208 / 325
第6章 エイゼル市に響くウェディングベル
第6章第022話 結婚式当日です
しおりを挟む
第6章第022話 結婚式当日です
・Side:ツキシマ・レイコ
筋雲が高くたなびく秋の空。夏の陽気収まり涼しくなってきました。六月では無いですが、最高の結婚日和ですね。
というわけでついに来ました、タロウさんとアイリさんの結婚式当日です。
「レイコ殿…しかしここまで弄られてしまうとは…」
「冠婚葬祭は地域の教会の役割でしょ? 使いやすくしておくに越したことは無いと思って」
教会の代わり映えに正教国から戻ってきたザフロ祭司がびっくりしています。
今回の結婚式の式場はザフロ祭司の六六の教会ですが。結婚式に備えて教会と周辺にもいろいろ手が入れられております。もちろん正教国滞在中だったザフロ祭司にはきちんと工事許可はいただいておりますよ。許可だけは。
費用は、ランドゥーク商会と私が寄進の形で出しております。アイリさんタロウさんは、何らかの形できちんと回収するつもりのようですが。
流石に礼拝堂そのものの拡張は基礎から建て直しになるので時間的に無理でしたが。入り口が伸ばされてそこの左右に控え室が作られました。
元々礼拝堂には貴賓席が儲けられており身分の高い人が訪れることは想定されていますが、ここは六六の教会。控え室まで作る余裕はありませんでしたので。まぁ極端にお金をかけない方向でいろいろ追加しましたよ。
あと住人には申し訳なかったのですが、孤児院や近くの六六を移設して開けた土地に披露宴会場を増設しました。今回の結婚式に合わせてってのもありますが、普段使いの催事場とか市民館として使って下さいってのもあります。そこでの職もいろいろ発生しますので、引っ越しの手間はご勘弁をということで。
このあたりの住人はランドゥーク商会の被服業で働いている人が多いですから。そこの御曹司の結婚式に向けてというと、快く空けてくださいました。立ち退き料が出るのと、引っ越し先が新居でちょっと広くなるってのも大きいですけどね。
なんと、披露宴会場と礼拝堂の方と合わせて空調完備です。試運転の時には、内装に来た職人さんやらお手伝いの六六の方々も、ここに住みたいと言い出したくらいです。
あと。礼拝堂にもプラスアルファということでステンドグラスと窓ガラスも付けました。二回りくらい中が明るくなりましたね。
職人さんが、ステンドグラスのモチーフに私とレッドさんをとか言い出したので、丁重にお断りしました。ほんと丁重に。ここは自動的に赤井さんだけでお願いします。
庭を挟んで建てられた披露宴会場の方も窓はガラス張りです。庭の花畑なんかも一望出来ます。
お花畑は今回造成したわけではなく、もともと孤児院の収入源として幾ばくかのお花を育てているのです。不夜城の橋の前とかで、小綺麗にまとめた花束なんかを置いとくと、けっこう売れるんだそうです。ちなみに売り子は男子限定、その辺の危機管理はしっかりしています。
さて式開始前、新婦アイリさんはランドゥーク商会のスタッフと一緒に控え室にて変身中です。
「なんで私、見れんのん?」
「…レイコ殿には、あちらの方々のお相手をお願いしたいのです」
ウェディングドレスの試着までは付き合いましたが。今日はスタッフの方々に追い出されてました。
そんな私が今どこにいるかと言えば祭壇の上。ザフロ祭司が戻って来られた…のは良いのですが。…リシャーフさんなんでおられるんですか? 正教国の祭司総長、一番偉い人ですよね? この大陸の赤竜教のトップですよね?
「レイコ殿…来ちゃいました」
語尾にハートマークでも付いていそうですね、リシャーフさん…
「いらっしゃいませ、リシャーフ様…」
「様だなんてよそよそしいですわ」
「…はいすみませんリシャーフさん」
ネイルコード王国との折衝会議のために"たまたま"訪れていた…んだそうですけど。リシャーフさんがそのまま今回の結婚式の儀を行なうことになりましてね。
参列している人達のほとんどは面識が無いでしょうし、マスメディアの無いこちらでは顔が周知されているなんて事も無いのですが。身分をひけらかすこともなくザフロ祭司の姪とだけ紹介されました。嘘はついていませんけどね… まぁ高貴な人だとはバレているんじゃ無いかなと。銀色の鎧に身を包んだ聖騎士さん達が壁の飾りになってますから。
「結婚式に巫女様のアレンジが入るとなれば、赤竜教トップとしては視察しないわけには行かないのです。ぜひ正教国でも参考にしたいのですがっ!」
「あ~。そのへんはたぶんランドゥーク商会と話してもらうことになると思いますが…」
「なるほど新郎新婦ですね。承知いたしましたっ」
結婚式と言えば教会、赤竜教にとっても無視できないイベントってことですか。国を跨いでブライダル業界が出来そうです。
今回の参列者は招待客のみです。本当はもっとたくさんに来ていただきたいところですが、礼拝堂に入れる人数には限りがあります。
礼拝堂の左右にはフェンスで区切られた一段高いところがありまして、貴族など身分が高い方が来られたときにはそこの席を使っていただくのですが、この席の方の従者も貴族の方々への招待枠に入ります。そもそも貴族が一人だけで来られるということはないので、招待状の返事の時に何人従者を伴いますと並記するのがこちらの流儀だそうです。
ですがっ!
「…リーテ様、よくぞお越し下さいました…」
「怒んないでよレイコちゃん。こんな素晴らしい結婚式、女性として見逃すわけにはいかないでしょ?」
「怒るなんてとんでもないです、戸惑っているだけですよ?」
はい。ネイルコード国王妃ローザリンテ殿下ですよ、はい。さすがに王妃としてではなく、いつぞやのファルリード亭での試食会のように一貴婦人として正体は隠してのご招待です。
今日のお召し物は、王妃にしては地味、でも詳しくない人も上等なものだとわかる生地の衣服。そもそも醸し出される威厳のおかげでそこだけ空気が違いますね。
まぁローザリンテ殿下は良いのですが…
「で…何をされているのですか?」
問題は従者の方です。
ここでは名前を呼んではいけないあのお方…ネイルコード国国王クライスファー陛下です。
正装したセーバスさんの隣で、同じような服装で立っています。借りたんですか?それ。
「リーテ様の従者として同行いたしました。クライスと申します、レイコ殿」
クライスってっ! 隠す気ないのか?陛下っ!
うーん、ピシッとした挨拶されてしまいました。そう言えば若い頃は文官されてましたね。執事服がめちゃくちゃ似合っているのがちょっと腹立たしいです。
「レイコちゃん。この人、結婚式をどうしても見たいんだって。今日はそういう体なのでよろしく」
「…そういう体…はい、わかりました…」
ローザリンテ殿下に「おねがいっ」ってされたらもうね、笑うしか無いですよ。
ネイルコード国と正教国、二カ国のトップが揃う結婚式って。…アイリさんとタロウさんに知らせたら卒倒するかもしれないから、しばらく黙っていましょう。
あ。反対側のフェンス席におられるアイズン伯爵が、こちらを見てものすごい悪い笑顔してます。
一般席トップ、親族席のジャック会頭とご両親は、ガチガチになってます。多分国王夫妻のお顔を知っていますね。
さて。式の始まりです。
タロウさんの御両親が手配した十人ほどの楽団が、メンデルスゾーンの結婚行進曲をアレンジした物を少しスローテンポで奏で始めます。私の鼻歌の耳コピーから、よくここまでにしてくれました。
まず、礼拝堂入り口の左側からタロウさんが出てきます。いわゆるタキシードをベースにした服ですね。ただこちらではゴルゲットが重要ですので、その辺を考えたデザインは背広と言うより学ランに近い雰囲気です。…そういえば学ランは元々軍服でしたね、正装としてはアリかな?
さて。右側の控え室の戸が開きます。真っ白のウェディングドレスに身を包んだアイリさんの登場です。
参列者の方々が、その姿にシーンと静まります。
良くまぁこれだけまっ白い素材が手に入ったという感じですね。うん、見事なウェディングドレスです。
ダイエットには成功したようで、腰周りのラインがくっきり出ていてセクシーです。さらに目立つのが胸…と言ってしまって良いのでしょうか? いやらしいという感じではなく、腰からのラインが綺麗に整っていますね。流石に胸元は開けていませんよ。こちらもゴルゲットにあわせてレース素材でネック周りが飾られています。
スカート周りもフレアが何重にも重なってなっていて、刺繍が綺麗に入っていて豪華です。
顔には、レース編みのベールがかかっています。髪飾りのブーケと合わせてどれだけコストと手間がかったたんだ?という感じです。
花嫁が後ろに引きずるベールの部分、こちらも地球の物を再現しております。これを持つベールガールは、これまた着飾ったモーラちゃんとアライさんが勤めます。身長的に丁度良いのですよ。
二人とも子供らしいドレスに花の形の髪飾り、かわいらしいゴルゲットも付けています。おすまし顔でベールを支えています。
お客様の中にはアライさんにびっくりしている人が多少いますが。そこは物怖じしないアライさん、落ち着いたもんです。
お化粧…まぁ生前は私も多少はしましたけど、ガッツリはしませんでしたので、教えられるのは基礎化粧程度ですが。似たような色の化粧品で昔流行ったナチュラルメイク系を教えてみました。
ピンク系ルージュ、頬紅を軽く、アイラインは控えめ。もともと美人さんですので、白粉なんかも少し日焼けしているところを隠す程度ですね。
うんうん、アイリさんダイエットがんばった甲斐がありましたね。ほんと綺麗です。
ほぼ毎日、貴族街のエカテリンさんのところに運動をしに走って通ってましたし。ファルリード亭常駐の護衛が交代で帰還するときに合わせて一緒に走って貰ってました。すでに護衛が必要な人ですからついでです。
その甲斐あってか、単に痩せたというより引き締まった感じで、豪華なウェディングドレスに負けていません。
「アイリ…綺麗だ…びっくりした」
「…もうなに言ってんのよタロウ。さっさとエスコートしてよっ」
少し照れながら、レースの手袋をつけた手をタロウさんの方に差し出します。
「あ…ああ、承知」
こんなところでヘタレ出さなくても良いんですよ。
タロウさんがアイリさんの手をそっと支えるように取ります。後ろにはベールを支える二人の小さかわいい生き物。うーん、カメラが欲しい!
ランドゥーク商会の方で依頼された画家の人とそのお弟子さんが一緒に参列してまして、二人の姿を必死にデッサンしています。
え? レッドさん記録できるの? ぜひお願いっ!
BGMの演奏が二巡目に入りました。それに合わせて二人がゆっくり歩き出します。参列している人達が立ち上がり、誰となく拍手を始め、皆で新郎新婦を迎えます。
参列している女性陣がアイリさんのドレスに注目しているのがここからも分かります。未婚の方は自分の時にと。既婚の方は娘や孫にぜひっ! という必死な視線で、余すところなく脳裏に焼き付けようとしていますね。
やがて二人は祭壇の前に。自然と拍手も停まり、楽団も演奏を終えます。
まずは、祭壇からリシャーフさんのスピーチです。…ここでもザフロ祭司の姪のままで正体は明かしませんか。
「…皆さんご存じと思いますが、去年は赤竜教にとって怒涛の一年となりました。その最たる物はまさに小竜神様と赤竜神の巫女であるレイコ様のご光臨であらせられましょう」
リシャーフさんが私の方をちらっと見ます。…まぁ影響があったことは否定しませんけどね。
「教会はおののきました、畏れました。私達の今までの信仰が試されるのでは無いか、断罪されるのではないかと。しかしレイコ殿は、この六六の教会にて赤竜教のあり方を肯定して下さいました。正確には、その教えではなく宗教としてのあり方、教会は人々の心にいかに寄り添うべきなのか…ですね。ここの六六の方々はこちらのザフロ祭司のことはよくご存じでしょう」
うんうんと肯定するざわめきが後ろの方の席や立ち見席から聞こえてきます。
「同時にレイコ殿は、赤竜教のあり方についてもその誤った部分を正して下さいました。古くからの慣例や権力や利権へのしがらみ、これらは組織の運営という面から見れば全てが誤りだったとは言えません。しかし今こそ、赤竜教はその存在意義を見つめ直す必要ができました。その改革はまさにこの小さな教会から始まるのです」
…結婚式の挨拶じゃなかったんですか?リシャーフさん。
若い女性ですが、実はこの人はお偉いさんなんじゃないかと流石に気づき始めた人も出てきたようです。
「教会の経典が正しいかどうかはさしたる問題ではないのです。大切なのは愛です。親や子供、隣人や見知らぬ人。それらへの愛が大切なのです。 …帝国の魔女の時代から人々の争いは途絶えることはありませんでした。それらに教会が関わってしまったこともあります。しかしこの街は、赤竜神様がレイコ様にと選ばれたこの街は、人を愛する余裕がある場所となりました。そのような国を作られたネイルコード国クライスファー陛下およびアイズン伯爵には、今一度敬慕の意を送らせていただきます」
貴賓席に頭を下げます。リシャーフさんは陛下と面識ありますからね。
正教国の国是をこの六六の教会に合わせる…とも取れる大胆な宣言です。どこまでリシャーフさんが本気で宣っているのかは不明ですが、宗教で頭お花畑になるほどお馬鹿さんではなかったはず。それでも赤竜教の影響力をキープするために、故意に"おおざっぱ"になったと見るべきでしょうか… この短い期間でしたたかになったようにも思えますね。
「赤竜神がこの世界を作られて幾年月。数多の人々のその運命と試練の交わりの果てに、今日またここに新たな夫婦が誓いを立てようとしています」
さて、やっと結婚式本番です。
リシャーフさんのお付きの人の合図で、楽団が厳粛な雰囲気の音楽を奏で始めました。
「汝タロウ・ランドゥーク。あなたは喜びの日々も苦難の日々も、ここなアイリを妻とし共に人生を歩む覚悟は出来ていますか?」
「はい、祭司様」
「汝アイリ・エマント。あなたは喜びの日々も苦難の日々も、ここなタロウを夫とし、アイリ・ランドゥークとして共に人生を歩む覚悟は出来ていますか?」
「…はい。祭司様」
「ここに集いし信徒達よ。二人の婚姻に意義がある者は今ここで延べよ。無き者は、二人の門出を祝福することをこの神前の場にて祈りでもって誓いなさい」
「…」
このへんのセリフも、地球のものをいろいろアレンジしています。こちらの言葉に翻訳してまた日本語に戻すとこんな感じですか。
「それでは、まず夫婦のゴルゲットを」
ここで新しいゴルゲットがレッドさんによって新郎新婦に授けられます。いつもなら祭司から授けられるという形式がこちらでは一般的ですが。今この教会の中で赤竜教的に最上位にいるのはレッドさんなので。
新しいゴルゲット。出身地や所属を示すブローチやロゼット的な物は既に付けられていますが、ベースになる部分は新造です。
祭司の正装をさせられた私が、赤い布に金糸のレリーフの入った台座を両手で抱え。その上に銀色のゴルゲットを付け、これまた上等な布のショールを被ったレッドさんが乗っています。そして、後ろを向いて跪いた二人にゴルゲットを後ろで止めます。いつぞやの戴冠式と同じ感じですね。
儀式の見栄えを良くするためにレッドさんが翼を全開にしている上に手が短いので、バランスがちょっと危なっかしい。リシャーフさんが補助してくれます。
「クーッ!クルッククッーッ!!」
レッドさんの祝福の雄叫びです。…ケッコンオメデトー、だそうです。
うん。なんとか二人に授けることが出来ました。でもまだ終わりではありません。
「次に、夫婦の証となるロゼットを」
ロゼット。日本語なら略章とか記章って訳すところですが。コインくらいの大きさで後ろに固定のためのピンが着いています。出身地や職業とかを示すあれですね。私のゴルゲットには、国連のマークみたいなのが地球大使の印、あとはネイルコード公認大使章と護衛ギルド員のロゼットが付いています。
夫婦のロゼットは、要は結婚指輪みたいなもんですね。互いのゴルゲットに取り付けることで婚姻の証となります。
真ん中に赤い綺麗な石が填まってます。盗難の対象になったりするとやっかいですので、貴族でもなければ宝石より石を使うそうですが。複雑な細かい模様が入っていて綺麗な石です。
タロウさんがアイリさんのゴルゲットに、アイリさんがタロウさんのゴルゲットに、ロゼットを止めます。
「よろしい。ここに二人が晴れて夫婦となったことを、赤竜神にご報告いたします」
赤井さん、ご報告されていますか? …まぁ何らかの手段で見ているんじゃないかとも思うのですが。
「最後に。誓いのキスを」
二人がびっくりした顔をしています。…ルシャールさん、ここにきてアドリブです。
前日に地球の結婚式の話をしたときに、最後にキスをするって話をしたのですが。こちらにはそんな風習はないのですよ…で住んだはずです。アイリさんにも地球の結婚式の話は一通り聞かせてますが、流石に自分からキスしたいとは言いませんでしたけど…
ここはもぅ、勢いでいっていただきたいところですが。
さぁ、どうする?どうする?
向かい合う二人。ベールの隙間からは赤くなっているアイリさん。
覚悟を決めたタロウさんが、固まっているアイリさんのベールをめくって… 見つめ合う二人。チュッと控えめに。
「「「うぉーーーっ!」」」
「「「きゃーーーっ!」」」
どよめきのような歓声が教会の中に響きます。
真っ赤になった二人に対して再度拍手と共に、皆が二人の門出を祝うのでした。
・Side:ツキシマ・レイコ
筋雲が高くたなびく秋の空。夏の陽気収まり涼しくなってきました。六月では無いですが、最高の結婚日和ですね。
というわけでついに来ました、タロウさんとアイリさんの結婚式当日です。
「レイコ殿…しかしここまで弄られてしまうとは…」
「冠婚葬祭は地域の教会の役割でしょ? 使いやすくしておくに越したことは無いと思って」
教会の代わり映えに正教国から戻ってきたザフロ祭司がびっくりしています。
今回の結婚式の式場はザフロ祭司の六六の教会ですが。結婚式に備えて教会と周辺にもいろいろ手が入れられております。もちろん正教国滞在中だったザフロ祭司にはきちんと工事許可はいただいておりますよ。許可だけは。
費用は、ランドゥーク商会と私が寄進の形で出しております。アイリさんタロウさんは、何らかの形できちんと回収するつもりのようですが。
流石に礼拝堂そのものの拡張は基礎から建て直しになるので時間的に無理でしたが。入り口が伸ばされてそこの左右に控え室が作られました。
元々礼拝堂には貴賓席が儲けられており身分の高い人が訪れることは想定されていますが、ここは六六の教会。控え室まで作る余裕はありませんでしたので。まぁ極端にお金をかけない方向でいろいろ追加しましたよ。
あと住人には申し訳なかったのですが、孤児院や近くの六六を移設して開けた土地に披露宴会場を増設しました。今回の結婚式に合わせてってのもありますが、普段使いの催事場とか市民館として使って下さいってのもあります。そこでの職もいろいろ発生しますので、引っ越しの手間はご勘弁をということで。
このあたりの住人はランドゥーク商会の被服業で働いている人が多いですから。そこの御曹司の結婚式に向けてというと、快く空けてくださいました。立ち退き料が出るのと、引っ越し先が新居でちょっと広くなるってのも大きいですけどね。
なんと、披露宴会場と礼拝堂の方と合わせて空調完備です。試運転の時には、内装に来た職人さんやらお手伝いの六六の方々も、ここに住みたいと言い出したくらいです。
あと。礼拝堂にもプラスアルファということでステンドグラスと窓ガラスも付けました。二回りくらい中が明るくなりましたね。
職人さんが、ステンドグラスのモチーフに私とレッドさんをとか言い出したので、丁重にお断りしました。ほんと丁重に。ここは自動的に赤井さんだけでお願いします。
庭を挟んで建てられた披露宴会場の方も窓はガラス張りです。庭の花畑なんかも一望出来ます。
お花畑は今回造成したわけではなく、もともと孤児院の収入源として幾ばくかのお花を育てているのです。不夜城の橋の前とかで、小綺麗にまとめた花束なんかを置いとくと、けっこう売れるんだそうです。ちなみに売り子は男子限定、その辺の危機管理はしっかりしています。
さて式開始前、新婦アイリさんはランドゥーク商会のスタッフと一緒に控え室にて変身中です。
「なんで私、見れんのん?」
「…レイコ殿には、あちらの方々のお相手をお願いしたいのです」
ウェディングドレスの試着までは付き合いましたが。今日はスタッフの方々に追い出されてました。
そんな私が今どこにいるかと言えば祭壇の上。ザフロ祭司が戻って来られた…のは良いのですが。…リシャーフさんなんでおられるんですか? 正教国の祭司総長、一番偉い人ですよね? この大陸の赤竜教のトップですよね?
「レイコ殿…来ちゃいました」
語尾にハートマークでも付いていそうですね、リシャーフさん…
「いらっしゃいませ、リシャーフ様…」
「様だなんてよそよそしいですわ」
「…はいすみませんリシャーフさん」
ネイルコード王国との折衝会議のために"たまたま"訪れていた…んだそうですけど。リシャーフさんがそのまま今回の結婚式の儀を行なうことになりましてね。
参列している人達のほとんどは面識が無いでしょうし、マスメディアの無いこちらでは顔が周知されているなんて事も無いのですが。身分をひけらかすこともなくザフロ祭司の姪とだけ紹介されました。嘘はついていませんけどね… まぁ高貴な人だとはバレているんじゃ無いかなと。銀色の鎧に身を包んだ聖騎士さん達が壁の飾りになってますから。
「結婚式に巫女様のアレンジが入るとなれば、赤竜教トップとしては視察しないわけには行かないのです。ぜひ正教国でも参考にしたいのですがっ!」
「あ~。そのへんはたぶんランドゥーク商会と話してもらうことになると思いますが…」
「なるほど新郎新婦ですね。承知いたしましたっ」
結婚式と言えば教会、赤竜教にとっても無視できないイベントってことですか。国を跨いでブライダル業界が出来そうです。
今回の参列者は招待客のみです。本当はもっとたくさんに来ていただきたいところですが、礼拝堂に入れる人数には限りがあります。
礼拝堂の左右にはフェンスで区切られた一段高いところがありまして、貴族など身分が高い方が来られたときにはそこの席を使っていただくのですが、この席の方の従者も貴族の方々への招待枠に入ります。そもそも貴族が一人だけで来られるということはないので、招待状の返事の時に何人従者を伴いますと並記するのがこちらの流儀だそうです。
ですがっ!
「…リーテ様、よくぞお越し下さいました…」
「怒んないでよレイコちゃん。こんな素晴らしい結婚式、女性として見逃すわけにはいかないでしょ?」
「怒るなんてとんでもないです、戸惑っているだけですよ?」
はい。ネイルコード国王妃ローザリンテ殿下ですよ、はい。さすがに王妃としてではなく、いつぞやのファルリード亭での試食会のように一貴婦人として正体は隠してのご招待です。
今日のお召し物は、王妃にしては地味、でも詳しくない人も上等なものだとわかる生地の衣服。そもそも醸し出される威厳のおかげでそこだけ空気が違いますね。
まぁローザリンテ殿下は良いのですが…
「で…何をされているのですか?」
問題は従者の方です。
ここでは名前を呼んではいけないあのお方…ネイルコード国国王クライスファー陛下です。
正装したセーバスさんの隣で、同じような服装で立っています。借りたんですか?それ。
「リーテ様の従者として同行いたしました。クライスと申します、レイコ殿」
クライスってっ! 隠す気ないのか?陛下っ!
うーん、ピシッとした挨拶されてしまいました。そう言えば若い頃は文官されてましたね。執事服がめちゃくちゃ似合っているのがちょっと腹立たしいです。
「レイコちゃん。この人、結婚式をどうしても見たいんだって。今日はそういう体なのでよろしく」
「…そういう体…はい、わかりました…」
ローザリンテ殿下に「おねがいっ」ってされたらもうね、笑うしか無いですよ。
ネイルコード国と正教国、二カ国のトップが揃う結婚式って。…アイリさんとタロウさんに知らせたら卒倒するかもしれないから、しばらく黙っていましょう。
あ。反対側のフェンス席におられるアイズン伯爵が、こちらを見てものすごい悪い笑顔してます。
一般席トップ、親族席のジャック会頭とご両親は、ガチガチになってます。多分国王夫妻のお顔を知っていますね。
さて。式の始まりです。
タロウさんの御両親が手配した十人ほどの楽団が、メンデルスゾーンの結婚行進曲をアレンジした物を少しスローテンポで奏で始めます。私の鼻歌の耳コピーから、よくここまでにしてくれました。
まず、礼拝堂入り口の左側からタロウさんが出てきます。いわゆるタキシードをベースにした服ですね。ただこちらではゴルゲットが重要ですので、その辺を考えたデザインは背広と言うより学ランに近い雰囲気です。…そういえば学ランは元々軍服でしたね、正装としてはアリかな?
さて。右側の控え室の戸が開きます。真っ白のウェディングドレスに身を包んだアイリさんの登場です。
参列者の方々が、その姿にシーンと静まります。
良くまぁこれだけまっ白い素材が手に入ったという感じですね。うん、見事なウェディングドレスです。
ダイエットには成功したようで、腰周りのラインがくっきり出ていてセクシーです。さらに目立つのが胸…と言ってしまって良いのでしょうか? いやらしいという感じではなく、腰からのラインが綺麗に整っていますね。流石に胸元は開けていませんよ。こちらもゴルゲットにあわせてレース素材でネック周りが飾られています。
スカート周りもフレアが何重にも重なってなっていて、刺繍が綺麗に入っていて豪華です。
顔には、レース編みのベールがかかっています。髪飾りのブーケと合わせてどれだけコストと手間がかったたんだ?という感じです。
花嫁が後ろに引きずるベールの部分、こちらも地球の物を再現しております。これを持つベールガールは、これまた着飾ったモーラちゃんとアライさんが勤めます。身長的に丁度良いのですよ。
二人とも子供らしいドレスに花の形の髪飾り、かわいらしいゴルゲットも付けています。おすまし顔でベールを支えています。
お客様の中にはアライさんにびっくりしている人が多少いますが。そこは物怖じしないアライさん、落ち着いたもんです。
お化粧…まぁ生前は私も多少はしましたけど、ガッツリはしませんでしたので、教えられるのは基礎化粧程度ですが。似たような色の化粧品で昔流行ったナチュラルメイク系を教えてみました。
ピンク系ルージュ、頬紅を軽く、アイラインは控えめ。もともと美人さんですので、白粉なんかも少し日焼けしているところを隠す程度ですね。
うんうん、アイリさんダイエットがんばった甲斐がありましたね。ほんと綺麗です。
ほぼ毎日、貴族街のエカテリンさんのところに運動をしに走って通ってましたし。ファルリード亭常駐の護衛が交代で帰還するときに合わせて一緒に走って貰ってました。すでに護衛が必要な人ですからついでです。
その甲斐あってか、単に痩せたというより引き締まった感じで、豪華なウェディングドレスに負けていません。
「アイリ…綺麗だ…びっくりした」
「…もうなに言ってんのよタロウ。さっさとエスコートしてよっ」
少し照れながら、レースの手袋をつけた手をタロウさんの方に差し出します。
「あ…ああ、承知」
こんなところでヘタレ出さなくても良いんですよ。
タロウさんがアイリさんの手をそっと支えるように取ります。後ろにはベールを支える二人の小さかわいい生き物。うーん、カメラが欲しい!
ランドゥーク商会の方で依頼された画家の人とそのお弟子さんが一緒に参列してまして、二人の姿を必死にデッサンしています。
え? レッドさん記録できるの? ぜひお願いっ!
BGMの演奏が二巡目に入りました。それに合わせて二人がゆっくり歩き出します。参列している人達が立ち上がり、誰となく拍手を始め、皆で新郎新婦を迎えます。
参列している女性陣がアイリさんのドレスに注目しているのがここからも分かります。未婚の方は自分の時にと。既婚の方は娘や孫にぜひっ! という必死な視線で、余すところなく脳裏に焼き付けようとしていますね。
やがて二人は祭壇の前に。自然と拍手も停まり、楽団も演奏を終えます。
まずは、祭壇からリシャーフさんのスピーチです。…ここでもザフロ祭司の姪のままで正体は明かしませんか。
「…皆さんご存じと思いますが、去年は赤竜教にとって怒涛の一年となりました。その最たる物はまさに小竜神様と赤竜神の巫女であるレイコ様のご光臨であらせられましょう」
リシャーフさんが私の方をちらっと見ます。…まぁ影響があったことは否定しませんけどね。
「教会はおののきました、畏れました。私達の今までの信仰が試されるのでは無いか、断罪されるのではないかと。しかしレイコ殿は、この六六の教会にて赤竜教のあり方を肯定して下さいました。正確には、その教えではなく宗教としてのあり方、教会は人々の心にいかに寄り添うべきなのか…ですね。ここの六六の方々はこちらのザフロ祭司のことはよくご存じでしょう」
うんうんと肯定するざわめきが後ろの方の席や立ち見席から聞こえてきます。
「同時にレイコ殿は、赤竜教のあり方についてもその誤った部分を正して下さいました。古くからの慣例や権力や利権へのしがらみ、これらは組織の運営という面から見れば全てが誤りだったとは言えません。しかし今こそ、赤竜教はその存在意義を見つめ直す必要ができました。その改革はまさにこの小さな教会から始まるのです」
…結婚式の挨拶じゃなかったんですか?リシャーフさん。
若い女性ですが、実はこの人はお偉いさんなんじゃないかと流石に気づき始めた人も出てきたようです。
「教会の経典が正しいかどうかはさしたる問題ではないのです。大切なのは愛です。親や子供、隣人や見知らぬ人。それらへの愛が大切なのです。 …帝国の魔女の時代から人々の争いは途絶えることはありませんでした。それらに教会が関わってしまったこともあります。しかしこの街は、赤竜神様がレイコ様にと選ばれたこの街は、人を愛する余裕がある場所となりました。そのような国を作られたネイルコード国クライスファー陛下およびアイズン伯爵には、今一度敬慕の意を送らせていただきます」
貴賓席に頭を下げます。リシャーフさんは陛下と面識ありますからね。
正教国の国是をこの六六の教会に合わせる…とも取れる大胆な宣言です。どこまでリシャーフさんが本気で宣っているのかは不明ですが、宗教で頭お花畑になるほどお馬鹿さんではなかったはず。それでも赤竜教の影響力をキープするために、故意に"おおざっぱ"になったと見るべきでしょうか… この短い期間でしたたかになったようにも思えますね。
「赤竜神がこの世界を作られて幾年月。数多の人々のその運命と試練の交わりの果てに、今日またここに新たな夫婦が誓いを立てようとしています」
さて、やっと結婚式本番です。
リシャーフさんのお付きの人の合図で、楽団が厳粛な雰囲気の音楽を奏で始めました。
「汝タロウ・ランドゥーク。あなたは喜びの日々も苦難の日々も、ここなアイリを妻とし共に人生を歩む覚悟は出来ていますか?」
「はい、祭司様」
「汝アイリ・エマント。あなたは喜びの日々も苦難の日々も、ここなタロウを夫とし、アイリ・ランドゥークとして共に人生を歩む覚悟は出来ていますか?」
「…はい。祭司様」
「ここに集いし信徒達よ。二人の婚姻に意義がある者は今ここで延べよ。無き者は、二人の門出を祝福することをこの神前の場にて祈りでもって誓いなさい」
「…」
このへんのセリフも、地球のものをいろいろアレンジしています。こちらの言葉に翻訳してまた日本語に戻すとこんな感じですか。
「それでは、まず夫婦のゴルゲットを」
ここで新しいゴルゲットがレッドさんによって新郎新婦に授けられます。いつもなら祭司から授けられるという形式がこちらでは一般的ですが。今この教会の中で赤竜教的に最上位にいるのはレッドさんなので。
新しいゴルゲット。出身地や所属を示すブローチやロゼット的な物は既に付けられていますが、ベースになる部分は新造です。
祭司の正装をさせられた私が、赤い布に金糸のレリーフの入った台座を両手で抱え。その上に銀色のゴルゲットを付け、これまた上等な布のショールを被ったレッドさんが乗っています。そして、後ろを向いて跪いた二人にゴルゲットを後ろで止めます。いつぞやの戴冠式と同じ感じですね。
儀式の見栄えを良くするためにレッドさんが翼を全開にしている上に手が短いので、バランスがちょっと危なっかしい。リシャーフさんが補助してくれます。
「クーッ!クルッククッーッ!!」
レッドさんの祝福の雄叫びです。…ケッコンオメデトー、だそうです。
うん。なんとか二人に授けることが出来ました。でもまだ終わりではありません。
「次に、夫婦の証となるロゼットを」
ロゼット。日本語なら略章とか記章って訳すところですが。コインくらいの大きさで後ろに固定のためのピンが着いています。出身地や職業とかを示すあれですね。私のゴルゲットには、国連のマークみたいなのが地球大使の印、あとはネイルコード公認大使章と護衛ギルド員のロゼットが付いています。
夫婦のロゼットは、要は結婚指輪みたいなもんですね。互いのゴルゲットに取り付けることで婚姻の証となります。
真ん中に赤い綺麗な石が填まってます。盗難の対象になったりするとやっかいですので、貴族でもなければ宝石より石を使うそうですが。複雑な細かい模様が入っていて綺麗な石です。
タロウさんがアイリさんのゴルゲットに、アイリさんがタロウさんのゴルゲットに、ロゼットを止めます。
「よろしい。ここに二人が晴れて夫婦となったことを、赤竜神にご報告いたします」
赤井さん、ご報告されていますか? …まぁ何らかの手段で見ているんじゃないかとも思うのですが。
「最後に。誓いのキスを」
二人がびっくりした顔をしています。…ルシャールさん、ここにきてアドリブです。
前日に地球の結婚式の話をしたときに、最後にキスをするって話をしたのですが。こちらにはそんな風習はないのですよ…で住んだはずです。アイリさんにも地球の結婚式の話は一通り聞かせてますが、流石に自分からキスしたいとは言いませんでしたけど…
ここはもぅ、勢いでいっていただきたいところですが。
さぁ、どうする?どうする?
向かい合う二人。ベールの隙間からは赤くなっているアイリさん。
覚悟を決めたタロウさんが、固まっているアイリさんのベールをめくって… 見つめ合う二人。チュッと控えめに。
「「「うぉーーーっ!」」」
「「「きゃーーーっ!」」」
どよめきのような歓声が教会の中に響きます。
真っ赤になった二人に対して再度拍手と共に、皆が二人の門出を祝うのでした。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
わがまま妃はもう止まらない
みやちゃん
ファンタジー
アンロック王国第一王女のミルアージュは自国でワガママ王女として有名だった。
ミルアージュのことが大好きなルーマン王国の王太子クリストファーのところに嫁入りをした。
もともとワガママ王女と知れ渡っているミルアージュはうまくルーマンで生きていけるのか?
人に何と思われても自分を貫く。
それがミルアージュ。
そんなミルアージュに刺激されルーマン王国、そして世界も変わっていく
「悪役王女は裏で動くことがお好き」の続編ですが、読まなくても話はわかるようにしています。ミルアージュの過去を見たい方はそちらもどうぞ。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる