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第7章 Welcome to the world
第7章第010話 帰還の報告
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第7章第010話 帰還の報告
・Side:ツキシマ・レイコ
ターナンシュ様のお腹の赤ちゃんの性別診断を終えて、無事ユルガルムから帰ってきたレッドさんですが。
「エカテリンさんっ! えーと、とりあえずアイズン伯爵かな? ともかくすぐに伯爵とお話ししたいのですがっ!」
重要連絡事項として送られてきたイメージがちょっと大事ですよ。
魔獣の群れの発見。マナ探知で雲のように見えるほどの数の魔獣が、ユルガルムの北東の陸峡から攻め寄せようとしています。
具体的な魔獣の種類は未確認ですが。数と密度と移動速度から推定して、以前ユルガルムに現れた"蟻"の可能性大…とはレッドさんの意見。
今すぐユルガルムが危険というわけではありませんが。現在の侵攻速度からして数ヶ月のうちに被害が出ることになるとのことです。
「え? まさかターナンシュ様になにか?」
エカテリンさんが慌ててます。
ターナンシュ様の診察から帰ってきたレッドさんの件でアイズン伯爵に急報…ともなれば、やはり悪い想像をしてしまうものですが。
「あいえ、…はい、レッドさんありがとう。ターナンシュ様もお腹の赤ちゃんもシュバール様も問題ないそうです。それとは別に、レッドさんが飛んでいるときに困った物を見つけてしまったそうでして…」
レッドさん、先にそっちを報告してくださいな。…まぁ先に報告しなかったと言うことは問題がなかったと言うことなんでしょうけど。
今日のファルリード亭護衛の影当番はクッフさんですね。今も食堂のカウンター席から周囲を警戒してくれています。
「クッフさんっクッフさんっ! たぶんすぐに王都の方にも連絡が必要になると思いますので、一緒にアイズン伯爵のところへ行って貰えますか?」
目立たないようにお仕事中の影の方に声かけするのはルール違反のようでもありますが。緊急ですので勘弁してください。
「っ! しょ、承知しましたっ!」
声かけすると、一瞬、え?俺?って顔をしたクッフさんですが。すぐに承知してくれました。
「レイコどうしたの? 私も行った方が良い?」
「うーん。直接関係するかはともかく、マーリアちゃんにも話は聞いて貰った方が良いかな?」
マーリアちゃんはエルセニム国の王女ではありますが、戦力として考えるのなら心強いです。それにエルセニムのマナ技師さん達がユルガルムに派遣もされていますしね。
まったくの無関係というわけでも無いですし、実際に参加するかどうかは上の人に判断してもらいましょう。
ともかくと。私とエカテリンさん、クッフさんとマーリアちゃん、皆で馬車で貴族街に向かいます。セレブロさんもでかい体で馬車に入り込んでいます。モフモフでみっちり。
ファルリード亭の監視は影のケールさんが引き継いでくれるそうです。
「小竜神様、ご苦労さまでした」
先触れもなく押し掛けてしまいましたが。貴族街にもすぐ入れて、アイズン伯爵邸にて応接室に通されました。
応接室に下りてきたアイズン伯爵は、もうすでにターナンシュ様についての報告待ちモードです。見た目で分かるほどわくわくしています。
これはもう先に報告しないと、話が頭に入らないでしょう。
ユルガルムからの書簡を渡しつつ、ターナンシュ様の御子が女の子だという話を手早くします。
「そうかっ! 姫か! うん、めでたいのぅっ!」
「…女の子の方が良いですか? 祖父としては」
孫ならここにも居るぞと、クラウヤート様に母親のメディナール様が苦笑しています。
「い…いやっ。もちろん男子でも孫は可愛いぞ。でもまぁ姫というのはまた特別なのだ」
「父上は、妹のターナが嫁入りする時にも、相当ごねましたからね」
とは、嫡男のブライン様。
ターナンシュ様は、ネイルコードとユルガルムの鎹(かすがい)となるべく嫁いだのだ…なんて話もどっかで聞いていましたが。肝心のアイズン伯爵はこの結婚には不承知でしたか? でも、ユルガルムでお会いした御一家は、仲睦まじげでしたよ?
「ともなると。夏前にはユルガルム領に参りたいところですね」
シュバール様の時にもターナンシュ様のサポートをとユルガルム領に赴かれた、アイズン伯爵夫人のマーディア様です。
タシニの街の岩山が崩れたままだったので、魔獣の多い東側ルートでしたが。懐かしいですね。そこでバール君とも出会えたのでした。バール君は、セレブロさんと一緒にはカーペットの上でくつろいでいます。
部屋にはダンテ護衛騎士隊長も呼んでいただきました。なんだかんだで応接室にはアイズン伯爵家勢が勢揃いですね。
「僕も会いに行きたいです。シュバールも大きくなっただろうな…」
クラウヤート様の従兄弟が増えますよ。
「バージュはもう言葉を話し始めたそうだが… くそ…ナインケルのやつめ。自分のことを"じいじ"と呼ばせて悦に入っているらしい… くそ…うらやましい…」
めずらしい"ぐぬぬ"顔のアイズン伯爵です。ナインケル辺境候、書状で孫自慢ですか?
「…僕も赤ん坊の時には、おじいさまを呼んでいたのではないんですか?」
「貴方は、義父様の顔を見るとまず泣き出していましたからね。普通に喋れるようになってから"おじいさま"と呼んだのが最初じゃなかったかしら?」
「ぐぬぬ…」
赤ん坊のクラウヤート様に泣かれましたか… シュバール様の時にはそんなことなかったので、顔の表情が治る前はやっぱ怖かったんでしょうね。
さらに"ぐぬぬ"顔のアイズン伯爵。ちょっとレア。
「それはともかくとして。そろそろ本題に入りましょぅ」
「ん? まだあるのかレイコ殿」
こっちが本題です。
ダンテ護衛騎士隊長と、王国の"影"のクッフさん、あとオブザーバーとしてエルセニム国王女マーリアちゃん。そろって対策会議ですよ。
・Side:ツキシマ・レイコ
ターナンシュ様のお腹の赤ちゃんの性別診断を終えて、無事ユルガルムから帰ってきたレッドさんですが。
「エカテリンさんっ! えーと、とりあえずアイズン伯爵かな? ともかくすぐに伯爵とお話ししたいのですがっ!」
重要連絡事項として送られてきたイメージがちょっと大事ですよ。
魔獣の群れの発見。マナ探知で雲のように見えるほどの数の魔獣が、ユルガルムの北東の陸峡から攻め寄せようとしています。
具体的な魔獣の種類は未確認ですが。数と密度と移動速度から推定して、以前ユルガルムに現れた"蟻"の可能性大…とはレッドさんの意見。
今すぐユルガルムが危険というわけではありませんが。現在の侵攻速度からして数ヶ月のうちに被害が出ることになるとのことです。
「え? まさかターナンシュ様になにか?」
エカテリンさんが慌ててます。
ターナンシュ様の診察から帰ってきたレッドさんの件でアイズン伯爵に急報…ともなれば、やはり悪い想像をしてしまうものですが。
「あいえ、…はい、レッドさんありがとう。ターナンシュ様もお腹の赤ちゃんもシュバール様も問題ないそうです。それとは別に、レッドさんが飛んでいるときに困った物を見つけてしまったそうでして…」
レッドさん、先にそっちを報告してくださいな。…まぁ先に報告しなかったと言うことは問題がなかったと言うことなんでしょうけど。
今日のファルリード亭護衛の影当番はクッフさんですね。今も食堂のカウンター席から周囲を警戒してくれています。
「クッフさんっクッフさんっ! たぶんすぐに王都の方にも連絡が必要になると思いますので、一緒にアイズン伯爵のところへ行って貰えますか?」
目立たないようにお仕事中の影の方に声かけするのはルール違反のようでもありますが。緊急ですので勘弁してください。
「っ! しょ、承知しましたっ!」
声かけすると、一瞬、え?俺?って顔をしたクッフさんですが。すぐに承知してくれました。
「レイコどうしたの? 私も行った方が良い?」
「うーん。直接関係するかはともかく、マーリアちゃんにも話は聞いて貰った方が良いかな?」
マーリアちゃんはエルセニム国の王女ではありますが、戦力として考えるのなら心強いです。それにエルセニムのマナ技師さん達がユルガルムに派遣もされていますしね。
まったくの無関係というわけでも無いですし、実際に参加するかどうかは上の人に判断してもらいましょう。
ともかくと。私とエカテリンさん、クッフさんとマーリアちゃん、皆で馬車で貴族街に向かいます。セレブロさんもでかい体で馬車に入り込んでいます。モフモフでみっちり。
ファルリード亭の監視は影のケールさんが引き継いでくれるそうです。
「小竜神様、ご苦労さまでした」
先触れもなく押し掛けてしまいましたが。貴族街にもすぐ入れて、アイズン伯爵邸にて応接室に通されました。
応接室に下りてきたアイズン伯爵は、もうすでにターナンシュ様についての報告待ちモードです。見た目で分かるほどわくわくしています。
これはもう先に報告しないと、話が頭に入らないでしょう。
ユルガルムからの書簡を渡しつつ、ターナンシュ様の御子が女の子だという話を手早くします。
「そうかっ! 姫か! うん、めでたいのぅっ!」
「…女の子の方が良いですか? 祖父としては」
孫ならここにも居るぞと、クラウヤート様に母親のメディナール様が苦笑しています。
「い…いやっ。もちろん男子でも孫は可愛いぞ。でもまぁ姫というのはまた特別なのだ」
「父上は、妹のターナが嫁入りする時にも、相当ごねましたからね」
とは、嫡男のブライン様。
ターナンシュ様は、ネイルコードとユルガルムの鎹(かすがい)となるべく嫁いだのだ…なんて話もどっかで聞いていましたが。肝心のアイズン伯爵はこの結婚には不承知でしたか? でも、ユルガルムでお会いした御一家は、仲睦まじげでしたよ?
「ともなると。夏前にはユルガルム領に参りたいところですね」
シュバール様の時にもターナンシュ様のサポートをとユルガルム領に赴かれた、アイズン伯爵夫人のマーディア様です。
タシニの街の岩山が崩れたままだったので、魔獣の多い東側ルートでしたが。懐かしいですね。そこでバール君とも出会えたのでした。バール君は、セレブロさんと一緒にはカーペットの上でくつろいでいます。
部屋にはダンテ護衛騎士隊長も呼んでいただきました。なんだかんだで応接室にはアイズン伯爵家勢が勢揃いですね。
「僕も会いに行きたいです。シュバールも大きくなっただろうな…」
クラウヤート様の従兄弟が増えますよ。
「バージュはもう言葉を話し始めたそうだが… くそ…ナインケルのやつめ。自分のことを"じいじ"と呼ばせて悦に入っているらしい… くそ…うらやましい…」
めずらしい"ぐぬぬ"顔のアイズン伯爵です。ナインケル辺境候、書状で孫自慢ですか?
「…僕も赤ん坊の時には、おじいさまを呼んでいたのではないんですか?」
「貴方は、義父様の顔を見るとまず泣き出していましたからね。普通に喋れるようになってから"おじいさま"と呼んだのが最初じゃなかったかしら?」
「ぐぬぬ…」
赤ん坊のクラウヤート様に泣かれましたか… シュバール様の時にはそんなことなかったので、顔の表情が治る前はやっぱ怖かったんでしょうね。
さらに"ぐぬぬ"顔のアイズン伯爵。ちょっとレア。
「それはともかくとして。そろそろ本題に入りましょぅ」
「ん? まだあるのかレイコ殿」
こっちが本題です。
ダンテ護衛騎士隊長と、王国の"影"のクッフさん、あとオブザーバーとしてエルセニム国王女マーリアちゃん。そろって対策会議ですよ。
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