだあとに、冬越しのイモを植えるか、三つ葉の種を撒きます』
同伴してくれているロトリー国の役人さんが説明してくれます。
三つ葉。クローバーですかね?。クローバーなら豆類と同じく、窒素固定に役に立つ作物です。
ところどころに馬、牛。あとヤギか羊かよく分からない家畜、毛をとるのでしょうか?。畑で生えている物を啄んでいるのが見えます。もしかして三圃制または四圃制ですかね。
冬明けに備えて、イモの栽培も始まっているようです。食糧が不足しないように、いろいろリスク分散されているようです。この辺、ネイルコードに負けていませんね。
『複数の主食を栽培するのは、有益ですよ。飢饉の危険が減りますからね』
病気、天候不順などで不作となった場合。主食がひとつだけだと、そのまま飢饉に直結してしまいますからね。リスク分散は必要です。ジャガイモに頼りすぎたヨーロッパでは、飢饉でひどいことになりましたしね。
『米は大変だとしても、麦なら作れそうだけど。どうして作らないのかしら?』
『麦が全くない訳では無いですが。トウモロコシなら茹でただけでおいしかったというのかあると思います。炒めてもおいしいですしね』
なるほど、トウモロコシの方が手軽ということですか。
マーリアちゃんやネタリア外相など、同乗している人にも通訳しながら話を聞きます。
『麦は粉にしてパンに出来ますし。米は"炊く"といろいろおいしくなりますか。そういう料理か出来る前にトウモロコシが主食になったわけてす』
日本でも昔は、麦は炊くか粥でしたから、米よりは一段落ちる扱いでした。おいしい食べ方が広まらないと、定着しないということですか。
それでも。トウモロコシを粉にして料理するようになっているのですから。麦も広めたら受け入れられるかも。
しかし、トウモロコシもかなりの品種改良を経てあの形になったはず。最初は一つの穂に十粒程度しか実らなかったそうですし。
帝国時代から品種改良していたのか、赤井さんが最初からある程度の品種を用意してくれていた可能性もありますが。
三角州脇の街サルハラには、今でもいろんな作物の研究をする施設がエイゼル領主導で運営されていまして、米なんかもここでテスト栽培されましたが。今度、国とペーパープラン研も出資と人材協力をして国立の農業試験場が開設され合併されます。いろんな作物の品種改良や農業指導員育成を目的として活動する予定です。
ここにロトリー国の作物を託せれば、有効利用してくれるでしょう。単純に食材が増えるのは歓迎です。
ロトリーの港町オラサクから首都ラスターナへのこの街道。川沿いに北上するあたり、エイゼル市からネイルコードへの道を彷彿とさせますが、こちらもかなり整備されています。石畳や砂利で舗装されているのは二車線分ですが。道として確保されている土地は六車線分くらいあって。馬車輸送だけにしてはかなり余裕があります。さらに街道の左右にも、余裕を持った土地確保がされているようです。
「かなり広い街道ね」
「ネイルコードの街道くらいの広さよね」
「帝国時代からあったものを整備して使っています。石畳か残っているのは馬車の分たけてすが。今ても、土地の幅は残しておくと決められています」
カララクルさんが人の言葉で説明してくれます。土地の確保を事前にしておくのはネイルコードでもやっていますが。…これも聖女の知恵かな?
川の向こうに、広く開けた場所が見えてきました。ちょっと高台かな?畑にしては水はけがいい感じですね。ただ、あれほどきれいに真っ平らなのは、人為的に整地されているようですが。畑らしき物はありません。
いくつか建物があって…軍か何かが訓練しているようですが。駐屯地にしては広いですね。
「ああ。あそこも言い伝えてすね。なんてもいつか港か出来るとかいう話なんですか」
「え? この川に港作るの? 河から船を着けるには、いくらなんでも不便な場所よね?」
「いえ。水の上の船ではなく、空の港…たそうてす。そう聞いています」
「それはもしかして!」
ネタリア外相が食い付きます。
「空港ですよねっ?」「空港よね…」
ネタリア外相には昔、飛行機の話と一緒に空港についてもお話ししています。将来、王都とエイゼル市で使う空港は、ほぼ確実に必要になるでしょうから。
あとからあの広大な土地を確保するのは大変ですからね。王都とエイゼル市の中間にある軍学校周辺か。エイゼル市沖のボルト島の反対側、現在は塩田として使われているところか。いくつか候補が挙がってまして。この辺も永続的な国有地として確保と整理を進めています。
グライダーが早々に実現してしまいましたからね。百年以内にはほぼ確実に空港が必要になるでしょう。
「言い伝えってのは、いつ頃からあるものなんですか?」
「ロトリーがこの辺にたとり着いたころ、女神様から言われたそうですのて。八百年くらいてすか。たた、土地の区分け自体は、あなた方が帝国と呼はれる時代から変わっていないようてす」
やはり帝国時代の土地整備をそのまま利用しているようです。
八百年、これだけの土地を遊ばせておくのはもったいないという感じもしますが。見た感じ、街と街の間の空いた土地という感じもしますので。さほど問題にはならなかったのかな?
「ひゃー。ネイルコード軍で成功したって飛行機のことてすか?」
特に箝口令敷いているわけでもない…いや王子様がやらかしたことは伏せられているようですが。グライダー
飛行については、エイゼル市でもけっこう噂になっていましたね。鉄道の方に話題は持って行かれたようですが。
「宣伝はしていませんが。あれから改良と試験は繰り返していますよ。部署はカステラード殿下に全部とられてしまいましたがね、まぁ進捗のチェックと口出しくらいはさせてもらっています。今は、プロペラ…ですか? モーターでそれを回して永続的に飛ぶ機体の方に移っていたはずです。ただ、モーターの改良には、ユルガルムでも苦労しているそうですが」
扇風機やクーラーの送風機に使う位のモーターは作られるようになっているのですが。電気や磁場など、モーターを数学的に理解する…ってところが一つのハードルです。
次に絶縁した電線等の素材面が二つ目のハードル。エナメル線やビニール線…まだ原料に無理があります。
三つ目のハードルは、高精度のベアリングやギアの製造。ネジ類もです。太いものはそこそこ出来ているのですが、小型化の精度と量産はこれからです。
蒸気機関は結構力業でも作れたのですが。モーターの大型化には、まだいろいろ課題があります。
それでも。電池や燃料も要らないマナを電源としたモーターなわけです。自動車に使えるくらいのモーターが出来れば、飛行機を飛ばすことも出来るでしょう。航続距離はほぼ耐久性とイコールですので。飛んでしまえば、理論上はセイホウ王国やロトリー国まで航空路線を開設することも出来ます。
今から十年程度で最初の大洋横断の旅客航路が実現しても驚かないですね。
「うん…多分皆なら、ここが空の港として実際に使われるのを見られるかもしれない」
カララクルさんと役人さんが、ホンマ?という感じの顔をしています。
ああ、そのためにはどっかでボーキサイト探さないといけませんね。将来宇宙開発するにしても、鉄だけでは不安が残るところです。アルミニウム作らないと。
空港は、港町と王都との中間地点くらいだったようです。そこからしばらく馬車に揺られていると。
『王都が見えてきました。あれが王都ラスターナてす』
平地からですので王都を俯瞰で見られるわけではありませんが。広い町並み、その中に城壁?石塀かな? その向こうに丘があるようで、そこに石造りの神殿みたいな建物が見えます。他に高い建物は無いので、あそこが王城かな?
ネイルコードからの長い旅ももうすぐ終着です。
・Side:ツキシマ・レイコ
市場で入手した食材は、庁舎に持ち帰ることになりました。
男爵いも、サツマイモ、トマト、ウコンかニンジンかわからない根菜、トウモロコシ。あと、まだよく使い方もわからないハーブや香辛料っぽいもの。
正直ハーブや香辛料ともなると、地球産のものでも名前は知っていても原型はあまり知りません。カレーの実なんてものはほんと奇跡…用意されていた可能性も大ですが。他の物も、完全にこれら作物と同じではないでしょう。
ラクーンの庁舎の調理師さんに、これら食材で料理するところを説明を受けながら見学しました。味見もしながらという役得付きですね。
「クークック」
「そうね。まんまサツマイモね、これ」
イモをまとめて蒸して試食です。レッドさんにも試食は手伝ってもらいます。ラクーンには良くても、人にはよろしくない場合も考えられますし。ラクーン達にも実は良くない食材なんて物がある可能性も。まぁ無用な心配でしたが。
農作物の国外への持ち出しにはロトリー国側の許可が必要ですし。交易に使うか、パテント料を払ってネイルコードで育てるか、その辺は要相談です…ネタリア外相よろしくお願いします。
交易品に向かない野菜類は、是非持ち帰りたいところ。ある程度品種改良されたこれらは、それだけで貴重ですからね。もし許可が出たら、ネイルコードでも研究してもらいましょう。
港町オラサクには、三日ほどの滞在でした。
検疫はほどほどでいいのかな?と思いましたが。互いの租借地が検疫の壁を取っ払っている理由だそうです。黒い女神の知恵ですかね。すでに交流がある場所で問題が無いのなら、検疫省いても問題ないと。
まぁネイルコードの人もセイホウ王国の人も、元をたどれば東の大陸出身ですので。伝染病が突然持ち込まれて…という、昔のアメリカ大陸のようなことは無さそうです。新たに発生する疫病にしても、細くても普段から交流を持っていれば、事前に察知出来るだろうという目論見ですか。
こちらの世界でも、インフルエンザのような流行病はあり。冬には乾燥に注意と手洗いとうがいをしましょう…という啓発を進めているところですが。この辺はある程度はどうしようもないところ。
ウィルスに対抗する医学の乏しいこの世界では、常時接触させて集団免疫に期待した方がまだ良いという判断でしょう。地球の感覚だとちょっと危険にも思いますが。
王都へ出発です。馬車で朝に出発すれば、夕方には着くくらいだそうです。
露天の馬車にホロがかけられています。それでも座席とか作りはしっかりしているので、安っぽさは無いですね。オープンカータイプと思えばいいかな。
セレブロさんにも専用馬車が用立てられましたが。マーリアちゃん曰く、セレブロさんは歩きたいんだそうです。船旅が長かったからですかね。陽気も肌寒いくらいですし、ウォーキングにはちょうど良いですか。
他のラクーン達や馬は最初セレブロさんにおっかなびっくりでしたが。アライさんやマーリアちゃんと戯れる様は大体目撃されていますので。少し経ったら皆慣れたようです。
街道の右、少し低いところには河が流れ。堤防も築かれています。堤防に生えている木々の大きさからして結構経っていそうですね。
周囲には畑が広がっています。ネイルコードを出発したのが初夏、今はもう晩秋といったところですか。畑は既に刈り取られ。所々草が生えています。
『トウモロコシを収穫したあとは、残った茎や根を焼いて漉き込んだあとに、冬越しのイモを植えるか、三つ葉の種を撒きます』
同伴してくれているロトリー国の役人さんが説明してくれます。
三つ葉。クローバーですかね?。クローバーなら豆類と同じく、窒素固定に役に立つ作物です。
ところどころに馬、牛。あとヤギか羊かよく分からない家畜、毛をとるのでしょうか?。畑で生えている物を啄んでいるのが見えます。もしかして三圃制または四圃制ですかね。
冬明けに備えて、イモの栽培も始まっているようです。食糧が不足しないように、いろいろリスク分散されているようです。この辺、ネイルコードに負けていませんね。
『複数の主食を栽培するのは、有益ですよ。飢饉の危険が減りますからね』
病気、天候不順などで不作となった場合。主食がひとつだけだと、そのまま飢饉に直結してしまいますからね。リスク分散は必要です。ジャガイモに頼りすぎたヨーロッパでは、飢饉でひどいことになりましたしね。
『米は大変だとしても、麦なら作れそうだけど。どうして作らないのかしら?』
『麦が全くない訳では無いですが。トウモロコシなら茹でただけでおいしかったというのかあると思います。炒めてもおいしいですしね』
なるほど、トウモロコシの方が手軽ということですか。
マーリアちゃんやネタリア外相など、同乗している人にも通訳しながら話を聞きます。
『麦は粉にしてパンに出来ますし。米は"炊く"といろいろおいしくなりますか。そういう料理か出来る前にトウモロコシが主食になったわけてす』
日本でも昔は、麦は炊くか粥でしたから、米よりは一段落ちる扱いでした。おいしい食べ方が広まらないと、定着しないということですか。
それでも。トウモロコシを粉にして料理するようになっているのですから。麦も広めたら受け入れられるかも。
しかし、トウモロコシもかなりの品種改良を経てあの形になったはず。最初は一つの穂に十粒程度しか実らなかったそうですし。
帝国時代から品種改良していたのか、赤井さんが最初からある程度の品種を用意してくれていた可能性もありますが。
三角州脇の街サルハラには、今でもいろんな作物の研究をする施設がエイゼル領主導で運営されていまして、米なんかもここでテスト栽培されましたが。今度、国とペーパープラン研も出資と人材協力をして国立の農業試験場が開設され合併されます。いろんな作物の品種改良や農業指導員育成を目的として活動する予定です。
ここにロトリー国の作物を託せれば、有効利用してくれるでしょう。単純に食材が増えるのは歓迎です。
ロトリーの港町オラサクから首都ラスターナへのこの街道。川沿いに北上するあたり、エイゼル市からネイルコードへの道を彷彿とさせますが、こちらもかなり整備されています。石畳や砂利で舗装されているのは二車線分ですが。道として確保されている土地は六車線分くらいあって。馬車輸送だけにしてはかなり余裕があります。さらに街道の左右にも、余裕を持った土地確保がされているようです。
「かなり広い街道ね」
「ネイルコードの街道くらいの広さよね」
「帝国時代からあったものを整備して使っています。石畳か残っているのは馬車の分たけてすが。今ても、土地の幅は残しておくと決められています」
カララクルさんが人の言葉で説明してくれます。土地の確保を事前にしておくのはネイルコードでもやっていますが。…これも聖女の知恵かな?
川の向こうに、広く開けた場所が見えてきました。ちょっと高台かな?畑にしては水はけがいい感じですね。ただ、あれほどきれいに真っ平らなのは、人為的に整地されているようですが。畑らしき物はありません。
いくつか建物があって…軍か何かが訓練しているようですが。駐屯地にしては広いですね。
「ああ。あそこも言い伝えてすね。なんてもいつか港か出来るとかいう話なんですか」
「え? この川に港作るの? 河から船を着けるには、いくらなんでも不便な場所よね?」
「いえ。水の上の船ではなく、空の港…たそうてす。そう聞いています」
「それはもしかして!」
ネタリア外相が食い付きます。
「空港ですよねっ?」「空港よね…」
ネタリア外相には昔、飛行機の話と一緒に空港についてもお話ししています。将来、王都とエイゼル市で使う空港は、ほぼ確実に必要になるでしょうから。
あとからあの広大な土地を確保するのは大変ですからね。王都とエイゼル市の中間にある軍学校周辺か。エイゼル市沖のボルト島の反対側、現在は塩田として使われているところか。いくつか候補が挙がってまして。この辺も永続的な国有地として確保と整理を進めています。
グライダーが早々に実現してしまいましたからね。百年以内にはほぼ確実に空港が必要になるでしょう。
「言い伝えってのは、いつ頃からあるものなんですか?」
「ロトリーがこの辺にたとり着いたころ、女神様から言われたそうですのて。八百年くらいてすか。たた、土地の区分け自体は、あなた方が帝国と呼はれる時代から変わっていないようてす」
やはり帝国時代の土地整備をそのまま利用しているようです。
八百年、これだけの土地を遊ばせておくのはもったいないという感じもしますが。見た感じ、街と街の間の空いた土地という感じもしますので。さほど問題にはならなかったのかな?
「ひゃー。ネイルコード軍で成功したって飛行機のことてすか?」
特に箝口令敷いているわけでもない…いや王子様がやらかしたことは伏せられているようですが。グライダー
飛行については、エイゼル市でもけっこう噂になっていましたね。鉄道の方に話題は持って行かれたようですが。
「宣伝はしていませんが。あれから改良と試験は繰り返していますよ。部署はカステラード殿下に全部とられてしまいましたがね、まぁ進捗のチェックと口出しくらいはさせてもらっています。今は、プロペラ…ですか? モーターでそれを回して永続的に飛ぶ機体の方に移っていたはずです。ただ、モーターの改良には、ユルガルムでも苦労しているそうですが」
扇風機やクーラーの送風機に使う位のモーターは作られるようになっているのですが。電気や磁場など、モーターを数学的に理解する…ってところが一つのハードルです。
次に絶縁した電線等の素材面が二つ目のハードル。エナメル線やビニール線…まだ原料に無理があります。
三つ目のハードルは、高精度のベアリングやギアの製造。ネジ類もです。太いものはそこそこ出来ているのですが、小型化の精度と量産はこれからです。
蒸気機関は結構力業でも作れたのですが。モーターの大型化には、まだいろいろ課題があります。
それでも。電池や燃料も要らないマナを電源としたモーターなわけです。自動車に使えるくらいのモーターが出来れば、飛行機を飛ばすことも出来るでしょう。航続距離はほぼ耐久性とイコールですので。飛んでしまえば、理論上はセイホウ王国やロトリー国まで航空路線を開設することも出来ます。
今から十年程度で最初の大洋横断の旅客航路が実現しても驚かないですね。
「うん…多分皆なら、ここが空の港として実際に使われるのを見られるかもしれない」
カララクルさんと役人さんが、ホンマ?という感じの顔をしています。
ああ、そのためにはどっかでボーキサイト探さないといけませんね。将来宇宙開発するにしても、鉄だけでは不安が残るところです。アルミニウム作らないと。
空港は、港町と王都との中間地点くらいだったようです。そこからしばらく馬車に揺られていると。
『王都が見えてきました。あれが王都ラスターナてす』
平地からですので王都を俯瞰で見られるわけではありませんが。広い町並み、その中に城壁?石塀かな? その向こうに丘があるようで、そこに石造りの神殿みたいな建物が見えます。他に高い建物は無いので、あそこが王城かな?
ネイルコードからの長い旅ももうすぐ終着です。
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