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第6章 エイゼル市に響くウェディングベル

第6章第014話 米ゲットだぜっ!

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第6章第014話 米ゲットだぜっ!

・Side:ツキシマ・レイコ

 今日は、ガロウ会頭のカルマ商会におじゃましております。
 年始の伯爵邸での宴でリラック商会のドウム会頭にお願いしていた物産のサンプル、米っ!米らしい米っぽい物っ!…が届いたとのことで。中央通りにあるカルマ商会経営の食堂にお呼ばれしました。もちろん、功労者たるドウム会頭も同席です。
 あとは、アイリさんとタロウさんも。…件のチャラ貴来襲以来、なんかタロウさんはいつもアイリさんと一緒にいますね。ボディーガードですか?
 あとは料理騎士のブールさんとジャック会頭。アイズン伯爵に報告するのなら彼らが適任です。


 早速、リラック商会が海の彼方から仕入れてきた食材のチェックです。
 ともかく最初に目玉のお米っ! …ですが。うーん、ちょっと黄色くて細長い。色は精米前というのはともかく、形からしてインディカ米っぽくはありますね。稲穂の状態のものも持ち込まれていますが、確かに麦より米っぽくはありますが。
 脱穀したものもありましたが、精米はまだなのでやってみましょう。瓶に入れて棒で突く…でしたっけ。瓶はないので、カメに一升ほどの米を入れて二本の棒で交互にグニグニと。
 他の作物の説明も聞きながら1時間くらいやっていたと思いますが、まぁまぁ白くなりました。
 …これは結構大変です。笊に入れた米の中で棒を回すような構造で精米が出来たはずなので、ミキサー作ってくれたところに精米機を依頼してみますかね。
 あ。糠は袋に入れてお風呂で肌を擦ると、美白に効果がありますよ。…なんて話をしたら、アイリさんの他にも、女性従業員の目が光りました。…頑張って精米してください。


 とりあえず厨房をお借りして。試しに三合ほどを水に半時間ほどつけてから鍋で炊いてみます。
 始めちょろちょろ中ぱっぱっ。赤子泣いても蓋取るな…でしたっけ? 飯盒炊飯はしたことあるので、沸騰したら弱火で15分、蒸らし10分ってなもんです。

 うん。精米加減のせいかちょっと色が付いていますし。米の形はちょっと違いますが。匂いは紛う方なきご飯ですね。
 小皿にとって、手を合わせていただきます。
 あ…ちゃんとご飯の味です。
 さすがに最高級米!とはいきませんが。赤井さんのところで食べたご飯から一年ぶりの米です。口に含んだときの香り。そして咀嚼してると甘くなる…

 「はぁ…」

 ほっとする甘みに、思わずため息が出てしまいます。

 「…どうでしたか?レイコ殿」

 「はい。久しぶりのご飯です。ほんとうにありがとうございます、ドウム会頭」

 お役に立てて幸いですと、強面な顔ですがニカっと笑います。
 同席者の間でも試食しますが。

 「…まずいってことはないけど、味がしない?」

 「まぁご飯だけで食べるものでもないからね」

 さてどうしましょうか。

 白飯を作ってなにかおかず…いや、お魚系を具におにぎりがいいかな? 丼物…ここにある材料でぱっと作れるのは親子丼か。あと、根菜と鳥肉を使った炊き込みご飯あたりも。
 料理長さん、ご協力お願いします。

 見た目はインディカ米ですが。食べた感じではジャポニカ米とインディカ米半々って感じですね。

 「このお米、他に種類は無いんですか?」

 場所も違えばいろいろ種類があるかもという期待ですね。お餅の材料のうるち米なんかも欲しいですし。

 「東方諸島の方にには、場所によって味が違うそうですな。そちらも次には手に入ると思います」

 「是非、よろしくお願いしますっ!」

 どんなお米でしょう? 楽しみですね。
 さて。追加も炊けて、試食と言うことで小鉢になりますが。炊き込みご飯と親子丼、それに小おむすびと炒飯を作りました。

 「アイリさん、食べ過ぎないようにね」

 「…わかっているわよ」

 結婚式に向けてダイエット真っ最中のアイリさんです。そんなときに試食会というのもちょっとかわいそうかも。
 ガロウ会頭は、一品ずつ頷きながら食べています。どうですか?商売になります?

 「なるほど… 麦と同じく、それだけで目立って美味いわけでは無いけど、まぁそれも主食の条件なんだろうな」

 ハンバーガーを再開発したタロウさんも来ております。

 「巫女様手ずから作っていただいた"おむすび"ですか、これは光栄ですな。うむ、たしかにうまいぞっ!と騒ぐほどではないですが、噛み締めていると米の甘さが魚の旨みと調和して、飽きが来なさそうな味ですな。他にも合う具材が無いか探したいですな」

 ガロウ会頭が食レポしてくれます。具材の旨みを生かしやすいのがお米の旨みなのです。だからこそ、日本人はご飯の友を求めてるのです。ご飯とおかず、これは正義です。
 梅干しは夏に食べるのに好きだったのですが、さすがにあの酸っぱさは初心者には辛いでしょう。でもピクルスの類いはあるので、いろいろ漬物を試してみてもいいですね。
 あと、おにぎりに海苔が欲しくなります。縄を海中に垂らしておくとそこに生える…でしたっけ? でも地球では、海苔は外国人には凄く評判が悪かったんですよね。カリフォルニアロールなんてわざわざ海苔をご飯で包んでいたくらいですし。

 「この炒飯っていうの、確実にウケるよっ! 美味しい」

 「アイリさん… それ卵に肉に脂を結構使っているから、太るよ?」

 なんて言ったら、ギクッと止っていました。小鉢で良かったですね。
 油にはボアの脂身を使っています。ラードですね。先日ラーメンで作ったチャーシューとかも刻んで入ってます。見た目けっこう本格的な炒飯になりましたよ。ご飯が油を吸ってナンボの炒飯…怖いですねぇ。でも、油を節約すると、とたんにボソボソになってしまいます。

 「なんでこんなところにまで罠が…」

 美味しいものは太るのです。はい。

 「で、どうでしょう? このお米、私は今ある在庫を全部買い取りたいくらいなんですけど。これがこの国の人に好評を得るかというと、まだ自信ないんですけど」

 「プリンとかのように爆発的に…とはならないでしょうが。まぁ巫女様の世界の主食と言うことで興味持つ人は多いと思いますし。食べてみればじわじわ広まってくんじゃないかと思いますけど…」

 「やっぱコストですか?」

 「東方諸島からの輸入品ですからね。結構いい値段になってしまいます」

 樽一杯の米の値段を聞いてびっくりしました。…まぁ払いますけどね。

 「ただ… レイコ殿、年始の宴でアイズン伯爵にも米のことを話されてましたよね? あれで作付け面積当たりの収穫量が多いって所にアイズン伯爵が興味を持たれてましてな。基本的な育て方の覚え書きと種籾も手に入れてきておりますので、それで試験的に栽培して見るそうです」

 それはうれしい知らせですね。ご飯物の店がずらりと…夢のようです。
 飢饉に備えるという意味で、穀物は複数種を栽培したい…というような理由もあるそうですが。残念ながら、アイズン伯爵は今日は王都の方にお出かけして、こちらには参加されていません。

 「ダーコラ国国境の三角州ですが。どうにも麦だけでいくには水はけに難がある場所が多いそうで、結構な盛り土をしなければならないのですが。豊富な水量を鑑みてこの米を作れないかと仰っておりました」

 麦畑よりは水はけに気を使わなくても良いと思いますが、水田とは言え冬場は水を抜く乾田にしたいところですが。あそこを水田地帯にしますか。

 「ほんと基礎の基礎ですが私も米作りについてはいくらか知識を持っています。後日打ち合わせしたいですね」

 「それは僥倖。さっそくアイズン伯爵にお話しせねば」

 稲作は水田の構築と維持に手間がかかるものなので。労力に見合った人気が出るといいのですが…
 いや、私用に一反ほどの田んぼを、お金払って農家に委託するかしてでも…
 ご飯のある生活。理想の生活に向けてまた一歩前進です。

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